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2014年3月 3日 (月)

ウクライナ掠奪の第二段階開始

F.ウイリアム・イングドール

2014年2月28日

"21st Century Wire"

2013年11月以来のウクライナの出来事は実に驚くべきもので、ほとんど既成概念に反している。

正当に選出された(全ての世界中の観察者がそう述べている)ウクライナ大統領ヴィクトル・ヤヌコーヴィッチは、いわゆる反政府派による3ヶ月以上の暴力的抗議行動とテロ殺人の後、政権から追放され追い出され、戦犯として逃亡することを強いられている。

彼の“犯罪”とは、抗議行動指導者達によれば、即座に 150億ドルの債務救済と、ロシア・ガス輸入価格の大幅引き下げというロシアとの具体的取引を好んで、ウクライナにはほとんどうまみのない、定義の曖昧なEU加盟というEUの申し出を、彼が拒絶したことだ。アメリカ政府は、その時点で本格的に動きだし、現在の結果が大惨事だ。

選挙で選ばれた政府の崩壊をもたらした、標的を狙う狙撃兵による攻撃と暴力行為では、NATOとつながっていると言われている秘密ネオナチ軍事組織が決定的な役割を演じた。

だが、欧米のウクライナ破壊が終わったわけではない。欧米からのいかなる金融支援に対しても、前提として、厳しい融資条件を提示するIMFの登場だ。

キエフの新連立政権に誰を入れたいかの詳細を論じて、EUの解決策を、“くそくらえEU”という発言で彼女が拒否した、アメリカ国務次官補ビクトリア・ヌーランド(写真、左)と、在キエフ・アメリカ大使との有名な電話会話漏洩の後、[1] EUはアメリカ抜きでことを進めた。ドイツ外務大臣フランク=ヴァルター・シュタインマイヤーは、彼とフランス外相ローラン・ファビウスがキエフに飛び、エスカレートする前に、暴力対立の解決をまとめることを提案した。ポーランド外務大臣ラドスワフ・シコルスキも参加を要請された。キエフでの交渉には、EU代表団、ヤヌコーヴィチ、三人の反政府派指導者と、ロシア代表が含まれていた。アメリカは招かれていなかった。[2]

 

 

 

ワシントン抜きでのEU介入というのは驚くべきことで、ここ数ヶ月での両者間の深刻な対立を明らかにしている。実際はEUこそ、アメリカ国務省に言っていたのだ。“くたばれアメリカ”我々は自分でけりをつける。

困難な交渉の後で、抗議行動参加者の大多数を含む主要関係者全員、12月の新大統領選挙、2004年憲法への回帰と、ユリア・ティモシェンコの釈放に同意した。妥協案は、数ヶ月の混沌を終わらせ、主要な関係者全員にとっての打開策となるように見えた。

外交的妥協は12時間ももたなかった。そこで大混乱となった。

狙撃兵は、2月22日、マイダン、独立広場の群衆への狙撃を開始した。パニックが起き、目撃者達によれば、機動隊は泡を食って撤退した。反政府派指導者ビタリー・クリチコは何の理由説明もせずに交渉から抜けた。ヤヌコーヴィチは キエフから逃亡した。[3]

未だに不明な疑問は、一体誰が狙撃兵を雇ったのかだ。アメリカのベテラン諜報関係筋によれば、狙撃兵達は、ウクライナ民族アンサンブル・ウクライナ民族自己防衛(UNA-UNSO)として知られている極右軍事組織の者だ。

リヴィウで行進するUNA-UNSO隊員

奇妙なウクライナ「民族主義者」

UNA-UNSO指導者アンドリー・シキルは、10年前にユリア・ティモシェンコの顧問になった。アメリカが扇動した2003-2004年“オレンジ革命”の際、UNA-UNSOは親ロシア派候補ヤヌコーヴィチに対する、親NATO候補者ヴィクトル・ユシチェンコを支援した。UNA-UNSOメンバーは、2003-4年、キエフの独立広場で、ユシチェンコとユリア・ティモシェンコ支持者を警護した。[4]

UNA-UNSOはドイツ国家民主党(NDP)と密接につながっているとも報じられている。[5]

1991年のソ連崩壊以来、ロシアの影響にするあらゆる反乱の背後には、準軍事集団UNA-UNSOメンバーがいた。彼らの暴力作戦全ての一つの共通点は、常に反ロシアということだ。組織は、元アメリカ諜報関係筋によれば、欧米マスコミが報じているようなウクライナ民族主義者集団ではなく、秘密のNATO“GLADIO”組織の一部だ。[6]

