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2014年4月11日 (金)

終わりに近づいているのは、アメリカかそれとも世界?

どちらかの一方になるだろう

Paul Craig Roberts
2014年4月9日

2014年は、アメリカ合州国清算の年として姿を表しつつある。

米ドルに対して、二つの圧力が高まっている。一つの圧力は、欧米の金供給がしなび、連邦準備金制度による違法な価格操作を市場が良く知るようになるにつれ、金価格を操作する連邦準備金制度の能力が衰えつつあることだ。取引の少ないのが明らかな時期に、金先物市場に、膨大な量の裸の空売りが行なわれている証拠がある。量的緩和からドルの価値を守るため、先物市場で金価格が操作されていることは明らかとなった。

もう一つの圧力は、オバマ政権の愚かな対ロシア経済制裁の脅威によるものだ。アメリカ政府が、世界のドル基準を悪用することを、他の国々はもはや我慢するつもりがなくなっている。アメリカ政府は、アメリカの政治的覇権に抵抗する国々の経済に損害を与える為に、ドル建て国際決済制度を利用しているのだ。

ロシアと中国はうんざりしたのだ。私とピーター・ケーニヒがここで報じている通り http://www.informationclearinghouse.info/article38165.htm ロシアと中国は、国際貿易をドルから切り離しつつある。今後、ロシアは、ヨーロッパへの石油と天然ガス販売も含め、貿易をルーブルで、BRICSパートナーとはその国の通貨で行うのだ。

これにより、米ドル対する需要が大きく低下し、ドルの交換価値も対応して低下する。

ジョン・ウイリアムズ(shadowstats.com)が明らかにしている通り、アメリカ経済は、2008年の低迷から回復しておらず、更に弱体化している。アメリカ国民の圧倒的多数は、長年収入が伸びないことで四苦八苦している。アメリカは既に輸入に依存する経済なので、ドル価値の低下は、アメリカの物価を押し上げ、生活水準を押し下げる。

あらゆる証拠が、2014年のアメリカの経済的失敗を示しており、それがジョン・ウイリアムズの4月9日報告書の結論だ。

今年、NATOが崩壊するかも知れず、EUさえもが崩壊するかも知れない。アメリカ政府の無謀なウクライナ・クーデターと、ロシアに対する経済制裁の脅しが、NATO傀儡諸国を危険な場所へと追いやっている。アメリカ政府は、選挙で選ばれた民主的政権の打倒と、傀儡政権の押し付けに対する、ウクライナでの反応を見誤ったのだ。クリミアは即座にウクライナを離脱し、ロシアに再編入した。ウクライナ国内の他の旧ロシア領も、間もなく続く可能性がある。ルガンスク、ドネツクやハリコフの抗議行動参加者達は住民投票を要求している。抗議行動参加者は、ドネツク人民共和国とハリコフ人民共和国を宣言した。キエフのアメリカ傀儡政権は、抗議行動を武力で鎮圧すると脅している。http://rt.com/news/eastern-ukraine-violence-threats-405/ アメリカ政府は、抗議行動はロシアが組織していると主張するが、アメリカ政府を信じるものはなく、ウクライナの傀儡連中ですら信じていない。

ロシアのマスコミ報道では、東部ウクライナの分離主義者を鎮圧する為に派遣されたキエフ部隊の中にアメリカの傭兵が確認されている。キエフ議会の右翼、ネオナチ祖国党の一員が、抗議行動参加者を銃撃して、殺せと呼びかけた。

抗議行動参加者に対する暴力行為は、ロシア軍を招き入れ、ソ連共産党がウクライナに与えた東ウクライナの旧領土をロシアが取り戻す可能性が高い。

アメリカ政府は孤立し、続々威嚇をして、アメリカ政府は、ヨーロッパを、極めて好ましからぬ二つの対立に押しやっている。ヨーロッパ諸国民は、アメリカ政府によるキエフ・クーデターを巡って、ロシアとの戦争など望んでおらず、ヨーロッパ諸国民は、対ロシアの本格的経済制裁が、もし順守されれば、ヨーロッパ諸国民に対する損害の方がはるかに大きいことを理解している。EU内部で、各国間の経済的不平等の拡大、高い失業率、より貧しい国民に押しつけられる厳しい経済緊縮策が、大きな緊張を生み出している。ヨーロッパ諸国民は、アメリカが画策したロシアとの紛争の矢面に立つような気分ではない。アメリカ政府は、ヨーロッパに、戦争と犠牲を求めているが、ロシアと中国は、貿易と友好を求めている。アメリカ政府は、金で取り込んだヨーロッパ政治家連中を、アメリカ政府の政策に従わせるべく最善を尽くすだろうが、ヨーロッパにとっては、アメリカ政府に従うことのマイナス面の方がずっと大きい。

