いかにして、アメリカは失われたか
Paul Craig Roberts
2013年11月7日
“アメリカ合州国が、その権力や立場や威光に対する挑戦に応戦する場合は、いかなる法律問題も生じない。”1962年、アメリカ国際法学会でのディーン・アチソン講演。
ディーン・アチソン元国務長官は、51年前に、権力や立場や威光は、国家安全保障の要素であり、国家安全保障は法律に勝ると宣言した。アメリカ合州国において、民主主義は、行政府の特権である“国家安全保障”の二の次なのだ。
国家安全保障という名目で、行政府は、その、国内的、国際的な、法律に対する犯罪や、憲法に対する行政府の犯罪や、国内、海外の無辜の市民に対する行政府の犯罪や、アメリカ国民が、それを決して支持はするまいことを理解している、行政府の秘密の思惑を隠すのだ。
“国家安全保障”というのは、アメリカ政府が決して説明責任を負わずに済むようにする為に使う、行政府の隠れみのだ。
説明責任を負う政府無しには、かつてソ連でおこなわれ、今はアメリカに存在している、いかさま選挙を除いては、市民的自由も、民主主義も存在し得ない。
アメリカの歴史には、分離を防ぐ為に起きた、リンカーン大統領の戦争や、第一次世界大戦や、第二次世界大戦という、その間は、政府が説明責任を負うことが損なわれた時期があった。こうした時期は、憲法違反がおこなわれていた短い出来事だが、戦争の直後に、憲法は復権させられた。ところが、クリントン政権以来、この三つの戦争を足した期間より長い二十年以上、政府の説明責任は衰退し続けている。
法律には、一般的には“占拠者の権利”として知られている、不法占有という概念があり、ある財産や、他人の権利を、一定期間、排除されずに占拠するのに成功した非所有者は、所有権がその人物に引き渡されることになるのだ。論拠は、自分の権利を擁護しなかったことで、所有者は無関心であったことを示し、事実上、その権利を手放したというものだ。
アメリカ国民は、アメリカ憲法によって規定されている自分達の権利を、三人の大統領の任期中、守ろうとはしなかった。クリントン政権は、セルビアに対する違法な攻撃の責任を問われなかった。ブッシュ政権は、アフガニスタンとイラクへの違法な侵略の責任を問われなかった。オバマ政権は、アフガニスタン攻撃再開や、リビア、パキスタンやイエメンや、代理人達によるシリアへの違法な攻撃の責任を問われなかった。
政府がそれに対して責任を問われなかった、政府による、他の断然違法で、違憲な行為は他にもある。ブッシュ政権の拷問や、無期限拘留や、令状無しのスパイ行為や、オバマ政権の無期限拘留や、令状無しのスパイや、適正手続き無しのアメリカ国民殺害の行為だ。オバマ政権は抜け抜けと嘘をつくので、拷問が未だに行われているのかどうか知りようがない。
もし三人の大統領の任期中におこなわれた、アメリカ政府による、こうした無数の犯罪行為が、問題にされない出来事として、歴史に残ってしまえば、アメリカ政府は、違法ということにおいて、「占拠者の権利」を得てしまうことになる。アメリカ憲法は、ジョージ・W・ブッシュ大統領が“紙屑”だと言ったと報じられている通りになるだろう。
違法行為は、警察国家がおこなう専制の顕著な特徴だ。警察国家においては、法律は権利を保護するものではなく、政府手中の武器となる。[ロバーツ & ストラットン著『善意という専制』を参照] 被告人には、裁判所への証拠提示を要求されない告訴に対抗手段がないのだ。被告人は告訴のみによって有罪となり、スターリンの下では、後頭部を射撃されたり、オバマの下で、無人機ミサイルで吹き飛ばされたりし得るのだ。
無頓着なアメリカ国民のみならず、法科大学院や、弁護士協会や、マスコミや、議会や最高裁判所が、自分達は法律やアメリカ憲法よりも上位だという行政府の主張を受け入れていることに、専制的な国家に対する長い戦いを知っている人間として、私は驚き、失望しいる。
ローレンス・ストラットンと私が、法律がいかにして喪失してしまったかについての共著に書いた通り、リベラル派も保守派も、子どもを虐待する連中やら、麻薬密売人の様な、自分達のお気に入りの悪人ばかり追い掛け回し、検事も裁判官も警察も、公正さよりや、有罪判決に熱中することで、法律は無辜の人々を保護するものだという概念が、時とともに、次第にむしばまれ、9/11によって作り出された、脅威という雰囲気のおかげで、テロリストから我々を安全に守るという名目によって、保護をするという法律の機能に対する最終的な破壊が、素早く達成されてしまったのだ。
我々は、自らの政府から安全ではないという事実は、最早存在していない。
自由はこうして失われたが、アメリカも、それとともに失われたのだ。
自由を取り戻すことは可能だろうか? おそらくそうはゆくまいが、もしアメリカ人に、必要な気骨があれば、可能性はある。ネオコン ブッシュ/チェイニー政権は、ひたすら嘘だけに基づいて、アメリカと、その傀儡諸国を、アフガニスタンとイラクでの戦争に引きずりこんだという既知の事実に、可能性はある。あらゆる証拠が示している通り、こうした戦争は決して誤った諜報情報の結果ではない。これらの戦争は意図的な嘘の産物だ。
