ウクライナ危機は未解決のまま
Paul Craig Roberts
2014年9月9日
未解決のままのウクライナ危機
Paul Craig Roberts
欧米の評論家の中には、プーチン大統領のおかげで、ウクライナが達成した停戦は、ロシアの勝利だと解釈する人々がいる。停戦で、ウクライナは、国境紛争を抱えたままとなり、それが、ウクライナのNATO加盟の可能性を無くしてしまうという論拠だ。
しかし、停戦は維持できるだろうか? メンバが、ナチスの記章をつけいることが多い、キエフの右翼民兵、キエフ政権が完全に掌握しているわけではない。こうした民兵は、容易に停戦に違反するし、複数の違反の報道が既に存在している。更に、アメリカがキエフに、ウクライナ大統領として据えつけた億万長者のオリガルヒも、プーチンが、彼をひどく怖がらせない限りは、もちろん、アメリカの命令で停戦違反をするだろう。
軍事戦略家にとって、アメリカが国として存在している期間より長い間、ロシアの一部だったウクライナで、アメリカが、ロシアに対してもたらした面倒への、ロシアの対処方法は謎だ。ソ連が崩壊した際、その弱さと、ロシア連邦を分裂させるというアメリカの狙いに役立つ、ウクライナ独立を許すよう、アメリカがロシアに強いたおかげで、ロシアはウクライナを失ったのだ。
第二次世界大戦中、ヒトラー側で戦った西ウクライナ人は、アメリカ国内で、強力なロビー組織を維持しており、国家の独立を実現したが、ウクライナの多くは、二十世紀に、ソ連指導者が、ウクライナの一部にした旧ロシア領なので、彼等がウクライナを支配しているわけではない。
何世紀にもわたる人種間の結婚による血の絆と、何世紀にもわたって実現された、ロシアとウクライナの間の経済的相互関係が、本質的に、ウクライナを、ウクライナが何世紀もそこに属していた、ロシアの一部として存在させていたのだ。
これが、その政権で、第三世界並の腐敗を、アメリカの政治社会に持ち込んだ腐敗したクリントン以来、アメリカ政府を支配している世界帝国ネオコンには気に食わなかった。クリントンの大学時代の友人で、労働長官だったが、道徳的見地から、クリントン内閣を辞任したロバート・ライシュをご記憶だろうか。クリントンは、オバマがしたように、自分を選んだ有権者を裏切ったのだ。シオストのイスラエル、強欲な銀行幹部や、軍安保複合体と親しい同盟関係にある、クリントンの裏切り者の妻が、今の民主党の次期大統領指名候補本命なのだ。
ローマがそうであったのと同様、世襲による権力継承が、アメリカ大統領という地位の新たな源だ。また、ローマがそうであったのと同様、アメリカは自滅への道をたどりつつあるが、それは支配者の野望が、国家の運命より優先した時に起きるものだ。
ウクライナをNATOに入れずにおくことが、疑いもなく、ロシア政府の目標だ。ところが、ウクライナで、クーデターを画策し、傀儡政権を据え、ソ連指導部がウクライナに編入した旧ロシア領の住民に対する武力攻撃を始めて、アメリカがロシアにもたらした難題は、ウクライナを、NATOに組み込むことよりもっと広範な目的に利用されつつあるのだ。
言い換えれば、アメリカの戦略的目標は、ウクライナのNATO加盟より遥か先にあるのだ。
目的の一つは、ヨーロッパとロシアの間の経済的・政治的な関係を破壊することだ。ウクライナを利用して、ロシアを悪魔化することで、アメリカは、欧州連合を、貿易関係を破壊し、不信を生み出す、対ロシア経済制裁を課すよう追い込んだ。
不信は、アメリカの狙いにとって役にたつ。アメリカが金を払って雇っているヨーロッパの政治家連中が、アメリカ政府のそれとは独立した外交政策を持つのを嫌がっていることを、ロシアに対して、アメリカは明らかにした。ヨーロッパには、独立した政策が存在しないということは、ロシア政府が外交を活用するのを妨げられていることを意味する。
アメリカのもう一つの目標は、ロシア国境での軍事力を強化することだ。NATOは、バルト海沿岸諸国とポーランドで、ロシアの恐怖をかきたてるため“危機”を利用した。アメリカとNATO の将軍連中が、ロシアが東ヨーロッパを侵略しようとしているのは初めからわかりきっている結論であるかのごとく、ロシア攻撃について語っている。“ロシアの脅威”から守る為、NATOは“即応部隊”をたちあげ、軍装備品供給と、ロシア国境の新基地を強化している。ウクライナでの結果がなんであれ、アメリカは新冷戦を開始するのにウクライナを活用したのだ。
欧米売女マスコミ、政府の伝道者集団は、ウクライナの状況を、そもそもの始めから事実を曲げて報道してきた。今あるのは、ニュース報道ではなく、反ロシア・プロパガンダだ。結果的に、マスコミに頼っている欧米諸国民は、ウクライナに関して、虚報を与えられ、あらゆる責任を、ロシアになすり付けている。アメリカ人が、アメリカ政府から虚報を与えられているという事実が、ロシアを不利にする出来事を画策し続けるのを容易にしている。
アメリカ政府は、ウクライナの問題を解決することへの興味は皆無だ。アメリカは、ヨーロッパとアメリカ合州国両方の内部で、ウクライナを利用して、対ロシア恐怖を作り出すのに、まんまと成功した。アメリカは、ヨーロッパ-ロシアの経済・政治関係を損なうのに、まんまとウクライナを活用し、アメリカは、アメリカ軍安保複合体に利益を流れこませ続ける新冷戦を開始することにも成功した。
