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2014年9月22日 (月)

アメリカに迫りくる、イラクとシリアの泥沼

Wayne MADSEN

2014年9月19日|00:01

バラク・オバマ政権が、グローバルな“ナンバー・ワンの公共の敵”としての“アルカイダ”も失墜させた最新の過激派イスラム原理主義の子供だまし用怪物に対するアメリカ国防省の、正式名称「シリアとレバントのイスラム国(ISIL)」と対決する為の信頼できる同盟者を探そうとしている中で、アメリカ合州国は、次の中東の泥沼にはまり込む瀬戸際にある。

“イラクとレバントのイスラム国”(ISIL)や、別名、“イラクとアッシャームのイスラム国”(ISIS)、“アル・ダウラ”(国家)、あるいは“ダーイシ”(“アル・ダウラ・アル・イスラミヤ・フィ・イラク・ワ・アッシャーム”の略語を取り巻く動きを、深く調べれば調べるほど、イスラム原理主義武装反抗勢力集団の、欧米やイスラエル諜報組織とのつながりが、益々明らかになる。ISILは、アブ・ムサブ・アル-ザルカウィが率いた、二つの川の国における聖戦基地組織、あるいはイラク・アルカイダ(AQI)から派生したものだ。現在のISIL指導者、アブ・バクル・アル・バクダディ同様、ザルカウィの背景は疑問だらけだ。

イラク多国籍軍(MNFI)が製作したパワー・ポイントのスライドに書かれている通り、ザルカウィは、概して、シーア派、穏健スンナ派、スーフィ教徒や、クルド人を含む、イラクの宗教・民俗集団の、外国人嫌いの反応を活用するため、ペンタゴンの心理作戦や、マスコミ作戦や、特殊作戦によって作り上げられた、恐ろしい人物だ。

2004年の“結果”と題するスライドで、イラク多国籍軍(MNFI)は、ザルカウィの脅威を作り出したことで、下記の望んでいた結果が得られたと自慢していた。

“アブ・ムサブ・アル-ザルカウィは、現在、下記を代表している。

a. イラクにおけるテロ

b. イラクにおける外人戦士

c. イラク国民の苦難(インフラへの攻撃)

d. イラク国民の熱望の拒絶(主権委譲の粉砕)

スライドは、ザルカウィを、イラクで一番脅威があるテロリストとして売り込むことによる、効果を説明して終わっているが、それはこうだった。

“共感できる可能性がある反体制派への大衆の支持を無くすこと。反体制派が、大衆の中に‘根付く’能力を失わせること”

ワシントン・ポストによれば、イラクのアメリカ中央軍の、広報担当将校マーク・キミット大将は、2004年に、中央軍内部のブリーフィングで "ザルカウィ心理作戦は、これまでの中で最も成功した諜報作戦だ。"と語っていた。

イラク瓦解後、アメリカ諜報機関が支配するザルカウィ・テロリスト“手先”の多くが、シリアに移動し、そこで彼等は、現在バシャール・アル・アサド大統領政権を脅かしている。こうした連中の一部は、シリア国境を越えて急襲し、シーア派が支配するバグダッド政権や、アルビルのクルド地域政府を脅かしている。最新の子供だまし用の怪物は、ザルカウィ配下の元中尉で、自らをイラクとシリアにおける新カリフ国“首長”と名乗っているアブ・バクル・アル・バクダディだ。

ザルカウィの本名は、アフメド・ファデール・ナザル・アル-ハライレフだ。彼はヨルダンのザルカという町で生まれた。アブ・ムサブ・アル-ザルカウィというのも、アブ・バクル・アル・バクダディも、現在の、ISIL指導者と同様、偽名だ。イラク、サマラ生まれのアル・バグダディは、本名は、イブラヒム・イブン・アッワド・イブン・イブラヒム・イブン・アリ・イブン・ムハンマド・アル-バドリ・アル-サマライだ。対ソ連聖戦に参加するまで、ザルカウィは、飲んだくれの麻薬常習者として知られており、イスラム教原理主義として、サウジアラビアやアラブの首長国か大量の資金援助をうける玉からは、ほど遠い人物だった。

