ロシアとNATOを同時に脅迫するオバマ
Paul Craig Roberts
2014年4月6日
オバマ政権は、作り上げた敵ロシアと、アメリカ政府が対ロシア経済制裁支援を期待している、ヨーロッパのNATO諸国とを同時に脅迫している。良い結果に終わるはずがない。
管理されたマスコミという環境に暮らすアメリカ国民ですら理解している通り、国家シュタージ局NSAが、ヨーロッパ諸国の通信をスパイしていることに、ヨーロッパ人や、南米や中国は激怒している。適法性や、アメリカ憲法や、国際的な外交規範に対するNSAの侮辱は前代未聞だ。しかも、スパイ行為は続いており、議会はひたすら座視して、アメリカ合州国憲法を守るという誓いを裏切っている。
成文法や憲法上の要求を無効にするには、“国家安全保障”に関するアメリカ行政府のわけがわからない表現で十分だ。ホワイト・ハウスも議会も連邦裁判所も無能で、シュタージ警察国家を制御することができないのを見て取った西欧は、ヨーロッパ国民と政府通信のプライバシーをアメリカ政府シュタージから守るため、アメリカ企業を除外したヨーロッパ通信システムを立ち上げることに決めた。
いかなる個人も、いかなる国家も、アメリカ・スパイ網から逃れられないようにするのに必死なオバマ政権は、自国の通信のプライバシーを保護しようという西欧の狙いは“貿易法規違反”だと非難した。
ヨーロッパとアジアで、協定に署名した全ての国の法律を、アメリカ企業が免れることを可能にする秘密“貿易協定”交渉している、オバマのアメリカ通商代表部が、もしヨーロッパの通信ネットワークが、NSAスパイとして働くアメリカ企業を排除した場合には、WTO罰則を課すると脅したのだ。アメリカ政府は、実に傲慢にも、最も重要な同盟諸国に向かって、もしお前らが、我々がお前らをスパイするのを認めないなら、WTOを使って、お前らを懲罰するぞと言ったのだ。
事情はお分かりいただけたろう。アメリカ以外の諸国には、今やWTOを脱退し、環太平洋TPPや、環大西洋“貿易協定”を避けるべく、考え得る最善の理由があるのだ。協定は貿易に関するものではない。これら“貿易協定”の狙いは、他の国々に対し、アメリカ政府とアメリカ企業の覇権を確立することにある。
ヨーロッパに対する、アメリカ政府の力による未曾有の侮辱として、アメリカ通商代表部は、NATO同盟諸国にこう警告した。“アメリカ通商代表部は、別個のヨーロッパ通信ネットワークを立ち上げるような提案の進展を入念に監視し続けるつもりだ。http://rt.com/news/us-europe-nsa-snowden-549/
アメリカ政府への奉仕を、各国の通信のプライバシーより優先するよう、アメリカ政府はドイツ首相、フランス大統領、イギリス首相を当てにしているのだ。
アメリカ・ドル体制の一環として存在すると、ロシアは、欧米の銀行や企業や、連中から融資を受ける個人に掠奪されやすなり、外国為替市場では、投機家により、また資本流出により、ルーブルが価値の押し下げをされやすいこと、更にアメリカの国際決済システムに依存すると、“例外的で、必要欠くべからざる国”が押しつける恣意的な経済制裁に、ロシアをさらすことになるのに、ロシア政府は気がついた。
ドルによる決済システムは、諸国をアメリカ政府の支配下に置くものだとロシア政府が理解するのに、一体なぜこれ程長い時間がかかったのだろう。おそらく、その答えは、アメリカの冷戦プロパガンダの成功だ。冷戦プロパガンダは、アメリカを、輝ける光、人権の偉大な擁護者、拷問への反対者、自由の支持者、虐げられた人々の擁護者、平和愛好者、世界の保護者として描いていた。アメリカ政府が、中南米において、本当に国民を代表する政府の台頭を妨げ、アメリカ政府が、半ダースの国々を爆撃し、瓦礫と化していた間でさえ、このイメージが生き続けていたのだ。
共産主義から抜け出したロシアは、“アメリカの自由”というプロパガンダのイメージに必然的に同調したのだ。アメリカとヨーロッパも腐敗しており、手は血で塗れていることが見過ごされてしまっていた。反ソ連プロパガンダの時代に、アメリカ政府は、ヨーロッパの女性や子供達を殺害して、共産主義者のせいにしていた。1960年代、1970年代、そして1980年代、ヨーロッパの女性や子供を爆弾の標的にし、共産主義者のせいにし、ヨーロッパ諸国の共産党が選挙で議席をするのを妨害する為に、CIAとイタリアの諜報機関が行なっていた偽装テロ工作、グラディオ作戦を、イタリア大統領のフランチェスコ・コシガが公的に暴露して、真実が明らかになった。これは史上、最も良く知られた偽装工作事件の一つで、イタリア諜報機関が、たぐいまれな告白をする結果となった。