兵器査察官達は、ブッシュ政権に、イラクには大量破壊兵器など存在しないと語っていた。この既知の事実にもかかわらず、ブッシュ政権は、でっちあげた証拠を持たせて、コリン・パウエル国務長官を国連に派遣し、サダム・フセインは“大量破壊兵器”を保有しており、世界に対する脅威だと世界を説得させた。たとえ、そのような兵器がイラクに存在していたとしても、アメリカやイスラエルを含め多くの国々がそれを保有しており、ニュルンベルク原則の下では、兵器の存在は、兵器を所有する国家に対する、挑発されていない武力侵略を正当化するものではない。ニュルンベルク原則の下では、多くの国々が所有している兵器の所有ではなく、挑発されていない軍事侵略が戦争犯罪なのだ。サダム・フセインではなく、アメリカとその“有志連合”こそが戦争犯罪を行ったのだ。
アフガニスタン侵略については、腎不全や他の疾患で死にかけていた彼の最後の記録だと、専門家達が保証している、2001年10月のオサマ・ビン・ラディン最後のビデオで、彼が、自分は9/11には全く関与しておらず、アメリカ人は自らの政府に目を向けるべきだと語っていたのを我々は知っている。アフガニスタン・タリバンは、もしブッシュ政権が、ビン・ラディンが関与していたという証拠を提示しさえすれば、オサマ・ビン・ラディンを、アメリカ政府に引き渡すと申し出ていたことが事実として報道されていることを知っている。ブッシュ政権は、(存在しない)証拠を引き渡すことを拒否し、堕落した、卑劣な議会と売女マスコミの支援を受けて、いかなる法的正当化も無しに、アフガニスタンを攻撃したのだ。FBIは、公的に、オサマ・ビン・ラディンが9/11に関与した証拠を持ってはいないと表明していることを想起されたい。それこそが、FBIがビン・ラディンを指名手配にしている理由に、9/11攻撃への関与が含まれていない理由なのだ。
戦争宣伝攻勢はしっかり準備されていた。自動車で“軍隊を支持しよう”宣言をするよう、黄色いリボン・ステッカーが配布された。言い換えれば、答えが分かりきった質問をする人は、軍隊など支持しないのだ。現在でさえ、無頓着なアメリカ国民は、自分達が支持しているのは、外国人女性や子供や村の長老の殺害や、アメリカ兵士の死や、肉体的、精神的な損傷や、アメリカ合州国の評判の全世界規模な破壊であって、アメリカの一番のライバルである中国が、今や“非アメリカ化した世界”を呼びかけているということも知らずに、こうしたステッカーをこれ見よがしに自動車に貼っている。
アメリカ国民ほど無頓着な国民が暮らす国とは、政府が好き放題にできる国だ。
罪を犯したブッシュ政権が、ひたすら意図的な嘘だけを根拠に、わが国をアフガニスタンとイラクでの戦争に引きずり込んだという完全な証拠を現在持っていながら、法機関や、裁判所や、アメリカ国民は、オバマ政権が明らかな犯罪を無視しているのに、どうして耐えていられるのだろう? アメリカ人は、一体どうして、我々は振り返ってはならない、前進するのみだというオバマの声明を素直にに受け入れることができるのだろ? もしも我々の世代で最悪の犯罪を犯したアメリカ政府が、責任を問われ、罰せられないのであれば、どうして、連邦や、州や、地方裁判所が、マリファナを吸った人々や、警察国家に十分に平身低頭しなかった人々で、アメリカの刑務所を満杯にできるのだろう。
オバマ政権が、法律に従って、ブッシュ政権の犯罪を告訴するようなことをすれば、自らが同様にひどい自分の犯罪のかどで告訴されることを懸念しなければいけなくなるだろうことは明らかだ。それでも、もし、ブッシュ政権に全責任をなすりつけ、ブッシュ政権の犯罪人連中を起訴し、現在おこなっている違法な行為をやめれば、オバマ政権は存続可能だろうと私は思う。これによって、憲法とアメリカの市民的自由は救われようが、それには、アメリカの法律を実施することで、アメリカの法律が、彼ら以降の政権により、自らの違法で違憲な行為に対しても施行されかねないという危険を、ホワイト・ハウスが冒すことが必要だ。
ブッシュ/チェイニー/ジョン・ユー・ネオコン政権が、アメリカの法律から解放されたのだから、状況をそのままに放置し、法律から解放されるほうが良いと、オバマ政権が考えているのは確実だ。
説明責任が問われなければ、アメリカは終わりだ。アメリカ国民が、市民的自由の無い警察国家に暮らすことになるのみならず、アメリカ以外の国々は、既にアメリカを偏見の目で見つめている。アメリカは、専制国家として再構築されつつある。一つの説明責任の不全だけで、警察国家は完全に定着してしまうのに十分だが、アメリカでは説明責任の不全が無数に起きている。日系アメリカ人に対して行ったように、ブラッドリー・マニング、ジュリアン・アサンジや、エドワード・スノーデン等の迫害されている真実を語る人々を、いつか将来の政府が名誉回復するだろうなどと誰か本当に信じてるだろう?
