世界を戦争に押しやるアメリカ政府
Paul Craig Roberts
2014年4月14日
政権初期、ソ連支配者達が愚かにもウクライナに編入した為、大半が元ロシア領だった、ウクライナの東と南の地域のロシア人分離主義者達に対する軍事的弾圧を開始するべく、CIA長官がキエフに派遣された。
ウクライナのうち、ロシアのものであり、ロシア語が話されている地域が、ロシア語を話す住民達の迫害に屈して、EUとNATOへの取り込みを支持する可能性など少ないことを、アメリカ政府のウクライナ奪取計画は見過ごしていた。アメリカ政府は、ロシアを黒海海軍基地から追い出すつもりだったクリミアを失ってしまった。ウクライナ奪取計画がうまく行っていないのを認める代わりに、アメリカ政府は失敗を認めるわけにゆかないので、危機を一層危険なレベルへと押しやっているのだ。
もし旧ロシア領がロシアに戻り、ウクライナが分裂すれば、アメリカ政府は、キエフで自分がが仕掛けたクーデターの結果、ウクライナの旧ロシア州をロシアに復帰させることになって恥ずかしい思いをすることになる。この屈辱を避けるべく、アメリカ政府はこの危機を戦争へと追いやっているのだ。
CIA長官は、アメリカ政府が抜てきしたキエフ傀儡政権に、ロシアの支援とされるものを得て、ウクライナ攻撃している“テロリスト”を撃退する為の支援を国際連合に申請するよう指示したのだ。アメリカ政府の語彙では、自決というのは、ロシアによる干渉の印なのだ。国連というのは、本質的に、アメリカ政府が資金提供をしている組織なのだから、アメリカ政府は自分が望むことを得られる。
ロシア政府は既に数週間前、東と南ウクライナの抗議行動参加者に対する暴力の行使は、アメリカ政府が、グルジアの傀儡支配者に、ロシアの平和維持部隊と南オセチアのロシア住民を攻撃するよう指示した際、南オセチアでロシアが、そうすることを強いられたと同様、ロシア人保護の為、ロシア政府は、ロシア軍を派兵するよう強いられることになるのをきっぱりと明らかにしている。
アメリカ政府の傀儡諸国のうちの一国がロシア人を攻撃するのを、ロシア政府が座視することができないことをアメリカ政府は知っている。それでも、アメリカ政府は、この危機を戦争へと追いやっている。
ロシアにとっての危険は、ロシア政府が、外交、国際機関、国際協力や、ドイツ政治家達や、ヨーロッパの他のアメリカ傀儡諸国の政治家達の常識や私利私欲に頼ろうとしていることだ。
ロシアにとって、これは致命的な誤りとなりかねない。アメリカ政府に善意など皆無で、あるのはウソだけだ。ロシアの遅れにより、アメリカ政府はロシア国境と黒海に兵力を集結させ、プロパガンダでロシアを悪魔化し、アメリカ国民を戦争熱に駆り立てる時間が得られた。この戦争熱は既に置きつつある。
ケリーは、ラブロフに、アメリカ政府はロシアに対して聞く耳を持たないことを明らかにしている。アメリカ政府がお金をたんまりくれる為、ヨーロッパのアメリカ傀儡もロシアには耳を貸そうとしない。ヨーロッパの政治家達にとっては金の方が人類の生存より大切なのだ。
私の考えでは、アメリカ政府は、ウクライナ問題を、外交的、合理的な方法で解決しようと思ってはいない。即座にウクライナのロシア地域を占領し、地域を、元々の所属先のロシアに再編入することがロシアにとって最善の動きかも知れない。これはアメリカと、そのNATO傀儡の戦争準備が済む前に行なわれるべきだったのだ。戦争の目標が失われてしまっていれば、アメリカ政府が戦争を始めるのがより困難になる。元々伝来の領土であった地域をロシアが再編入しようと、するまいと、アメリカ政府の果てしない宣伝で、ロシアは悪魔化して描かれる。もしロシアが、こうした地域がアメリカ政府によって弾圧されるのを許せば、ロシア政府の威光と権威は崩壊する。おそらく、それをアメリカ政府は狙っているのだ。
もしプーチン政権が、ロシア系ウクライナ人が弾圧されるのを座視すれば、プーチンの威光は急落し、アメリカ政府は、ロシア政府余りにも愚かに許してしまったアメリカ政府が資金援助する何百ものNGOを行動させて、ロシア政府に止めを刺すだろう。ロシアはアメリカ政府の第5列によって分裂する。
アメリカのドル本位制国際決済制度に留まることによって、ロシアと中国政府は、深刻な戦略的過ちをおかしたと私は思う。BRICS諸国や、考える能力がある他のいかなる諸国も、即座に、アメリカ帝国主義のための仕組みであるドル体制から離脱すべきなのだ。BRICS諸国は、即座に独自の決済制度、専用通信・インターネットを確立すべきだ。
ロシアと中国は愚かにもこうした戦略的過ちをおかしてしまった、共産主義の失敗と圧政で心を乱して、両国は素朴にも、アメリカ政府は純粋で、アメリカ政府が、法律、正義、慈悲と人権の支持者として宣伝している自らの描写を本気で守ると思い込んでいる。
実際“例外的で必要欠くべからざる国”アメリカは世界に対する覇権を断固維持するつもりだ。ロシア、中国とイランはアメリカ政府覇権の邪魔な為、攻撃対象になっている。
ロシアへの攻撃は高まりつつある。
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Paul Craig Robertsは、元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えていた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOSTが購入可能。
記事原文のurl:www.paulcraigroberts.org/2014/04/14/washington-drives-world-war-paul-craig-roberts/
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たまたまみた大本営広報部テレビ海外ニュースで、ウクライナ問題にまつわるプーチン大統領のテレビ出演、ロシア国民の考え方を怪説していた。
「ロシア人がクリミア編入を支持しているのはなぜでしょうね」という発言と、それに対する「国営テレビですから、ロシア国民の支持も、番組中のやりとりも、割り引いて考えなければなりませんが」という趣旨の発言があった。
「国営テレビだから、日本国民の支持も、番組中のやりとりも、割り引いて考えなければならない」と思って、あわてて電源を切った。
「佐賀武雄市の官民一体の授業」というのも気味が悪い。市長経歴を見て納得。
総務省・文部省が推奨する改革、まともなはずはないだろう。
植草一秀の『知られざる真実』 に恐ろしい記事がある。
オバマの3日滞在と主権者利益交換は許されない 2014年4月15日
- 集団的自衛権行使を安倍政権が憲法解釈を変更して容認すること。
- TPP交渉で日本が米国の要請を受け入れて譲歩すること。
韓国の船の転覆では多数の高校生が行方不明になっている。
植草氏の想像があたっていれば、宗主国トップ来日と引き換えに、属国国民の未来はどん底に突き落とされる。
国がまるごと転覆するようなもの。大本営広報部・売女マスコミは、この二つの売国行為の恐ろしさにふれない。ふれても皮相的な話題のみ。決して非関税障壁問題には触れない。
韓国船の船長は逃げて無事だという。日本の為政者も無事逃げるだろう。とんでもない売国行為をする為政者、もちろん自分が侵略戦争に出征するわけではない。絶対安全な立場で国民を売り飛ばす。今選挙権がない若者、まだ生まれていない将来の日本人全員が、最低の属国に暮らすことになる。
植草氏の論説、著作、なるべく拝読している。もちろん、的確な分析をしておられるからだ。
しかし、今回の評論は「とんでもない間違い」であって欲しいと思う。
日本を滅亡に押しやる宗主国アメリカと属国の両政府。
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