「ジャーナリズムとの戦いというものが進行している」:スケイヒル NSAリークと新たな調査報道メディア発起を語る
Democracy Now!
2013年12月5日、木曜日
ゲスト:
ドキュメンタリー映画『汚い戦争』のプロデューサーで作家で同名本の著者ジェレミー・スケイヒル。現在スケイヒルは、グレン・グリーンウォルドや、ローラ ポイトラスや、eBay創設者ピエール・オミダイアと共に新たな報道機関を立ち上げようとしている。
6カ月前の今日、グレン・グリーンウォルドが、エドワード・スノーデンの国家安全保障局からの漏洩情報に関する最初の記事を、ガーディアン紙に発表した。イギリス警察は現在、スノーデンが漏らしたデータの扱いを巡るテロ行為のかどで、ガーディアンのスタッフを捜査すべきかどうか検討中だ。ジェレミー・スケイヒルは、世界中での"ジャーナリズム対する戦争"と、グリーンウォルド、映画監督ローラ・ポイトラスと、eBay創設者ピエール・オミダイアと共に新しいメディア・ベンチャー企業を立ち上げる彼の仕事について語っている。
番組の文字起こし
これは急ぎの文字起こしであり、必ずしも最終的文章ではない。
フアン・ゴンザレス: ジェレミーさん、エドワード・スノーデンについても質問させて頂きたいのです。6カ月前、グレン・グリーンウォルドが、スノーデンによるNSA問題漏洩に関する彼の最初の記事をガーディアン紙で発表しました。火曜日、イギリス議会の公聴会に出席して、スノーデンが漏洩させた資料の公開を巡る質問に答えたガーディアン紙編集長アラン・ラスブリジャーのビデオをご覧頂きたいと思います。内務特別委員会のキース・ヴァズ委員長は、ラスブリジャーに、ガーディアンが、これまでのところ、どれだけの資料を公開することにしたかについて質問しました。
キース・ヴァズ: 事実に対する質問で、この委員会宛てにあなたが書いた文書証拠中で、あなたは極めて明瞭にあなた方がスノーデン氏から得た情報に関しては、与えられた情報の1パーセントしか公開していないと言っています。これはいまでも正しいですか?
アラン・ラスブリジャー: それはほぼ正しいです。ですから、我々は情報を発表し続けます、しかし、それは我々が得たものの約1パーセントです。
キース・ヴァズ: 私の知る限りでは、あなた方には58,000件のファイルがあります。すると、この委員会で、そうしたファイル中の情報のわずか1パーセントが現在公開されているとあなたはおっしゃるのですか?
アラン・ラスブリジャー: はい。
フアン・ゴンザレス: 聴聞の後の方で、アラン・ラスブリジャーは、スノーデンが漏洩した資料のどれだけ多くを公開するか決定するのに彼が用いた基準を詳細に説明しています。
アラン・ラスブリジャー: 損害対、益です。裁量です。釣り合いです。全てではなく、1パーセントです。これは情報の探り出しなどではありません。そもそもこの作業の最初に、私が記者達に言ったことの一つに、これをお宝記事が隠されている桶として利用するつもりはないというのがあります。イラクやアフガニスタンに関するものもあります。我々は、まだそれを調べてさえいません。それはエドワード・スノーデンが、ジャーナリスト、責任を負うジャーナリストに、この資料を検討して欲しいと思った時に、そういうことを望んでいたことではありません。
フアン・ゴンザレス: ジェレミーさん、ラスブリジャー証言に対するあなたの御意見は?
