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2014年4月 5日 (土)

環大西洋貿易投資パートナーシップに対する、公益通報者による、犠牲が多すぎて引き合わない勝利

ロズリン・フラー博士
公開日時: 2014年4月2日、10:13
Russia Today


AFP Photo / Stan Honda

広い世界が知らないうちに、二つの大規模な貿易協定が、過去数年間進行中だ。

秘密のベールに包まれ、商品とサービスの世界貿易の半分以上を占め、知的所有権等の微妙な話題も含む二つの協定の交渉が、人々の目をかいくぐって行なわれている。

それも昨年末、WikiLeaksが前者の環太平洋戦略的提携協定を暴露するまでのことだ。彼らの手本を、ドイツ人のヨーロッパ議会議員三人(スカ・ケラー、レベッカ・ハルムスとスヴェン・ギーゴルド)が素早く見習い、先月、二番目の協定、環大西洋貿易投資パートナーシップに関するEUの討議資料を漏洩した。

この二つの貿易協定を、それ以外の世界貿易体制と折り合いをつけることは言うまでもなく、世界の貿易体制から引き離しておくことは困難だ。環大西洋貿易投資パートナーシップは、アメリカ合州国と欧州連合とその加盟諸国の間で交渉されており、時に‘TAFTA’( Transatlantic Free Trade Agreement大西洋両岸間自由貿易協定)とも呼ばれるが、通常‘TTIP’と省略されている。交渉前の議論は、おそらくずっと以前から継続していたのだろうが、交渉は2013年に始まった。

環太平洋戦略的提携協定TPPは、環太平洋地域の諸国間で交渉されている。カナダ、アメリカ、日本、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、ベトナム、ペルー、メキシコ、シンガポール、韓国、マレーシア、台湾とブルネイ。交渉は2010年に始まり、この協定は通常‘TTP’と略されている。

この二つの協定の狙いは一体なんだろう? 貿易障壁を引き下げる為の手法には、通常、関税撤廃や業界標準の共通化がある。自動車の安全基準からイワシ等の重要とみなされるものに関する合意や、著作権や特許保護の強化に到るまで、あらゆるものを対象とし得る。

既に、こうしたことに対処するはずの協定が存在していることを覚えている読者もおられよう。1995年に発効した世界貿易機関WTO協定だ。控えめに言って、世界貿易機関は大人気だったわけではない。実際、この機関は、主として、世界中で、脆弱な経済を強引に開かせて、金持ちを益々金持ちに、貧乏人を益々貧乏にする為の道具として利用されてきた。だから、WTOの世界的な枠組み内での、更なる自由化施策に関する交渉が、行き詰まってしまったことは何ら不思議なことではない。


ジョン・グレス / Getty Images / AFP

ドーハ・ラウンド交渉は、2001年以来継続しているが、先進国と開発途上国の間での農業と知的所有権を巡る意見の大きな断絶が主な理由で、めどは立っていない。

かくして、大いに不評なWTOより酷い、貿易自由化による混沌の時代へと更に深く突入するのは良い考えだと、リーダー達がたまたま(主に)同意している諸国の排他的な集団によって、この混乱を招きかねない略語名のTTIPとTTPが交渉されている。投資家-国家紛争解決(ISDS)として知られているものを、協定の枠組み内に制度化し、推進したがっていることが、最も懸念されることの一つだ。

非公式な訴訟

WTOの規則の下で、国家は他の国家を訴えることができる。これは国際法において非常にありふれたことで、もしある個人や組織が別の国家から損害を受けた場合、個人や組織は、外交的保護権の行使として知られている法的慣習によって、彼等に代わって、裁判沙汰にするよう、自国を説得するのだ。つまり、究極的に、国際的次元における個別利益は、国家の集団的利益の下位に位置するのだ。