ロシア政府が、ロシアの主権を守る為に、ロシアはドル本位制を離脱しなければならないことを理解した今、プーチン大統領は、中国とイランと、バーター/ルーブル決済石油協定を結んだ。ところが、ロシアがドルによる国際決済システムを離脱することに、アメリカ政府は反対している。アメリカの印刷・TVマスコミより信頼できる情報源Zero Hedgeが、アメリカ政府は、ロシアにもイランにも、アメリカ・ドルで決済しない石油取引をすれば、アメリカは経済制裁を発動すると通告したと報じている。http://www.zerohedge.com/news/2014-04-04/us-threatens-russia-sanctions-over-petrodollar-busting-deal
ロシア/イラン協定に対するアメリカ政府の反対で、アメリカ政府はドル本位国際決済体制を、支配手段として利用していることが、全ての政府にとって明らかとなった。各国が主権を侵害する国際決済手段を受け入れなけらばならない理由などあるだろうか? もし国際決済手段として、ドルをおとなしく受け取る代わりに、各国がドル本位制から離脱してしまったら、一体どうなるだろう? ドルの価値は下落し、アメリカ政府の威力も低下しよう。世界の準備通貨としてのドルの役割のおかげで、アメリカがお札を印刷して支払いをすることができた力を失えば、アメリカは、攻撃的な軍事姿勢や、命令通りにすることに対する、諸外国政府への賄賂も維持不能となろう。
アメリカ政府とて、国民達は辛うじてやりくりして暮らしているのに、超金持ちの一パーセントが全長60メートルのヨットや、750,000ドルの万年筆を競う、もう一つの破綻した帝国にすぎなくなるだろう。貴族と奴隷達。アメリカは既にそういうものに成り果てている。封建時代への後戻りだ。
アメリカが破綻国家だと広く理解されるようになるのも時間の問題にすぎない。傲慢なワシントンの住人達による、他の国々に対する覇権追求で、世界が吹き飛ぶ前に、そう認識されるよう祈ろうではないか。
ロシアに対するアメリカの挑発的軍事行為は無謀で危険だ。1997年のNATO-ロシア協定やモントルー条約に違反する、ロシア国境でのNATOの空、陸、海軍力増強を、ロシア政府は当然疑わしく思うだろう。特に、兵力増強が、ロシアは、ウクライナに加え、ポーランド、バルト海沿岸諸国と、モルドバも侵略しようとしているという嘘を基に、正当化されているのだから。
こうした嘘は見え見えだ。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、こういって、NATOに説明を要求した。“我々は単なる回答を求めているのではなく、我々が同意したルールを十分に尊重した上での回答を求めている。” http://rt.com/news/lavrov-ukraine-nato-convention-069/
私がNATOに権限がないのと同じ位、何の権限もないNATOの名前だけのトップとして据えられたアメリカ政府傀儡アナス・フォー・ラスムセンは、ロシアの懸念を確実に高めるやり口で応じた。ラスムセンは、ロシア外務大臣の説明要求を“プロパガンダと偽情報”だとして切り捨てた。
我々が今経験しているのは、明らかに、アメリカ政府とNATOが引き起こした緊張の高まりだ。アメリカ政府によるウクライナでのクーデターから生じる緊張に加えての、こうした緊張だ。こうした無謀で危険な行為は、欧米に対するロシア政府の信頼を破壊し、世界を戦争へと押しやっている。
アメリカ政府の手先NGOによって街路に召集されたキエフの抗議行動参加者達は、自分達の愚かさが世界をハルマゲドンへと導いていたとは全くご存じではなかったろう。
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Paul Craig Robertsは、元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えていた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOSTが購入可能。
記事原文のurl:www.paulcraigroberts.org/2014/04/06/obama-issues-threats-russia-nato-paul-craig-roberts/
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文中にあるグラディオ作戦については、2007年に下記の記事を翻訳した。
大衆を国家に頼らせるべく、無辜の民間人、女性、子供を攻撃せよ<グラディオ作戦>2005年2月18日
大本営広報朝刊、洗脳活動を全力展開しても、集団的自衛権行使容認反対が63%という世論調査結果を載せている。何を言いたいのだろう。早く改心しろというのだろうか?
