ウクライナ国家のスローモーション崩壊とラーダ(議会)降伏
2014年7月30日、水曜
Andrew KORYBKO (USA)
どの会派も、来るべきIMFの自殺的諸条件の責めを負わされたくないことを巡って、ラーダにおける議会内紛の最中、ウクライナ暫定首相アルセニー・ヤツェニュクが最近、政府からの辞任を表明した。(どうやら、やがて来るウクライナの経済的・社会的崩壊の前に、責任を逃れたいという彼の願いが、まずはウクライナのガス輸送システム支配確立を狙う欧米権力集団の権益と、衝突したもののように見える - OR)。民族主義政党スヴォボダと、クリチコの (ドイツの) ウダル・プロジェクトの撤退は、11月末に、ユーロマイダン・カラー革命で始まった組織的崩壊の連鎖反応の継続だ。もし新しいラーダが30日以内に形成されなければ、選挙が必要になる。これはポロシェンコの権力基盤(ウダルは親密な同盟者だ)を強化し、スヴォボダ民族主義者の勢力範囲を拡大する為の策略にすぎないと既に予想されている。こうしたリスキーで権謀術数的な計算は、将来にわたって影響を与え、ウクライナを更なる全面的崩壊に、ウクライナに出現した、混沌のブラック・ホール拡大へと追いやり続ける可能性が高い。
絶壁に近づきつつある
ウクライナ議会でのいつもの喧嘩(2014年7月24日撮影の写真) |
最近の組織的崩壊段階へ至る段階で、キエフは、自らが解決困難な状況にあることに気がついたのだ。国民を、いわゆる欧米への統合や、EU加盟協定署名と、IMF借款の受け取りへとあおった後、この両方が必要としている、残酷な経済‘調整’実施の責任を、議員の誰一人として、とりたくないことにラーダは気がついたのだ。これこそが現在のラーダ危機の直接原因だ - 全員が‘欧米に参加’したがったが、それが本当に意味することに対し、有権者への責任を引き受けようとはしなかったのだ。
これと同時に、ウクライナは、前回2012年の正当な選挙で、15%の票を得た、一貫して最大政党の一つである共産党をも禁止した。‘欧米の価値観’と自らを統合させようとしている国が、そのような政策を遂行するのは矛盾しているが、予想できなかったことだとは言えまい。結局のところ、正当なヤヌコーヴィチ大統領に対する2月クーデター以来ずっと、粛清への強力な呼びかけが続いていたのだ。この政治的(そして,それゆえの社会的)排除政策は、ここ数ヶ月、ウクライナで、権力と影響力の座に押し上げられた民族主義者と、ファシスト勢力によって支援されていた。
これに加え、4月中旬、連邦主義支持者達に対する、懲罰的作戦が開始してから、少なくとも、1,000人が死亡し、3,500人以上が負傷したと国連が正式に推計している、ドンバス地域で継続している膨大な人道的惨事が起きている。500,000人の避難民が、それ以来ロシアに逃れ、その内、34,000人は、現在、国家に収容されている。
真空状態の本当の理由
現在の統治上の真空状態を巡る上記説明は、全て、クーデターそのものよりも早く始まっていた出来事が起源なのだ。何よりもまず、1991年の独立以来、ウクライナは、アメリカにとって、地政学的チェスの駒だった。ズビグニュー・ブレジンスキーが、アメリカのユーラシア勢力圏における、軸兵としての、ウクライナの役割について、1997年の著書“グランド・チェスボード”の中で、“ウクライナが無ければ、ロシアは、ユーラシアの帝国であることを停止する”と巧みな表現をしている。ビクトリア・ヌーランド国務次官補が、アメリカが、1991年以来、ウクライナにおける“民主主義の推進”に、50億ドル使ったことを認めている通り、この戦略的助言は、国務省では、確かにしっかり聞き入れられている。クーデターの前にキエフを荒廃させたマイダン暴徒に見られるように、この投資は“民主主義”の為ではなく、むしろ暴民政治による体制転覆の為だった。ユーロマイダンという、長期にわたる市街戦が、国家を悪魔化して描く、欧米による強烈なプロパガンダ・キャンペーンと相まって、必然的に、クーデター直後の国家構造粉砕をもたらした。こういうことは、現在と比べれば、統治機関が、依然として、比較的機能していた、2004年のオレンジ革命ではおきなかった。
ウクライナで政権転覆を起こし、傀儡を利用して、ロシアを攻撃するというアメリカの地政学的狙いさえなければ、ウクライナに危機はなかっただろう。避難民が東に向かって殺到することもなく、ウクライナは、文明の断層線に沿って、分裂することもなかっただろう。混沌ブラック・ホールの拡大は、ひたすら、不安定化が始まる前までは、ウクライナが、その加盟国候補であった、ロシアのユーラシア連合という統合目標を粉砕する為の脅迫を、最後までやり抜こうとするアメリカの取り組みが原因だ。
嵐の前のウクライナ
11月以来、出来事は余りに劇的で、余りに急速に進展したので、一年前のウクライナがどうだったかというのは、つい忘れがちだ。2013年夏、政府は腐敗してはいたが、機能はしており、大規模な暴力行為もなく、相対的に、マクロで安定していた。全ての政党が、包括的な政府に歓迎されており、ウクライナは、アメリカ、EUやロシアと、儲かる商売をしていた。重要なのは、エネルギー供給は確保されており、下流側のパートナ国のどこも、冬に不足する懸念はなかったことだ。
