新たな景気後退と、アメリカの傲慢さ抜きの新たな世界?
Paul Craig Roberts
2014年6月25日
2014年第一四半期の、本当のアメリカGDP成長率最終数値が今日発表された。数値は無知なエコノミストが今年1月予想した成長率2.6%ではない。数字はGDP-2.9パーセント減だ。
-2.9パーセントというマイナス成長率は、そのもの自体控えめな表現だ。この数値は、インフレの度合いを少なめにして、名目GDPを小さくすることで得られたものだ。クリントン政権時代、ボスキン経済諮問委員会は、社会保障受給者を騙して、生活費調整を避けるためにインフレ度合いを操作した。食料、燃料なりなんなりを購入する人々ならインフレーションは公式に報じられている数値よりずっと高いことを知っている。
第一四半期の本当のGDP落ち込みは、公式数値の三倍の可能性がある。
ともあれ1月の予想 +2.6パーセント成長と、3月末の-2.9パーセント減の差は大きい。
ウオール街、政府や支配体制側から金をもらっていない本物の経済学者であれば、+2.6パーセントという予測がホラであるのを知っていた。1パーセントの連中を除いて、アメリカ人の収入は増えておらず、唯一の与信の伸びは、仕事を見つけられない人々の多くが間違って“教育が答えだ”に飛びつくので、学生ローンだ。消費者需要に基づく経済において、所得と与信の伸びの欠如は、経済成長が無いことを意味する。
ウオール街に押された大企業が、アメリカ経済を海外移転してしまったので、アメリカ経済成長することができないのだ。アメリカの商品は、海外で生産されている。服、靴、食べ物や、調理器具、コンピューターなりなんなりの商品ラベルをご覧頂きたい。ソフトウエア・エンジニアリングの様な、アメリカの専門的な仕事は海外移転された。海外移転した経済は、経済ではないのだ。こうした全てが丸見え状態で起きているのに、たんまり謝礼を貰った自由市場宣伝担当者連中は、アメリカ人は、アメリカ中流階級の雇用を、中国やインドに渡すことで恩恵を受けてきたと力説している。
私はこうしたウソを十年か二十年あばき続けてきたので、それが、私がもはやアメリカの大学やアメリカの経済団体で講演をするよう招かれない理由だ。経済学者は、ウソをついて、頂けるお金が大好きだ。真実を語る人間は、彼等の間にせ一番あって欲しくないものなのだ。
第一四半期の-2.9パーセントという公式の落ち込みは、第二四半期GDPの落ち込みを暗示している。二期連続の落ち込みは「景気後退」の定義だ。
景気後退の結果を想像願いたい。これは長年の未曾有の量的緩和も、経済回復に失敗したことを意味する。長年のケインズ流の財政赤字も、経済回復に失敗したことを意味する。財政対策も通貨策も機能しなかった。そうなると一体何が経済を回復できるだろう?
反米大企業が海外移転してしまった経済を元に戻すよう強制する以外、何も無い。
これには信頼できる政府が必要だ。不幸なことに、クリントン政権二期目以来、アメリカ政府は、信用を失い続けて来た。もはや信用のかけらも無い。
“主流マスコミ”を読み、見聞きする脳死状態のアメリカ国民を除いて、今や世界のどこにもアメリカ政府を信じている人はいない。ワシントンのプロパガンダは、アメリカ国民の心は支配しているが、アメリカ以外の国々では嘲笑と軽蔑しか生み出していない。
アメリカの暗い経済見通しのおかげで、アメリカの二大産業ロビー団体-アメリカ商工会議所と、全米製造業者協会(あるいは、その残滓)が、オバマ政権の更なる対ロシア経済制裁という威嚇と対立するに至った。
ブルームバーグ・ニューズによれば、明日から(6月26日)、ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナルとワシントン・ポストに、実業団体があらゆる更なる対ロシア経済制裁に反対する広告を載せる。アメリカの実業団体が、経済制裁は彼等の利益を損ない、アメリカ労働者のレイオフを招くと言っているのだ。
かくして、アメリカの二大実業団体、政治運動献金の重要財源が、とうとうドイツ、フランスとイタリア実業界の意見に合わせ、主張をするようになったのだ。
洗脳されたアメリカ国民を除く全員が“ウクライナの危機”は丸ごとワシントンの仕業であることを知っている。ヨーロッパとアメリカの実業界は問うている。“一体なぜ我々の利益と、我が国の労働者達が、ワシントンの対ロシアプロパガンダの為に打撃を受けなければならないのだろう。”