ところが国際紛争解決には代替手法があり、それは、より限定された状況で、臨時的に行なわれる傾向が多い、国家対企業私設仲裁というものだ。例えば、ある国とある企業が、例えば油田開発等、共同で事業をしようとした際、両者は契約書を作成することが多い。もし国がこの契約を破った場合(特に政権が交替したような場合、時折おきる)、私企業は、基本的に任意のミニ裁判所において、仲裁解決で損害補償を得ようとするわけだ。

これが投資家国家紛争解決の一つの形だが(‘投資家’という言葉は、国際法の下で非常に広く解釈される)、契約対象に限定されているので、契約の結果は誰でも容易に予測できる。


ロイター / Neil Hall

TTIPとTTPは、後者の道を狙っているが、ISDSメカニズムを創り出す条項を提案し、遥かに拡大した形でだ。特定の天然資源開発を巡る個別協定と違い、TTIPとTTPは、広範なものを、国家において投資と見なされる対象としている。それゆえ、こうした条項を組み込めば、もしある国が後に、例えば公衆衛生を守る為、TTIPあるいはTTPの条件と矛盾する法律を制定すると、損害を被った企業(例えば、新たな規制に違反する製品を製造していた為に)は、通常の裁判制度を無視して、条約の順守を求めて、国を訴えることが可能となることを意味するのだ。言い換えれば、外国企業はこうした協定により、受け入れ国の法律の適用を受けないことになるのだ。

もしこれが現実離れした妄想のように見えるようなら、全員既にまさにそのような制度、NAFTA(北米自由貿易協定)の下で暮らしているカナダ、アメリカとメキシコの国民をお考え願いたい。

一例だけあげれば、NAFTA締結から二年後の1997年、吸入した場合、神経障害を引き起こしかねないという証拠から、MMTを、乗用車とトラック向けガソリン製品用に使用することをカナダ政府が禁止した。証拠は100パーセント明らかではなかったが、政府はリスクを考えれば、禁止は正当化されると考えたのだ。アメリカ企業で、カナダのガソリンに使用されているMMT唯一のメーカー、エチル・コーポレーションが、禁止は同社の製造工場の価値を下げ、間接的に収用するものだと主張して、カナダ政府を訴えた。カナダは、禁止撤回を強いられ、MMTは、自動車メーカーに、MMTは自動車のエンジンを傷つけると抗議されて、最終的に撤退するまでの数年間、カナダのガソリンに即座に復活した。

ごろうじろ。ISDS発動。

現在の提案の下では、企業は補償を求めて訴えることが可能であるに過ぎず、法律を撤回させることはできない、とEUは主張しているが、これは高価につき、将来、適切な規制を阻んでしまう可能性がある(禁止撤回に加え、カナダは補償として、エチル社に1900万ドル支払った)。企業が間接収用を主張する能力を抑制するという話題で、EUはいくつか曖昧な発言をしてはいるものの、EUが決してエチル社のような目には会うことはないという確実な保証とは程遠い。

もちろん、投資家-国家紛争解決の支持者達は、立証された脳障害リスクの様に些細なことに反対する国民の気まぐれな変わりやすさから、脆弱な企業を守る為には必要だと主張する。経済が繁栄できる十分な安定性を生み出す為に、経済を政治から切り離す必要があるという主張だろう。恐怖に基づくこの主張は、多くのレベルで、人々の目をそらすオトリなのだ。


ロイター / Jumana ElHeloueh

大儲けしている大企業

その数字が、普通の人間には到底理解できないほどな為に、大企業がどれほど儲かるかについて、大半の人々はさほど精通していない。エクソン・モービル、2012年で最も収益の大きな企業、約450億ドルの利益を上げており、ロイヤル・ダッチ・シェルは、300億ドルで、アップルは、260億ドル、ブリティッシュ・ペトローリアム(メキシコ湾石油流出で有名な)は、250億ドルだ。大局的に見れば、エクソン・モービルは、毎年ケニヤ、アイスランド、セルビア、エストニア、ボリビアやブルネイ等の国々のGDP以上の利益を出しており、アップルの様なハイテク企業もこれに近い。生み出される収入は更に大きい。2012年、エクソン・モービルは、4500億ドル以上の収益を生み出しており、オーストリアや南アフリカやアラブ首長国連邦のGDPよりも大きく、サウジアラビアのGDPの半分以上だ。

