アフガニスタンとアメリカとの間の植民地協定
ニコライ・ボブキン
2013年12月21日| 00:00
Strategic Culture Foundation
アフガニスタンとの安全保障協定を年末迄に署名するというアメリカの願いは実現しないかも知れない。アメリカ軍の完全撤退による結果で、アフガニスタン指導部を脅かそうという企てにもかかわらず、ハミド・カルザイ大統領は協定には署名しないという最終決定をしたように見える。オバマ政権は、これを巡って、明らかにパニックになっている。一週間に数回も協定署名条件について姿勢を変えている。NATO指導部も同様にやきもきしている。カーブルとの協定無しでは、同盟諸国はアフガニスタンからの軍隊全面撤退を促進させるよう強いられることになるのだ。最近のアフガニスタン大統領との論争では、アフガニスタン政府に対する支援を止め、アフガニスタン国内で騒乱を引き起こすとまで脅しがかけられている。
ところが、ハミド・カルザイは脅しにも屈せず、最近、協定に署名する権利を後継者にまかせるという決断を発表した。アメリカのジョン・ケリー国務長官は奇妙な対応をし、ハミド・カルザイか、その時間枠内ではアフガニスタン大統領後継者など存在するはずがないのに、今年末迄に彼の後継者が協定に署名するだろうという願望を表明した。後継者は、2014年4月5日に予定されている選挙の後でないと判明しないのだ。
イランを例外として、アフガニスタンの隣国は全て、カーブルとワシントンとの間の協定を支持している。ロシアに関しては、ロシア外務省は、ウラジーミル・プーチン大統領がアフガニスタンに、アメリカ合州国との協定に署名するよう促したという報道を否定した(そのような報道は、アメリカ側からのものだ)。今や、アフガニスタンにおける平和と安定に関心を持つ全ての人々にとって、アメリカ合州国が非常に慎重かつ注意深く、実にしつこく推し進めようとしている協定の条文を読む必要がある。
アメリカ合州国とアフガニスタン・イスラム共和国との間の安全保障・防衛協力協定のごく一部の条項だけがアフガニスタン大統領には不満なのだという、広く知られている意見は、実際の状況を反映していない。アメリカは、アフガニスタンをアメリカの植民地にしようとしていると非難して、ハミド・カルザイは提案されている協定のまさに精髄を拒否しているのだ。
協定前文でさえ、独立国家との国際協定条約の特徴とは思えない目的を謳っている。アメリカは"アフガニスタン主権、安全保障、領土保全、国の結束と、憲法秩序に対する内部と外部の脅威を阻止する為の能力を強化させる"ことを計画している。ハミド・カルザイは、タリバン運動を政治の舞台に復帰させること無しには、国の結束を実現する可能性は皆無だと考えている。タリバン運動は、アメリカ占領の継続には断固として反対だ。アフガニスタンの主権に対する外部の脅威として、具体的にはどこの国もあげられていないが、アフガニスタンに介入すると脅しているのは、アメリカとNATOに他ならない。
そして、ハミド・カルザイはとりわけ、アフガニスタン国内で"対テロ戦争"を独自に戦う権利を与えよというアメリカの要求が気にくわないのだ。アフガニスタン大統領は、アメリカの対テロ戦争は、アフガニスタンの国民に対する脅威だと見なしている。彼は問うている。"一体なぜ" "アフガニスタン国民が対テロ戦争の犠牲にならなければいけないのだろう?" 彼は言う。特にNATOは、対テロリスト戦争を、キャンプや訓練基地ではなく、アフガニスタンの村々で戦っている。アフガニスタン人一般市民の死傷者は、カルザイが、アメリカに対して抱えている主な問題の一つだ。12年間の占領で、2000人以上のアメリカ兵士が亡くなった。更に他のNATO加盟諸国兵士のほぼ千人が亡くなった。アフガニスタン一般国民の死傷者の正確な人数は計算することが不可能だ。様々な数値によれば、18,000人から、23,000人の一般市民が亡くなった。その多くは、航空も含め NATO軍の誤った、あるいは不適切な戦闘の犠牲者だ。
今カルザイは問うている。"アメリカ人は、アフガニスタン人よりも尊いのだろうか? 疑問は正当だ。アフガニスタンの損失は、なぜか実際には考慮されていない。ワシントンはそれは数に入れたくないのだ。アフガニスタンでは、何百人もの一般市民が毎月殺され続けている。彼らの多くの死に、タリバンは責任があるが、かなりの人数は、ISAFの軍隊は既に、武装戦の主な負担をアフガニスタン人に任せて、積極的な戦闘は控えているとはいえ国際連合部隊の戦闘の結果だ。チャック・ヘーゲルアメリカ国防長官は、アフガニスタンにおける状況に関する対議会最新報告の中で、アフガニスタン国軍は、計画された作戦の95%と、特殊作戦の98%を受け持っており、現地の警察と軍は、領土の75%に対する責任をまかされているとしている。
ところが、ヘーゲルの意見では、アフガニスタンからの軍隊撤退後、もし国際社会が支援と助言を止めれば、アフガニスタン国軍は "重大なリスクに曝される" のだ。アフガニスタン防衛組織と法執行機関との協力の分野に関する施策は協定の第4条に規定されている。そこには、専門家や、将校や司令部要員を、組織し、訓練し、武器を与える上での支援しか書いていない。そのような課題を実現する為には、アフガニスタンにおける、9箇所の巨大なアメリカの軍事基地を維持したり、まして拡張したりする必要はない。大都市に配備された10,000-12,000人の軍隊を維持する軍事的有用性や、アフガニスタン領土の主要部分に対する支配ができるかどうかも疑問だ。アメリカ人専門家達は、残された軍隊は、アフガニスタンの将来に対するオバマ政策を守る為の "人間の盾" になりかねないという懸念を表明している。