夕刊に「江戸前新名物(二枚貝ホンビノス)北米産」とある。エセ愛国心も北米産。
浪曲、石松、三十石舟のセリフ、食いねえ。鮨食いねえ。誰か忘れちゃいませんか。筆者ロバーツ氏、この国を書き忘れたのではないに違いない。主権のない国モドキ集団の名前、分かっていて、外したのだろう。
メルケル首相は、盗聴に対し、怒りをあらわにして抗議した。
一方、この国では、米国家安全保障局(NSA)が日本も盗聴の標的にしていたとのイタリア主要紙の報道いついて、官房長官が「政府としてコメントは控えたい。常に情報保全のための対応策は取ってきており、これからも対応したい」と発言。米政府に問い合わせる考えはないとの姿勢を示した。
管理されたマスコミという環境に暮らすアメリカ国民ですら理解している通り、国家シュタージ局NSAが、ヨーロッパ諸国の通信をスパイしていることに、ヨーロッパ人や、南米や中国は激怒している。もちろん、超一級ポチ属国は、平然としている。スパイしていただくことこそ、超一級ポチ属国の義務だ。
我々が尖閣で、今経験しているのは、明らかに、アメリカ政府と日本政府が引き起こした緊張の高まりだ。アメリカ政府によるウクライナでのクーデターから生じる緊張に加えての、こうした緊張だ。こうした無謀で危険な行為は、日米に対する中国政府の信頼を破壊し、世界を戦争へと押しやっている。尖閣や北朝鮮ミサイルで、海外派兵・戦闘は日本近隣であるかのような偽装をしているが、「周辺事態」が地域的概念でないのと同様、下駄の雪で、地球の裏側でもウクライナでも、宗主国についてゆき、殺人し破壊することになる。
というわけで、読み終えた孫崎享著『小説外務省』の森田実氏評をコピーさせて頂こう。
「日本は驚くほど危険な国になっている」(孫崎享)
孫崎享氏は正義感を貫く秀才だと私は思っています。迫害を受けても負けていません。真実を語り続けています。真実を隠そうとしている政府・外務省、マスコミと言論をもって戦い続けています。不撓不屈の精神をもって、正義と真実を主張し続けています。偉大な言論人だと思います。
第1章「鳩山元首相への人物破壊」において、鳩山元首相のイラン訪問を妨害し、アメリカ政府、日本政府、外務省、マスコミが鳩山元首相を「変わり者」「国賊」とする個人の人格攻撃キャンペーンを行った経過を明らかにしています。たしかに鳩山元首相への個人的人格攻撃は異常をきわめました。これはあまりにもひどい鳩山氏の人格を傷つける蛮行でした。
孫崎氏は「鳩山氏のイラン訪問を冷静に分析すれば、プラスの面が多々あった」と述べています。アメリカ政府をはじめ鳩山の動きをおそれていた人々は、鳩山を攻撃しました。安倍晋三氏も鳩山への人物破壊に参加しました。
私は、鳩山元首相は平和と正義の政治家だと思っています。しかし、アメリカに追従した野田前首相や安倍現首相、外務官僚、アメリカ政府の対日関係者、日米両国のマスコミは、鳩山攻撃に加わりました。鳩山非難の大合唱をしました。鳩山氏を攻撃した人々は、異常でした。しかし鳩山氏は負けていません。自己の信念を貫いています。立派です。
鳩山元首相は、平和と日本の独立と民主主義の立場を貫いていると、私は思っています。孫崎氏も私と同じ気持ちだと思います。
本書のテーマは「尖閣問題」です。孫崎氏はこの経過を正確に述べています。尖閣問題について正しい態度をとったのは丹羽宇一郎中国大使でしたが、丹羽大使は政府、マスコミから袋叩きにあいました。孫崎氏は「正しかった人間は糾弾された。間違った人間はどうなっているか。全く糾弾されない。正義の顔をして、そのまま居座っている」と述べています。政界は理不尽です。