こうした企業は、貿易協定レベルで制度化したISDSを利用できなくとも、何十年も、場合によっては一世紀以上も事業を行っており、しかも中規模の国家の年間GDPと同等の利益を、どうにかひねりだせているのだ。だから‘こうした保護を受けられない場合、これら大企業は事業を続けるだろうか?’という疑問に対する答えは、はっきりイエスだ。こうした企業は文字通りぼろもうけし、TTPとTTIP交渉に参加する諸国は極端に安全な投資先となるのだ。

大企業のプロパガンダとは逆に、大半の国々は、自国がそれで事業をしたいと思うような条件決定をかなり自由にできるのだ。ぴったりの例はこれだ。2008年に、ウゴ・チャベスが、一部の石油とガス・プロジェクトを部分的に再国有化した後も、二社(上記のエクソン・モービルと、コノコ・フィリップス)を除く全石油会社が、ベネズエラでの事業を継続を選んだのだ。

実際に、ISDSの利用を増やす正当な理由などない以上、情報漏洩後、ヨーロッパの政治家の中に疑念を表明する人々があらわれたのもおそらく驚くべきことではなく、そうした最初の人々に、ドイツ経済相ジグマール・ガブリエル(SPD)がいる。まれなことなのだが、圧力に押され、EUは、先週木曜日、国民が具体的にTTIPとISDSについての考え方を投稿するのに使えるウェブ書式を用意して、ISDSに関する公開協議手続きを立ち上げた。

交渉中、業界ロビイストは、欧州委員会と、119回もの会合の機会を与えられていた一方、一般国民は、EU自身の曖昧な宣伝用資料に包囲される中で、ちょっとしたアンケートができるようになったのだから、率直に言って、これは犠牲が多すぎて引き合わない勝利だ。シャンペンも、キャビアも貰えないが、EUは、書式にきちんと書き込むには、90分はかかるだろうと言っている。しかしながら、皆様がこの時間を惜しむようなことがあれば、‘人々は関心がなかったのだ’と後になって言われ、ISDSに満ちた世界へ歓迎されることとなる。

これらのこれまで秘密文書を暴露することにより、WikiLeaksとドイツの欧州議会議員達は、自らのシャンパン瓶の栓を抜き、肘掛け椅子に座ったまま、自分達のロビー活動に参加する機会を国民にもたらしたのだ。

現在は、INSYTEグループの研究員である、ロズリン・フラー博士は、かつてトリニティー・カレッジと、アイルランド国立大学で教鞭をとっていた。fullerr@tcd.ieで、彼女と連絡できる。

本コラムの主張、見解や意見は、もっぱら筆者のものであり、必ずしもRTのそれを代表するものではない。

記事原文のurl:rt.com/op-edge/transatlantic-trade-agreement-817/
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毎回の機械翻訳風読みにくい文で恐縮だが、「EUが、ISDSについて、国民の声を聞こうとしている」点を判読いただければ幸い。

記事にリンクがあるが(先週木曜日)、EUのWebには本当に告知、書式がある!
European Commission launches public online consultation on investor protection in TTIP

属国大本営広報部、こういう重要な情報は無視。大統領来日前の宗主国とのTTP交渉なる記事しか書かない。細胞と長寿番組終了と人気女優出演問題の方がTPPより重要だ。

由らしむべし知らしむべからず
分割し対立させて統治せよ

台湾では、学生が中国とのサービス協定に反対して国会を占拠している。
日本に置き換えれば、TPP反対派学生による国会占拠。その気配、微塵も無い。

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コメント

 白馬は馬にあらず(夕陽妄語Ⅱ,朝日新聞社)とUSTRフロマンが解任されない理由

 白を1とし,馬を1とした場合,白馬は1+1=2で馬=1であるから,白馬は馬に非ずというのが,『荘子』時代の公孫竜先生の証明である,と加藤は解説する。しかし近代の数学は西欧において,18世紀の西欧においてのみ成立したのであって,中国で成立しなかったのは,公先生や孔子のような知的水準の高い方が中国にはたくさん居らしたからであるという推測も成り立つ。