多くの前線で、アメリカ政府は、世界の目に対し、二枚舌で、信用できず、全く腐敗したものとして見え始めている。証券取引委員会検察官ジェームズ・キドニーは、退職の機会を利用して、SECの幹部は、銀行が違法行為で起訴されることから守って、正義ではなく、“国家公務員を辞めた後、高給の仕事にありつくこと”に重点を置いて、ゴールドマン・サックスや他の“大きすぎて潰せない銀行”を彼が起訴するのを、幹部連中が抑え込むんだことを暴露した 。http://www.counterpunch.org/2014/04/09/65578/

米国国際開発庁USAIDは、ソーシャル・メディアを使って、キューバ政府を打倒しようとして見つかった。http://rt.com/news/cuba-usaid-senate-zunzuneo-241/

アメリカ政府によるウクライナ政府打倒、NSAのスパイ・スキャンダル、シリアのサリン・ガス攻撃は、アメリカのシリア軍事攻撃を正当化するため、NATO加盟国トルコが仕組んだ偽装作戦だというセイモア・ハーシの調査報道、アメリカ政府が、ボリビア大統領エボ・モラレスの大統領機を無理やり着陸させ捜査したこと、サダム・フセインの“大量破壊兵器”、リビア飛行禁止空域決議の軍事攻撃への不正使用等々に加えての、この大胆無謀な振る舞いだ。基本的に、アメリカ政府は他の国々のアメリカ政府の判断と品格への信頼を酷く損ない、アメリカの指導力への信頼を世界が無くしてしまったのだ。アメリカ政府は脅威と賄賂と化し、益々、いじめっ子となりつつある。

自らふるったハンマーが、アメリカ政府の信頼性に大打撃を与えた。打撃の中でも最も深刻なものは、いたるところでの、アメリカ政府の途方もない9/11陰謀論は嘘だという認識の芽生えだ。多数の独立した専門家達や、100人以上の緊急救援隊員達が、アメリカ政府の馬鹿げた陰謀論のあらゆる点に反論している。飛行機を操縦できない、わずか数人のサウジアラビナ人が、いかなる諜報機関の助力もなしに活動して、安全保障国家を丸ごと、16のアメリカ諜報機関全てのみならず、NATO加盟国全ての諜報機関とイスラエル諜報機関までも出し抜いたなどと信じる物事を知った人は皆無だ。

9/11にはあらゆるものが機能しなかった。空港警備は、21世紀の全部足しあわせた、116,232時間におきたよりも多く、一時間に四回ものミスをした。史上初めて、アメリカ空軍は迎撃機を離陸しそこなった。史上初めて、航空管制部は、一時間も、複数航空機の行方を見失い、それ報告しなかった。史上初めて、わずか数階の、短時間のさほど温度も高くない火事で、巨大な鋼鉄構造がもろくなり、崩壊した。史上初めて、3棟の超高層ビルが、下方からの抵抗を除去する制御破壊の恩恵もなしに、自由落下速度で崩壊したのだ。

アメリカ国民の三分の二は、常軌を逸した物語をすっかり信じ込んでいる。左翼は、アメリカの悪の帝国に、虐げられた人々が反撃したものと見なして、物語をすっかり信じ込んだのだ。右翼は、悪魔化して描かれたイスラム教徒達が、アメリカの善を攻撃したものと見なして、物語をすっかり信じ込んだのだ。ジョージ・W・ブッシュ大統領は右翼の見解を非常に巧みに表現していた。“連中は、我々の自由と民主主義ゆえに、我々を憎悪している。”

しかし、イタリア国民を初めとして、誰も信じていない。イタリア国民は、大統領が、秘密のオペレーション・グラディオに関する真実を暴いたので、政府の偽装工作事件に関して、何年か前にから知っていた。オペレーション・グラディオというのは、20世紀後半に、CIAとイタリア諜報機関が行なった、爆発物をしかけ、ヨーロッパの女性や子供達を殺害し、それを共産主義者のせいにして、ヨーロッパ各国の共産党支持をむしばむ為の作戦だった。

