« 『ウルフ・オブ・ウォールストリート』: 一体なぜ我々がこのような人物を称賛する必要があるだろう? | トップページ | アルカイダの本当の起源暴露 »

2014年1月 9日 (木)

インターネットの地政学

2013年12月11日 Marcus Hurst
CCCBLAB

主な電報ネットワーク(1875)。出典: Wikipedia.

インターネットは、空中を移動する抽象的実体ではない。そうではなく、地球上いたるところに張りめぐらされた巨大な物理的インフラストラクチャーに基づくものだ。インターネットを、世界ネットワークにするケーブルの敷設は、石油パイプラインの場合に重要なのと全く同じ地政学的問題を引き起こす。接続性の上で信頼できる場所の確保が、石油供給の保障と同様に重要となる。

2013年3月28日、アルメニアのほぼ300万人の国民は、インターネットから、12時間切断された。この国の国民がその日味わったデジタル封鎖は、独裁主義的な政府の行動とは無関係だ。過酷な気象条件が悪かったわけでもない。機能停止の原因は、そうしたものよりも、遥かに奇抜だった。グルジアの首都トビリシから15キロ離れた田舎で、手引きのこぎりを持った一人の75歳の女性が、アルメニアの大半のブロードバンド・インターネット接続を提供しているケーブルを独力で切断したのだ。この年金生活者はマスコミに、彼女は薪を探していて、誤ってケーブルを切断したのだと語っている。“私はインターネットが一体何かも知りません”と彼女は事故後、AFPに語っている

世界中のマスコミがこの話を取り上げて、見過ごされがちなインターネットの側面に注目を集めた。我々は、飽くなきデジタル化の途上にあるにもかかわらず、インターネットとは空中を飛んで行くものだと考える人々が依然多い。誰でも自動車が工場で作られていることを知っているが、多くの人々は、ネットのことを、依然として、何にも拘束されない無形のものだと考えている。これは‘クラウド’のような言葉の助けもえて維持されている、間違った概念だ。

実際には、インターネットの内部構造には、極端な場合には、隣国でお婆さんがケーブルを切断することによってさえ影響され得る非常に重要な物理的要素が含まれている。石油が壮大なパイプラインと油送船によって場所から場所へと移動するのと同様に、データは光ファイバー・ケーブルの中を通って世界中を移動し、YouTubeビデオを、読者のコンピューター画面に届けているのだ。読者がこのビデオを見られるのは、それがハード・ドライブとして機能するサーバーが沢山置かれたデーター・センターに格納されているおかげなのだ。こうした場所は、物理的に、かなり大規模だ。

例えば、グーグルには、2009年にデーター・センター転換された元製紙工場にある、フィンランドのハミナのものを含めて、13のデーター・センターがある。グーグルは既に、このプロジェクトで、3億5000万ユーロを投資し、拡張の為、更に4億5000万ユーロを費やす計画だ。この建設作業で、グーグルが北欧諸国で最大の外国投資家になることで、プロジェクトの規模がわかる。こうした数値は、数万平方メートルもの広さにおよぶ、これらセンターの巨大な規模を反映している。しかも、グーグル一社だけではない。フェースブックや、マイクロソフトやアマゾンも世界中に同様の施設を持っている。

グーグル・データー・センター

これらのデーター・センターの多くを訪れたジャーナリストのアンドリュー・ブルムは“クラウドのそれぞれの部分は、現実の、特定の場所にあることは明白な現実なのだが、我々が常時こうした場所と即時的に通信しているおかげで、それが不思議に思えてしまう”と結論づけている。この作家はインターネットの物理的な道をたどって数年過ごし、その経験を彼は著書『Tubes』で描き出しているが、そこではっきりとこう書いている。“インターネットというネットワークは、あらゆる鉄道や電話がそうであったのと同様に、実際の物理的な場所に固定されている。”

インターネットにアクセスするのに携帯電話の利用が増大していることも、誤解を生みがちだ。お使いの機器と一番近くにあるアンテナとの間の無線によるデーター転送は、データーの長い旅のごく一部に過ぎず、アンテナは地下や海や大洋の底でデーターを運んでいる地下や海底のケーブルに接続しているのだ。