栗山元外務事務次官は真実を述べていました。正しい見方をとりました。正しい態度をとった政治家がいました。山口壯外務副大臣です。山口壯外務副大臣は、野田首相、藤村官房長官、玄葉外相を、全力を挙げて説得しましたが、野田首相らは山口提言を理解しようとしませんでした。山口氏は正しいことを主張しましたが、評価されませんでした。野田首相は大きな過ちを犯したのです。野田首相は自ら中国政府を挑発し、裏切り、怒らせるようなことをしたのです。野田首相は許し難い過ちを犯したのです。
孫崎氏は「小説」という形式をとって、尖閣問題をめぐる真実を書きました。孫崎氏が本書で書いたことは真実です。本書で、孫崎氏はアメリカ政府のジャパンハンドラーの政治目的のために鳩山元首相への個人攻撃が行われたことを明らかにしています。鳩山元首相は正義の政治家です。最も正常な、健全な考えをもった政治家です。私は鳩山元首相に対する評価において孫崎氏と同じ立場です。
尖閣問題について、丹羽宇一郎大使、栗山元外務次官、山口壯外務副大臣は、正しい主張をしていました。3氏とも立派な人物です。この3人を攻撃した者たちが間違ったことをしたのです。この真実は国民に知らされなければなりません。後世の人々にも知らせなければなりません。本書は真実の書です。全国民に読んでほしい本です。
IWJ、孫崎享著『小説外務省』にも書かれている。
2013/12/29 【北海道】「大間原発の発電はカモフラージュ。本当はプルトニウムのために作られた」 〜アーサー・ビナード講演会
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再び『新国防戦略指針』について
高校以来,下がりに下がった英語能力で『新国防戦略指針』を読んでみた。特に注目を引いたのは"deepening partnership" という言葉である。外務省や国防省やマスゴミなどはこれを「日米関係」に援用して日米同盟のさらなる「深化」などと翻訳している。しかし小生は恥ずかしながら「新しいパ-トナ-シップ(新連携)」と訳した。 なぜなら,この『新戦略指針』の道は,王道ではないにしても米国の覇権を方向転換しようとするものだからである。
加藤周一は「中国風に言えば,覇道か王道か。『国防計画指針』の道は,覇道である」と言ったが,「孟子も言ったようにそれは長く続くことができない」,と付け加えた(夕陽妄語[Ⅳ])。オバマ政権は,やがて来るであろう国会財政破綻を乗り越えなくてはならない,と自覚したから『新戦略指針』を造ったのであろう。しかし冷戦が始まった時代から50億ドルもロシア不安定化に使ってきた流れは容易に変えられない。
他方,『新戦略指針』は,環太平洋TPPや環大西洋“貿易協定(パ-トナ-シップ)”を重要視していない。いくつかあるパ-トナ-シップのうちの1つに過ぎない。力点は(財政難の故に)軍縮に向けた「新しいパ-トナ-シップを深める」ことにある。そこで私は "deepening partnership" を「新しいパ-トナ-シップ(王道へ)」と訳し,意味不明の,我田引水の日米同盟深化論を採らなかった。ゆえに安倍訪米は,オバマに嫌われたのである。
投稿: 箒川 兵庫助 (ろ) | 2014年4月13日 (日) 00時38分
国家シュタージ局NSAが、ヨーロッパ諸国の通信をスパイしていることに、ヨーロッパ人や、南米や中国は激怒している P.C. ロバーツ
ナオミ・ウルフ氏が「2001年9月11日に攻撃されて以来、アメリカは国家的ショック状態だった。6週間もしないうちに、2001年10月26日、アメリカ愛国者法が議会でほとんど論議もなしに通ってしまった。読む時間すらなかったと言っている連中も多い。アメリカ人は、アメリカは「戦時体制」にある、と言われたのだ」と回想されている。
「エッ」と声を出し,「議会が議会であることを止めてしまった」と思った当時の記憶が私には,今でもある。とは言え,加藤周一が指摘するように,行き過ぎたあとまた元に戻るのが米国のいいところだと思ってその後思い出すことはなかったが,米国は財政破綻どころか,「死んでいる」のではないかと思わざるを得ない。その後始末をしているのが,オバマ大統領と少数の信頼できる側近だけと言える。