ジェレミー・スケイヒル: やはりガーディアンの編集者のアランと会うために、私は実際ロンドンにいました。現在、対ジャーナリズム戦争が起きているのです。国によっては、メキシコの様に、麻薬カルテルや、メキシコの治安部隊と繋がった連中によって、ほとんど毎週の様に、ジャーナリスト達が暗殺されこともあります。ソマリアでは、ジャーナリスト達が殺害されています。記録的な人数が殺害されています。現在シリアでは、2-30人のジャーナリストが行方不明です。そして欧米社会では、一方では、オバマ大統領が自分の政権は、史上最も透明度の高いものになるはずであり、マスコミの友人になりたいと語ります。そして一方では、連中はジャーナリストのメタデータを監視し、通話記録を押収し、ジャーナリスト達に情報源が誰か証言するよう強制しようとしており、そうした人々を見つけ、起訴できるよう、ジャーナリストが政府内部の一体誰と話しているのか突き止めようとしています。連中は、AP通信に対して、それをやりました。連中は、同社でCIAを調査していた積極的なチームのアダム・ゴールドマンや、マット・アプーゾや、キム・トザール等を追跡したのです。そして連中は、誰が彼等と話しているのかを突き止めようとしたのです。そして、一人、FBI幹部職員だったと思いますが、を訴訟する結果になりました。連中は独自情報をジャーナリストに提供している内部告発者を追跡しながら、自分達が高尚で、土壇場で、平和と、自由と民主主義の勝利を得たように見える、自らの情報を漏らすのです。ビン・ラディン襲撃直後の連中は、まるでざるの様なもので、彼等が言った全ては全く真っ赤な嘘で、例えばビン・ラディンが妻をつかんで、自分の前に立たせたといった様な戯言です。
私達が目にしているのは、ジャーナリストとジャーナリズムに対する戦争の激化です。イギリスには、米国憲法修正第1項、つまり「言論の自由」条項はありません。カール・バーンスタインや他の人々が立ち上がって、ガーディアンを擁護しているのを目にするのは素晴らしいことだと思いますが、アメリカには「言論の自由」条項があります。我々の職業は、憲法の中で、はっきりと明記されている唯一職業ですが、それなりの理由があるのです。政府の三権全てが国民の利益に反して結託している時には、彼等に責任を取らせるのが、ジャーナリストとジャーナリズム全体としての責任です。しかしホワイト・ハウスや、かつてのブッシュや、親子ブッシュ等は、国営メディアだけを欲しがっているようです。連中は全てがMSNBCの様であって欲しいのです。しかしそれは本当のジャーナリズムではありません。
エイミー・グッドマン: ジェレミーさん、あなたはガーディアンを退社したグレン・グリーンウォルドやeBay創設者ピエール・オミダイアと一緒に新事業を始められますね?
ジェレミー・スケイヒル: ローラ・ポイトラスも。
エイミー・グッドマン: もちろんグレンさん、ローラ・ポイトラスさんも、エドワード・スノーデンの全ての漏洩を公開し、あの最初のインタビューを撮影した主要人物です。あなたはこの新報道機関を始められますが、何をされる予定でしょう? 一体なんと言う社名になるのでしょう? アラン・ラスブリジャーは、彼等はおそらく、スノーデンが得た情報の1パーセントを公表したと言いました。もう少しお話しいただけますか?
ジェレミー・スケイヒル: ええ。最初のご質問にお答えすると、ピエール、ローラ、グレンと私は数ヶ月前に、一連の会話、通信を始めました。グレンとローラと私は既に、我々が通常のジャーナリスト生活でしていることを必ずしも置き換えるのではなく、補足的な窓口として、我々が利用するある種の報道サイトを立ち上げることについて話していたのです。それで我々は、Kickstarterで資金調達キャンペーンを行い、我々と一緒に仕事をしてくれる一人か二人の若いジャーナリストを雇うつもりでした。ちょうどその頃、グレンと話をする為、私はリオにいたのですが、グレンとピエールの共通の友人から、ピエールが新たな報道機関を立ち上げようとしていて、協力の可能性について、我々と話したがっているというメールを受け取ったのです。
それで、我々がやりたかったことと一致する、国家や権力者に対し、本質的に敵対的な姿勢の報道機関を作るという、ピエールの狙いが明らかになった時点で、いわばこのプロセスが始まりました。私は、長い年月、もしあなたが私に一年前に、"うわー、あなた方は、eBay創設者とのプロジェクトで仕事をするようになるんです" とおっしゃったら、私は笑い飛ばしただろうと思います。そういうことが起きるだろうと私が考えていた、あらゆることと、ある種対極にありますから。しかも、ジャーナリストが主導する組織にして欲しいと彼は明言していて、長期間の調査報道も、迅速に対応する分析も行う資源が得られる予定です。現在、主にローラ・ポイトラスがとりまとめをしているビデオ部門も設ける予定で、サイトではビデオ・ジャーナリズムもやりたいと思っています。内部告発者達の為の仕組みを作ろうとしている極めて優秀な情報セキュリティー専門家のチームも雇い、サイトの保全とジャーナリストの通信を守る予定です。ですから、基本的に、これは、最初は、まずアメリカ合州国国内で、憲法修正第1項、つまり「言論の自由」条項と、憲法修正第4条、つまり不法な捜索や押収の禁止を破棄しようとする政府の企みに立ち向かおうという企てです。そして、それがピエールのこの組織に対する主目的で、それは、グレンや私やローラが考えている、ジャーナリズムはどうあるべきかというものと一致しているのです。
フアン・ゴンザレス: 彼がこの種の報道機関を立ち上げたいと思うに至った、彼の思考の進展ですが、どうしてそうなったか、ご覧になっていてお分かりでしょうか?