オバマに答えは無い。おそらく彼のネオコン下司共、ビクトリア・ヌーランド、サマンサ・パワーズやスーザン・ライス等が答えを思いつけるだろう。オバマはニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ウオール・ストリート・ジャーナルや、ウィークリー・スタンダードが、ワシントンのウクライナ横領が脅かされずにすむ為に、一体なぜ何百万人ものアメリカ人やヨーロッパ人が苦しむべきなのか説明してくれると期待できるのだ。
ワシントンのウソは、オバマに追いつきつつある。ドイツのメルケル首相は、全くのワシントンの売女だが、ドイツ産業界は、そのワシントン売女に、ワシントン帝国の為に苦難を味わうより、ロシアとの事業の方がずっと重要だと語り続けている。フランスの実業家達は、もしオランドがワシントンに同調するなら、オランドはフランスの失業労働者達に一体何をするつもりか問うている。イタリアの産業界は、イタリアにもそれなり政府はあるので、その政府に、やぼなアメリカ人は無粋なのだから、ロシア経済制裁は、イタリアの最も有名で、良く認識されている経済部門-おしゃれな高級品に対する打撃を意味することを認識させようとしている。
ワシントンや、ヨーロッパ内のチンピラ・ワシントン傀儡支配者への異議は広がりつつある。ドイツでの最近の世論調査では、ドイツ国民の四分の三が、ポーランドとバルト諸国内の恒久NATO基地に反対している。旧チェコスロバキア、現在のスロバキアとチェコ共和国は、NATO加盟国でありながら、領土内のNATOとアメリカ軍と基地を拒否した。最近、ポーランド外相が、ワシントンを喜ばせるには、見返り無しで、無料オーラルセックスをしてやる必要があると発言した。
ワシントンの阿呆連中がNATOにかけている負担は、この組織を崩壊させる可能性がある。そうなることを祈ろう。NATOの存在理由は、ソ連が23年前に崩壊して、消滅しているのだ。ところがワシントンは、北大西洋条約機構の国境を遥かに超えてNATOを拡張した。NATOは今やバルト諸国から、中央アジアにまで至っている。NATOの高価な作戦を継続する口実を作るため、ワシントンはロシアを敵に作り替えざるを得ないのだ。
ロシアには、ワシントンなりNATOなりの敵であろうとする意図は皆無で、それをはっきり表明している。ところが、四苦八苦しているアメリカ納税者の金を毎年約1兆ドルを使い尽くしているワシントンの軍安保複合体は、この利益を維持する口実が必要なのだ。
不幸にして、ワシントンの阿呆連中は危険な敵を選んでしまった。ロシアは核保有大国だ、膨大な領土の国であり、中国との戦略的同盟もある。
傲慢さと思い上がりに溺れた政府か、精神病質者や社会病質人格連中に運営されている政府しか、そういう敵を選ぶまい。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ヨーロッパに、ワシントンの中東とリビア政策は、単なる大失敗ではなく、ヨーロッパとロシアにとって壊滅的な害をおよぼすことを指摘した。ワシントンの愚者連中は、聖戦戦士達を押さえていた政府を取り除いてしまったのだ。今や暴力的な聖戦戦士達は解き放たれた。中東で、聖戦戦士達は、第一次世界大戦直後にイギリスとフランスが設定した人為的国境の引き直し作業中なのだ。
ヨーロッパ、ロシアと中国にはイスラム教徒の国民がおり、今多くの人々がワシントンが解き放った暴力が、ヨーロッパ、ロシアや中国の各地に不安定化をもたらすのではないかと心配している。
世界のどこにも、誰にも、ワシントンを愛する理由は皆無だ。ワシントンが世界中で軍隊を行進できるようにする為、骨の髄までしゃぶりつくされているアメリカ人にも、毛頭理由はない。オバマの支持率は、惨めな41パーセントで、二期目が完了次第、誰もオバマ再任を望む人はいない。対照的に、ロシア国民の三分の二が、プーチンに、2018年後も大統領でいて欲しいと望んでいる。
3月に、世論調査機関のパブリック・オピニオン・リサーチ・センターが、ワシントンが過去二十年間、ロシア国内に築き上げた、アメリカが資金援助しているロシアNGO、何百もの第五列組織による反プーチン扇動工作にもかかわらず、プーチンの支持率が76パーセントもあるという報告書を発表した。
