欧米によるウクライナ掠奪開始
Paul Craig Roberts
2014年3月29日
キエフの“マイダン抗議行動”は実際には、選挙で選ばれた民主的な政権に対して、アメリカ政府が画策したクーデターであることが今や明らかだ。クーデターの狙いは、NATO軍事基地を、ウクライナのロシア国境に配備し、ウクライナを掠奪する、欧米の金融権益の煙幕として機能するIMF緊縮政策を押しつけることにある。金で動員された訳でないのに、街頭に繰り出した真面目な理想主義的な抗議行動参加者は、自国を破壊するという陰謀のだまされやすいカモだったのだ。
政治的に、伝統的ロシア領が、レーニンとフルシチョフによって、ウクライナ共和国の国境に編入された為、ウクライナは、持続困難なウクライナとロシア領土の寄せ集めなのだ。フルシチョフによって、ウクライナに編入されたクリミアは既に離脱し、ロシアに編入した。一定の自治が認められない限り、東部と南部ウクライナのロシア地域も離脱して、ロシアに編入する可能性がある。もし、ロシア語話者に対する、キエフ傀儡政権が示している敵意が続けば、より多くの人々がロシアに亡命する可能性がある。
アメリカ政府が押しつけたクーデターは、しっかり組織された右派セクターと、アメリカ政府が押しつけた傀儡との間の紛争の高まりと見えるものに起因する別の難問の可能性に直面している。もしも、この二つの集団の間で、武力紛争が起きるようなことがあれば、アメリカ政府は、傀儡に支援を送る必要があるという結論を出す可能性がある。ウクライナにアメリカ/NATO軍が駐留すれば、ウクライナ内の残りのロシア語圏を占領するというプーチンに対する圧力を生み出す可能性がある。
政治的、地理的問題が解決する前に、欧米によるウクライナ掠奪は既に始まっている。欧米マスコミは、他の物事について真実を伝えないのと同様、IMF“金融支援策”についても全く真実を伝えていない。マスコミ報道と多数のウクライナ国民は、IMF はウクライナに何十億ドルも与えて、ウクライナを財政的に救おうとしていると思い込んでいる。
ウクライナは、IMFの資金を一ドルたりとも、決して目にすることはない。IMFがしようとしているのは、ウクライナの債務を、IMFへ置き換え、ウクライナの債務を、欧米の銀行に置き換えることだ。IMFは、欧米の銀行に譲り渡し、欧米の銀行は、IMF資金の額だけ、ウクライナの債務を減らす。ウクライナは、銀行に借金がある状態から、IMFに借金がある状態に変わるのだ。
今や掠奪が開始可能になった。IMF借款は、新たな条件をもたらし、、ウクライナ政府が、IMFに返済する為にお金をかき集められるようにすべく、ウクライナ国民に緊縮政策を押しつける。悪戦苦闘しているウクライナ国民に押しつけられるIMFの条件には、過酷な低減老齢年金、行政サービス、公務員雇用や、天然ガス等の基本的消費への助成等がある。既に低い生活水準は急落する。更に、ウクライナの公的資産や、ウクライナ人が所有する民間企業は、欧米の買い手に売り飛ばすしかなくなる。
更に、ウクライナは、通貨を自由変動制にしなければならない。投機家連中が通貨を集団攻撃し、空売りし、通貨価値が非常に安く下げられてしまう(結果的に、輸入品価格が極めて高くなる)のを防ぎ、外国為替市場で自国通貨を守り支える為の悪あがきで、ウクライナは更なる金を借りることとなろう。もちろん、通貨投機家達は借金で終わり、ウクライナは、通貨以上に、更なる借金地獄に陥って終わる。
腐敗は伝説的なものなので、だまされやすいマイダン抗議行動参加者への直接的な結果は、ウクライナ生活水準の更なる低下、更なる腐敗、ウクライナ経済政策に対する主権の喪失と、ウクライナの公的、私的資産の欧米利権への移転だ。
もしウクライナがNATOの手中にも落ちてしまえば、ウクライナは対ロシア軍事同盟に加入することとなり、ロシア・ミサイルの標的ともなる。ウクライナ人にはロシアに親戚がおり、ロシア人にはウクライナに親戚がいるので、これはウクライナとロシアにとっての悲劇だ。この二国は200年間、本質的に一つの国だった。欧米の掠奪とアメリカ政府の世界覇権への衝動によって彼等を分断することは、とんでもない不面目、大罪だ。
仕組まれたマイダン抗議行動に参加した、だまされやすいカモ達は、生涯にわたって参加を後悔するだろう。
抗議行動が始まった時、私は結果がどのようになるかを書き、そのうち掠奪の過程を説明したいと書いた。私が書くは無いようだ。ミシェル・チョスドフスキー教授が、ここでIMF掠奪過程を、豊富な史実と共に説明しておられる。
http://www.globalresearch.ca/regime-change-in-ukraine-and-the-imfs-bitter-economic-medicine/5374877
最後に一言。国々が次から次へと欧米によって掠奪されている明白な証拠にもかかわらず、債務を抱えた国々の政府がIMFの措置に署名し続けている。各国政府は一体なぜ、外国による自国民の掠奪に同意し続けるのだろう? 唯一の答えは、連中は金を貰っているからだ。ウクライナを襲いつつある腐敗は、前政権を清廉に見せるようになるだろう。
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Paul Craig Robertsは、元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えていた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOSTが購入可能。
記事原文のurl:www.paulcraigroberts.org/2014/03/29/western-looting-ukraine-begun-paul-craig-roberts/