現在に早送りしてみよう。‘政府’は冷戦中の(今日のだと挑発的に言う向きもあろう)イタリアの様に、機能不全で、致命的に腐敗している。大規模な暴力行為は、既に1,000人以上の命を奪い、ウクライナの中でも、かつて最も繁栄していた地域の一つのインフラを破壊し、ドンバス全体を不安定化している。粛清のおかげで、ラーダは、オリガルヒとつながった連中の排他的クラブと化し、過激派の活動が、国中に不釣り合いな影響力を持つようになった。名目上、経済的にはヨーロッパに向かって動いているとは言え、ウクライナは借金に縛られており、ウクライナ経済が、そこに依存しているはずの、ロシアとの二国間貿易を、全て失おうとしている。キエフの政治的駆け引きの失敗で、ロシアに、ガス栓を閉めさせてしまい、寒い冬の恐怖は高まり、年末までに、別の将来の危機到来をほぼ確実に保障してしまう可能性がある。
常軌から逸脱して、未知の領域へ
後から考えれば、ユーロマイダン・クーデターは、ウクライナの国家としての地位を決定的に破壊した、致命的な外部からの打撃と見なすのがよさそうだ。世界から見れば、ウクライナは、苦しい、長時間にわたる崩壊を味わっており、現在の政治的真空も、下降スパイラルの最新の繰り返しにすぎない。ウクライナは常軌から逸脱して、未知の領域へと入りつつあり、唯一の青写真と言えば、ユーゴスラビア・シナリオしかない。ウクライナ国内の混沌のブラック・ホールはひたすら拡大するばかりで、ウクライナは、確実に破綻国家状態を呈している。地政学的に好都合な地域で、外部から仕組んだクーデターがおきたこと、傀儡政権、めまぐるしい議会、隣国(ロシア)による介入を引き起こしかねない内戦と、権力獲得を企む過激な民族主義者。
4500万人の国民を擁し、東ヨーロッパ中心部のど真ん中に位置する国として、外国支援者達にとって、ウクライナは‘大きすぎて、潰せない’のかも知れない。過去、ウクライナは、自ら自立できていたことがなく、独立以来ロシアに依存し続けてきた。ロシアが暴力的に押し出されてしまった今、ウクライナは、いずれも、しっかり対処するつもりがない、欧米とEUにとって、お荷物になっている。欧米によるウクライナ統合というのは、ウクライナ、欧米両方の政治家が異口同音に唱えたスローガンではあるが、彼らの誰一人として、それにまつわる責任を引き受けようとはせず、ウクライナを持続困難な立場に追いやり、大衆の生活困難をもたらしている。
ウクライナの様に、破綻国家の諸々の特徴を示している国家からは、他国軍隊は、いかなる犠牲を払ってでも遠ざかろうとするはずなのだが、アメリカとNATOは、病状が明らかになって以来、理不尽なことに、ますますこの病人に近寄っている。こうした状況の下で、陰のNATOへのウクライナ吸収は、ウクライナの台風の様な混沌スパイラルと、直接同盟するのにほとんど等しい。ウクライナに、重要な非NATO同盟国の地位を認めるのは、特に政府が崩壊し、指導部が益々独裁的な傾向を強めている際には、危険で無責任だ。つい最近の重要な非NATO同盟国、アフガニスタンの状況は、強制的なNATO占領のおかげで(ただし今年末、期限切になる予定)、少なくとも準安定的で、予測可能だが、そのような状況は、(まだ) ウクライナには存在していない。とは言え、欧米は、ウクライナ作戦が‘大きすぎて、潰せない’ことに気づき、ウクライナがスローモーションの経済的、軍事的、政治的崩壊を体験する中、NATOへの統合で、こうしたプロセスを阻止することができ、不可避のものを逆転できると、自暴自棄で思い込む可能性がある。
Andrew Korybkoは、ボイス・オブ・ロシアのアメリカ人政治特派員で、現在モスクワに在住、研究している。ORIENTAL REVIEW独占記事。
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『神州の泉』で下記記事を拝読した。
2014年8月3日消費税率(10%)引き上げ前に郵政株式の上場が画策されている
反原発運動、他の運動と同様、各人がその流儀で進めれば良いものだろう。
しかし、そういう美辞麗句をいう前に、自分がしでかした、とんでもない売国行為をきちんと清算してからにしていただきたい方々もいる。
郵政を破壊し、非正規雇用を激増させた方は、その犯罪への反省を表明・謝罪いただける集会をするなら、参加もやぶさかではない。
そして、もう一人の方については、小選挙区制度導入の責任を強く感じていただいて、小選挙区制度廃止運動をも主導していただけるのであれば、集会に参加し、貧者の一灯、わずかな寄付もやぶさかではない。
そうでない限り、この二人が関与する集い、不参加を続けたい。例えお金をいただけても。
大本営広報部電気洗脳機はあいかわらず、サイコパス事件やら、キャンプ事故報道やらに忙しい。あるいは某氏南米ツアー。
庶民に本当の影響がある深刻な話題だけは、決して詳しくあつかわない。
電気洗脳機という呼び方、正確な表現で、名誉毀損とは思わない。
TPPやら、郵政売却やら、ウクライナや、パレスチナ、庶民に深刻な影響がある話題は事欠かないのだが。
というわけで、IWJ報道に頼ることになる。下記をご覧願いたい。
140801 【イントロ】岩上安身による板垣雄三・東京大学名誉教授インタビュー
是非全編をご覧いただきたい。(会員加入が必要だが、貴重な情報は、決してただでは入手できない。この国では、洗脳情報すらも有料だ。)
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