バグダディ同様、ザルカウィも、イラクを意味する“二つの川の国のアルカイダ首長”を自称していた。アメリカの諜報当局筋の中には、ザルカウィは、イラクでのアメリカ軍作戦を継続するのを正当化する為に、ネオコンが作り出した“神話”だと主張するむきもある。ところが、滅多に同意することがない、イラクのスンナ派とシーア派指導者達だが、スンナ派武装反抗勢力の指導者は、デイリー・テレグラフに、ザルカウィは、アメリカ人か、イスラエル工作員だと思うと語り、イラク人シーア派指導者ムクタダ・アル-サドルは、ザルカウィは、アメリカ合州国に雇われたエセ過激イスラム原理主義背教徒だと主張している。

ザルカウィは、アメリカの最も危険な敵の一人として喧伝されているが、シリアでISILのトップとして彼を最終的に継いだ人物は、アブ・バクル・アル・バクダディで、アメリカが最も信頼する同盟者の一人となった。アル・バグダディは、アル・ヌスラ戦線の指導者達と共に、当初は彼等の軍隊を、自由シリア軍の傘下に置いた。ところが、アル・バグダディも、ザルカウィがそうだったのと同様、彼もCIAが作り上げたものだというあらゆる兆候がある。

元アルカイダ最高司令官で、レバノンのイスラム民主聖戦党の創設者であるナビル・ナイームは、ベイルートのアル-マイディーン・テレビに、ISILは、CIAとモサドの創作だと語った。ナイームはまた、ISILの狙いは、アメリカの主要シオニスト・ネオコンによって精巧に作り上げられた、Clean Break(きっぱりお別れ): 領土確保の為の新戦略としても知られている、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の1996年の“Clean Break(きっぱりお別れ)”政策を実施することだと語っている。Clean Break(きっぱりお別れ)作戦が、アサドを打倒するためのアメリカのシリア介入の詳細計画である、2003年のアメリカ・シリア責任法案の土台を築いたのだ。

アル・バグダディは、モサド軍とイスラム原理主義者の神学訓練を、イスラエルで、一年間受けたと報じられている。ナイームはまた、ISILとの同盟を誓った、アル・ヌスラ戦線の司令官、モハメッド・アル・ジャウラニは、CIA工作員だと語っている。

モスルのアル-ヌリ大モスクで行ったアル・バグダディの演説ビデオで、全てのイスラム教徒のカリフであると自称したが、イラク政府当局者からは詐欺師と見なされていた。

自由シリア軍(FSA)や、その一部のシリア革命戦線(SRF)は、ジョン・マケインや、リンジー・グラハム上院議員等の主要なアメリカ・ネオコンの支援を受け、民主主義防衛財団の様なネオコン非営利団体、密接なつながりを維持している ISILと、アル・ヌスラ。戦時の仮名で、ジャマル・マールードと称するシリア革命戦線司令官は、シリア革命戦線は、ISILとは戦うが、アルカイダとは戦わないと、公式に述べた。シリアとイラク現地には、この二つの集団の違いを示すほとんど証拠はない。

自由シリア軍とISILは、8月アルサルの戦いで、レバノン侵略時に仲間になったと報じられている。ISILと自由シリア軍は、レバノン軍部隊と現地警察を攻撃した後、数人の人質をとった。自由シリア軍の司令官達は、彼等と、ISILと、アル・ヌスラ・テロリストは、アルサルと国境のエラムーン地区で、レバノン部隊を攻撃した際に、仲間になったとも述べている。

ISILがイスラエルと深いつながりがあることを示すあらゆる兆しがある。逆の主張もあるが、ISILは、アルカイダと提携している、シリアのイスラム原理主義者武装反抗勢力集団、ジャバト・アル・ヌスラ(アル・ヌスラ戦線)の兵卒の大半を吸収した。アル・ヌスラ戦線は、ゴラン高原国境沿いのシリア軍の位置把握で、イスラエル国防軍(IDF)と協力している。ゴラン戦線のシリア側にいるアル・ヌスラの位置に反撃するのではなく、イスラエルは、シリア軍の位置を攻撃し、特にアル・ヌスラと、ISIL全般の、シリア攻撃作戦を後押しした。イスラエル軍が、アル・ヌスラ/ISILが、ミサイルを発射したり、国境のイスラエル側から、無人機攻撃したりできるようにする為、シリア軍とヒズボラ勢力や、アラウィー派の“祖国防衛委員会”民兵部隊、シーア派、キリスト教徒や、ドゥルーズ教徒をの位置を教えているという報道がある。

