ワシントンの隠された思惑
Paul Craig Roberts
2014年9月28日
いくらアメリカ国民でも、国民を騙し、隠された思惑を支持させる為に、ワシントンが絶えず鳴らしている贋警報に、そろそろ気がついてもよい頃合いではないかと思うのだが。
国民は、アフガニスタンのタリバンは、アルカイダと組んでいるテロリストだというウソに騙された。アメリカ国民は、13年間戦争をし続け、ディック・チェイニーの会社ハリバートンや他の私益を肥やし、別のワシントンの失敗に終わっただけだ。
国民は、サダム・フセインのイラクは“大量破壊兵器”を保有しており、それはアメリカに対する脅威であり、もしアメリカがイラクを侵略しないと“アメリカの都市にキノコ雲があがる”危険があるというウソに騙された。ISISが登場したので、この長い戦争は、終わったどころではなくなっている。イギリスとフランスが、旧オスマン帝国の領土を横奪した第一次世界大戦後、イギリスとフランスが作り出したいんちきな中東国境を書き直している連中と、ワシントンが戦う中、更に何十億ドルもの利益が、アメリカ軍安保複合体の金庫に注ぎ込まれることになる。
国民は、リビアのカダフィに関するウソに騙された。かつて安定し、繁栄していた国家が、いまや混沌状態だ。
国民は、イランは核兵器を保有している、あるいは作っているというウソに騙された。欧米に経済制裁され、罵られて、イランは東方志向に変わり、主要産油国は欧米の影響力圏から消えた。
国民は、シリアのアサドが“自国民に対して化学兵器を”使ったというウソに騙された。ワシントンが、アサドを打倒する為に派遣した聖戦戦士は、ワシントンのプロパガンダによれば、アメリカへの脅威と化してしまった。
世界に対する最大の脅威は、ワシントンが覇権に固執していることだ。ほんの一握りのネオコンのイデオロギーが、この執念の基盤だ。ほんの一握りのアメリカ・ネオコン反社会的精神病質者連中の主張が、様々な国々の運命を決定する状況に、我々は直面している。
多くの人々が依然ワシントンのウソを信じてはいるが、世界は益々ワシントンを世界の平和と命にとって最大の脅威と見るようになっている。アメリカは“例外的で必要欠く辺からざるもの”だという主張は、他国々に命令をするワシントンの権利を正当化するのに使われている。
ワシントンの爆撃による死傷者は、相変わらず一般市民で、そうした死が、更にISISの補充兵を生み出すことになる。既に、イラクに“地上部隊”を再派兵しようと、ワシントンに呼びかける声もある。そうしないと、欧米文明は破滅iの運命となり、我々の首が掻き切られるのだ。新たに生み出された“ロシアの脅威”というプロパガンダで、NATOにもっと軍事支出をし、ロシア国境にもっと軍事基地を作れと要求している。バルト諸国、ポーランドや、ヨーロッパへのロシア侵略というありもしない脅威に反撃する為、“即応軍”が生み出されつつある。
通常、アメリカ国民がウソとプロパガンダで欺かれていたことに気がつくのに、一年か二年か、三年か四年かかるが、その頃には、国民は新たなウソとプロパガンダ一式をうのみにして、最新の“脅威”を皆で心配しているのだ。アメリカ国民は、1度目も、2度目も、3度目も、4度目も、5度目も、脅威は偽物だったように、6番目の脅威も、7度目も、8度目も、9度目も、偽物だろうということを、理解ができないように見える。
しかもウラジーミル・プーチンが率直に述べている通り、他の国々に対する、こうしたアメリカの軍事攻撃は、一つとして良い結果をもたらしたことは無い。ところが、国民とその議会代表連中は、欺瞞と失敗の実績にもかかわらず、毎度の新たな軍事行動を支持し続けている。