これらの情報筋によれば、UNA-UNSOは、1991年の冬のリトアニア事件、1991年夏のソ連クーデター、1992年のプリドニエストル共和国戦争、1993年の反ロシア・アブハジア戦争、チェチェン戦争、アメリカが画策した対セルビア・コソボ作戦、2008年8月8日のグルジア戦争に関与してきた(公式に確認されている)。これら報告によると、冷戦後の時期、UNA-UNSO準軍事組織は、NATOのあらゆる汚い戦争に関与し、常にNATOのために戦ってきた。“この連中は、世界中でNATOの汚い戦争を戦い、ロシア特殊部隊を装って、ロシア罪を着せる為に使われる危険な傭兵だ。これが悪党連中で、民族主義者というごまかし等どうでもよい、彼等こそ狙撃兵のライフル銃の後ろ楯だ”こうした情報源はそう主張している。[7]

UNA-UNSOが“ウクライナ”反政府派ではなく、ウクライナを基地として利用している極秘のNATO軍というのが本当であれば、キエフ2月21日の外交交渉から排除されていた主役の一人、ビクトリア・ヌーランドの国務省によって、穏健派とのEU和平妥協案が妨害された可能性が高いことの暗示になるだろう。[8] ヌーランドも、右翼共和党上院議員ジョン・マケインも、党首があからさまな反ユダヤ主義で、第二次世界大戦時の、ウクライナSS-ガリシア師団司令部の行為を擁護している、ウクライナの反政府派スヴォボダ(自由)党指導者と接点がある。[9] 党は1995年に登録、当初は自らを“ウクライナ国家社会主義党”と呼び、かぎ十字風のロゴを使っていた。スヴォボダ党は、ウクライナにおけるUNA-UNSO等、ネオナチ組織の選挙上の隠れみのだ。[10]

ヌーランドが、最近のウクライナの出来事を方向づけていることを示す一つの兆候は、新ウクライナ議会が、ヌーランドが選んだティモシェンコの党のアルセニー・ヤツェニュクを新内閣暫定首相に任命するよう想定されている事実だ。

最終的な真実が何であれ、国際通貨基金 (IMF)に対する支配力を利用して、アメリカ政府がウクライナからの新たな経済強奪を準備していることは明らかだ。

IMFによるウクライナのお宝略奪

“反政府派”が、正当に選出された大統領を良く分からない場所への亡命に追いやり、国家機動隊ベルクトを解散してしまった今、アメリカ政府は、難儀なIMFの融資条件に従うようウクライナに要求している。

昨年10月の交渉で、IMFは、ウクライナに、産業と家庭用のガスと電気価格を倍に値上げし、ウクライナの肥沃な農地売買への制限を撤廃し、保有資産の大幅見直しをし、通貨を切り下げ、“予算を均衡させる為に”学童と老人用の政府基金を大幅削減するよう要求した。それと引き換えに、ウクライナは、わずか40億ドルを得るというものだ。

先週の、ロシア寄りのヤヌコーヴィチ政権追放前、ロシア政府は約150億ドルのウクライナの負債を買い取り、ガス価格を三分の一にまで大幅に引き下げる用意をしていた。今や、当然ながら、ロシアが支援を与える可能性は少ない。ウクライナとロシアの経済協力は、あらゆる犠牲を払っても駄目にすると、アメリカ政府が固く決めていた。

このドラマは始まったばかりだ。危険にさらされているのは、ロシアそのものの未来、EU-ロシア関係、ワシントンの世界覇権、そして、少なくとも、更なる戦争を政策の最も重要な手段と見なしているワシントンの一派だ。

筆者のF.ウイリアム・イングドールは地政学的専門家で、“ペンタゴン 戦慄の完全支配 核兵器と謀略的民主化で実現する新世界秩序(Full Spectrum Dominance: Totalitarian Democracy in New World Order)”の著者。

注(タイトル翻訳は、内容想像用。全て原文にリンク)

[1] F. William Engdahl, US-Außenministerium in flagranti über Regimewechsel in der  Ukraine ertappt, Kopp Online.de, 2014年2月8日,  http://info.kopp-verlag.de/hintergruende/enthuellungen/f-william-engdahl/us-aussenministerium-in-flagranti-ueber-regimewechsel-in-der-ukraine-ertappt.html

[2] Bertrand Benoit、Laurence Norman and Stephen Fidler, ヨーロッパ閣僚、ウクライナの政治的妥協を仲介: ドイツ、フランスと、ポーランドの外務大臣はキエフに飛んだ、ウオール・ストリート・ジャーナル, 2014年2月21日, http://online.wsj.com/news/articles/SB10001424052702303636404579397351862903542?mg=reno64-wsj&url=http%3A%2F%2Fonline.wsj.com%2Farticle%2FSB10001424052702303636404579397351862903542.html

