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2014年8月 5日 (火)

定義変更で消し去る失敗経済政策

定義し直しこそ、アメリカの最も強力な生産要素

Paul Craig Roberts
2014年8月4日

2014年第二四半期、本当のGDP成長は、4%になるだろうという、先週の政府推測による見積もりは、ひたすら馬鹿げている。経済を、第一四半期の低下から、第二四半期での4%成長に上げそうな、実際の世帯平均所得、あるいは実際の消費者信用の増加という証拠は存在していない。中流階級向け店舗の閉鎖(シアーズ、メーシーズ、J.C. ペニー)は、より低所得の人々が使う、1ドル・ショップへと広がった。何百もの店舗を閉鎖する過程にあるチェーン店ファミリー・ダラーは、三つの1ドル・ショップ・チェーンのうち、困難な状況になっていない唯一の会社ダラー・ツリーによって買収されようとしている。ウォルマートの売り上げも、過去5四半期低下している。売り上げの低下と小売店閉店は、消費者の購買力が縮小していることを示している。小売りの現実は、第二四半期、4%のGDP成長率という主張を裏付けてはおらず、7月、小売業での26,700の新規雇用を主張する、先週金曜の就業者数統計を裏付けてもいない。

住宅市場はどうだろう? 先週金曜日の就業者数統計について書かれた“雇用は安定した増加で落ち着く”という類の見出しは、より多くの人々が働いていて、住宅産業復活のおかげで、経済への追い風になっていることを意味しているのではあるまいか? そんなことはない。経済マスコミは、アメリカが構造的な雇用不況にあることを報じない。2013年7月から、2014年7月の12ヶ月間に、230万人の労働年齢のアメリカ人が増えた。この230万人のうち、わずか330,000人が労働力となった。これに対する私の解釈は、求人市場が余りに低迷していて、こうした労働年齢増加分のうちわずか14%しか労働力に入れないのだ。

就労率の低下は住宅市場にとって悪いニュースだ。アメリカ就労率は、2000年に、67.3%でピークとなり、以来、ずっと下落傾向のままだ。下降の率は、2008年10月、銀行の救済措置と量的緩和と共に増加した。2008年10月から今日まで、1320万人のアメリカ人が、労働年齢人口に加わったが、わずか818,000人、6%しか労働力にならなかった。http://investmentresearchdynamics.com/americas-structural-job-depression-is-here-to-stay/ 政府や経済マスコミの主張にもかかわらず、連邦準備金制度理事会の、国債購入の為の長年のドル印刷政策は、住宅市場も、労働市場も回復させることはなかった。

株式市場はどうだろう? 株は、ここ数日下落しているが、それでも歴史的には依然として高値だ。株式市場は、良い経済の証拠ではないだろうか? もし企業が、自らの株を買い戻しているがゆえに、株が高いのであれば、そうではない。現在、企業が株の最大購入者だ。最近、2006年から2013年までに、企業が、4.14兆ドルもの公的に取引されている株式の買い戻しを認めていたことを我々は知った。しかも、どうやら、企業は、自分達の株を買い戻すための金を銀行から借りているように見える。昨年、株の買い戻しが、7億5480万ドルあり、企業の借金が、7億8250万ドルあった。今年の最初の三ヶ月で、企業は1600億ドルもの自らの株を買い戻した。http://wallstreetonparade.com/2014/07/another-wall-street-inside-job-stock-buybacks-carried-out-in-dark-pools/

株の買い戻しの為に借金すれば、企業には借金が残るが、借金の利息を支払う為の収入を生み出す新規投資はないのだ。膨大な株の買い戻しは、アメリカ資本主義が、もはや腐敗していることを実証している。ボーナス、ストック・オプションや、キャピタル・ゲインで流れ込む個人的な短期的金銭的な利益を最大化する為、CEO、重役会や株主は、株式会社から資本を引き揚げ、借金を押し込んでいる。

製造業のアメリカ回帰によって、経済は助けられているのではあるまいか? どうやら、そうではなさそうだ。1999-2012年のデータは、製造業の海外移転が、9%増えたことを示している。

