オーウェル『1984年』のページから: 対ユーラシア非正規戦争
Wayne MADSEN
公開日時 2014年6月23日 | 00:00
Strategic Culture Foundation
‘オセアニアはユーラシアと戦争状態にある。それゆえオセアニアはいつもユーラシアと戦争をしてきた。当面の敵は、常に絶対悪であり、従って、その相手とは、いかなる過去、あるいは将来の、協定は不可能だというものだった’。これは、ジョージ・オーウェルの空想的小説で、地政学から、プライバシーの喪失、監視国家の勃興に至るまで、未来の出来事の薄気味悪いほど正確な予言である『1984年』からの一節だ。オセアニアは虚構的に、イギリス諸島、北アメリカと南アメリカ、南アフリカとオーストラレーシアで構成されていた。オーウェルの世界では、ユーラシアは、ロシアとヨーロッパで構成され、他の大国イースタシアは、中国、韓国と日本を含んでいた。
現代、ワシントン、ロンドン、ベルリンやパリを中心とするオセアニア軍が、ユーラシアを決して侵略しないようにする為、ロシアと中国が益々経済的、政治的、軍事的に協力につれて、オーウェルの反ユートピア的な未来の世界地図を改変した形のものが現実と化しつつある。
先月のロシア国防省が後援したモスクワでの実力者会議、第三回Military and Political Aspects of European Securityで、第一国防次官兼参謀総長のワレリー・ゲラシモフ将軍は、ウクライナで二度、グルジアで一度実施された類の、欧米が資金援助し、組織した‘カラー革命’は、ユーラシアに対する一種の非正規戦争だと述べた。オーウェルのオセアニアによく似た北大西洋条約機構(NATO)諸国が、ユーラシアに対する非正規戦争の開始したという、ゲラシモフの発言は『1984年』のページからはぎ取ったものであってもおかしくないものだ。情報戦、経済制裁や‘欧米の非正規戦争の一環としての代理犯罪組織’や、過激派集団の支援を、ゲラシモフは、ユーラシアに対して向けられて構築されたものとして言及した。
ゲラシモフは、カラー革命は、非軍事的作戦が実施された後、政権転覆をなし遂げる為に、続いて軍事力が利用されることが多いので、欧米の対ユーラシア軍事戦略のかなめだとも述べている。これは現在、東ウクライナの連邦主義者に対する、NATOが支援するウクライナ政府の軍事攻勢や、シリアのバシャール・アル-アサド大統領政権に反対して戦っているイスラム教原理主義叛徒へのNATOの支援にもあてはまる。東リビアで、イスラム教原理主義者の蜂起の後、最終的に、リビアの指導者ムアマル・カダフィを権力から追い落としたNATOによって、空爆を含む軍事介入も行われた。
ゲラシモフのカラー革命に関する発言を、他ならぬ中央情報局(CIA)やアメリカ国務省の見解を反映することが多い非営利的シンク・タンク、戦略・国際問題研究センター(CSIS)の、アンソニー・コーズマンが支持している。コーズマンは、欧米が資金援助するカラー革命は、ロシアと中国に対する新種の戦争だと述べている。
ベラルーシ国防相ユーリー・ジャドビンは‘ゴッドファザー’ジョージ・ソロスと、ボストンのアルバート・アインシュタイン研究所所長、ジーン・シャープを、ヨーロッパや中東で見られた、CIAが資金援助した色や花の名を付けられた蜂起・革命の主要な要因だとして挙げた。ロシア、中国とベラルーシの国軍は、現在、カラー革命を利用した、欧米による政権転覆支援を、アメリカ合州国とNATOの軍事教義の一環と見なしている。モスクワ、北京とミンスクの軍事立案者達は、旧ブラックウオーター、現アカデミ等の、欧米民間軍事契約業者、傭兵を、カラー革命が起きた後の、欧米の政権転覆シナリオの一環と見なしている。
ユーラシアに対する欧米のカラー革命と政権転覆プロジェクトの理由は明確だ。ロシアと中国が、天然ガスや、いにしえのシルク・ロードの記憶を呼び起こす新たな輸送経路を含む、新たなユーラシア・エネルギー・スキームを開発する最前線にいるので、欧米は、ダイナミックな新市場を持ったユーラシアの登場は、単なるライバルであるのみならず、欧州連合や、ワシントンが提案している環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が失墜させられる脅威を感じているのだ。