おそらく、もしアメリカ国民が、夢想的な作り話の代わりに、自国の本当の歴史を教えられたら、国民は、政府プロパガンダに、これほどだまされにく、動かされにくくなるだろ。私は以前、オリバー・ストーンとピーター・カズニックの『オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史』と、ハワード・ジンの『民衆のアメリカ史』をお勧めしたので、ここでは、スティーブン・キンザーの『The Brothers』をお勧めしたい。これはジョン・フォスターとアレン・ダレスの、国務省とCIAに対する長期支配と、二人が打倒に成功したことが多かった、改良主義者政府の悪魔化についての話だ。キンザーが書いた、6つの政権を打倒するダレス兄弟の策謀物語は、現在ワシントンがどのようにして、動いているのかを理解する手掛かりになる。
1953年、ダレス兄弟は、イランの選挙で選ばれた指導者モサデクを打倒し、シャーを押しつけ、アメリカ-イラン関係を今日に至るまで損なってしまった。 ダレス兄弟が1953年に両国関係を損なったおかげで、アメリカ国民は、またもや、イランとの、コストのかかる、意味のない戦争に引き釣りこまれかねない。
アルベンスの土地改革が、ダレス兄弟のサリヴァン&クロムウェル法律事務所の客、ユナイテッド・フルーツ社の利益を脅かした為、ダレス兄弟は、グアテマラで人気のあったアルベンス大統領を打倒したのだ。兄弟は、アルベンスを、欧米文明を脅かす危険な共産主義者として描き出す驚くべき偽情報キャンペーンを始めた。兄弟は、アルベンスに対し、ニカラグアのソモサや、キューバのバチスタの様な独裁者連中を動員した。CIAは空爆や侵略軍を仕組んだ。グアテマラ国民の間でのアルベンスへの強い支持を粉砕するまでは、何もおこせなかった。兄弟は、スペルマン枢機卿を通して工作し、枢機卿はロセル・イ・アレジャーノ大司教を仲間に引き入れた。“司教教書は、1954年4月9日、グアテマラの全ての教会で読み上げられた。”
プロパガンダの大傑作、司教教書は、アルベンスを、全てのグアテマラ国民の敵である危険な共産主義者だと事実を歪曲して表現した。ニセのラジオ放送が、自由の戦士の勝利と、兵士達の離脱というエセ現実を報じた。アルベンスは、国連に実情調査員の派遣を要請したが、ワシントンが妨害して、派遣を実現させなかった。アメリカのジャーナリスト達は、ジェームズ・レストンを除き、ウソを支持した。ワシントンに脅され、買収された、グアテマラ軍幹部達が、アルベンスに辞任を強いた。CIAが選び、たっぷり金をはずんだ“解放者”カスティージョ・アルマス大佐が、アルベンス後継者として据えられた。
我々は最近ウクライナで、よく似た工作を目にした。
アイゼンハワー大統領は、“わが半球における共産主義者の拠点”を防いでくれたことで、CIAに謝意を表し、ジョン・フォスター・ダレス国務長官は全国向けTVとラジオ演説を行い、グアテマラでの出来事は“クレムリンの悪辣な狙いを暴露した”と宣言した。グアテマラで活動していた唯一の外国勢力は、ダレス兄弟だけだったという明々白々な事実にもかかわらず。
実際に起きたのは、土地国有化の際、ユナイテッド・フルーツ社に対し、同社の休閑地に、同社が納税申告書に記載していた金額の補償しかしなかった為、民主的で改良主義政府を打倒したのだ。アメリカの主要法律事務所、というより正確には、アメリカ外交政策決定者のサリヴァン&クロムウェル法律事務所の顧客の利益より優位に立つような、民主的政府を許す意図は皆無だった。特に法律事務所の幹部がアメリカの公然と秘密の両外交政策を支配している限り。家族がユナイテッド・フルーツ社に投資をしていた二人の兄弟は、単にCIA、国務省と、アメリカ・マスコミの資源を、自らの私益を守るために投入したのだ。アメリカ国民の途方もないだまされ易さ、腐敗したアメリカ・マスコミ、そして洗脳されて無気力な議会が、ダレス兄弟が民主主義打倒に成功するのを許してしまったのだ。