ある経済専門家、小売業界指導者協会エコノミストのスーザン・ヘスターは、製造業雇用の喪失を美点に変えることに決めた。彼女の主張は、小売業の雇用にくらべれば、製造業の雇用などちっぽけなものであり、輸出できるようにすべく製造業を奨励するより、より多くの輸入品を販売することで、より多くのアメリカ雇用が生み出せるというものだ。

ヘスター女史の研究によれば、アメリカは、製造業よりも、小売業から、より多く稼ぐことが可能なのだ。海外労働力によって製品に付加される価値は、“海外生産管理、通関手続き、在庫・流通管理、衣類のマーケティングや、棚に品物を揃え、キャッシュ・レジスターで作業する小売り部門の何百万人もの人々人々によって付加される価値の、ごくわずかにすぎない”と彼女は結論づけている

言い換えれば、海外移転されたアメリカ製造業雇用は、使い捨て商品と同様なのだ。輸入品を販売することで、収益を生み出せるというのだ。

ヘスター女史は、海外移転で生産された商品が、アメリカで販売すべく持ち込まれると、輸入となり、膨大なアメリカの貿易赤字を生み出すことを認識しそこねている。外国人は、アメリカ企業に為に彼らが製造した製品に対して支払われるドルを、アメリカ国債、株や、土地、ビルや、企業等の不動産の購入に使っている。その結果、利子、利益、キャピタル・ゲインや、外国人が購入したアメリカ資産にまつわる賃借料は、アメリカ人にではなく、外国人の手に流れ込む。経常勘定は悪化する。

それはこういう具合に機能する。アメリカの輸出を越える、アメリカの輸入は、外国人に、アメリカでの収入や富を与えるが、それは外国人が、アメリカ資産購入して決着する。これら資産が生み出す所得は、今や海外に流れ出てゆき、外国人が、アメリカへの投資で稼ぐ収入が、アメリカが外国投資で稼ぐ収入を越える結果になっている。

ヘスターの女史の理屈によれば、自分達が必要とするものは何も生産せず、製造の代わりに、アメリカ市場向け海外生産の仕様を決めるアメリカのファッション・デザイナーや、パターン制作者、監視指導の役人や貨物取扱人、製造計画や、促進担当職員や、外国製の製品を、アメリカ消費者市場に送り届ける船舶荷役夫や鉄道従業員の収入に依存した方が、アメリカ人の暮らし向きは良くなるというのだ。

ヘスター女史は、海外移転された製造によって付加される価値は取るに足らないものだと信じている。そうであれば、それで一体どうやって中国は豊かになり、世界第二位の経済になり、製造業に10億人を雇用し(アメリカの1200万人と比較されたい)、どの国よりも最大の外貨準備を獲得できたのだろ?

ヘスター女史はこの問題に答えた後、付加価値への貢献がそれほど低いのであれば、一体なぜアメリカ企業は、わざわざ製造を海外移転する苦労を払うか説明できるだろうか? 付加価値として、明らかに人件費の節約は、アジアからアメリカまでの輸送費、外国への設備設置費用と管理費用、アメリカのコミュニティーを放棄して、アジアに移すことによる悪い評判のコストを支払ってたっぷり余りあり、全ての経費を支払った後も、利益を増大させ、株価や幹部ボーナスを押し上げるのに十分な十分な付加価値が残るのだ。

ヘスター女史は自分を欺いているのだ。彼女が計算する、中国、インドや、ベトナム人の労働の低価格は、シャツ価格に付加する安い外国の人件費をもたらすのであって、アメリカ市場におけるシャツの低価格やら、ヨーロッパ市場におけるiPhoneの低価格をもたらすわけではない。マーケティング、在庫・流通管理は、アメリカで、より給料の高い人々によって行われ、そしてこれこそが、あたかも、付加価値が製造業以外の源から生じるかのように見せる理由だ。ヘスター女史は、外国人労働力のより安いコストは、より安価な商品につながるのではなく、より大きな利益になることを見逃している。

経済専門家連中は、人件費節減は、価格引き下げの形で、消費者にも、恩恵をもたらすと想定しているが、ナイキや、メレルのスポーツ靴やタオルや、ブルックス・ブラザーズやラルフ・ローレンのシャツや、アップル・コンピューターや、あるいはアメリカ製造の海外移転の何らかの結果として、価格が安くなった経験などした試しがない。人件費削減は、収益、幹部ボーナスや、株主のキャピタル・ゲインと化するのであり、アメリカにおける収入と富みの不平等のとんでもない激化の理由の一つなのだ。