新たなユーラシアというものの独自性登場が、事実上のオセアニアの政治指導者達を警戒させた。ユーラシアは、ポップ・カルチャー、同性愛、社会的セーフティー・ネットの破壊、宗教軽視、伝統的な家族の破壊、過酷な緊縮財政を推進する放逸なハゲタカ資本主義を強調するロシア、中国、カザフスタン、ベラルーシや、地域内の他の国々で多くの人々が欧米‘文化’と見なしているものよりも、経済発展と伝統の尊重を重視する。
モスクワでの安全保障会議とほぼ同時期に、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と中国の習近平国家主席は、上海で開催された第四回アジア信頼醸成措置会議(CICA)で会合した。そこで、習主席は、アジアが21世紀に入った今、冷戦感情は廃棄されるべきだと強調した。アジアの各代表団が、バラク・オバマ大統領による軍事的冷戦‘アジア回帰’や、安倍晋三首相の、東アジアにおける、失地回復論者的軍事力増強を容赦なく否定するのを日本やアメリカ合州国からのオブザーバー達は傍観していた。多くの点で、アメリカ合州国の太平洋軍と、日本、フィリピンと、韓国は、オセアニアと一時的に連合を組む組織である『1984年』の軍事的‘イースタシア’と良く似ている。
上海で合意された通り、2018年に、天然ガスをシベリアから中国へ送り出す‘シベリアの威力’天然ガス・パイプラインのみならず、かつてのシルク・ロードを復活させ、中国とヨーロッパを、主要なトランス・ユーラシア・ハイウェイ、トランス・シベリア・ハイウエイとヨーロッパのE-30ハイウエイで結びつけるという計画がある。最終的に、アムステルダムと北京を、アジア・ハイウエイ・ネットワークで、A級自動車専用道路が結びつけるのだ。この現代ハイウェー・ネットワークは、アジア古代のシルク・ロードを復活し、商品や乗客をユーラシア中移動させ、その過程で、ユーラシア・ハートランドのはるか僻地に、新たなインフラストラクチャーを建設する。こうした展望を、金融宝くじから締め出されてしまうことになる為、ヨーロッパとアメリカの銀行は懸念している。
プーチン大統領や習主席から、イランのハッサン・ロハニ大統領やアフガニスタンのハミド・カルザイ大統領に至るまでのユーラシアの指導者達は、ウクライナ、グルジアやキルギスタンを破壊したカラー革命は、ジョージ・ソロスのオープン・ソサエティー研究所と財団によって資金援助されており、しかもソロスのヘッジ・ファンド帝国など、ロスチャイルド金融カルテル国際組織の隠れ蓑にすぎないことを十分承知している。ソロスとロスチャイルド家の権益を代表するNATOとオバマ政権は、ユーラシア構想を破壊する為なら、どんなことでもやりかねない。欧州連合との連帯を拒否し、ユーラシアとの絆を築く用意があるように見えたウクライナのヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領の‘ユーロマイダン’による、打倒は、欧米の(あるいは‘オセアニア’の)最初の対ユーラシアの軍事力による間接的侵略の一環だ。
ユーラシアの指導者達の一部は、欧米が発展しつつあるユーラシア連合を挫折させようとしていることに気がついている。カザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ大統領は、アジア信頼醸成措置会議CICAを、ユーラシアにおけるNATOの等価物に極めて近い、新たなアジア安全保障開発機構(OSDA)へと転換することを提案した。ユーラシアが欧米の‘価値観’を拒否することを強調して、ナザルバエフは、OSDAはアジアの‘伝統と価値観’の上に構築されることになろうと述べた。ナザルバエフは、ロシア、ウクライナや、他の国々における宗教崇拝の代わりの、‘プッシー・ライオットやFEMENによる、下品さや、いわれのない裸体の表出で見られるような、欧米文化の下卑た寛大さを否定するユーラシア指導者達の多くを代表して演説しているように見えた。