[3] Jessica Best, 停戦協定にもかかわらず勃発する暴力行動の中、ウクライナ抗議行動で、 狙撃兵達、抗議行動参加者達を実弾射撃, イギリス, ミラー紙, 2014年2月20日、 http://www.mirror.co.uk/news/world-news/ukraine-protests-snipers-firing-live-3164828

[4] Aleksandar Vasovic, 極右集団、ウクライナ革命で、力を誇示, Associated Press, 2005年1月3日, http://community.seattletimes.nwsource.com/archive/?date=20050103&slug=ukraine03

[5] Wikipedia, Ukraine National Assembly Ukraine National Self Defence, Wikipedia, the free encyclopedia,  http://en.wikipedia.org/wiki/Ukrainian_National_Assembly_%E2%80%93_Ukrainian_National_Self_Defence

[6] Source report, ウクライナで武器を持っているのは誰か, 2014年2月27日, 個人記事.

[7] 同上

[8] Max Blumenthal, アメリカはウクライナのネオナチを支援しているのか?, AlterNet 2014年2月25日,
http://www.salon.com/2014/02/25/is_the_us_backing_neo_nazis_in_ukraine_partner/

[9] Channel 4 News, ウクライナ抗議行動の中心役極右集団, アメリカ上院議員と面談, 2013年12月16日,
http://www.channel4.com/news/ukraine-mccain-far-right-svoboda-anti-semitic-protests

[10] 同上

記事原文のurl:21stcenturywire.com/2014/02/28/the-rape-of-ukraine-phase-two-begins/

----------

UNA-UNSO、大本営広報部記事に載らないようで、適切な訳語がわからない。

2007年12月20日に訳した下記記事、「GLADIO、グラディオ」を扱っている。ご理解の一助の為、一読を。

大衆を国家に頼らせるべく、無辜の民間人、女性、子供を攻撃せよ<グラディオ作戦>

(元記事が書かれたのは、2005年2月18日。)

F.ウイリアム・イングドール氏の著書、『ペンタゴン 戦慄の完全支配 核兵器と謀略的民主化で実現する新世界秩序』、残念ながら、超巨大ネット書店では買えず、絶版のようにみえる。本当だろうか?この本に限らず、下記も含め、彼のシリーズ本、いずれも大変参考になるのだが。なぜだろう。

思い出したのだが、必読書『拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる』もこの巨大書店では、郵政選挙の最中もその後も、しばらく入手不能の表示になっていたが、町の大書店ではずっと平積みだった記憶がある。

ロシア・トゥデイを見ると、ロシアが支配しているクリミアのウクライナ軍兵士、大量に現地軍に転身中という。危機を避け、675,000人がロシアに逃げ込んだともある。ロシア・ビザをどんどん出しているのだろうか。杉原千畝の時のように。それとも、そもそもビザ不要なのだろうか。

ウクライナのユダヤ教シナゴーグ襲撃もロシア・トゥデイで読んだ。ユダヤ人の皆様におかれては、属国で起きているとされる不思議な『アンネの日記』損壊事件より、ネオナチが跋扈するウクライナの現状に注意を払われた方がよろしいのでは?一体誰が損壊犯なのだろう。お詫びの為、日本軍、集団自衛でウクライナに警備出動するのだろうか?

ハンフォード核廃棄物タンク不具合という記事もあり、宗主国に原発廃棄物処理関係で、助言をお願いしたり、顧問料をお支払いするのは、追い銭だとわかる。

ところで、可能性100%皆無のSFなのだが、もし日本が独立しようとすれば、宗主国基地・周辺でクリミアと同じことが起き、東京は制圧されるのだろうか。

    • 横須賀
    • 厚木
    • 沖縄
  • 建設中の辺野古基地

民法テレビ「どうなる辺野古建設」を見ると、辺野古に建設中の基地、海兵隊普天間航空基地の単なる移転でなく、大軍港だというのにビックリ。トンデモ会長や理事が占拠している国営放送では放送しない内容。

別の米軍資料によると、かつて予定していた基地、耐用年数200年だという。永久基地!

属国政府や大本営広報部の宣伝と逆に、宗主国軍基地、日本の安全・独立を担保するためでなく、属国状態を確保するためにある、と考える方が正しいだろうと、クリミア情報を読みながら改めて思う。

20年前の1994年3月4日、政治改革4法案成立、という画面が映った。お殿様の勇姿も。

この国の支配層、大本営広報部、ほぼ70年間、今回のクーデター後ウクライナ支配層以上に高水準の仕事をしっかり推進し続け、現在、最後の総仕上げ段階にある。

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