短期的利益に焦点をあてることで、製造業者や小売業者は、アメリカ消費者市場を破壊しているのだ。アメリカの服飾製造業労働者の平均年収は、35,000ドルだ。アメリカ小売業従業員の平均給与は、その金額の半分以下であり、小売店での消費者支出を押し上げるような裁量所得をもたらすわけではない。

製造海外移転というアメリカ企業の慣行が、オバマ政権が製造業雇用と輸出を生み出すという約束を守るのを不可能にしてしまっている。本当の雇用や本当の輸出を生み出せないので、アメリカ政府は、“工場を持たない製品製造業者”によって生み出される仮想の雇用と、仮想の輸出を生み出すことを提案しているのだ。アメリカ輸出の倍増という約束を守る為、オバマ政権は、外国の生産高を、アメリカの生産高として、定義しなおしをしたがっているわけだ。

“工場を持たない製品製造業者”というのは、新たに発明された統計上の範疇だ。自社製品の製造を、外国企業に外注するナイキやアップルの様な企業のことを言う。オバマ政権は、ブランド名や製品設計を持っているアップルのような会社を、そうした会社は実際には製造しないにもかかわらず、製造業者として定義しなおしをすることを提案しているのだ。

言い換えれば、アメリカ企業が製造業者であるかないかは、実際の活動にはよらず、外国の製造業者が、その会社の為に製造するブランド名を所有しているか否かによるというわけだ。例えば、ヨーロッパで販売されるアップルの中国製iPhoneは、アメリカ製品輸出として報告され、アメリカで販売されるiPhoneは、もはや輸入品としては分類されず、アメリカ製造業生産高となるのだ。アップルの非製造業従業員達は、製造従業員へと変身させられることになる。

明らかに、この統計上の欺瞞の狙いは、アメリカ製造業雇用、アメリカの製造業生産高や、アメリカ輸出の数値を膨らませ、輸入を国内生産に転換することだ。再定義によって、アメリカの膨大な貿易赤字を消滅させる策略だ。

分類変更により、政府の統計企画ウソ局は、中国、インド、インドネシアなり、どこなりの製品は、ブランド名がアメリカ企業の所有である限り、アメリカGDPに組み込まれるが、製品を製造したアジアの労働者への支払いは、アメリカの富に対する権利として残り、アメリカ国債、企業や不動産の所有権へ転換が可能だという矛盾を負わされることになる。

例えば、中国労働者がアップル製品を製造しており、中国にはアメリカの富に対する権利がある。こうした主張は、オバマ政権による定義しなおしによって、統計的に一体どのように説明されるのだろう? アメリカは、中国のアップル製品製造を、アメリカGDPに加えることができるが、いったいどの様にして、アメリカは、中国で製造されたアップル製品を、中国GDPから差し引くのだろう? また、オバマ政権の定義しなおしは、一体どのようにして、製品を製造する中国の労働力へのアップルによる支払いを逃がれるのだろ? こうした支払いは、アメリカの富に対する権利だ。

言い換えれば、分類変更はアップル製品の生産高を二重計算することになる。もしあらゆる国々がこれを行えば、製品もサービスも製造されていないという事実にもかかわらず、世界のGDPは統計的に増加する。恐らくはこれが、世界の貧困を、定義によって消滅させる方法なのだ。

“工場を持たない製品製造業者”は、雇用の海外移転を正当化する、ハーバード大教授マイケル・ポーターの2006年競争力報告書がその前兆だった。雇用の海外移転を擁護して、ポーターは、アメリカ貿易赤字の増大と、雇用の海外移転によって引き起こされるアメリカGDP成長率の低下を控えめな数値にした。ポーターは、収益や製品の帰属は、収益や製品が生み出される場所ではなく、定義によって決定されるべきだと、実質的に主張した。私が批判で指摘した通り(著書"The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West"を参照)、結果は、アメリカGDPを、海外移転したアメリカ製造業の金額と、アメリカの海外子会社の生産高で積み上げ、実際に製造が行われている国々のGDPを引き下げることだった。これを首尾一貫する為には、例えばアメリカ国内で、アメリカ人労働力によって製造されているドイツと日本の自動車は、アメリカGDPから差し引かれ、ドイツと日本GDPとして報告されるべきことになる。