アメリカの政治的な問題に加えて、米ドルも苦境に陥っている。ドルが破綻せずにいるのは、金融市場を操作し、ワシントンが属国諸国に、自国通貨を印刷し、ドルを購入してドルの価値を維持しろと圧力をかけているおかげだ。ドルを破綻せずにおく為には、世界の多くをインフレ状態にする必要がある。最後に人々が気がついて金になだれ込めば、すべてが中国の思い通りになる。
プーチン大統領顧問のセルゲイ・グラジエフは、米ドルを破壊する反ドル同盟だけしか、ワシントンの侵略を止めることができないと、ロシア大統領に言った。これは長らく私の意見だった。ワシントンが更なる札を印刷して、戦争の資金にすることができる限り、平和はありえない。
中国政府が述べた通り、“世界を非アメリカ化”すべき時期なのだ。ワシントン指導部は、ウソ、武力衝突、死、そして更なる武力紛争の見込み以外何ももたらさず、世界を完全に失望させた。アメリカは、ワシントンが自責を感じることなく、新たな21世紀に、7ヶ国丸ごとあるいは一部を破壊したという事実だけが、例外的国家なのだ。ワシントンが、より人間味のある指導部で置き換えられない限り、地球上の生命に未来はない。
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Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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世界のどこにも、誰にも、ワシントンと第一属国を愛する理由は皆無だ。ワシントンが世界中で軍隊を行進できるようにする為、骨の髄までしゃぶりつくされている日本人にも、毛頭理由はない。安倍首相の支持率は、惨めな41パーセントで、二期目が完了次第、誰も安倍再任を望む人はいない、といいのだが。
暴言が漏洩したとされるポーランド外相記事、大本営広報で見かけない。
妻はアン・アプルボームという著名ジャーナリスト。翻訳『グラーグ』(白水社)を書店で見かけたが高価な為、ためらって購入していない。色々受賞したとある。
アプルボーム『鉄のカーテン』翻訳刊行予定というのもどこかで読んだ気が。
先に触れた『夢の国から悪夢の国へ』40年間続いたアメリカン・バブルの大崩壊 増田悦佐著、「アメリカの惨状を描いた著者の予言に森永卓郎氏戦慄」で、森永氏週刊ポスト2014年6月27日号で評価しておられる。
本書に描かれたアメリカの惨状は、実は、日本の未来予想図、それもかなり正確な予想図なのではないかという疑念だ。
興味深く読み始めていたが、一時行方不明。ようやく出てきたので読了。恐ろしい現実を余すことなく書いておられる。森永氏が指摘される通り、今の宗主国の姿はそのまま明日の属国の姿。
『夢の国から悪夢の国へ』275ぺージから277ページのポール・クレーグ・ロバーツ氏の文章を拝読しながら、当ブログ2013年12月31日翻訳記事『2014年、益々多くの社会的崩壊がおきる』を思いだした。本をお読みの方、お時間あれば、この記事もお読み頂きたいもの。
ポール・クレーグ・ロバーツ氏について、著者の増田氏は「とくに過激派というわけでも、ごりごりの保守派というわけでもない」と書いておられる。余りにも偶然の一致におどろきながら、小生の理解、増田氏と近いことを嬉しく思う。
昔、2012年12月24日、シュピーゲル・オンライン記事『無人機操縦者の苦悩』を訳した。ニューメキシコで無人機を操縦し、アフガニスタン等でミサイル攻撃をしていたブランドン・ブライトンの話。
『夢の国から悪夢の国へ』423ページに、ブランドン・ブライトンのNBCインタビューに関する話が書かれていて、出典が明記されている。『あきつ・あんてな』2013/6/10
検索したところ下記記事のようだ。
米軍無人爆撃機ドローン・・・こんな戦争って & 市民監視プグラム暴露した元CIA
大本営広報部洗脳からの脱出特効薬、IWJコンテンツにあのビナードさんも!欺瞞表現をえぐりだす素晴らしい語感。毎回爆笑しながら、考えさせられる講演。
2014/06/21 【福岡】アーサー・ビナード講演会 美しい「あべリカ」へようこそ ~オバマ大統領から集団的自衛権を指示(×支持)された安倍首相
2時間22分の熱演 拝見しなければ損!本当です。
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