いかにしてジャンク経済学者は、金持ちを助け、労働者階級を挫いているか
Paul Craig Roberts
2014年1月28日
先週、大企業の短期的利益の為、雇用の海外移転と金融規制撤廃によって、経済学者や、政策立案者為政者連中が、いかにしてアメリカ経済を破壊したかをご説明した。
http://www.paulcraigroberts.org/2014/01/25/economists-policymakers-murdered-economy-paul-craig-roberts/ 英語版 日本語翻訳版はこちら。
同じ週、ビジネス・ウイークが、チャールズ・ケニーによる“工場の雇用は消滅した。そんなものは吹っ切れ”という記事を掲載した。http://www.businessweek.com/articles/2014-01-23/manufacturing-jobs-may-not-be-cure-for-unemployment-inequality ケニーは“製造業に対する政治的こだわりは一体何なのだろう? 工場は本当にそれほど素晴らしいのだろうか?”を知りたがっているブルッキングス研究所の経済学者ジャスティン・ウォルファーズ等の体制派経済学者の見解を表明している。
“決してそうではない”とケニーは言う。クリーブランド連邦準備金銀行のエリック・フィッシャーの言葉を引用して、ケニーは最も素早く製造業を放棄した州において、最も急速に賃金が上がったと報じている。ケニーは、2009年、中国製タイアの輸入は、アメリカ人消費者に10億ドルも、より高い価格を負担させ、3,731の小売業雇用を失わせたと主張した、現在ピーターソ研究所にいる、小生のかつての学問の同僚ゲリー・ハフバウアーを引用している。末尾の31にまで到る失業数の精度にご留意願いたい。
製造業雇用無しでも、アメリカ人の暮らし向きは良くなっているという主張を支持するべく、ケニーは、製造業が集団を形成する傾向があるという証拠は存在せず、だから、熟練労働人口と確立されたサプライ・チェーンの恩恵を受けられる同じ地域に集まる傾向がある製造業者による経済、という見解に異議を唱える、MITとハーバードの経済学者の説を引用している。
おそらくMITとハーバードの経済学者連中は、アメリカ製造業の中心地が脱け殻となり、デトロイトが25%の住民を失い、インディアナ州ゲーリーが22%の住民を失い、ミシガン州フリントが18%の住民を失い、クリーブランドが17%の住民を失い、セント・ルイスが住民の20%を失った後で研究を行なったのだろう。もし経済学者達のこの研究が、製造業が移転してしまった後で行なわれたのであれば、かつて製造業が栄えていた特定地域への製造業の集中を見いだすことは不能だったろう。MITとハーバードの経済学者達にとって、それは理解するには余りに巨大すぎることだったのかも知れない。
職を失った製造業労働者に対するケニーの答えは、ご推察通り、職業訓練だ。職を失った労働者を支援するのに費やす400ドルの内、連邦政府がわずか1ドルしか再訓練に使わないことが問題だと考えているMITの経済学者デビッド・ アウターを彼は引用している。
こうした議論は余りに馬鹿げていて、おろかとしか言いようがない。こうした説を検証してみよう。失業した製造業労働者を一体どのような仕事に向けて訓練するのだろう? もちろんサービス業雇用向けだ。ケニーは実際“ホテル、病院、マスコミや、経理等、サービス産業が代わりを務めている”と考えている。(一体どこから彼が、マスコミや経理を引っ張りだしてきたか私にはわからない。雇用統計報告の中でそのような雇用はほとんど見かけない) しかも、長期失業率の上昇や悪化する就労率が証明している通り、サービス業雇用は決して代わりを務めているわけではない。
ホテルのメイドや、病院の雑役係、小売業店員、ウエイトレスやバーテンダーの様な非貿易サービス部門の雇用は、生産性が低い、低付加価値雇用であり、製造業の雇用に匹敵する収入を支払うことはできない。本当の世帯平均所得の長期的下落は、製造業の雇用や、ソフトウェア・エンジニアリング、IT、調査や設計等の移転可能な専門サービス業雇用の海外移転によるものだ。
しかも国内サービス業雇用は、輸出可能な製品やサービスを生み出すわけではない。製造業の無い国は、靴、衣服、工業製品、ハイテク製品、アップル・コンピューターや、益々多くの食料の輸入の為に支払う外貨をかせぐ手段がほとんどない。それゆえ、アメリカの貿易赤字は毎年拡大し、外国への借金はが益々増大しつつあるのだ。
最も良く知られた製品は、誰も買いたがらず、既存の資産を譲渡する以外、輸入代金を支払いたがらない詐欺的で、有害な金融商品やGMO食品だというのがこの国だ。外国人は、貿易黒字でアメリカの資産を買いまくっている。結果として、賃借料、利子、配当、キャピタル・ゲインからの収入や利益は、アメリカ人のポケットを去り、外国人のポケットへと流れてゆく。アメリカのタイヤ製造業の雇用を救おうとすると、その価値より割高になると結論づける際、ハフバウアが、こうした経費の何一つ、あるいはアメリカのタイヤ労働者の賃金やタイヤ製造業者の利益損失さえも考慮に入れていないのは間違いない。
