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2014年8月23日 (土)

ガス・ヴァン・サントの『プロミスト・ランド』: 悪魔との取引?

Phillip GuelpaとJulien Kiemle

2013年1月25日

wsws.org

ガス・ヴァン・サント監督、デイヴ・エッガース、マット・デイモンと、ジョン・クラシンスキー脚本


『プロミスト・ランド』

ガス・ヴァン・サント監督、マット・デイモンが脚本にも参加し、主演する『プロミスト・ランド』は、架空のエネルギー会社とペンシルベニア州の小さな町の住民達との間の“フラッキング”を自分達のコミュニティーで認めるか否かを巡る対立を描いている。

何十年も衰退している多くの農村地域を含め、アメリカの様々な場所で暮らす人々は、近年、大量水圧破砕、略して“フラッキング”として知られている手法を用いて天然ガスと石油を採掘しようとしているエネルギー企業から攻撃されている。

様々な技術を組み合わせると、これまでは、事実上、通常の技術では入手できなかった岩盤層から、膨大な量の天然ガスが採掘できる。この手法は、環境と健康に対して深刻な影響を与え、長期的な経済利益も、おおむね現実的ではない。

掘削用の土地を手に入れる為、エネルギー企業は、小規模農家の絶望的な状態につけこむ組織的キャンペーンをしかけ、関連する人々は、破産の際まで、あるいはそれ以上にまで追いやられる。『プロミスト・ランド』の脚本は、デイモンと、テレビシリーズ『The Office』の主役の一人ジョン・クラシンスキーによる共著。二人は主人公も演じている。映画には、デイモンの相棒として、フランシス・マクドーマンドも出演。ヴァン・サント(『ドラッグストア・カウボーイ』、『マイ・プライベート・アイダホ』、『誘う女』、『エレファント)は、かつてデイモンの映画『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』を監督した(これもデイモンが脚本を共著)。

グローバル・クロスパワー・ソリューションズ社のやり手の現場代表、スティーブ・バトラー(デイモン)は、相棒のスー・トマソン(マクドーマンド)と共に、ペンシルベニア州の町に、二人がこれまで何度も経験してきた業務である、現地住民から、ガス掘削借地契約を得るべく派遣される。スティーブは農場で育ったので、自分の“田舎風”資質を活用して、住民達と信頼関係を築きあげる。生まれ故郷の町にあったキャタピラ工場が閉鎖し、コミュニティーが荒廃したままになった、子供時代に自分が直接体験した環境から、抜け出す方法を住民達に提供しているのだと彼は考えている。

始めはあらゆることが計画通り進む。バトラーとトマソンと会った人々はまず自宅が天然ガスの豊富な埋蔵地の上にある運のよい人々の話を聞かされる。“大金持ちになれるかも知れませんよ”は、バトラーは、自分達の不動産を安い価格で譲り渡そうとしたがる人々に語り、将来利益の一定比率の支払いを約束する。

スティーブは、こうした契約をまとめるのが非常にうまいので、グローバル社の幹部職に昇進したばかりだ。自分の行為の正しさに対する確信は、その商売道具たる不誠実さ、強制と現地当局者の賄賂によっても、揺るがないものに見える。ところが彼は、町議会議長の協力を30,000ドルで買収していたのに、町民大会で本格的な反対に出会って不意を突かれる。

年老いた科学教師フランク・イェーツ(ハル・ホルブルック)が反対運動を率いている。退職したボーイング社技術者であることが判明する人物は、入念な下調べをしており、フラッキングの悪影響を熟知している。集会に出席していた人々の多くは彼と同じ意見だ。こうしたキャンペーンのベテラン、スティーブは、精緻な反対にでくわし、やや思いがけなく、唖然としたままとなる。

イェーツにせきたてられ、町は、住民が企業のセールスマンによって、判断を押し付けられることなく、この問題に関して十分に学べる様、この問題にかかわる投票を数週間延期することに決定する。

それから間もなく、環境保護論者のダスティン・ノーブル(ジョン・クラシンスキー)が町にやってくる。彼はフラッキングの結果に関する恐ろしい話をして、グローバル社に反対する現地の意見をあおりたてる。益々多くの住民達が、エネルギー会社の計画に憤り始め、バトラーの田舎風の魅力が失せるにつれ、仕事は突如遥かに困難なものと化する。

思わぬ展開があるだろうことは、いったいどのような展開かはわからないながらも、確実に観客にも感じられる。そのような予期せぬ展開は、かなり信じがたいが、より大きな問題は、容易に予想可能なバトラーの反応だ。

いずれにせよ、『プロミスト・ランド』 紛れもなく強みがある。デイモンとクラシンスキーは、注目に値する知性と感性で脚本を書き、演じている。映画は、最近のハリウッド作品で予想しがちな形の陳腐さやきまり文句で、歓心を引こうとはしていない。