アフガニスタンとイラク侵略は、プロパガンダと嘘に基づいていたという確かな事実を、我々が知っている以上、議会と世界中のマスコミは、本当の秘密の狙いが一体何だったのかを知るよう要求すべきなのだ。アフガニスタンとイラクが侵略された本当の理由は一体何だろう?
これらの戦争に対する本当の説明は存在していない。
9/11のずっと前、まさに最初の閣僚会議で、イラク攻撃が議題にあったと、ブッシュ政権初代財務長官ポール・オニールが述べたことが公式記録に残っている。
言い換えれば、ブッシュ政権のイラク攻撃は、9/11とは全く何の関係もなかったのだ。
オバマ政権によって秘密のままにされている、それによってヒトラー政権幹部達が処刑された行為である、主権国家への違法で戦争犯罪の攻撃を必要とするブッシュ政権の秘密の狙いは一体何なのだろう? アメリカ政府の戦争の本当の目的は一体何だろう?
戦争が、アメリカ人をテロから守ることとは全く無関係であることは、全く、そして完璧に明らかだ。何か効果があるとすれば、戦争はテロリストをかき立て、生み出すだけだ。戦争は、これまで存在していなかった、アメリカへの憎悪を生み出した。それにもかかわらず、アメリカでは、FBIがでっちあげたもの以外、テロ攻撃は起きていない。でっち上げられた“テロの脅威”の成果といえば、責任を負わない徹底的な警察国家を生み出しただけだ。
アメリカ国民は、彼らは国を失ってしまったことを理解する必要がある。アメリカ以外の国々は、アメリカ政府は、スターリン主義以来、もっとも完璧な警察国家というだけでなく、全世界に対する脅威でもあることを理解する必要がある。アメリカ政府の傲慢と不遜さが、アメリカ政府の膨大な大量破壊兵器の供給とあいまって、アメリカ政府を、地球上のあらゆる生命に対して、これまで存在していたものの中でも最大の脅威にした。アメリカ政府は全人類の敵だ。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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記事原文のurl:paulcraigroberts.org/2013/11/07/america-lost-paul-craig-roberts/
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宗主国現状報告、そのまま第一の子分属国の現状。国名と大統領名、国民名を、日本と歴代首相に変えれば、そのまま。
いつも「大本営広報「と書いている新聞、投書欄私の視点に岩月浩二弁護士の文が載っていてびっくり。内容は、秘密の縛りをかけられ、内容がわからない、様々な国内法の改定まで必要になる条約TPPを推進するのは違憲ではないか、という正論。そういう正論を、大本営広報紙が、ともあれ掲載する不思議。もちろん悪いことではない。
最近、紙面のあちこちで特定秘密法案の問題点に触れる記事を見かけるようになって驚いている。「あの頃には、批判もしました」と後で免罪符にするのだろうか?
同じ資本系列のテレビに、岩月浩二弁護士に登場頂いたり、特定秘密法案の問題点を取り上げた番組を、良い時間に、続々放映したりして頂きたいとありえない妄想をする。
岩月浩二弁護士が言われる通り、偽表示問題を大騒ぎする暇があるのなら、GMO食品急増問題こそ報道すべきだろうが、もちろん大本営広報部が、本格的な報道をする可能性は皆無。彼らの職務は報道ではない。洗脳、目くらまし。
食品問題を採りあげるなら本丸はここでしょう メディアがスルーする問題こそが大問題 アメリカ服従の食生活
岩月浩二弁護士の文上部の広い紙面の対論?には、ジャパン・ハンドラー様の永久占領論と、アメリカ人学者の撤退論が掲載されていた。
属国における異常な政府の大暴走も、宗主国押しつけの国家安全保障が口実。
国家安全保障会議(日本版NSC)、特定秘密保護法案、集団自衛権。
TPPですら、経済的合理性が完全に欠如しているのを糊塗する理由に、「国家安全保障をお願いしている以上、譲歩はやむを得ない」と最後に「国家安全保障」を持ち出してくる。
愛国心はあまりにしばしば「悪漢の最後の拠り所」なればなりと内村鑑三も書いている。
国家安全保障は悪漢の最後の拠り所
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