イタリア人は、アメリカ政府の常軌を逸した 9/11説明に挑戦するビデオを最初に制作した人々の一つだ。この挑戦の究極が、1時間45分の映画“Zero”だ。映画はここで見られる。http://www.youtube.com/watch?v=QU961SGps8g&feature=youtu.be

Zeroは、9/llを調査する映画として、イタリア企業Telemacoによって制作された。独立した専門家達に加えて、多数の有名人が映画に登場する。彼等は共に、9/11に関するアメリカ政府説明のあらゆる主張を論破している。

この映画は欧州議会でも上映された。

この映画を見た人は、9/11の公式説明の一言たりとも信じられなくなる。

イラク、アフガニスタン、リビア、ソマリア、シリア、イランと、ヒズボラを破壊し、アメリカの世界覇権というネオコンの計画にアメリカ乗り出すために、アメリカ政府内の一部の人々が、ニューヨークの三棟の超高層ビルを吹き飛ばしたという結論を避けることは益々困難になる。

中国とロシアは、抗議はしたものの、それが両国にとって不利益な、リビア破壊を受け入れた。だがイランは、越えてはならない一線となった。アメリカ政府は阻止された為、アメリカ政府は他の場所でのアメリカ政府の狙いからロシアをそらす為、ウクライナで、ロシアにとって厄介な問題を引き起こすことに決めたのだ。

中国は、アメリカとの貿易黒字と、アメリカ政府の海軍・空軍基地による中国包囲網の拡大という二律背反に関して、長く曖昧だった。その中国が、ロシアと同じ敵を共有しているという結論に至った。アメリカ政府だ。

下記の二つの内、一つがありそうに思える。米ドルが見捨てられて、価値が崩壊し、アメリカの超大国の地位と、アメリカの世界平和への脅威が終わるか、アメリカ政府が傀儡諸国を、ロシアと中国との軍事衝突に引きずり込むかだ。そのような戦争の結果は、米ドルの崩壊より遥かに壊滅的だ。

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Paul Craig Robertsは、元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリプス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えていた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでい る。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the WestHOW AMERICA WAS LOSTが購入可能。

記事原文のurl:www.paulcraigroberts.org/2014/04/09/us-world-coming-end-paul-craig-roberts/

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講読している大本営広報部の昨日夕刊、ラーメン定番化の記事、面積がTPP記事を圧倒していた。大本営広報部の価値観を率直に反映しているのだろう。昔からずっと楽しみにしている長寿番組『笑点』を見ている気分。ラーメン店を経営している落語家の話を。

イタリアのオペレーション・グラディオについては、以前、下記記事を翻訳した。

大衆を国家に頼らせるべく、無辜の民間人、女性、子供を攻撃せよ<グラディオ作戦>2005年2月18日

連邦準備制度理事会による金価格操作については、副島隆彦著『金融市場を操られる絶望国家・日本』『帝国の逆襲 金とドル 最後の闘い』でも書かれている。

金融市場を操られる絶望国家・日本』には、年金基金を宗主国の株に投入することも書かれている。地獄の将来は確定済み。

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コメント

Dendrodium様

 『長年培った平和主義国としての信用を壊す積極的平和主義』,ありがとうございました。

 ロ-マ教皇の回勅や,解放の神学を一度は破門したもののローマ教会の誤りを認め,再び公認したことを教えてくれたのは,加藤周一でした。イラク侵攻反対のデモを支持したのもロ-マ教皇でした。
 そうした流れでウクライナを眺めたとき,ロ-マ教会が動かないので不思議でなりませんでした。CIAに買収されたか脅されたのではと,邪推した自分が恥ずかしいことを告白せざるを得ません。
 サルジニア島のNATO軍基地の情報など併せて感謝申し上げます。

「失言の『伝統』」と吉四六さん    夕陽妄語[Ⅳ]から

  ウクライナ東部ではウクライナ軍が親露派に一部寝返ったという報道があり,ジュネーブの旗亭での4ヶ国会議では米国・ウクライナ政府とロシア政府が真っ向から意見が対立しているという報道がある。いくらか西側の報道姿勢も変わりつつあるが,ウクライナ政府にはネオ・ナチの閣僚が5人もまだいることを忘れてはならないと思う。