この私益の為のアメリカ政府利用が、腐敗したクリントンや、ジョージ・W・ブッシュやオバマ政権の遥か以前、60年前に起きていたことにご留意願いたい。もっと前にも起きていただろうことは疑いようもない。
ダレス兄弟の次ぎの犠牲者は、ホー・チ・ミンだった。民族主義指導者のホーは、アメリカに、フランスの植民地支配から、ベトナムを解放するのを支援してくれるように頼んだ。ところが、独善的な反共主義者のジョン・フォスター・ダレスは、ホーに、欧米の素朴な人々をドミノ理論で脅す、共産主義の脅威という見当違いな役をふりつけた。民族主義と反植民地主義は、共産主義者の破壊の隠れ蓑に過ぎないとフォスターは宣言した。
国務省ベトナム担当者ポール・カッテンバーグは、戦争の代わりに、アメリカは、戦争とフランスの失政から、国家を再建する為の再建援助として、ホーに5億ドル与えるべきで、それでホーをロシアや中国の支援から独立させられ、それゆえ影響を与えることができたろうと示唆していた。ホーは何度かワシントンに懇願したが、ダレス兄弟の悪魔のような頑固さが、いかなるまともな対応も許さなかった。その代わり、ダレス兄弟が盛り上げた“共産主義者の脅威”を巡るヒステリーのおかげで、アメリカ合州国は、長年の、金のかかる、ベトナム戦争として知られている失敗に引きずりこまれた。カッテンバーグは、後にこう書いている。“分別のない偏見ゆえに、分析能力を除去する為に、自分の目と耳を切り取り、自らを真実から切り離すことは”アメリカにとって自殺行為だ。アメリカ国民と世界にとって、不幸なことに、去勢された分析能力こそがワシントンの一番の強みだ。
ダレス兄弟の次の標的は、インドネシアのスカルノ大統領、コンゴのパトリス・ルムンバ首相と、フィデル・カストロだった。対カストロ策謀が実に悲惨な失敗となった為、アレン・ダレスは職を失った。ケネディ大統領は、CIAの信頼を無くして、弟のボビーに、再選の後で、CIAを粉々にしてやるつもりだと語っていた。ケネディ大統領がアレン・ダレスを排除した時に、CIAは脅威を理解して、先制攻撃したのだった。
私の博士号の審査委員長で、後に国際安全保障問題担当国防次官補となった、ウォレン・ナッターは、アメリカ政府が、国民の信頼を維持する為には、民主主義では、それが必要なのだが、政府の政策は、アメリカ国民の信念の肯定でなければならず、率直に、国民に知らされるべきだと、学生に教えていた。ダレス兄弟や、クリントン、ブッシュやオバマ政権が持っている様な、秘密の思惑は、秘密性と、ごまかしに頼らざるを得ず、それゆえ、国民の不信感を引き起こすのだ。もしアメリカ国民が余りに洗脳されていて、気がつかなくとも、多くの外国の国民たちはそうではない。
アメリカ政府の秘密の思惑は、アメリカ国民と世界中の多くの人々に膨大な被害をもたらしている。基本的に、フォスター兄弟は、連中の秘密の思惑と、反共産主義ヒステリーで、冷戦を生み出したのだ。秘密の思惑のおかげで、アメリカ国民は、ベトナムと中東での、長く、金のかかる不要な戦争に取り組まされている。キューバの政権転覆を狙う、CIAと軍の秘密の思惑は、ジョン・F・ケネディ大統領に阻止され、様々な欠点はあるにせよ、ロナルド・レーガンが好機を捉える二十年前に、冷戦を終わらせていた可能性があった大統領の暗殺という結果になった。
秘密の思惑が、余りに長期間、実施され続けた為、アメリカ国民自身が、もはやすっかり腐敗している。ことわざでは“魚は頭から腐る”というが、ワシントンの腐敗は、もはや国中に蔓延している。
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Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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この翻訳記事で紹介されている、ハワード・ジンの本はもちろん素晴らしいが、とりあえず、当ブログの下記翻訳をお読みいただければ幸いだ。講演録だが、かなり長いので、ご注意を。
