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2014年6月 1日 (日)

“集団的自衛権”を受け入れる日本首相

wsws.org
Peter Symonds

2014年5月17日

昨日、安倍晋三首相は、日本軍国主義復活に向けて大きな一歩を踏み出した。テレビ演説で、水曜日に公表された、婉曲的に“集団的自衛権”と表現されているものに、日本国軍が携わることを可能にする憲法解釈を正当化する、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会の報告書を擁護した。

第9条で、正式に戦争を放棄し、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しないとしている日本の戦後憲法は、既に見る影もないほど“再解釈されている”。日本“自衛”軍は、巨大で、十分装備されている。過去20年間、いわゆる国連平和維持活動への参加や、アメリカが率いる、いずれも“自衛”とは全く無関係イラクやアフガニスタン新植民地戦争へ参加する為に、“自衛”軍は、海外に派兵されてきた。

アメリカ政府の全面的支持を得て、今や“集団的自衛権”という名目で、安倍政権は、アメリカ侵略戦争への日本の全面的関与に対する、憲法上の全制限を無くすこと、オーストラリアやフィリピン等の国々と新たな軍事同盟を結ぶことを狙っている。日本はアフガニスタンでのアメリカ作戦支援で、燃料補給艦を、イラク占領支援で、工兵を提供した。“集団的自衛権”は、アメリカや他の同盟国と連合して、あらゆる戦闘能力の展開を可能にするものだ。

戦争準備をするあらゆる政府同様、安倍首相は自分の行動は平和を推進するためのものだと主張した。“日本が再び戦争を行う国になるといった誤解がありますが、しかしそんなことは断じてありえない”と彼は述べた。“日本国憲法が掲げる平和主義は、これからも守り抜いていきます。” しかし、彼はこうも述べた。“もはやどの国も一国のみで平和を守ることはできない”そして、“世界が日本の役割に大きく期待をしています。”これは特にアメリカ、ヨーロッパや東南アジアに言及したものだ。

実際には、日本の再軍事化に、防衛的あるいは平和的なものなど皆無だ。“集団的自衛権”を正当化することにより、安倍首相は、日本を、オバマ政権の攻撃的な “アジア回帰”戦略と、アメリカの対中国戦争準備での全面的な協力者にするのだ。

既に日本国内の米軍基地は、中国の軍事能力を破壊する為の、中国本土に対する壊滅的空爆、ミサイル攻撃構想であるペンタゴンのエア・シー・バトル戦略の不可欠な要素だ。アメリカ政府にしてみれば、戦争となった場合、アメリカが日本防衛を誓約しているのに、日本軍は、対中国攻勢作戦に参戦するのを禁じられているというのでは我慢がならない。

自分の行動を正当化しようとして、安倍首相は、現在の南シナ海における中国とベトナムとフィリピンのにらみあい状態に言及した。紛争の責任を中国に押しつけて、彼は主張した。“南シナ海では、こうして話している間も、軍事力を後ろ楯にした一方的な行動のおかげで各国間の対立は続いている。”

緊張の高まりの主な責任は、“回帰”の一環として、フィリピンとベトナムに、中国との領土紛争で、より攻撃的な姿勢をとるよう焚きつけたワシントンにある。同じことが、東シナ海の尖閣/釣魚台列嶼を巡る日本と中国の紛争にも当てはまる。

“集団的自衛権”は安倍首相の再軍事化計画の一環だ。2012年12月に首相の座について以来、彼は軍事予算を増加し、戦略的政策を、中国に近い日本南部諸島での“島嶼防衛”へと再設定した。彼はアメリカ式国家安全保障会議も設置し、アメリカとの軍事協力を強化した。更に、安倍首相は、1930年代、1940年代における日本帝国主義の戦争犯罪を糊塗することを狙ったイデオロギー・キャンペーンを通して、日本軍国主義の伝統を復活させようとしている。

小野寺五典防衛大臣は、日本が先制戦争を、平たく言えば軍事侵略行為を、行えることを既にほのめかしていた。“日本を攻撃する意図が明らかで、選択の余地のない状況であれば、法律に基づいて敵対目標を攻撃することが可能だ”と昨年2月に彼はロイターに述べている。