ジェレミー・スケイヒル: ええ、彼はシビル・ビートというサイトを始めました。彼はハワイ州に住んでいて、ハワイ州にある、ハフィントンポスト・サイトを立ち上げるのを支援し、他のメディア・ベンチャー企業にも、ちょっと手を出しています。我々が仕事を始める前に、彼と働いていた人々に話をしました。そして、彼は実に有能だと思えました。彼はこれから作り上げようとしているベンチャー企業の非常に有能なリーダーだと。私の理解は、NSAが主としてアメリカ人に対して行っている監視の程度に、彼はひどく立腹し、懸念し、そこで彼は単なる地域のサイトよりも何かずっと大きなことをしたいと考え始めたのです、彼は実際、一流の報道機関を頑張って作りたいと思っていたのです。彼はワシントン・ポストを買収することも考えたと思います。あるインタビューで、彼は公式にそのことを語っています。私の理解は、彼は必ずしも巨大な官僚制度の一員としては訓練されなかった人々のチームと一緒に、何か新鮮なものを始めたいと思っていた所に、あのアマゾン創始者のジェフ・ベゾスが登場し、ワシントン・ポストを買ったのです。彼はそういうことをしたかったのだとは私は思いません。彼は、ある種、征服者のようになりたくはなかったのだと思います。何か新しいものを作りたかったのです。
エイミー・グッドマン: ジェレミーさん、番組終了前に伺います、開業はいつですか?
ジェレミー・スケイヒル: 来年初めです。詳細は、現在詰めているところです。
エイミー・グッドマン: 終わる前に、今晩ジュネーブに発たれますね。理由を説明ください。
ジェレミー・スケイヒル: イエメンでのアメリカ巡航ミサイル攻撃を暴いた後、3年間投獄されていて、アラビア半島のアルカイダ指導者達にインタビューもしていたイエメン人ジャーナリストのアブドゥレラ・ハイダー・シャイアを褒賞するためにでかけます。彼は、彼の家は急襲されました。彼はイエメン治安部隊に逮捕され、全くのでっち上げですが、アルカイダ協力者として裁判にかけられ、5年の刑を宣告されました。彼は、ある時点で釈放されるものと思われていましたが、そこでオバマ大統領が個人的にイエメンの独裁者サレハに電話し、こう言ったのです。"彼は釈放しないで欲しい" 。彼はシャイアの赦免を破棄させたのです。それで彼はパスポート所有を認められていませんので、ロンドン・タイムズの偉大なジャーナリスト、イオナ・クレイグと私がジュネーブでの受賞に出席します。彼は一種、自宅監禁の立場にあります。オバマ大統領とホワイト・ハウスが彼の釈放条件に責任があると彼は固く信じています。監獄から出て二ヶ月になりますが、彼はまだ自由ではありません。それで我々が彼の代理として、でかけるのです。
エイミー・グッドマン: 残り5秒です。
ジェレミー・スケイヒル: 人権賞の授賞式に、オバマ大統領とホワイト・ハウスのおかげで、彼が出席できないので。
エイミー・グッドマン: ジェレミー・スケイヒルさん、ご出演本当に有り難うございます。また『汚い戦争』が、アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門ノミネーション最終選考に残ったことにお祝い申しあげます。
記事原文のurl:www.democracynow.org/2013/12/5/there_is_a_war_on_journalism
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番組そのものも記事原文と同じurlで視聴できる。ただし、日本語字幕はない。
アブドゥレラ・ハイダー・シャイアに関するジェレミー・スケイヒルのインタビューも、デモクラシー・ナウ!にある。2012年3月15日。
ジェレミー・スケイヒル:なぜオバマ大統領はイエメンの記者 アブドゥレラ・ハイダー・シャイアを牢獄につないでおくのか?
『汚い戦争』については、同じくデモクラシー・ナウ!にある。2013年12月5日。
ジェレミー・スケイヒル:『汚い戦争』オスカー・ノミネートで 現在も行われる米無人機攻撃への認識拡大を期待
岩波書店刊の雑誌『世界』12月号、180ページからの宮前ゆかり氏の記事『真実を知らしめることは犯罪ではない』を拝読すると、この記事の内容が一層良くわかる。
ごく一部を引用させいただこう。
オミダイアが創設した
eBayの子会社、ペイパルはいまだにウイキリークスに対する経済的封鎖を継続している。
ウイキリークスやアノニマスに敵対してきた企業の富豪が巨大な投資で内部告発をを扱う報道機関の意思決定権を握ることに、深刻な危機感を抱く人々がいるのは当然のことだろう。
『世界』12月号、特集は、情報は誰のものか-秘密と監視の国家はいらない。大本営広報の紙媒体や、電波媒体では決して扱われない重要な話題。
また、『世界』臨時増刊 no.852は『イチエフ・クライシス』。これまた、大本営広報の紙媒体や、電波媒体では決して扱われない重要な話題。
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