“我々は通信ケーブルのことを、まったく当たり前のものと思っている。これは実におろかなことだ。インターネットを利用しながら(あるいは、それを言うなら長距離電話をしながら)ケーブルについて全く知らない人々は、石油がどこから来るのか、あるいは、街角のガソリンスタンドまで、どうやって届くのかを全く考えもせずに、ガソリンを自分の車に給油して、車を乗り回している何百万人もの無頓着な人々と全く同じだ”とニール・スティーブンソンは、1996年に、Wiredに掲載された『Mother Earth、Mother Board』と題する記事で書いている。今やカルト的地位を占めるこの42,000語のエッセイで、著者は、1999年に稼働を開始したFLAG光ファイバーケーブルの28,000キロの道をたどって、世界中を巡っている。

自称“ハッカー旅行者”としての旅の中で、大胆で風変わりなジャーナリストが、この野心的で大規模な世界インフラストラクチャー計画実施の責任を負う向こう見ずな技術者達にインタビューしている。

“全てのケーブルの母、FLAGシステムは、ポースカーノ(イギリス)から始まり、エステポナ(スペイン)へと向かう。ジブラルタル海峡を経て、パレルモ(シチリア島)。地中海を越えて、アレキサンドリアとポート・サイド(エジプト)。スエズ湾と紅海を下り、潜在的分岐装置を経てサウジアラビアのジェッダへ。アラビア半島を巡り、FLAGネットワーク運用センターが置かれているドバイへ。インド洋を越えて、ボンベイへ。インドの先端を巡り、ベンガル湾とアンダマン海をわたり、マレーシアのペナンへと向かう分岐のあるタイのBan Pak Baraへ。タイのソンクラーに上陸。南シナ海を上にあがり、香港の大嶼島へ。中国沿岸に上がり、東シナ海で分岐する。分岐の一つは上海に、そしてもう一方は韓国の巨済島へ、そして最後に、ライバルの通信事業者が所有する日本の別々の場所、二宮と三浦に上陸する”とこのアメリカ人作家は書いている。

FLAG同様、何百もの海底ケーブルが、様々な国々を縦横につなげているものと推測されるが、インフラストラクチャーの創出は、インターネット(アメリカでは、95%の外国との通信は海底ケーブルを利用している)の運用を保証する上で極めて重要だ。これに加えて、膨大な数のケーブルが、国境を越えることなしに稼働している。

水深1000メートル以下の地域は、ケーブル敷設という点では非常に困難だ。そうした地域におけるケーブルの物理的完全性に対する脅威には、船の錨、鮫による咬み傷や、海底の漁網の絡まりなどがある。今年3月、エジプト警察が、アレクサンドリア近くのSEA-ME-WE 4ケーブルを切断した三人のスキューバダイバーを逮捕したように、破壊工作の出番もある。連中の行為によって、このケーブルに依存していたエジプトの都市や他の地域で、24時間以上、インターネット接続が低下した。

こうした理由から、ケーブル上陸地点として好まれるのは辺鄙な場所だ。“ケーブルは、ほぼ決して工業地帯には上陸しない、第一に、そのような地域は訪れる人が非常に多く、頻繁に浚渫される、第二に、純粋に地理的な理由だ。産業は川を好むが、川は水の流れをもたらし、流れはケーブルには好ましくない”とスティーブンソンは説明する。

企業という面では、様々な市場で競合している複数の電気通信会社が、新規ケーブルを敷設する為に、何十もの企業でコンソーシアムを組むのも珍しいことではない。この戦略で経費を低減し、そうした企業の顧客が要求する接続を提供するのに必要な能力が確保できるのだ。

インターネット・ケーブルの地政学

本記事の冒頭で書いた通り、アルメニアのインターネット接続を切断させた出来事は、アルメニアのインフラストラクチャーの脆弱さに対して注目を集めた。もしも手びきのこの様に簡単なものでネットワークが破壊されうるのであれば、深刻な問題だ。ヨーロッパやアメリカ合州国で使用されているより高度なシステムでは、データがA地点から、B地点に行くには、非常に多くの違った道があり、事故が起きた場合、目的地への代替経路をずっと見つけやすくなっている。欧米の領土を出て、より紛争の多い地域に入るにつれ、デジタル・インフラストラクチャーの構成は、より複雑となり、地政学的観点からは、極めて興味深くなる。