安倍首相は、更に進んで、憲法を書き換え、その過程で第9条を無くしたい意向だ。とは言え、そうすれば、広範な反対を引き起こすことになろう。いかなる憲法修正にも、国会の三分の二の賛成と国民投票による批准が必要だ。

結果として、安倍首相は、憲法解釈を変え、日本の軍国主義復活を“積極的平和主義”という名目で覆い隠すことを選んだのだ。彼は、組織的な警察国家による弾圧、戦前や、第二次世界大戦レジームを体験した労働者階級の、日本軍国主義に対する根深い敵意と直面している。彼の行動は、戦争前と戦争中に、日本の残虐な新植民地主義支配に苦しんだ中国や韓国等の国々の反対も引き起こした。

中国外交部報道官の華春瑩は、安倍首相の演説に答えて、こう述べた。“中国を含めたアジア諸国や国際社会は、日本の真意を巡って、しっかり警戒するのが当然だ”。韓国外務省は、日本に“日本平和憲法の精神を守る”よう呼びかける声明を発表した。

日本国内では、5月の日本の国営放送NHKによる世論調査では、41パーセントが、憲法解釈変更に反対で、わずか34パーセントが賛成だった。アメリカ・イラク占領の一環としての日本軍配備の後、戦争と日本の関与を止めるよう要求するかなりの抗議行動があった。

昨晩、約2,000人の抗議行動参加者が、憲法解釈変更に反対して、東京の首相官邸付近に集まり、“憲法を壊すな”というシュプレヒコールを繰り返した。高校生の福井シュンは、ジャパン・タイムズにこう語った。“憲法解釈の変更で、集団的自衛権禁止を無くすことは受け入れられません。我々が戦争に派兵されかねません。”

広範な反戦感情を、既成政治勢力は表現しきれていない。スターリン主義の共産党を含め、野党は憲法の非戦条項に口先だけ賛同するものの、彼等全員、尖閣/釣魚台列嶼を巡るっての中国と対立する日本を支持している。安倍首相が戦争準備をする中、これらの政党は軍国主義に対する広範な反対を、展望のない訴訟と、議会での駆け引きに向けようとするばかりだ。

記事原文のurl:http://www.wsws.org/en/articles/2014/05/17/japa-m17.html

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wswsの評論記事、毎回素晴らしいと思うが、毎回、最後の部分には疑問を感じている。

一口で言えば、「勝手に絶滅してね」でしかないように思える。それは、壊滅してゆく属国の国民ゆえに感じる悲哀に過ぎず、大半の的確な分析同様、この国の先行きの的確な予想なのだろうか?

EUでの選挙では、wsws候補者、1万票にとどかなかったようだ。わが党が立候補・選挙活動をしたのは「議席を目指したのではなく、真実を伝えるのが目的だった。」というような記事があった。申し訳ないが翻訳する気力はない。

60年代、70年代の華やかなりし?学生運動を、ふと思いだした。反政府風の主張をしていた諸氏、どうしているのだろう。

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コメント

集団的自衛権で日本の基地をアメリカに作れないのかなあ

 加藤周一ロングインタビュ-         『論座』 2005.1 朝日新聞社
聞き手:上丸洋一
     -日本はいつも「破滅」までいかないとダメなんです- 
     -『日米運命共同体』なんて言っているのは日本だけ-

  日本では衣替えが始まったようだが,こちらは長くもならず,短くもならず,ただ暑さに耐える日々が続く。雨は植物にとって「恵みの雨」であり,私にとっては暑さを和らげる慈雨である。そんな中でUSBに『論座』をみつけた。

  時は2004年11月。ブッシュ再選の頃の話で欧州はケリー支持,米国のマスコミはブッシュ批判少なし。ブッシュ当選で欧州の結束がより固まるということが一方にあり,イラクでの戦いが激しくなった。加藤は当時「イラクでの泥沼化に拍車がかかる」と予測していたが,実際そうなった。
  