 そこで西側報道陣の一人として,吉四六さんに登場していただき,「ウクライナ政府は「先の大戦で『アウシュビッツの大量虐殺はなかった』かどうか」,尋ねて貰ってはいかがか。これはウクライナ東部の今後の在り方を議論するより緊急の課題だと思う。なぜなら結論は持ち越しとなるだろうからである。しかしそれだけではない。ウクライナ閣僚の「アウシュビッツの大量虐殺」に関する考えは,独仏にとってあるいはイスラエル及び日本にとっても重要であると,考えるからである。 

 最近ドイツを訪れた中国の習近平国家主席は,「南京大虐殺で殺された中国人は30万人以上」と発言した。もちろん自民党の官房長官は反論したが,「南京大虐殺はなかった」という歴史の修正主義者がいないわけではない。特に日本の大臣の中には,『失言』を繰り返し,「十五年戦争は侵略ではなくて進出であった」とか,「大東亜戦争の目的は欧米列強からの解放で正当」であったなどと発言して,アジア諸国の反発を買い,辞職した者も少なからず。

 
 ところで,加藤周一(夕陽妄語[Ⅳ])は,「戦後の民主主義と人権尊重の原則は,不幸にして,戦勝国自身のつくり出した冷戦の枠組みの中で主張された。冷戦からの解放が,冷戦の戦略に従属させられて久しい原則からの解放へ向かったのも,不思議ではなかろう。その結果,後ろ向きの歴史の見直しが生じた」と主張する。
 然るに後ろ向きの歴の見直しとは何か。すでに述べたように「南京大虐殺はつくり話」だとか,十五年戦争は「侵略ではなくて進出」であったとか言う類いの見直しである。それはもちろん,文部省・文科省の「教科書検定」にも現れていた(ここまでは20世紀の話である)。

 最近では,「戦後の民主主義と人権尊重の原則」からの解放は,図書の閉架や広島歴史資料館の蝋人形撤去まで表現の自由・学問の自由を奪う地方自治体の行為にまで及ぶ。さらに中央では,一般市民をも容易に逮捕できる「暴力団対策法」から特定秘密保護法を通って集団的自衛権に関する「戦後の内閣法制局の解釈変更」まで例を挙げることができる。

 昨年の11月だったろうか,自民党大会では「失言をしないこと」で一致し,党大会を終えたとか。しかし内閣改造の時期が近づいた。次の大臣は誰か,日本のマスゴミの記者に代わって吉四六さんに尋ねて貰いたい。次の総理大臣はどなたで,村山・河野談話を尊重し,再調査されますかと。

 最後に追加訂正願いたい。『冷戦の遺産[Ⅳ]』によれば,「冷戦の蓋を開けると,中から『希望』ではなく各種の『厄い』が出てきた」。その主なモノ3つに第四を加えることをお許し願いたい:
   第一に環境破壊,殊にたとえば蓄積された核兵器と原子力発電,
   第二に狂信的な民族主義と地域紛争,
   第三に権力の構造的腐敗。
   第四に「失言」の伝統の昂進(日本の場合)。

『冷戦の遺産』とその目録  夕陽妄語[Ⅳ]から

 人それぞれに思い出がある。しかし加藤は書かない。チェルノブイリ原発事故とその放射性物質の拡散があった1986年(4月)。翌年の1987年,1988年と放射線障害について書かない。「原子力発電」の言葉が出てきたのは,1993年末の『冷戦の遺産(夕陽妄語[Ⅳ]』である。
 1991年12月,ソ連邦は崩壊。冷戦の終わり。その後の世界を予測するとき,『国防計画指針』が参考になることは別の所で述べたが,冷戦の前と後とでは何が変わり,変わらなかったのか。加藤は「冷戦の蓋を開けると,中から『希望』ではなく各種の『厄い』が出てきた」という。主なモノ3つ;
   第一に環境破壊,殊にたとえば蓄積された核兵器と原子力発電,
   第二に狂信的な民族主義と地域紛争,
   第三に権力の構造的腐敗。