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大本営広報、捕鯨問題と、シンデレラ?STAP細胞問題で忙しい。シンデレラは英語でCinder、シンダー、「灰」から派生した、灰かぶり姫。真夜中をすぎてカボチャ馬車に乗って自宅に帰り、もとの掃除・下働きに戻るが、やがてガラスの靴がぴったりあい、王女様になる。これと対照的に、王女様にガラスの靴(STAP細胞再現)はなく、普通の女性に戻って終わりそうだ。こうした実験、筋がよければ、本人がいなくとも再現可能なはずだろう。
しかし研究があやしくても、それだけのこと。彼女の人生は大変なことになろうが、一般庶民に、そして庶民の子々孫々の生活に、哲学的展開に、影響があるわけではなかろう。
一方、大本営広報部は全く本気で報道しない、国家秘密法、原発再稼働、国家戦略特区、TPP、集団自衛権等々の影響、庶民全員そして子々孫々が被る被害は甚大だ。
大本営広報部の職務は、
- 庶民全員に、そして、庶民の子々孫々影響があるわけではない話題を大きく扱い
- 庶民全員に、そして、庶民の子々孫々影響が大いにある話題を全く扱わない
ことであるというのが、例によって証明されているに過ぎない。
「調査捕鯨差し止め訴訟 日本が衝撃の全面敗訴」
大和煮・ベーコン、クジラは貧乏人の肉だった、と勝手に思う。個人的に、貧乏人の小生にとって大好物。小学校給食で楽しみだった。今は稀に、飲み屋で、貴重品としてベーコンを食べる程度。
調査捕鯨という名前で、商業捕鯨を続ければ、宗主国新大使の発言で想像できるように、こういう結果になるのは、全くの馬鹿でも想像できたろう。宗主国が支持しないのだから、こういう結果になるのは、誰でもわかるだろう。
「びっくりしている」風の役人・政治家、大本営広報部の発言にこそ、庶民はびっくりしている。ひどく低劣な阿呆連中に税金を無駄遣いされていると憤るしかない。
そういうレベルの役人・政治家・大本営広報部が保証する「原発再稼働」「集団自衛権」やら「国家戦略特区」の結末どのようになるか、中学生でもわかるとメタボ・オヤジは思う。
『国家のツジツマ 新たな日本への筋立て』を読み終えて、益々そう思う。
アホな政治家・官僚、大本営広報部がでっち上げた、ツジツマのあわないシナリオは、STAP細胞騒ぎどころではない災厄を、とんでもない長期にわたり、国民にもたらすだろう。
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作家・田中芳樹氏の原作でアニメ化もされた壮大なるスペース・ファンタジー『銀河英雄伝説』は非常に長い大河ドラマでもあるが、一見の価値は十分にある。
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1 毎日、空気を吸うように情報に接している。大マスコミを批判したとしてもお世話になっているのは確かだ。その大マスコミには報道する自由、しない自由がある。このことを抑えて、ニュースを読むようにしている。
ウクライナ暫定政府がロシアを国際司法裁判所への提訴を準備しているのだそうだ。しかし、訴えられた側が裁判の開始に同意しなければならないというルールがある。
規則第38条5項の後段「但し…。」を参照。http://www.unic.or.jp/files/1978.pdf
報道がウクライナが提訴を準備…と伝えたことは正しい。が、相手の同意が必要なことには触れていない。
無理だろうが、とりあえずぶち上げておこうか…そんなところではないか。
この重大なルールを知らないわけはない。大マスコミは報道しない自由の権利を行使したというわけだ。
そもそも、選挙で選ばれた大統領を暴力で追放した政権に当事者能力があるのかという問題が横たわる。又、暴力やその他圧力、不利益が予想され、それに抗する形で平和裡に選挙で自らの運命を決めたクリミア住民の自決は国際憲章と照らして正当か、不法であるかも論じられなければアンフェアというものだ。
2 もう一つ。産経新聞が共同電「ロシア系が混乱・恐怖あおっている」米政府系放送の強化案可決 米下院」を伝えている。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140402/amr14040211340007-n1.htm
Голос Америкиはこちら→http://ukrainian.voanews.com/
ウクライナ問題が起きてから「ロシアの声」電子版を読むようになった。今度はГолос Америкиもぽつぽつと読もうと思う。
3 「ロシアの声」日本語版に、カムチャッカに住むアイヌ人、アレクセイ・ナカムラさんという方の記事「日本人が、アイヌの剣も、お辞儀も、腹切りも自分の文化にした」が載っていた。
http://japanese.ruvr.ru/2012/02/06/65448380/?slide-1
内容には異議がある。しかし、北海道と同じように樺太や千島列島にアイヌの人達が住んでいることを忘れていたのを、これで思い出した。
このサイトにロシア政府がどのくらい力を入れているのかはわからないが、本当にヒモ付きサイトか?と思うようなニュースが頻繁に出て来る。
「ポクロンスカヤ検事総長、こんどはGTA(※アニメゲームの一種)のヒロインになる」
http://japanese.ruvr.ru/news/2014_04_03/270611768/
この程度はまだしも、UFOマニアが大喜びしそうなものもある。「エジプトの空に巨大なUFOが(ビデオ)」
http://japanese.ruvr.ru/2014_02_07/128410752/
「保護された犬の胃から女性の下着みつかる」「日本のヤクザ ホームページを開設」なんてものもある。
http://japanese.ruvr.ru/2013_12_22/126291547/
http://japanese.ruvr.ru/news/2014_04_03/270587711/
Голос Америки VS Голос Русский…張りあうのはけっこう、熱戦よりはずっとマシだ。
投稿: トム・ジーヤ | 2014年4月 3日 (木) 22時23分