ハワード・ジン狩り:「民衆のアメリカ史」を州立学校から排除しようとした元インディアナ州知事
Democracy Now!
2013年7月22日、月曜日
AP通信社が入手し、暴露された新たな電子メールは、元インディアナ州知事ミッチ・ダニエルズが、2010年、この歴史学者が亡くなったわずか数週間後に、ハワード・ジンの著書を、州の教室から撤去しようとしたことを示している。ジンには百万部以上売れ、全米の高校や大学で、いまでも使用されている傑作『民衆のアメリカ史』を含む多くの著書がある。インディアナ州教育担当幹部とのやりとりの電子メールで、ダニエルズはこう書いている。"この酷い反米学者もとうとう亡くなった。" "民衆のアメリカ史"を"実に忌まわしい、あらゆるページでアメリカの歴史を誤って記述する、事実に反する虚報の塊"だと述べた後で、ダニエルズはこう問うている。 "インディアナ州のどこでも、この本は使用されていないと誰かが請け合ってくれるだろうか? もし使用されているのであれば、更に多くの若者達が、我が国の歴史の全くデタラメな解釈を無理やり教え込まれる前に、どうすれば、それを一掃できるだろう?" ダニエルズのコメントは、最近彼が、インディアナ州のパーデュー大学の学長に就任したこともあって、学界内で怒りを引き起こした。お二人のゲストにご参加いただく。ジンのベストセラー作品に対する決定的な主要手引きとされている"Voices of a People’s History of the United States"のジンとの共同編集者アンソニー・アーノヴ氏。そしてユニオン神学校教授のコーネル・ウエスト博士だ。
書き起こし
これは急ぎの書き起こしである。文章は最終版でない可能性がある。
エイミー・グッドマン: 傑作『民衆のアメリカ史』を含め多数の本の著者である故人の歴史学者ハワード・ジンの著書を巡る戦いについて見てみます。百万部以上売れたこの本は全米の高校や大学でいまでも使われています。
ハワード・ジンは、2010年1月27日に、87歳で亡くなりました。ジンが亡くなって二週間もたたない時期に、当時のインディアナ州知事ミッチ・ダニエルズが、ジンの著書を、インディアナ州の学校から撤去しようとしました。先週、AP通信社が公式記録要求によって、ダニエルズの電子メールを入手した後に、この暴露が報道されました。
インディアナ州教育担当幹部との電子メールのやりとりで、ダニエルズはこう書いています。"この酷い反米学者もとうとう亡くなった。" 『民衆のアメリカ史』を、"実に忌まわしい、あらゆるページでアメリカの歴史を誤って記述する、事実に反する虚報の塊" だと述べた後で、ダニエルズ知事はこう問うています。"インディアナ州のどこでも、この本は使用されていないと誰かが請け合ってくれるだろうか? もし使用されているのであれば、更に多くの若者達が我が国の歴史の全くデタラメな解釈を無理やり教え込まれる前に、どうすればそれを一掃できるのだろう?’とダニエルズは問うているのです。
ダニエルズ知事の発言は、最近彼がインディアナ州で二番目に大きな大学、パーデュー大学の学長に就任したこともあって、学界内で怒りを引き起こしました。金曜日、アメリカ歴史学会は下記の声明を発表しました。ダニエルズの電子メールの"精神と意図は遺憾だ" 。アメリカ歴史学会はこう書いています。"学校や大学のカリキュラムから弾圧する為に、特定の文章を糾弾しようという企みは、民主的社会には相応しくない。"
元知事で、現在パーデュー大学学長のミッチ・ダニエルズは、自分の行為を擁護しています。AP通信社への電子メールで彼はこう書いています。"我が国の学校において、間違ったアメリカ史を教えてはなりません。アメリカには、ジンの様なペテン師から守るような州の教科書の監督を要求する法律があり、インディアナ州内の学校ではどこも、彼の著書を生徒達に押しつけていないことがわかったのは心強いことです"と彼は書いている。
さて、これについて更にお話をする為、アンソニー・アーノブさんにご参加いただきます。彼はジンのベストセラーに対する決定的な主要手引きとされているハワード・ジンの『Voices of a People’s History of the United States』の編集者です。彼の最新刊は『ハワード・ジンの演説: 1963年から2009年の演説集』です。アンソニー・アーノブさんは、72年から、1987年まで、インディアナ州の公立学校に通いました。彼の家族はインディアナ州ブルーミントンに暮らしていますが、アンソニーさんはそこで育ちました。
ユニオン神学校教授のコーネル・ウエスト博士にもご参加いただきますです。
お二人とも、デモクラシー・ナウ!にようこそ。アンソニーさん、この電子メールをAPが公表した際は驚かれましたか?