長年私が強調してきた通り、欧米は既にジョージ・オーウェルが予想した暗黒郷の中で暮らしている。報告されている雇用データへの仮想の追加や、季節調整を不適切に利用して、雇用が生み出されている。インフレ指数で、価格が上がったものを、より低価格の品物に置き換え、価格上昇を品質の向上と定義しなおすことで、インフレは消し去られる。実際のGDP成長は、実際よりも少なく見せるために改ざんされたインフレ率で、名目GDPを引き下げることによって、手品のように作り出される。今や工場を持たない大企業が、アメリカ製造業生産高、アメリカ輸出や、アメリカ製造業雇用を生み出そうとしているのだ!

欧米の存在のあらゆる側面が、プロパガンダによって定義されている。その結果、我々は、虚無主義の完璧な段階に到達したのだ。政府、大企業や売女マスコミが言うことは、何も信じることができない。

我々はウソの中で生きており、ウソは益々拡大しつつある。

Paul Craig  Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the WestHOW AMERICA WAS LOSTThe Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/

記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2014/08/04/defining-away-economic-failure-paul-craig-roberts/

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政府やら、大本営広報部は海外留学をあおっている。貧しく、学力もない小生は、宗主国留学など想像したこともなかった。そもそも、その意義がわからなかった。何を学ぶのだろう。属国支配方法を学び、その手先になることを目指す能力、皆無だった。今にして思えば、学力も、お金もなくて幸いだった。

この属国の支配層で、経済政策?をになう中枢、アメリカ大学の経済学教授だった御仁やら、アメリカで経済学を学んだ人物。覚醒剤を濫用した芸能人とも関係皆無ではない企業のトップを務めていたりもする。

こうした諸氏、この文章の筆者のような正義感は皆無とお見受けする。郵政破壊や、銀行倒産を推進する見事な手口にはあきれるが、尊敬はできない。

ところで地方紙は、痴呆紙でないことがあるようだ。中央の大本営広報部に載った誹謗中傷記事と偉い違い。そういう新聞を講読しているのは恥ずかしい。何度も繰り返すが、スーパーのチラシが欲しくて講読しているのが本音。

信濃毎日「小説外務省―尖閣問題の正体」『元外交官が描く政・官の危うさ

 駐イラン大使まで務めたエリート外交官が実名で書いた小説。尖閣問題で適切な対応がとれない政・官のダメさ加減を生々しく描き出す。

 小説とは言っても、外務省での著者の経験がふんだんに盛り込まれていて面白い。

 米国の意向を代弁するグループが主流を占める外務省。それに批判的な意見を述べた主人公は「10年はやい」と傍流に押しやられる。

 国の将来を見据えた外交はない。組織内の昇進だけが重大事。そんなお役所風景が浮かびあがる。

 そこに尖閣問題が起きた。

 尖閣は日本が「固有の領土」と思っているように、中国も固有の領土と考えている。

 だから田中角栄の時代、周恩来首相と「棚上げ」で合意した。双方が声高に領有を主張したら衝突せざるをえず、国交も貿易もなくなってしまうからだ。

 しかし、小説で日本の首相は国民を煽り、外務省はそれに追随し、強硬路線に踏み込む。そしてついに「十名程度、尖閣諸島に自衛隊員を常駐させる」構想が打ち出される。中国は日本のその動きを待っていた。。。。。。。

 尖閣に関わる政治家が実名で登場してくる。石原慎太郎、鳩山由紀夫、野田佳彦、小沢一郎、前原誠司氏ら。

「今もっとも操作しやすい石原」とか「外交音痴の野田」など、大丈夫かいなと思うほど容赦ない。

 尖閣問題には歴史的な深い根があるということ。勇ましい言葉だけで突っ走ったらとんでもないことになるということ、その2点を具体的な描写で理解させてくれる。

 著者の中国評価は、南シナ海の現状をみると甘すぎるような気がする。小説としては素人っぽい、だがそうした点を差し引いても、多くの人に読んでほしいと思う本だ。

 昨年、現職の経産省エリート官僚が匿名で小説を書き、原発事故を収拾できない行政の実態を告発した、それに次ぐ高級官僚の「内部告発」小説である。

 わが政・官はついに危機管理力を失ってしまったのでないか。そんな危うさが感じられて気味悪くなる。

あの、宗主国の暴虐を鋭く立体的にえぐりだすインタビュー!