キエフ政権は、アメリカ政府の傀儡なのだから、ウクライナとロシアに、アメリカ政府が引き起こした紛争に対する解決策を、彼等に期待できるわけがない。
アメリカが作り出した、ウクライナの困難な問題を解決することを拒否しているのは、アメリカ政府だけではなく、EUもそうなのだ。アメリカ政府の隠れみの機構-欧州理事会の議長であり、アメリカ政府の傀儡であるヘルマン・ファン・ロンパイが、もしマスコミ報道が正しければ、滅多にそういうことはないのだが、欧州連合は、ロシアのエネルギー企業、ロスネフチ、ガスプロムネフチと、トランスネフチや、年間、70億ドル以上の売上高をもつ国営企業に対し、経済制裁を課している。
この無謀さに対するロシアの対応は、冬、警告無しにガスを遮断することだろう。全てのガスを。プーチンの関心は、ヨーロッパを、アメリカの支配から引き離すことなのだから、これでそれが実現できよう。西欧と東欧の全てとウクライナは、モスクワに、エネルギーを再び流してくださいと、跪いて懇願することになろう。プーチンが言う必要があるのは“NATO非加盟国だけが、ガスを得られる。”だけだ。
これで、アメリカのロシア攻撃を終わらせることができるだろう。
アメリカのネオコン、狂った戦争屋幹部連中は、ウクライナに軍隊を送らないことで、オバマを“軟弱”だと非難している。アメリカに、クリントン政権以来、アメリカ軍による、無駄金使いの、失敗した海外侵略をさせてきたネオコンが、オバマの政治がNATOにおける、意思と力の喪失をもたらしたのだと主張している。
ウクライナとヨーロッパを巡るあらゆる影響力がモスクワにこそあることを、目に物見せるのは、ロシア政府次第だ。
四半期毎のご寄附のお願い
多くの皆様が御承知の通り、数年前に私が引退しようとした際に、読者の皆様は、それを受けいれてくださらなかった。私は、協賛各紙に同時に掲載され
るコラムを降りて、皆様にお別れをつげた。皆様が、何千通もの電子メールで、小生の経験と知識を頼りにしておられ、それが現代の出来事を客観的に理解する
のに役立っていると言ってこられたのだ。皆様の御意見には説得力があった。私は引退を止め、このウェブサイトを開設したが、皆様から強固なご指示頂いてい
る。
これは皆様のウェブサイトだ。皆様に支持を頂ける限りは継続する。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2014/09/09/ukraine-crisis-remains-unresolved-paul-craig-roberts/
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電車の中吊り広告、某新聞社にたいする理不尽なイジメでしかないだろう。批判している各社、従軍慰安婦やら原発事故調書に関する、「潜在性プロパガンダ」の量と質、某新聞社をはるかにしのぐだろう。先に壊滅すべき連中が、人に罪をなすりつける愚劣な行為。
お金を払って、ああいう記事を載せた文藝夏冬や週刊干潮やら夏冬を購入される方が、何十万人単位でおられることにそもそも驚いている。北朝鮮の人々は、お金を払わずにプロパガンダを聞かされる。
世界第一の宗主国の人々受信料を払って政府プロパガンダを聞くだけでは不十分で、お金を払って「潜在性プロパガンダ」雑誌を購入する。たで食う虫は害虫かも知れない。
もうすこし意味あるお金の使い方もありそうだ。宝くじのほうが悪影響は少ないだろう。
「ガス・パイプライン遮断」を、ロシアの有力な選択肢であるとし、ポール・クレイグ・ロバーツ氏しはいっておられる。歴史的な現実としては、ロシアは、政治的・戦略的理由で、遮断している場合はかなり少ないようだ。重要なポイントなので、あえて指摘させて頂く。
通産省現役官僚、藤和彦氏による著書『シェール革命の正体』(100ページから、105ページ)、あるいは、『日露エネルギー同盟』(75ページから、77ページ)あるいは、『石油を読む(第2版)』(14ページから、25ページ)にもある通り、ロシアは、戦略的な狙いを実現するために、ガス・パイプラインを利用したことはほとんどない。
LNGの場合、政治的紛争などで、意見が別れた場合、「輸出を止める」、あるいは「購入を止める」という前例があるが、ガス・パイプラインの政治的理由による遮断事例は、さほど多くはない、というのが定説のようだ。
森元首相に託した親書が何だったのか興味はないが、政治的な意図で、ガス・バルブを開けたり、閉めたりするのであれば、そもそも対中国けガス売買(パイプライン)が成立していたはずがない。そして、日本のエネルギー不足を解消する最上の手段で、ロシアにとっても安定した金づるとなるだろうパイプライン計画も吹き飛ぶだろう。
この情報、独力で読書によって知ったわけではない。IWJ。前回も書いたが繰り返そう。
IWJ 14/05/23 「日露エネルギー同盟を締結せよ!」シェールガス革命の幻想と日本のエネルギー戦略のこれから~岩上安身による現役の経産省官僚・藤和彦氏インタビュー
慰安婦問題、原発事故調書問題ばかり、(いや、テニスの快挙もあるが)報じて、自衛隊のNATOとの協力協定やら、TPP真相を全く報じない、大本営広報部はきっぱりやめ、独立したジャーナリズムを支援する必要があると思うのは、こうした活動のおかげ。
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