イスラエルは、ISILに対し、非常に楽観的で、イスラエル日刊紙ハーレツは、イスラエル当局は、日常的に、カメラと双眼鏡だけを持ったイスラエル人旅行者が、ゴラン高原を訪れ、クネイトラ渓谷を見下ろし、アル・ヌスラ/ISIL聖戦戦士達がシリア軍と戦うのを目撃するのを認めていると報じている。イスラエルは、イスラエル人が、渓谷での戦闘を見下ろす為の大型望遠鏡まで提供している。イスラエル人には、昼食、コーヒー、芝生用の椅子まで用意するむきもあり、丸一日、アラブ人が、他のアラブ人を殺すのを眺めてすごしている。

ドイツでは、ドイツ人のISILイスラム教志願兵、クレシニク・ベリシャは、ISILのメンバーであるかどで、公判中である。ベリシャは、ISILに参加する前は、ドイツ最大のユダヤ人サッカー・チーム、TuSマッカビ・フランクフルトでサッカーをしていた。

イスラエルが、聖戦戦士に関しては、現状に満足していることは、イスラエル政府とシリア聖戦戦士の間では、ゴラン戦線を越えて、イスラエルに紛争を持ち込まないという交渉がまとまっていることを示唆している。あるいはシリア人聖戦戦士達は、モサドやイスラエル国防軍の何らかの作戦統制の下にあり、イスラエルの標的は攻撃しないという厳格な命令下にあるのかも知れない。

イスラエルは、アル・ヌスラ/ISILゲリラの国境を越えたシリアへの潜入脱出の出入りを、負傷したシリア反政府派に医療援助を提供しているという主張で隠蔽している。こうした活動の一部は、最終的にアル・ヌスラ/ISILに攻撃されたフィリピンとフィジーの国連平和維持軍兵が証人だ。テロリストは、45人のフィジー人平和維持軍兵を人質にとり、カタールが膨大な身の代金を支払うまでは解放せず、ISILの既にかなり豊かな懐を潤すこととなった。別のシリア“穏健派”集団は、サウジアラビアとイスラエル両国から支援を受けている、バシャール・アル-ズービという名の人物が率いる“南部戦線”集団だという。

イラク、シリア、レバノン、そして、おそらく間もなく、ヨルダンや、エジプトのシナイ半島での仲間同士で争う戦いは、忠誠を誓う相手を変え、裕福な湾岸アラブ諸国や、イスラエルの右翼シオニストとサウド王家との益々緊密な関係は、泥沼化に向けたあらゆる要因となる。ネオコンのおかげで、アメリカ合州国は次の徹底的混乱に突入するわけだが、アメリカは、デラウェア州ドーヴァー空軍基地の葬儀部隊への着実な遺体袋の到着の最後を見届けてはいないのだ。

記事原文のurl:http://www.strategic-culture.org/news/2014/09/19/the-looming-american-quagmire-in-iraq-and-syria.html
----------
ウクライナの状況は、ポール・クレーグ・ロバーツ氏や、ミアシャイマー氏が、妥当だとする方向に向かいつつあるのかも知れない。

一方、中近東は、ハチャメチャ。宗主国の軍需産業は笑いが止まらないだろう。
この属国も、集団的先制侵略攻撃権を認めた後は、「デラウェア州ドーヴァー空軍基地の葬儀部隊」に匹敵する、砲弾の餌食収容施設を確立する必要があるのだろう。
最後の行き先は、靖国か、千鳥が淵かも知れないが、全体のルートも、あらかじめ、しっかり決めてあるのだろう。

沖縄選挙も、中近東ハチャメチャ状態に近づいてしまった。文句無しに後出し連中が悪い。

記事を訳しながら思いだしたのは、筒井康隆の大傑作『バブリング創世記』。

ドンドンはドンドコの父なり。
ドンドンの子ドンドコ、ドンドコドンを生み、ドンドコドン、ドコドンドンとドンタカタを生む。
ドンタカタ、ドカタンタンを生めり。
ドンタカタ、ドカタンタンを生みしのち四百六年生きながらえて多くの子を生めり。
ドカタンタン、ドカドカとドカシャバを生み、ドカシャバ、シャバドスを生み、シャバドス、シャバドビとシャバドビアを生む。
シャバドビア、シャバダを生み、シャバダ、シャバラとシュビラを生む。
シュビラ、シュビダを生み、シュビダ、シュビドゥバを生み、シャバダ、シャバラとシュビラを生む。