世界の「いま」は欧米中心主義の断末魔/繋がりあう尖閣・マレーシア・ガザ・ウクライナ ~岩上安身による東京大学名誉教授・板垣雄三氏インタビュー

IWJは公共性に鑑み、8月6日まで非会員の方へ特別公開中!必見

岩上安身責任編集 – IWJ Independent Web Journal

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コメント

いま『発展する地域 衰退する地域』(ジェイン・ジェイコブス 中村達也訳 ちくま学芸文庫)を読んでいます。「国民経済」に慣れている私たちは何か見落としていやしないか、という本なのですが、読んでいて暗澹たる気分になってしまいました。
著者のジェイコブスはニューヨークの再開発計画の見直しをさせたことで知られていますが、新しい仕事や技術は都市から発生すると見ています。この本では都市そのものより、都市が他の地域(ほかの都市、都市地域、供給地域、移植工場地域、都市のない地域の巨大開発など)に及ぼす影響を検討しています。後進都市が発展するためには10世紀のベネチアを例にとって、先進地域から進んだ産物を輸入しつつ他の後進地域と交易をし、進んだ産物を模倣して後進地域に輸出するという経過をたどると分析しています。相手の求めるもののみを輸出して、かわりに進んだ安い製品を輸入しているといつまでも工業は発展しません。工場だけを誘致しても地域の技術が発展しないのもご想像の通りです。

また、国家の覇権を守るための朝貢(宗主国が倍返し)、後進国への援助、軍需産業の巨大化などはみな「衰退の取引」になり、先進都市の富を吸い取ってしまいます。日本が原発や武器の輸出を始めるのも、まともなビジネスが終わりになった証拠なのでしょう。
さらに、怖ろしいことに気がついてしまいました。
副題は「地域が自立するための経済学」なのですが、逆用すれば相手が経済発展できないようなビジネスや援助を継続することができます。多国籍企業のトップや覇権国の官僚ならすでに知っているかもしれませんが。先走った感想ですが、現在の世界経済は破産するしかないように思えます。
この本の原著が出たのは1984年ですが、その後工業都市が誕生したりしたでしょうか。

今回の記事で、アメリカ企業がすでに富を供給する見込みがないことがなさそうだと思いました。
「世界の「いま」は欧米中心主義の断末魔/繋がりあう尖閣・マレーシア・ガザ・ウクライナ ~岩上安身による東京大学名誉教授・板垣雄三氏インタビュー」を一部拝見しましたが、2001年からの「テロとの戦い」は「欧米の自己破産プロジェクト」というのも納得です。

       「ウンマ」とMH370-17機について   
  IWJ記事『繋がりあう尖閣・マレ-シア・ガザ・ウクライナ~岩上安身による東京大学名誉教授・板垣雄三氏インタビュ-』に学ぶ

  先日の「箒川 兵庫助(け)」で,『マレ-シア機が立て続けに狙われのか,その理由が,なお,なおまだ分からない』という主旨の文章を書かせて頂いた。その答が上記の題にある通りの『岩上インタビュ-』に見つけることができた。岩上氏並びにイスラム史ご専門の板垣雄三先生に感謝申し上げたい。
  
  ウクライナのネオ・ナチによってユダヤ系ウクライナ人が被害に遭っているから,いつかはイスラエルにネオ・ナチ政府が攻撃されるのではと書いたことがある。ところが,元イスラエル兵士がネオ・ナチを利用して事を運んでいるというのであるから,小生の考えと「真逆」である,つまり,小生の仮説は筋が通っているが,話はその筋の「真逆」であるということも,分かった。