アンソニー・アーノブ: 私は全く驚きませんでした。ミッチ・ダニエルズがインディアナ州でしたことは、教員達、労働組合が耐えず攻撃され続けている一例なのです。彼は実際、スコット・ウォーカーが、ウィスコンシン州、最初に州内の組合員労働者の団体交渉権を廃止する大統領行政命令を実施しようとしていることの模範を確立したのです。インディアナ州は、23番目です。「就労する権利が与えられる州」という言い方をしたくはないのですが。インディアナ州を23位のいわゆる就労する権利が与えられる「就労する権利が与えられる州」にすると言うより、これは実際には、労働者から権利を奪うもので、絶えず、教育学部を追求しているのです。これは全国的攻撃で、ダニエルズはその一環で、教育学部は教員研修員の心を汚していると言っているのです。あなたが引用された電子メールを送信した直後、彼は2010年7月、ブルーミントンのインディアナ州大学で行われていた教員研修プログラム。そして彼はこう主張しています。"ああ、私は幼稚園から高校生までの教育について話しただけだ。私はそういうつもりはなかった。私は幼稚園から高校生まで守りたいと思っている。" 彼は実際には、生徒達にアメリカ史に対する異なる視点を、いかにして提示するかを理解する一環として、人々がハワード・ジンの本を読んでいる教員研修に関する計画を追求していたのです。
エイミー・グッドマン: デモクラシー・ナウ!に出演された、ハワード・ジンについてお話したいと思います。2009年5月に彼と話しました。彼と色々話しましたが、これが2009年5月、『Voices of a People’s History of the United States』の新版発売の機会に、ニューヨークに来た際のクリップです。その本について、彼が良く聞かれる質問について説明して欲しいと私は尋ねました。政府の政策、この国で伝統的な英雄とされる人々について、それほど批判的であって良いのでしょうか?
ハワード・ジン: 人々がこの質問を何度も何度もするというのは本当です。偉大な英雄だと教えられているコロンブスについて、コロンブスは、金を求めて、インディアンの手足を切断したり、誘拐したり、殺害したのだと子供達に教えるべきでしょうか? 我が国でもっとも偉大な大統領の一人として崇められているセオドア・ルーズベルトは、実は、戦功を愛し、フィリピンで虐殺を行ったアメリカ人将軍を慶賀する戦争屋だったと教えるべきなのでしょうか? 我々は若者にこれを語るべきでしょうか?
答えはこうだと思うのです。我々は若者に正直であるべきです。我々は若者を欺いてはなりません。我々は我が国の歴史について正直であるべきです。我々は、アンドリュー・ジャクソンやセオドア・ルーズベルト等の伝統的な英雄をこき下ろすだけではなく、若者達に、それに代わる一連の英雄を提示すべきです。
エイミー・グッドマン: 亡くなった歴史学者ハワード・ジンでした。アンソニー・アーノブさん、これはどういうことなのでしょうか? ミッチ・ダニエルズ元知事は現在パーデュー大学の学長ですから。
アンソニー・アーノブ: ええ、実際、わずか数日前、パーデュー大学評議会は就任してわずか6カ月で、58,000ドルのボーナスを彼に支払いました。はい。
コーレル・ウェスト: ウワーッ!
アンソニー・アーノブ: 410,000ドルの給料に加えてです。ですから彼は評議会に支持されているのです。彼は知事として、メンバーが評議会に入るのを助けましたから。今、反対運動が起きています。パーデュー大学の教職員は団結しています。多数の教員組合や全国教育協会が、ダニエルズに圧力をかけています。しかし、彼は非常に自己主張が強く、自分の立場を譲らず、ハワードの著書にまつわる彼の言辞をエスカレートさせています。ですから、これは継続的な戦いになるだろうと思っています。
エイミー・グッドマン: これはハワード・ジンに限ってのことでしょうか?