  ところで日本では,米国政府の要求による集団的自衛権行使のための議論が行われつつある。しかしなぜ要求するのか。この答えを加藤の発言に見ることができる:
  『見てみなさい。日本も自衛隊を送って支持してくるじゃないですか」 

  つまりテロ国家米国に真のトモダチはいない。しかるに米国政府のいいなりの日本国はどうか。日本がイラクへ自衛隊を送っても,米国が言う「『we』の中に入れないし,『they』でしかない」と加藤はいう。もし彼が生きていれば,たとえ集団的自衛権を行使できるように解釈を変更しても,「”we”の中に入れないし」と言うであろう。
  ちなみにイラクに派兵しなかったカナダは「we」に入り,アフガニスタンに派兵しなかったドイツも「we」に入るという。しかし日本は,加藤が北米に住んでいた10年間に一度も「we」に入ったことがないという。ゆえに小泉首相のイラク派遣は「we」に入れてもらうためだったとみる。

  しかし米国人はベトナム対米独立戦争から何を学んだのか。「ゲリラを一人殺すと,二人のゲリラが生まれる」。ファル-ジャ,カブ-ルしかり。旧日本軍にとって,中国の反日ゲリラ(便衣隊)は目の上のたんこぶだったが,村に入って「誰を捕まえていいか分からなかった」。まさに毛沢東が言ったように『ゲリラとは人民の中に泳ぐ魚』であった。

  今オバマ政権はアフガンから撤退しようとしている。なぜか。フランスのアルジェリアからの撤退や,ソ連軍がアフガニスタンから引き揚げたことに学んでいると推認できる。米軍の外国からの撤退が米軍の損失を最小化し,その地域の安定化に貢献すると信じたからである。     

  新年が始まってまだ半年もたたないうちに,1年を振り返るのは早過ぎるが,私は次の三つを予測した。
    ①TPP交渉はまとまらない
    ②シリアに出兵はしない(今までのところ当たり)
    ③安倍首相は9月に退陣

  豚肉の関税が現在のTPPの主たる問題らしいが,その規定により,交渉内容が漏れてくるはずはないから,マスゴミが流す情報はデタラメであるか,何かを操作しようとする悪巧みである。おそらく核分裂発電所(原発)の処理が行き詰まっていることを隠すために,国民の関心を身近な「豚肉」に逸らしているのであろう(或る人は豚肉・畜産業界の自民党への『政治献金額』が少ないからマスゴミが報じているという)。
  またチリやマレ-シアからの話が全然聞こえてこない。ナジーブ首相は中国まで行った。マレーシアがMH370問題で米国の脅しに屈するとは考えられない。チリの女性大統領はTPP交渉内容の見直しに言及している。

  ②のシリア出兵はオバマの「弱腰」と見られているが,ベトナム戦争等に学んでいることが見落とされている。

  ③の安倍退陣は,集団的自衛権の話である。「限定的」解釈が受け入れられず,退陣するという見立てである。昨日,菅官房長官は「安倍首相は18年まで」と首相在任期間を限定したが,すでに5月の超党派議員団が序列第3位の中国高官に会えたことは,髙村氏らが首相退陣か,集団的自衛権からの撤退を中国側に約束したものと推認する。しかしそれだけではない。
  ミッドウェ-海戦で負けた日本軍がここで戦争から撤退すれば,サイパンや沖縄の悲劇は避けられてハズだからである。それを安倍首相の参謀たちが知らないはずはないからである。

  私の妄想は,当たらないことが多い。年末までまだあと半年ある。しかし私の妄想は,世間の大方の見方から離れること甚だしいが,米国の新保守主義者が68年から今日まで意見を変えないように,変わらない(但し,日本の世論の保守化は同じ人物の意見の変化によっておこる(日米保守化のこと,『山中人閒話』)。

『60年代、70年代の華やかなりし?学生運動を、ふと思いだした。反政府風の主張をしていた諸氏、どうしているのだろう』
 
本当にどこに行ったのでしょうか、この人たちは。
 
職場から地域に戻り、
「昔は・・」と思い出にふけっているだけなのでしょうか?
 
そんな人ばかりではないと思っています。が。

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