宗主国の秘密の思惑が、余りに長期間、実施され続けた為、属国国民自身が、もはやすっかり腐敗している。ことわざでは“魚は頭から腐る”というが、霞が関の腐敗は、もはや国中に蔓延している。
宗主国・属国双方の大本営広報部をかねる機関、神戸事件、デング熱、御嶽山や大相撲は十分詳しすぎるほど報道してくださるが、こうした視点、絶対に報じてくださらない。
秘密法案、TPP、原発再稼働、集団的先制侵略攻撃権見直し、アホノミクス。大本営広報部にとっては地方破壊法案よりもデング熱が大問題。
たまに、一強体制をどうするやら、夜盗再編やらという記事はあっても、小選挙区制と政党補助金制度導入を推進したお詫びをした大本営広報部、一社もない不思議。
秘密の思惑のおかげで、属国民は、東欧や中東や、アジアや中南米での、長く金のかかる不要な戦争に取り組まされ始めているのに。
慰安婦問題報道虚報が問題であるのなら、現在、大変な事態をもたらしている、小選挙区制と政党補助金制度導入を推進した大本営広報部各社の罪、限りなく重いだろう。袋叩きにしている側も、されている側も、必死に推進していたのだ。
この国で、山が動いたかどうかは知らないが、広島の山麓の新開住宅地の様に、庶民の生活基盤は崩壊し、押し流され、上から灰と石と放射能が降っているのは確か。
ほんの一握りの属国ネオコン反社会的精神病質者連中の主張が、我が国のみならず、様々な国々の運命を決定する状況に、我々は直面している。
想像した通り、大本営広報部、大政翼賛界は、議長調停案なるもので、小選挙区制を後押しした人物を誉め上げている。そもそも、彼女が「小選挙区制を後押しした」という文言すら、一生懸命探さないと、見つからない。
小選挙区制と政党補助金制度、TPP同様、大本営広報部での禁忌用語なのに違いない。そもそも触れてはいけないのだ。触れる場合には、素晴らしいものとして描写し、虚報を提供しなければないない。
一面のコラムにこうあった。
それでもやはり、あの二つの結果がなかったらと想像する。永久与党といわれた自民党も巻き込んだ政党再編は起こったか、と
日本の政治も変わりうるのだということを土井さんは身をもって示したのだから。その奮闘が後の世代に手渡したものはとても大きい。訴え続けた護憲が押されている。
立場によって、見方は当然異なる。小選挙区制と政党補助金制度を必死になって推進し、今も全く反省しない大本営広報部と、貧しい中高年メタボ、立場が違い、意見は当然違う。当時、明確に小選挙区制反対の声を上げていたのは石川眞澄氏ただ一人だったと記憶している。
小選挙区制と、政党補助金制度がなかったらと想像する。永久与党といわれた自民党も巻き込んだ政党再編が起き、結局、もとのもくあみ、自民一強の末期状態になることはなかったのではないか?テレビ討論会で、エセ夜盗がずらり並び、反対派の声を封じることもなかったのではないだろうか?
日本の政治も悪い方向になら変わりうるのだということを彼女は身をもって示したのだ。その失敗が後の世代に残した負の遺産は実に大きい。訴え続けた護憲は、自民党・公明党・民主党、その他諸々のエセ野党によって、完全に押しつぶされつつある。
議員の数を減らせやら、一院にしてしまえ、という声が大きくなっているように感じている。これも、大本営広報や、属国支配層による小選挙区制推進の延長。庶民に良いことは一つもない。石川眞澄氏の本で入手しやすく、読みでがあるのは、残念ながら一冊しかないようだ。新書新版は読む気力が起きず、購入もしていない。
このブログでも、二大政党制度のインチキさに触れる記事は多々ある。ご興味があれば下記カテゴリーの記事をどうぞ。
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