アンソニー・アーノブ: いいえ、ハワード・ジンに限った話ではありません。実際、きわめて重要な教育研究に対し、広範な攻撃が行われています。ジェームズ・ローエンが論文を書いており、そこで彼は指摘しています。彼が"白人だけの町(サンダウン・タウン)"についての本を書いて、最近ミッチ・ダニエルズが画策した膨大な助成を得て、労働組合を認めない自動車工場を、ホンダが建設したインディアナ州グリーンズバークの出来事を紹介した際、彼はインディアナ州公民権委員会が企画した三回の講演をする予定でした。その講演は、元知事ダニエルズの事務所による圧力の下でキャンセルされました。ですから、非常に政治色が強い状況になっているのです。ミッチ・ダニエルズの様な連中にとって、危険なある種の歴史があることに連中は気がついているのです。もし人が、社会運動の歴史について、権力者達に挑戦した人々の歴史について、労働組合の重要性について、公民権闘争の重要性について、全国規模の政治的野望を持った連中である、ミッチ・ダニエルズのような、知事、大学学長の狙いを脅かすような歴史を教えれば。
エイミー・グッドマン: コーネル・ウエスト教授、あと30秒しかありません。御意見を伺えますか? あなたはハワード・ジンを良くご存じです。あなたも教授で、アメリカの国内・海外政策について批判的な本を何冊も書いておられますね。
コーレル・ウェスト: ええ、私はここで親しい仲間の著作に敬意を表したいと思いますし、光栄にも私は、ハワード・ジンの人種に関する本の前置きを書かせてもらっています。しかし、覚えておくべき重要なことは、これは彼の著作の力を示しているのですから、これはハワード・ジンに対する賛辞だということです。現代のハワード・ジン達がいます。イラ・カツネルソン、エリック・フォナー、デイヴィッド・ブリオン・ディヴィス、バーバラ・フィールズ、そしてロビン・ケリーです。これは"アメリカの過去と現在について真実を語ろうではないか、それも一般人、とりわけ若者に結びつく形でしようではないか"という、より広範な文脈の一環です。そして私達は若者達に多くの希望を見いだしています。彼等はもうこうしたあらゆる偽善や虚偽や犯罪行為にうんざりしているのです。
エイミー・グッドマン: ここでお別れしなければなりません。コーネル・ウエスト教授と、編集者でハワード・ジンの協力者アンソニー・アーノブさんにお礼申しあげたいと思います。
記事原文のurl:www.democracynow.org/2013/7/22/censoring_howard_zinn_former_indiana_gov
番組紹介の日本語記事はこちら。democracynow.jp/dailynews/13/07/22/3
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『民衆のアメリカ史』素晴らしい書籍だが、翻訳本は、価格的に決して民衆の教科書ではない。庶民が上下巻を購入する意欲をそぎかねない「価格」なのが残念。清水の舞台という雰囲気で、歯を食いしばって購入したのを覚えている。
子供の頃、貧しいので、十分な小遣いなどなく、決して買うことはできなかったが、縁日のバナナの叩き売り、見ていて楽しかった。「香具師の啖呵売」。門司には、バナナの叩き売り発祥の地という人形があった。
長じて老い、ささやかな年金で暮らす今、国まるごとの叩き売りは見ていて悲しく恐ろしい。売女傀儡政治家と、売女マスコミの火事場叩き売り。未来永劫、この植民地属国民の生活に祟る。「傀儡の国家売」
『はだしのゲン』に対する弾圧が、全国的に、着実に広がりつつある。ごく一部の方々による偶発的出来事では決してないはずだ。
この番組にある宗主国の『民衆のアメリカ史』と同様、戦争に反対する、まともな意見を封殺する為の、戦争推進体制権力による意図的・組織的な企みに違いない。宗主国のこのモデルが、今そのまま、属国において大規模に実施されているに過ぎない。
ハワード・ジンに関連して幾つか記事を翻訳してある。
お読みいただきたいのは、大変な長編の下記記事。
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