賃金上昇率が一番高い場所は、より生産性の高い製造業雇用が、最も急速に、より生産性の低い国内サービス業雇用に変わった地域で見られるというエリック・フィッシャーの主張は出鱈目もいいところだ。(フィッシャーはそうは言っていない可能性が高い。私はケニーの表現を論じている。) 労働者は、生産に対するその貢献への対価を支払われるというのが労働経済学の基本だ。工場や機器に盛り込まれている技術を駆使して働く製造業の従業員は、シーツを交換するメイドやカクテルを作るバーテンダーよりも多くの人時あたりの価値を生み出すのだ。
私の著書、The Failure of Laissez Faire Capitalism And Economic Dissolution Of The West「放任資本主義の失敗と、欧米経済の経済崩壊」邦訳無し(2013)で、元大統領経済諮問委員会メンバーのマシュー・スローターや、ハーバード大学教授マイケル・ポーターによる“研究”における明らかな間違いを私は指摘した。こうした経済学者連中は、とんでもない間違いと、経験的事実への無知に基づいて、雇用の海外移転はアメリカ国民にとって善であると結論づけている。その善の顕現など全く皆無であるにもかかわらず、連中はこの結論に到達できており、しかも連中は“回復”できず(あるいは回復が欠如している) 、4年半も経済を軌道にのせることもできず、 雇用を、6年前の水準にまで回復することもできないまま、この馬鹿馬鹿しい結論に固執している。仕事を見つけることができない大学卒業者の比率が増大しつつあるにもかかわらず、連中は“教育が答えだ”という解にしがみついている。
御用経済学者連中を“ジャンク経済学者”と呼んだマイケル・ハドソンは確かに正しい。実際、経済学者連中にジャンクとしての価値すらあるだろうかと私は疑っている。だが連中は、ウォール・ストリートや雇用を海外移転している大企業からたんまり頂いているのだ。
ブルッキングス研究所のジャスティン・ウォル ファーズが自ら問うべきことは、経済発展の再定義とはいったい何か?だ。私の経験上、先進国経済の定義は、終始、産業化経済だった。“発展途上国”“途上国”や“新興経済”と対照的に、“先進経済”の地位を占めるのは、常に“先進工業国”だった。自国の産業や製造業を投げ捨てて、一体どうして経済を発展できようか? これは発展過程の裏返しだ。それを自覚せずに、ケニーは、1953年、アメリカGDPの28パーセントから、2012年の12%というアメリカ製造業の衰退を述べながら、アメリカ経済を解明しようとしている。今やアメリカの労働人口は、国民の大部分が賃金の低い国内サービス業に雇用されており、第三世界国並だ。もはやアメリカの労働人口は、先進国の労働人口の体をなしていない。まるで30年前の第三世界インドの労働人口のようだ。
ケニーや他のジャンク経済学者連中は、アメリカ製造業雇用の衰退は、労働力が安価な国々に海外移転されている為ではなく、オートメーションで置き換えられているかのごとき言い方をする。オートメーション化が進み、人を機械で置き換える更なる方法が考え出されているのは確かだ。しかし、もし製造業の雇用が過去のものであるなら、一体なぜ中国が、突然急速に、1億の製造業雇用がある経済大国に上昇したのだろう? アップル・コンピューターは、ロボットによって中国で製造されているわけではない。もしロボットがアップル・コンピューターを作っているなら、アメリカでコンピューターを製造しても同様に安くできるだろう。中国製造業の労働人口は、アメリカの全労働人口とほぼ等しい。
アメリカの大企業は外国で製造された製品をアメリカ国内で販売するマーケティングの為にアメリカ人を雇用している。それがアメリカ大企業が、主としてサービス業の雇用で、アメリカ人を雇用している理由だ。外国人が製品を作り、アメリカ人がそれを売っているのだ。
経済発展というものは常に、国内なり外国なりで売ることができる価値あるものを製造する為の資本、技術、事業ノウハウと、熟練労働人口の確保にある。アメリカの資本と技術は、外国に移転されつつあり、アメリカ国内の熟練労働人口は、廃用と放棄のおかげで消滅しつつある。アメリカは先進工業国の隊列からおちこぼれ、開発途上経済となる道を進んでいるのだ。
Paul Craig Robertsは、元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えていた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the Westが購入可能。