“地政学に関して、勢力圏や国家権益等々に関して、皆様がお読みになる全てのことが、インターネットや、インターネット構造が演じていることと対位法的関係にあるのです”と、ハーバード大学バークマンセンターでの講義で、レネシスの最高技術責任者ジェイムズ・カウイー(James Cowie)は語っている。主張をはっきり示すため、このネットワーク専門家は、中東のインターネット構成の様子を語っている。

イスラエルは敵国に囲まれているので、例えば他の世界との接続は主にキプロス、シシリアやギリシャを通って、ヨーロッパやアメリカ合州国に至る海底ケーブルに依存している。カウイーは言う。パレスチナ領土は、ネット接続を、一部はイスラエルの、そして一部はヨルダンに上陸しているヨーロッパの運用業者に依存しており、それぞれケーブルで、それ以外の世界に、サウジアラビアを通ってアカバ港に上陸するFLAG海底ケーブルの分岐につながっている。

エジプトと外交関係を持たないレバノンは、2009年に、フランスとインドの接続稼働を開始したI-ME-WEケーブルが、アレキサンドリアから、湾岸の都市トリポリへの海底分岐を追加した2011年迄は、ほぼもっぱらキプロスからのケーブルに依存していた。“突如、テラ・バイトという能力が彼等の戸口に上陸したのです”とカウイーは説明するが、これが結局、負荷過剰のシステムから負荷を取り除いた。

11月始め、レバノン政府が、I-ME-WEを運用している企業に借金があった為、インターネット接続が脅威にさらされた。11月2日、財務大臣と通信大臣が、320万ドルの借金を支払ったことを確認する報道発表をした。通信大臣は、もしI-ME-WEネットワークから切断されれば、政府には、最近レバノンに上陸したアレクサンドロス・ケーブルを使用するという代替案という声明も出した。信頼のおける接続の確保は、リスク分散の為に、様々な資源を利用してエネルギー供給を保障するのと同様、重要になっている。

トルコの場合、アジアとヨーロッパの間のと架け橋というその地理的な位置が、オットーマン帝国時代、トルコをあれほど有力にした重要性を回復させた。カウイーが言う通り “ヨーロッパとトルコ間ファイバー・ケーブルの経路は古代の通商路をたどっている。”トルコの外交力はイラクや、カフカスやサウジアラビアに向けて新たな光ファイバー・ケーブル・ルートを建設しているテュルクテレコムやテュルクセルテレコム等の電気通信会社の投資によって後押しされている。“彼等はインターネットの主要輸出国となり得ることに気がついたのです”とカウイーは言うが、これは近隣諸国に対するトルコの勢力圏を増す一つの方法だ。

ケーブル・ルート計画ということになると何より地政学的現実主義が優先するとカウイーは考えている。“これは主要な戦略問題となった。いかにしてインターネットをより安く、より早く、我々が好きではない国々を通らないようにして、より安全にするかだ。”

全く同じ理由から、FLAG主催者達は、多様性を確保する為、異なる複数の経路を選ぶこととなったが、スティーブンソンが記事で説明した通り、“システムをより堅固にするためには、複数の冗長な経路を備えるべきだという原則”によるものだ。

19世紀の向こう見ずな連中

最初の海底ケーブルを建設し、電報革命の道を開いた、勇敢な19世紀中期の起業家達の仕事無しには、高品質の世界通信へのアクセスは決して実現しなかっただろう。“それ以来変わった唯一の事は、危険の度合いがずっと小さくなり、プロセスが遥かに官僚化され、関係者達がずっとつまらなくなっただけだ”とスティーブンソンは言う。

当時は誤差の範囲が余りに大き過ぎ、1861年に敷設された全長17,500キロのわずか5,000キロしか機能しなかった。“世界は、一世紀半して、デジタル通信システムによって本当に結ばれた。その間に起きた何事も、1858年のヴィクトリア女王とブキャナン大統領との最初のメッセージ交換の衝撃に比肩できるものでは無い”と、スティーブンソンは付け加えている。

社会のデジタル化の道は益々進むだろうが、極めて具体的であるだけでなく、19世紀の海底ケーブルにまでさかのぼれるインフラストラクチャーによって、常に支えられ続けるだろう。

電報

イースタン・テレグラフ社のネットワーク (1901)。出典: A.B.C.Telegraphic Code 第5版、Atlantic-cable.