キリスト教会が運営する幼稚園にいったので、クリスマスか何かに聖書をもらった。幼稚園児ながら、貧乏人ゆえ、他に読むものがないので、聖書の初めの部分を読んで驚いた。

ドンドンはドンドコの父なり。

先を読む気力がすっかり萎え、以来、申し訳ないが、キリスト教と全くご縁がない。
カトリック東京カテドラルで、バッハの曲を聴いたことはある。
ごく稀に、ヨーロッパ旅行をする際は、余暇には必ず教会を訪問する。
宗教ではなく、建物と音楽にのみ関心があるので。(それをいうなら仏教も同じ。悲しいことに、お経のありがたさがわからない。)

筒井康隆の大傑作『バブリング創世記』を読んで、幼稚園時代の驚きを思いだした。

ドンドンはドンドコの父なり。

キリスト教信者の高校同級生に、「あなたは地獄におちる」といわれた。確かに、今は地獄に落ちているのかも知れないと、時々思う。

中東でアメリカやイスラエルが作り出す、様々なゴミ党派の違いを識別する気力皆無。

ドンドンはドンドコの父なり。

ついでに言えば、60年、70年代に、日本で盛んだった学生運動も、横で眺めていた無党派の人間にとって、

ドンドンはドンドコの父なり。

どの党派であれ、生み出した結果に、大差はなかっただろう。

彼等が本気で活動していたのであれば、そうした人々が実権を握った頃合いである今、もう少し、まともな世界になっていだろう。
逆に、ひどい世界になっているのは、学生運動諸派も、所詮、宗主国や傀儡属国政府の何らかの作戦統制の下にあって、

共感できる可能性がある反体制派への大衆の支持を無くすこと。反体制派が、大衆の中に‘根付く’能力を失わせること”

が、その本当の狙いだったのだろう、という当時の疑念、個人的に深まるばかり。

野党再編とかをうたう、くみあわせやら、名前や、言い分やらころころ変わる夜盗もある。

ドンドンはドンドコの父なり。

ところで、一種Clean Break作戦遂行状態にある。たいしたことはない。
戦争ではないので、血は流れることはない。

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コメント

東欧旅行者様

  再三にわたり,実体験に基づいた検証記事,大変有り難うございます。
  異なる地域の戦争博物館を最近訪れましたが,ただ眺めただけの自分が恥ずかしく,見るべき視点を教わったような気がします。
  なお小生,数字にはめっぽう弱いのですが,3000万ドルだったような気がします。むかし 1 billion を1億と教わった記憶があるのですが,10億だということも後で知りどちらが正しいのか迷ったことがありました。ただ所詮,縁のない数字ですので,そんな程度かなと認識しているだけです。要するに,これまた実体験がないのです。

  今回のMH17機の写真の中に,爆発物によるものでない穴が複数開いているものがあり,また,オランダ報告書にある”numerous”という言葉をヤフ-・ニュ-ズなど多くのマスコミが無視しているのが気になり,機銃砲(見たこともありませんが)による撃墜だろうと判断したのです。

  4年前になくなった父親は戦中ヨコスカで軍務についていましたが,生前よく「お前の考えは机上の空論」だとよくいわれたモノでした。実体験が伴わないまま推論する癖は今も直らないようです。
  
  また情報お願いします。

 