  8月現在,マレ-シア東部には夜間外出禁止令が出されている。世話になったホテルの女主人たちが心配であるが,ス-ル-王国の軍人ではなく,外国人傭兵が東部地区に上陸して殺害・誘拐行為に及んでいるというメ-ルを日本国政府外務省より頂いた。小生自身も人生の同行者と共に某島に観光に出かけたが,警察と軍隊が巡回していたことを想い出す。
  然るに板垣説によれば,その東部地区に現れ,ス-ル-人を名乗る外国人傭兵は,イスラエルの差し金だということになる。禁止令が出ている町タワウの友人と,2013年の3月にス-ル-の軍隊200名ほどが上陸したのはなぜか,と議論したこともある。しかしそれもイスラエルと関係があったとすれば,ナジブ首相のパレスチナでの「ウンマ」に関係していたことになる(恥ずかしながら板垣説に従えば,タワウの友人との議論は全く見当違いだったということになる)。

  また,MH17-370機という2回連続の事件はマレ-シア国の「TPP脱退」と関連していると小生は見ていたが,この見方はまるっきり外れではないとしても,「ウンマ」,イスラエルと関連しているとすれば,ほとんど見当外れ。
 (引用開始)
  『パレスチナは、ガザ地区に基盤を持つハマスと、ヨルダン川西岸地区に基盤を持つハマスとの間で、事実上の分裂状態にあった。この分裂状態を解消し、「ウンマ」と呼ばれる統一的なイスラム共同体を構築するよう呼びかけたのが、ナジ-ブ首相だったのである。』           (引用終わり)
  
  昨日付の新聞によれば,規模第2の都市イポ-近くのルム港からマレーシア海軍の探査船がオ-ストラリア西部のインド洋にMH370機を探しに出かけたそうである。したがって,ナジブ政府はまだその付近に狙いを絞っていることになる。とすれば,ウクライナでのMH17とMH370の「入れ替え」説は却下される。

  確かにマハティ-ル元首相がムスリム湾岸諸国会議で講演して理数教育の大切さを訴え(つまり科学技術の向上を促進せよ),「ウンマ」と呼ばれる統一的なイスラム共同体を構築を訴える「呼びかけ」をナジブ首相がしたことは,「パレスチナの分裂状態を継続させたいイスラエルにとっては、もちろん不都合なものである」。「ウンマ」の結果,パレスチナが国連の準加盟国となったことは,イスラエルにとって大きな痛手であったことは,想像に難くない。ゆえに私は板垣説に賛成する。

  しかし疑問がいくつか浮かび上がる。その一つは,1度あることは2度あり,2度あることは3度あると言うことか,である。イスラエルは何時満足するのか(人生の同行者は3度とMH機には乗らないだろう)。
  疑問の二つ目は,あれほどの大虐殺(ホロ-コスト)という犠牲を払ってでも,シオニズムがナチズムを利用したという板垣説は,納得いかない。
  三つ目の疑問は,多くの中国人やオランダ人を巻き込んだのはイスラエルと関係するのかということである。

  もちろん,「イスラエルがマレ-シアに対する関与があった」としても,背後にはテロ国家米国がいるはずだから,米国の利益とも関連するにちがいない。然るにその関連をイスラエル関連だけでは説明できないだろう。これが第四の疑問である。またもちろん,イスラエルと米国の利益が重なったからマレ-シアが狙われたという解釈も成り立つ。
  例えば,オランダはダイアモンド研磨技術でイスラエルとも関係が深いが,仲が悪くなる何らかの原因が急浮上したのかもしれない。オ-ストラリアはEPA豚肉交渉で米国を出し抜いたから少なからぬ犠牲者を出さざるを得なかった。

  イスラエルと米国は,両国ともテロ国家であり,嘘つき国家である。加えて「脅し屋」でもある。オランダ人と一緒の飛行機に乗れば,その飛行機は墜ちるかも知れない。こう思わせるだけで十分な「脅し」になるだろう。
  おそらく中国も豪州も何らかの「脅し」を受けたに違いない。仲良く中・米・豪が軍事演習をする(新華社通信)わけである。しかし語呂合わせにより,疑問の第五は,ナジブ首相とは「ウンマ」を構築できるほど実力があったのか,ということである。それは改めて板垣先生に解説してもらうか,自分で調べる必要があるだろう。

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