 ゴルバチョフ大統領が黒海沿岸のオデッサだったと思うが,彼の別荘で軟禁されたり,エリツィンが3人組に刃向かったりした当時の混乱の記憶にある。しかしペレストレイカ,政治的党争のそれが何であるかは分からなかった。

 今,『冷戦の遺産』を読み返して,市場原理主義がソ連にも及んでいたことが分かった。「冷戦の終わりは,社会主義経済の終わりで,その『自由主義』の聖なる原理が全世界を支配するようになった」と,今日の21世紀初頭の貧富の格差を,加藤は予言していた。

 ところで,統一ドイツでは何が冷戦の遺産であったのであろうか。東西の40年間に亘る労働力の資質の差である(北朝鮮と韓国の差に似る)。一方,米国と欧州,米国と日本との間では「農産物の貿易マサツがある」。これらは今日のTPP及びTTIPに繫がる。また米仏間では「文化産業」の問題があり,いずれの場合にも,冷戦以後の歴史的,社会的,文化的,政治的に潜在していたものが,冷戦終了後に顕在化してきたという意味であろう([4)])。

 こちらの,IT予約の航空機搭乗券を印刷してくれる印刷屋のお嬢さんは日本や韓国の文化に興味があるらしく,店の傍を午前中に通りかかると,「おはようございます」と日本語で挨拶してくれるが,私は昔,欧州外相会議でフランス外相が英語で挨拶始めたところ,同席していたミッテルラン大統領が席を蹴ったというニューズに驚いたことがある。自国の言語,文化を大事にする精神に感心した。

 第三の,一党独裁の腐敗は特に,日伊で共通する構造をもつが前者は追求と曝露がぬるいが,後の追求は徹底しているという。最近でも,イタリア・サミットであったか直前に大地震があった。地震は来ないと予告していた学者たちは刑務所送りになったが,日本の原子力ムラの学者や官僚たちは何のお咎めナシである。
 さて第一の「原子力発電」についていくらか付け加えれば,ソ連邦を崩壊させたのはベルリンの壁崩壊だと信じてきたが,どうもチェルノブイリ原発事故処理費用不足であったとする説が有力である。おそらくソ連政府は,原発事故の影響をもはや隠すことは不可能だと悟ったに違いない。あわせて莫大な事故処理費用の問題も大問題である。
 加藤はそういうことを知った上で,原子力発電による環境破壊,人体破壊,地域社会破壊を読み取ったに違いない。ゆえに,冷戦の始まり以降,ほとんど書かなかった原子力発電について,ようやく指摘し始めたと言えよう。

 しかしなぜ加藤は,放射線障害について多くを書かなかったのか。それは占領軍GHQの指令に基づく。広島で被爆した医師肥田舜太郞に拠れば,医者,研究者等は原爆の被害について研究ノートや治療カルテ等は公表してはならないという通達があった。特に45年の9月,L中尉と広島を訪れ,放射線障害の状況を調査した加藤にとって,GHQの通達は厳しい足枷であったと,推認できる。

 『冷戦の遺産』のより直接的なものは,国家権力による情報の操作である(146頁)と,加藤は付け加える。湾岸戦争,ソ連軍機の大観航空機撃墜,米艦によるイラン民間機撃墜等における報道は,国家による情報操作の典型的な例であると考える事ができる(情報操作は,自衛隊給油船のディエゴ・ガルシア島に基地を置く米軍への特殊石油補給から始まって見失われたMH370機に関する情報の出し惜しみにまで及ぶことは,言うまでもない)。

 ウクライナ争乱のために,米国は50億ドルを使い,欧米新聞社やTV局に金をばらまいた。また怪しげなNGOにも金を渡し,ウクライナの協力者にも賄賂をあてがった。グアテマラ侵攻,チリのアジェンデ政権転覆から9.11事件を通って伊太利亜の作戦・グラディオ(でっち上げ)事件まで,米国政府の世論操作は壮大なものであり,壮大なものであった。その中で,民族主義を煽り,地域紛争を激化させたのは,CIAであり,NSAのIT・衛星盗聴活動であった。

 『冷戦の遺産』とは,短期的に見て米国による一極支配の始まりであり,長期的に見て米国を信じなくなった世界の多極化の始まりである。C.ロバ-ツ氏の『終わりに近づいているのは、アメリカかそれとも世界?』を読んで,以上のような感想を抱く。

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