この記事のテキストは、下記条件の下でライセンスされている。

記事原文の:blogs.cccb.org/lab/en/article_la-geopolitica-dinternet/
----------

「細川・小泉「元首相連合」なら構図一変 東京都知事選」
小選挙区制度や、郵政破壊といった、大変な災厄を日本にもたらした二人が組むと、大変な支持がえられるほど、首都の民度は劣化しているのだろうか?

この国の首都の民度は劣化しても、宗主国やその同盟国には立派な人々がおられる。
「軍事植民地終結を」 海外識者ら声明発表
リストをみると、今、再読している『小林多喜二-21世紀にどう読むか』の著者、ノーマ・フィールド教授はそのお一人だ。

検索してみたところ、ニール・スティーブンソンが記事の中にあるエッセイを書くため?来日した際、彼に会った方の記事があってびっくり。

空想読書館『スノウ・クラッシュ』

記事を拝読すると、エッセイだけでなく、長編小説『クリプトノミコン』を書くための調査だったようだ。検索したが、ハヤカワ文庫の翻訳本は残念ながら絶版?

この記事では、大胆な起業家達とほめそやしているが、目に見えない兵器(インヴィジブル・ウェポン)で、情報を独占し、戦争で大儲けし、軍事植民地を支配しようという下心が基本だったのではと、品性いやしい小生、ひねくれて考えてしまう。インターネットの前身、電信の歴史について、新しく、詳しいものに下記がある。

インヴィジブル・ウェポン 電信と情報の世界史1851−1945
D.R.ヘッドリク (著), 横井 勝彦 (監訳), 渡辺 昭一 (監訳)
日本経済評論社
税込価格:6,825円

19世紀後半にヨーロッパ勢力がアジア・アフリカへ膨張を遂げるさいに、そして20世紀前半の戦争の時代においても、電信は不可欠の武器であった。国際関係史と軍事史の視点からつづる、国際電気通信の100年史。

盗聴の話、満載で、今のネット監視・盗聴と直接つながる様子が伺える良い本だ。

« 『ウルフ・オブ・ウォールストリート』: 一体なぜ我々がこのような人物を称賛する必要があるだろう? | トップページ | アルカイダの本当の起源暴露 »

インターネット」カテゴリの記事

コメント

うっかりしていたのですが、小選挙区制を敷いたのは細川内閣の時だったのですね。
という事はトンでもない選挙制度を齎した、トンでもない総理だったという事になりますね。
でも細川さんが脱原発で立つといわれたら、やっぱり応援したくなってしまいます。
宇都宮さんが当選されれば申し分ないのでしょうが、マスゾエさんなどが当選されたら酷い事になりそうですし・・・・・

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1335849/54546153

この記事へのトラックバック一覧です: インターネットの地政学:

» 細川元総理 脱原発を掲げて都知事選に出馬の意向 [Dendrodium]
都知事選 細川氏が出馬検討 無所属、公約に脱原発 2014年1月9日 夕刊  細川護熙(もりひろ)元首相(75)が東京都知事選(二十三日告示、二月九日投開票)への立候補を検討していることが九日、明らかになった。出馬する場合は無所属で脱原発を公約に掲げる。   細川氏に近い関係者によると、細川氏は昨年末、猪瀬直樹前知事が辞職した直後から選挙に備えた準備を始めた。この関係者は「細...... [続きを読む]

« 『ウルフ・オブ・ウォールストリート』: 一体なぜ我々がこのような人物を称賛する必要があるだろう? | トップページ | アルカイダの本当の起源暴露 »

お勧め

  • IWJ
    岩上安身責任編集 – IWJ Independent Web Journal

カテゴリー

ブックマーク

無料ブログはココログ