アメリカ版オセアニアに対する新たな競争相手が、オーウェルのユーラシア中に今や登場しつつある。ハルフォード・ジョン・マッキンダーの論文‘Geographical Pivot of History’で信奉されている‘ハートランド理論’は、ヴォルガ河と揚子江と、北極海とヒマラヤに囲まれたユーラシアのハートランドを支配する大国が、世界の運命を支配すると主張していた。もしユーラシア連合が政治的・経済的連合として成功すれば、アメリカ合州国、イギリス、西ヨーロッパと日本は、僅かに残された資産が、ウオール街、ロンドンのシティーや、フランクフルトの銀行という飢えたジャッカルによって争われる、経済的に活力がなく、社会的衰退に向かいつつある、沿岸‘リムランド’に閉じ込められることになる。シリア、ウクライナやイラクにおける戦争の勃発は、‘オセアニア’と‘ユーラシア’間で差し迫っている戦争の最初の一発にすぎない。
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芝居を見終わって外に出るとにわか雨。傘もなく濡れて帰ったが、雹でないだけまし?
ナチス発言氏のいじめ発言。こういう痴性連中が日本を支配している。金目男。セクハラ男。三代目。ナチス・イジメ男。
アジアの別の属国から、ボンボン政治家が侵略戦争参戦を慶賀にやってきた。
宗主国支配層や、アジアの別の属国傀儡から評価される解釈変更、属国庶民にとって為になることは永遠にないだろう。属国庶民に、子々孫々まで、大いに害をなすだろう。
『夢の国から悪夢の国へ』/増田悦佐著/東洋経済新報社/2300円+税
を、森永卓郎氏が、日本の正確な未来予想図と評しておられる。
小生も一読、「これはたまらない」と思った。増田悦佐氏の力作を「たまらない」と思ったのではなlい。描かれている宗主国の実態だ。
外部に対しては侵略戦争、不平等条約の押しつけ、自国民に対しては略奪・貧困化推進という、宗主国支配者の新自由主義政策の何に、属国傀儡政治家・経営者は魅力を感じるのだろうと思うのだが。
米国の金融資本が一番望んでいるシナリオは、戦争を起こすことによる戦時インフレと、その後のバブル発生だという著者の予言で、納得。
属国支配層も全く同じことを計画しているがゆえの、参戦、砲弾の餌食提供推進だ。
両与党、そして一見、野党を装い、憲法解釈変更を容認する別動隊連中、人の顔をした悪魔だと本気で思う。
そして、彼等に投票をする皆様も。
マドリッド、プラド美術館で見た『我が子を食らうサトルヌス』を思いだした。そして、ヒェロニムス・ボッシュの地獄絵図。
日本なら、人ごみのなかで観覧することになるだろうが、ボッシュの部屋、誰もいなかった。ということで、現実世界のひどさ加減に目を向けよう。
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コメント
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>こういう痴性連中が日本を支配している。
日本人はよく、「人がいい」と自分で自分を評しますが
本当に人がよければ、おかしな連中を大将にすることは
ないですよね。
おかしな連中を大将にして、他人の首まで絞めてくれる人が
果たして「人がいい」と言えるのでしょうか。
投稿: キョウ | 2014年6月25日 (水) 03時56分
集団的自衛権についての小生の予測は完全に外れたようです。自戒。よって今後,この件に関しては,筆を折ります。
追記; 経済評論家の佐高信氏が公明党を「コウモリは成長してもコウモリ」で,『「最後まで反対という無責任な態度はとれない」という「無責任な態度で賛成した」』と批判したことがあります。佐高氏にTVでこうまで言われた以上,もはや同じ事はしないだろうと,考えていましたが,同じ構造を持つ歴史は繰り返されるのでしょう。
投稿: 箒川 兵庫助(く) | 2014年6月25日 (水) 02時31分