箒木様 30万ドルではなく3000ミリオンドルの間違いでありました.
 自分はマレーシア機の撃墜が既にポーランド領空飛行時に仕掛けられたと考えるに至っております.撃墜航路への乗り換え指示は,MH17機が既にポーランド領空にあったときに発せられているのです.以下に自分の考えを箇条書きにまとめてみました.主に露国当局の発表資料に基づいた考えであります. 蘭国当局発表の録音と飛行データの分析報告書からは,墜落前の13分ほどが空白だったという箇所のみが新たな発見であり,それ以外は報告書としての価値に乏しいものでありましょう.航空機コンドルのキャプテンは13分もの間の会話無しは考えられない,航空ラヂオからは操縦士の会話だけではなく,近傍を飛んでいる他の航空機からの無線が入るからだと指摘している.自分は19.5噸の漁船しか操縦したことがないのだが,この小型船舶の操舵でさえも絶えず不安がつきまとうものなのだ.特に目標の見えない夜間では,いかにレーダーが表示してくれようとも,自船の座標と進行方向の波浪の具合が気がかりなものだ.他の船も同様で,ほぼ二三分おきに呼びかけをし,呼びかけを受ける.あのKALサハリン沖事件だが,操縦室会話記録には彼らのあくびが多く記録されており,変事を思わせるものは墜落直前のものしかないとされている.しかしキャプテンの千氏はあくびをしながら機を急減速させているのだ.追尾してくるソ連防空軍の迎撃機をやりすごし,その機関砲と空対空ミサイルの発射をさせないためである.実際稚内の自衛隊が傍受した迎撃機の機長オーシポビッチは「(驚きの調子で)目標は減速した,当機はその前方に飛び出てしまった,ヨルキパルキ(しまった)」と叫んでいる.
 MH17機も5時21分28秒の時点から毎時200キロという失速速度の近くにまで機を急減速させ,同時に高度を下げ左へ急旋回し,キエフ軍支配地域上空へと逆送しはじめているのだ.露側発表のレーダー記録には,この急旋回の航跡とMH17機を追い越して40秒直進し,逆送するMH17機に追いすがるように左旋回し,MH17機がレーダーから消える時点には追いついたことを示す航跡も記録されている.レーダースクリーンの輝点が消えたのは5時23分である.あの蘭報告書には,消失時点から13分遡った5時10分より会話がなかったとするのである.5時10分には同機は懲罰軍支配地域の上空だった.独立国側は戦闘機をもたないのに,懲罰軍にはBUKをこの辺りに配置させ,目標捕捉レーダーは当時電波を盛んに放射していた.
 露軍当局は5時20分にMH17機から4キロの位置にSu-25機が現れたとしている.高空仕様のSu-29であったかもしれない.しかし低空仕様のSu-25でも短時間ならば一万メートルでの戦闘は可能であるとも書いている.5時21分28秒から5時22分30秒の間に,MH17機の右モーターが被弾したと推定される.露軍の発表には,二機の戦闘機がいたとするが,一機が追い越し,もう一機がMH17機に追尾したのか,露軍当局は触れていない(自分の見落としかも知れないが).KAL機撃墜のときもミサイルを発射した機とは別に,攻撃を観測し遂次地上へ報告する任務の迎撃機があった.この場合も,攻撃実行機とは任務が別の戦闘機があったことだろう.彼はMH17機の被弾の様子,墜落するか不時着するかを時々刻々と地上へと送信していたのだろう.
 BUKの弾頭には炸薬70キログラムが充填されており,近接起爆装置が作動してから火薬が着火し音速で燃焼が進み,最終的に超音速の轟爆を起こすまではわずかながら時間がかかる.信管作動時から爆発までに,ミサイルはMH17機の上部前方へと抜け出ている.轟爆は超音速の榴散弾を航空機の上部から浴びせかけ,瞬間的に機体を炎上させるはずだ.露軍当局者で機体の破壊はBUKによるものだとする意見を述べたものもいたが,墜落機体に火災痕跡のないこと,地上から目標まで見えるはずの噴煙が見えなかったから,地対空BUKではなく空対空ミサイルR60によるものだとし,操縦室の破壊は対戦車機関砲弾がコックピット内部で爆発し,与圧のかかった機体を耐久制限を越えて内部から圧し開き,ついには空中分解せしめたと考えを改めている.
 義勇軍がBUKを発射したとするには無理がある.彼らが支配下においていた地域は40-50マイルに過ぎず,この”領空”を時速933キロで飛行するMH機は,BUKの目標捕捉者に対してわずか70秒間しか姿を見せないからだ.この70秒にしても22秒が差し引かれるねばならない.BUKシステムのセットアップには5分を要し,目標に反応するには更に22秒を必要とするからである.つまり48秒しか余裕はないのだ.それもキエフ軍支配地域上空にあるときに,なんらかの手段で五分間システムを起動していなければならない.敵同士どうして攻撃の連携ができよう.
 自分はよく戦跡博物館を訪ね,飛行機戦車装甲車などの破壊の有様を調べたことがある.対戦車ライフルだとか砲だとかによる破壊痕であるが,どれも分厚い鋳鉄を綺麗な円孔にして貫通しているのである.弾丸が物理的に金属を圧し開いたのではなく,弾頭内部の火薬が燃焼し,その超高温で装甲の鉄を溶かしたのだ.円孔の縁が熔けているのがよくわかる.MH17機の操縦席窓にできた円孔でも,その縁は熔けている.迎撃機搭載の30mm機関砲弾が命中した痕跡だと思う.
 ではこの高速の溶融金属片や徹甲弾があたった人体はどうなったのか.足先に当たっても,腕に当たっても,衝撃波が血管系を伝わり,瞬時に心臓破裂を惹き起こすのだという.
 ウクライナ地上管制はMH17機に高度の上げと下げの変更を指示しているが,上昇は6000メートル付近に伸びていた雲の上に誘導し,地上からの監視を遮るためであり,下降は迎撃戦闘機の戦闘可能高度に誘導するためのものであった.操縦士たちは墜落の13分前に既に軍用機に狙われていることを察知し,地上管制や本社と連絡をとろうとしたはずだ.これ以降の操縦士の戦闘行為が空白の13分間に記録されていたと思われる.