アフガニスタン社会における権力の力学に対する、ワシントン知識の乏しさの一例は、アフガニスタン国軍採用のやり方だ。アメリカは、アフガニスタン治安軍の規模をto計画していた352,000人に増やすことができた。現在、軍隊は、約185,000人、警察にはほぼ147,000人だ。ところが、アフガニスタン治安部隊の70%は、非パシュトゥーン族であり、人口の多数を占めるパシュトゥーン族から見て、彼等は非常に不評だ。国軍の目標規模を実現しようとあせるあまり、アフガニスタンの様々な地域で、強制動員が行われた。大半の新兵は教育不足であり、脱走も非常に多い。訓練が不十分で、闘争心も乏しいアフガニスタン軍の損失の方が、ISAF部隊の損失よりはるかに大きいのは偶然ではない。同盟諸国兵士の死亡者は一ヶ月に13人から27人だが、アフガニスタン国家警察と、地方の防衛旅団では、2013年に100人以上が死亡し、約300人が毎週負傷している。アフガニスタンで現在最も脆弱な地域は南部であり、そこで暮らす大半はパシュトゥーン族だが、アフガニスタン軍は、そこで戦える可能性はありそうにない。アフガニスタンの防衛と安全保障を維持する為の施策を規定する協定第5条には、一項目たりとも、アメリカは、いかにしてパシュトゥーン族地域の安定性を維持する計画かについて応えるものは無い。
協定の大半は、アメリカ軍兵士の長期駐留を支持するアフガニスタンの義務を専ら扱っている。文章の三分の二は、アメリカ人要員のアフガニスタンへの通貨持ち込み手順から、アメリカの運転免許証の使用法に至るまで、驚くほど微に入り細を極めた内容だ。アメリカ人は永久にアフガニスタンに駐留する計画で、通常であれば外交官のみに認められる特殊な条件に関するものだという印象を受ける。アフガニスタン人が、アメリカ兵士の特別な特権を侵害しようという気にならないようにすべく、協定の履行を監督する為の合同委員会設置が、第27条で規定されている。
全体的に、協定は、アフガニスタンの利益に役立つのだろうかというハミド・カルザイの疑念に同意せざるを得ない。少なくとも、協定の文章では、2014年以降、NATO軍兵士が国から撤退するだろうと依然希望しているアフガニスタン国民に、安全保障と平和をもたらすアメリカの能力については、ほとんどその気配が伺えない。アフガニスタン指導者は最近イランとインドを訪問し、一方的にワシントンとブリュッセルだけに絞らずに、そこでの支持も得ようとしている。
アフガニスタンにおける戦闘任務の終了は、ソ連崩壊とワルシャワ条約解消後、この軍事同盟は、もはや必要ではないことを、NATO指導者達に対して注意喚起の機会となるべきだ。NATOは、有効性が消滅した後も存続してしまい、中国国境に対する影響力を増そうとして、国際安全保障制度において、益々否定的な役割を演じている。
明らかな理由から、ワシントンとしては、アメリカが今、その力を失いつつあることは中々認めがたいのだ。世界は、アメリカが、シリア問題への軍事介入を、いかにして控えることを余儀なくされ、イラン核計画問題の解決に、軍事的手法ではなく、外交ルートを、いかにして選択したかという様子を目の当たりにした。一体何故、アメリカは、その方向を推進して、国連の委任期間満了後、アフガニスタンにおける彼等の軍事駐留を確保するという計画を放棄しないのだろう? 特に現在のアフガニスタン指導部は、自分の国をアメリカ植民地にしたくないと考えているのだから。
記事原文のurl:www.strategic-culture.org/news/2013/12/21/the-colonial-agreement-between-afghanistan-and-the-us.html
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仲井真知事の傲慢な質疑の受け答えにはあきれた。質問には全く応えず、わけのわからない理論屁理屈を一方的にまくしたてるだけ。もともと予想はしていたが。徳州会騒動も影響しているのかも。
TPPで、日本の経済、社会制度をすっかり宗主国風に破壊し、宗主国大企業に差し上げ、秘密法案で国民を恫喝し、沖縄に侵略部隊の基地を新設し、集団自衛権を承認して、宗主国の侵略戦争に、国軍を砲弾の餌食として提供するのだから、新たな戦没者はここに祀りますと、いうことで参拝したのだろう。
ところが、とうとう宗主国に叱られてしまった。
そもそも、宗主国と戦った「英霊」が、宗主国侵略戦争の砲弾の餌食となった後輩を歓迎するのだろうか?と大変素朴に思う。
将来、新英霊の行き先は、宗主国のお偉方二人が花輪を捧げた「千鳥ヶ淵」になるだろう。
カルザイ氏には、大統領退任後、来日し、交替していだだいた方が独立の為になりそうだ。
現在の日本指導部は、自分の国をアメリカ植民地にしたいと考えているのだから。
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