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宗主国の意を汲んで、郵政破壊を推進した日本のジャンク経済学者代表氏、もちろん製造業ではなく、新自由主義政策、無期限派遣労働で大儲けをする派遣業超大手のトップについている。そして、今、国家戦略特区を推進している。
個人的に、国家戦略特区の問題点を知ったのは、前大田区議員 奈須りえ氏の講演を拝聴してから。奈須りえ氏 ブログにも書いておられる。これを読まずして、投票先を決めると、皆様の子孫末代にまで祟ることになる。脅かしではない。
近頃、ネットで良く見られる「共産党は自民党補完勢力である」という言説、何のことはない、毎回あらゆる選挙前に必ず見られるおなじみプロパガンダ。
もはや反共プロパガンダは通用しないだろうと『激突の時代 「人間の眼」VS.「国家の眼」』の中で書いて逝かれた、経済同友会終身幹事で、元日本火災海上保険(現日本興亜損害保険)社長の品川正治氏、さぞやお墓の中で怒っておられるだろう。
自民党、つまり宗主国・属国大資本の走狗を補完するのは、共産党ではなく、元首相コンビを背後であやつる連中が支える諸政党だろう。そうした政党、補完どころか自民党・民主党同様、同じ派閥のものを無理やり芝居に仕立て、対立を演じる茶番にすぎない。
99%の人々が、選挙で受かる可能性が高い方を支持し、受かる可能性が低い方を排除し続ければ、99%を救う政治家は、永遠に現れない。ダイアモンドで、元新聞社エリート社員氏、「頭の柔らかさ」を共産党に求めている。共産党ならぬ、無党派の小生、「無原則」を求められても応じるつもりはない。
小生、小選挙区制を推進し、郵政売国を推進した無原則なマスコミ・エリートにお説教される立場にはない。問われるべき、反省すべき党派・組織がもしあるとすれば、無原則に70年間、売国活動を幇助してきたあなたがたマスコミもその代表だろう。
かくして99%は1%に支配されつづける。それが宗主国、そして第一の傀儡属国の現状だ。
宗主国・属国傀儡政治に反対する候補者に投票するのは、社会主義や共産主義世界を望むからではない。彼が選ばれたとて共産主義や社会主義になるはずもない。
国家戦略特区を推進する殿様を?「鼻をつまんで煮え湯を飲むか」という人気ブロガー・歌手もおられるらしい。
有名俳優やら評論家方等々、支援者リストは続く。宇都宮氏を支援すれば、今後仕事で干される可能性なしとしない。茶番の一方の雄であるお殿様を支援すれば、今後干される心配は皆無なのだ。
今回の都知事選、小生にとって唯一の恩恵、読む必要がないブログ、著者が明らかになったことだと思えるようになった。鎌田、広瀬両氏の著作を多数購入した者として、経済的・心理的打撃は大きいが、今後は節約になる。
毒薬は、鼻をつまんで飲んでも毒薬。
苦く見えても、決して毒でない薬を、無理しないで飲めば良いだろう、と素人は思う。
藤原正彦氏、その政治的見解、小生と対極にあるだろうと想像するが、彼の『 国家の品格』 の下記言説には共感する。意見が全く違う方の本まで自費で読む貧乏人、益々貧乏になるしかないが自業自得。
冷徹なる事実を言ってしまうと、「国民は永遠に成熟しない」のです。
この本については、いささか昔の2012年11月、下記記事で触れた。
誰が勝利しようと、容易に予測できる選挙後の5項目
その記事には、
究極的にオバマ大統領とミット・ロムニーの間に社会政策上の差異はない。という文言がある。
同じように、今回の都知事選挙では、
原発を除いて、安倍首相と小泉・細川都知事候補・新党準備運動連合の間に、本質的な社会政策上の差異はない。
マルハニチロのアクリフーズ食品農薬混入容疑者と目される人物、たまたま首相と同じ発音の姓。国民に永久に与える被害の深刻さ、首相の比ではないだろう。
大本営広報部、みるからにあやしい容疑者ならば(決して、人さまの容貌・スタイルをだしにできないメタボ・オヤジとして、書きながら申し訳なく思う)追いかけるが、一見ハンサムで育ちのよろしい方?が、どれほど売国政策を推進しようと、決して追求することはしない。
シングル・イッシューに騙されて泣くのは有権者。非力な素人には救いようがない。
2014/01/30 【東京都知事選】「1%のためではなく、99%の生活を守る」 〜岩上安身による宇都宮健児・東京都知事選候補インタビュー
お殿様インタビューも是非拝見したいものだ。お殿様は断っているのだろうが。
2014/01/31 【東京都知事選】「国家戦略特区」は”ブラック特区” 派遣法改正で拡大する賃金格差 ~岩上安身による棗一郎弁護士インタビュー
岩上安身氏からのIWJの現状報告とご支援のお願いが、以下のページに掲載してある。
→http://iwj.co.jp/wj/open/archives/107798
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