 
  2,3日の間をおいてマハティ-ル博士(元マレ-シア首相)のブログが更新されている。その記事を現地新聞が,真面目に,丹念に,追いかけている。まだ博士の人気が衰えない証拠であるが,いくらか売らん哉の趣きを感じる。
  しかしどういう訳か,何の因果か,彼の発言記事をできるだけ読むようになった。元を質せば,人生の同行者の帰国日とMH370機の失踪日がほんの3,4日しか違わなかったことにある(どちらもKUL発)。しかしそれだけではない。7月のMH17機撃墜ニュ-ズが彼女をして飛行機に乗ることを躊躇わせたからでもある。
  搭乗はしないから専ら,どこに消えたのか,誰が撃墜したのかが小生の関心事になってはや六ヶ月。その中でマハティ-ル元首相の発言が気になりだした。今日もインサイダ-紙は元首相が長年反米であり,TPP合意に反対であることを記事にしている。

  ところで,最近のコメント(『ウクライナの危機』)で「露語の情報サイトにMH17撃墜に関する情報提供者に三十万ドルもの報奨金が与えるられる」という情報が紹介されている。これは日本語ラジオ放送の『ロシアの声』であると思われる。しかしこの紹介者は,小生にMH17機について何か書けと暗示されているように思われてならない。

  そこで『ロシアの声』に投稿してみた。それはSaya Jepunで始まる(恥ずかしいのですが,もしよかったらご覧下さい(文中訂正:poor→poverty))。一攫千金=30万ドル。皆さんにおわけしたいと考えているが,獲得したら,皆さんにお分けするかどうかは,金の亡者に成り下がって半生を終えた身共。どうするか分からないが,プ-チン大統領機撃墜説や,親露派誤射説とはかなり異なる説,つまり,失踪MH370機と撃墜MH17機との関連説(IWJ岩上インタヴュ-による板垣雄三東大名誉教授のUmmah説)をマハティ-ル博士発言との関連で論じた拙い文章である。

  政治学の学位論文からほど遠いが,もし「独自性」があるとすれば,MH両機原因とマハティ-ル博士論文を組み合わせて,ウクライナ・キエフ軍がMH17機を撃墜したという根拠を示した,ことにあると思う。字数制限はなかったが,ブッシュ元大統領やブレア元首相を有罪にした英国の裁判所の件は論じなかった(裏をとっていないので)。
  他方,ドイツの外務副大臣が署名入りで「MH17機を撃墜したのはウクライナ空軍機である」ことを発表している(『ロシアの声』)。ならば,EUやメルケルが対ロ制裁をする必要はないと考えるが,ロシアとシリアは許せない相手なのであろう。

  ポロシェンコ大統領がMH17機ドイツ人遺族によって欧州人権裁判所に訴えられた。3.11の日本の首相もフクシマ核分裂発電所爆発事故の件で訴えられた。やはり末は大臣にはならない方が平穏な人生が送れると,臆病な小生は考えている。また,とらぬ狸の皮算用という言葉があるが,悪銭身につかずで,平穏な人生を送るには30万ドルでなく,30万ル-ブルで十分であろう。願わくは,拙文がデマ屋(Rumor Monger)の文章でないことを。

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