映画製作者は明らかに、町の住民達の素朴な生き方に親近感を持っており、それが映画全体のアプローチに現れている。このおかげで彼等はペンシルベニア州の住民達の、味のある、現実的な描写を試みている。州民は野暮な田舎者ではなく、彼等は本当に分裂しており、観客も議論の両側の意見を理解するためのそれなりの基盤を持っている。

映画の中で、時々、差し迫った現実が示唆される。バーでの対決場面で、スティーブが、何人かの現地農民に、どのような運命になろうとも、“ふざけんじゃねー”と言える十分な謝礼を申し出ていると語る。スティーブは顔を殴られる。農民達は、スティーブが自分達の生き方は売り物だと考えていることで侮辱されたと感じ、農家出身のスティーブは、自分の伝統を裏切っていると考えるのだ。

映画を見た後、町の最終判断が何であれ、フラッキングで起こり得る結果は、徹底的かつ、民主的な形で討論されるべきほど、非常に深刻なものだという印象が残る。

とはいえ『プロミスト・ランド』には大きな弱点がある。映画は、表向き、エネルギー会社が差し出すあぶく銭の見込みと、水圧破砕によって引き起こされる潜在的損害との対立に関するものだ。とはいえ、現地住民の経済的苦境や健康や環境に対するフラッキングの危険さの表現は、余りに浅薄だ。恐らく、デイモンとクラシンスキーが、観客達は既にこの問題を良く知っているだろうと考えたのだ。さとしたり、教訓を与えたりすることを避けようとして、わずかに基本的論点を暗示するだけで終わっている。

結果的に、作品は、主として抽象的に扱われている強欲と、牧歌的な生き方との対立だという印象を残すことになる。とはいえ、映画自身の暗黙の承認から、牧歌的な生き方は、アグリビジネスと、丁度フラッキング・ブームが軌道に乗り始めたところに見舞った現在の経済危機の影響に押しつぶされて、消える運命にあるのだ。

映画製作者に、決定的瞬間の町の住民を、否定的な形で戯画化しないようにさせた同じ衝撃が、『プロミスト・ランド』の結論で、逆の結果をもたらしている。強欲に抵抗し、巨大エネルギー会社を追い払う人々の理想化だ。

人は威圧的な論争は求めないだろうが、感情的にも知的にも更に満足のゆく映画にはそのような農村社会が直面する本当のジレンマにもっと深く関わることが必要だろう。

多くの貴重な時間が、ハリウッド必須のラブ・ストーリー、つまりスティーブと環境保護主義運動家との間の、現地女性を巡る張り合いに費やされている。最終的には、これは映画の衝撃を弱める以外、何の効果も生んでいない。

究極的に、自分がしていることの道徳性に益々良心の呵責を感じるようになり、雇い主の破廉恥な策略に追い詰められ、おかしくなったスティーブの個人的啓示を見せられて終わる。『プロミスト・ランド』は、複雑な問題を提示しながら、十分にやり遂げられてはいない。アメリカ中の多くの農村社会が直面している、実際の経済的・環境的危機に関する、善意ではあるが、かなり浅薄な表現だ。そのような社会が末期的衰退状況にあることをしっかり主張したのに、そうした批判の重みに耐えるには、映画の結末は余りに偏狭で限られている。

記事原文のurl:http://www.wsws.org/en/articles/2013/01/25/prom-j25.html

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フラッキングは幻想、酷い公害が出るという記事、いくつか翻訳したことがある。映画までできるとは。シェール・ガスや石油の公害は何万年も残るまい。核は違う。

岩波新書『日米〈核〉同盟 原爆、核の傘、福島』太田昌克著

帯・腰巻きの裏側をコピーさせて頂こう。

「平和利用」と「軍事利用」の両にらみで構築された米国の原子力レジームにどっぷりと漬かってきた日本で発生した巨大原発事故は、そんな「核の同盟」がもたらした一つの帰結と呼べるのかもしれない。また、冷戦終結から二〇年を経た後の民主党政権による核密約の実態調査と事実認定は、米国の冷戦戦略を前提とした「核の同盟」の軍事的側面に必然的な変化を迫る、もう一つの帰結だったのだろう。
(本文より)=20ページ

事故後すぐCMRTを出動させ放射能測定を開始した宗主国。情報を下さっても、それを全く生かせる体制にない属国機構。

広島、長崎、ビキニ、フクシマ、それでも懲りない支配層。国民は懲りないのだろうか?

強欲に抵抗し、巨大エネルギー会社を追い払う人々、この国では不思議なことに少数派のようだ。

戦争中の大本営、今の大本営、異常な支配の本質、変わってはいないだろう。国民も?

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