 ところで,TTIPとは何か。PはだいたいPartnership だと思っていい。よせばいいモノを調子に乗ってロズリン・フラ-博士紹介する"Public consultation on modalities for investment protection and ISDS in TTIP" の始めの "Scope of the substantive investment protection provisions" を読んでみた。 全体としてそれほど問題がある文章であるとは思えない。

 しかし棺桶に片足を突っ込み,物事に拘らなくなったとは言え,私には「投資」とか「投資家」の意味がよく分からない。本文で前者は"intentionally broad" であり,後者はハッキリしない。つまり「定義」がハッキリしないモノについて「公衆から相談」を受けるというのだ。定義が明らかでない場合,私など「90分」どころか何年経っても結論は出せないだろう。

 中学校や高等学校で習った数学には集合論というモノがあって,定義がまずあり次に要素とかの話が出てきて,普遍集合とか部分集合の話になる,と記憶している(中高大の数学の先生,間違っていたら訂正してください)。馬の特徴を備えている動物は,赤毛であろうと,白毛であろうと,縞模様があろうとなかろうと,「馬」である。出世魚のように,発達段階において名前が変わってもニシンがサンマに変わることはない。

 "improving the definition of 'investor'" に至ってはまじめな中高生であった私には余計分からなくなる。最近のヤフ-検索にほとんど同じ。アマゾンや楽天からは絶対に本などは買わないと決心するに至った昨今だが,EUの議員たちは近代数学以前に戻ったようだ。これでは一般国民の相談に容易に応じられまい。お気の毒である。

 ところで事の発端は,12年1月3日に発表された米国の『新国防戦略指針』である。オバマの署名があるこの10頁に及ぶ文章の中に,『新しいパ-トナ-シップ』という言葉が出てくる。このパ-トナ-シップが米国の『安全保障に役立つ』というのだから,食糧安保でも,石油備蓄戦略でも何でも安全保障の対象になって厄介なのだが,TPPもその中の一つである。
 集合論初歩で言えば,「安全保障」が普遍集合でその部分集合として,ネオコンの利益,多国籍企業の利益,関係議員の利益などがあり(重なった部分はインタ-セクションと読んだ記憶がある),それらの部分集合として「新しいパ-トナ-シップ」という部分集合がある。つまり,TPPはこの「新しいパ-トナ-シップ」の要素という関係にある。

 TTIPとTPPは大西洋,太平洋を越えたパ-トナ-シップ。安倍政権の某首相補佐官に拠れば,アフリカ大陸を中心に考えられたパ-トナ-シップもあるらしい(そのためにアラブの冬を演出した?)。ならば,ベネスエラやチリそしてブラジルの政権を転覆させ,「新しいパ-トナ-シップ」を構築する戦略もあるに違いない。

 今月3日,USTRのフロマンは議会に立ち証言したそうだが,(日本抜きの)TPP合意に自信があると言ったらしい。忘れては居ませんか,マレーシアもと森の石松に言われそうだが,『新国防戦略指針』の中に「新しいパ-トナ-シップ」がある限り,2008年のオバマ公約に反してもフロマンは解任されるどころか,のさばり続けるだろう。
 しかし,EUの議員がリ-クしたため,もはや秘密交渉は透明性に向けて一歩を踏み出したと言えよう。さすがのCIAもEU側の透明性要求を抑えきれないだろう。しかもS.ロワヤルが環境・エネルギ-大臣になった。環境破壊を進める多国籍企業に俄然と立ち向かうだろうし,またそのことを期待したい。

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