加藤にとって忘れ難い一九八八年の出来事(夕陽妄語[Ⅱ])は,七十人の著名な米国人-元国務長官や元国防長官や元大統領顧問,有名な大学の学長,ケナンやガルブレイスというような人々-がNYタイムズ紙に意見広告「原則の確認 A Reaffirmation of Principle 」を出したことである,という。
その短い広告の本文は「われわれが語るのは,アメリカ市民としてであり,自由主義伝統の再確認を望む市民としてである」という一行をもって始まる。そして「自由主義 liberalism の精神lは,アメリカ革命,独立宣言,憲法及びその修正七ヵ条に浸透していた」といい,「そこに具体化された原則は,世界の多くの人の尊敬をよびさました」という。
米国では「リベラル」という語は,日欧の「自由主義的」という意味に加えて「進歩的」という意味を伴い,その「自由主義的進歩主義」の原則は,米国の「伝統」であり,同時に米国以外の国民にも尊敬をよびさますような普遍性をもっていた。その「自由主義的進歩主義」という言葉が,レ-ガン政権のもとで悪い意味を帯びるように変質したとき,米国には伝統の名の下にそのことに抗議する七十人の人々がいたのである,と加藤は結ぶ。
翻って思うに,「自由主義的進歩主義」という言葉は,ジョ-ジ・莫迦ブッシュ政権下で「完全に消滅した」と言えよう。なぜなら例えば第一に,グアンタナモ基地の囚人には基本的人権が全くなく,修正七かヵ条は適応されないからであり,第二に個人の権利を縛る「アメリカ愛国者法」の成立や,NSAの外国,アメリカ市民盗聴に明らかであるからである。
しかしデモクラシ-・ナウの中で,元国際コンサルタント,J.パ-キンソンが語ったように,八八年以前から CIA や NSA の暗躍があり,その手段は,ウルフ氏の「簡単な10のステップで実現できるファシストアメリカ(日本?)」に説く通りである。
J.パ-キンソン氏がNSAの間接的な会社,国際コンサルタントA社をなぜ辞めたのであろうか。それは述懐するように,「アメリカを憎む人々が多い」ことを知ったからだ,という(上記デモクラシ-・ナウ)。すなわち,七十人の著名な米国人の広告文にあるように,『「自由主義的進歩主義」の原則は,米国の「伝統」であり,同時に米国以外の国民にも尊敬をよびさますような普遍性をもつ』どころか,むしろ「憎悪の対象となった」と言うことであろう。
ドイツのメルケル首相の場合はどうであろう。NSAに盗聴されて彼女の米国への信頼感は失われた。確かにこれは憎悪ではない。しかし,「米国以外の国民にも尊敬をよびさますような普遍性」からはほど遠い,と言えるであろう。
米国の属国日本の、安倍自公民政権は,「盗聴については発言を控える」という。普遍的な原理云々というよりも,あくまでテロ国家米国のポチ,ヌイであろうとしている。これでTPP交渉がうまくいくはずはない。それでも米大統領訪日にあわせて閣僚会議で詰めるという。日本の閣僚4人の会話が盗聴されていたことは言うまでもない。ヤラセ以外の何物でもないだろう。税金の無駄遣いである。
ところで最近,YouTubeで映像「快傑ハリマオ」を見た。米軍の南洋での悪行の数々,
悪徳軍人を支える日本人。彼らをやっつける快傑ハリマオとその仲間。三橋美智也氏唱って曰く;
真っ赤な太陽 燃えている 果てない南の 大空に
とどろき渡る 雄叫びは 正しい者に味方する
ハリマオ ハリマオ ぼくらのハリマオ
現地の方に「ハリマオ」と発音すると,通じない。仕方なく英語で虎というと,「ハリマオ」と返ってくる。どこに違いがあるのか分からない。しかも各地を転々としても十字星は見えない。本当に現代の「快傑ハリマオ」はいるのだろうか。
投稿: 箒川 兵庫助 (い) | 2014年4月11日 (金) 00時59分