日本の新秘密法案
wsws.org
John Watanabe
2013年11月16日
安倍首相政権が提案している新たな国家秘密保護法案は、極めて秘密主義の政権をもたらし、政府の運営や政策を精査するという基本的な民主的権利をむしばむことになろう。
先月内閣は法案を承認し、12月6日の今会期終了前に成立させることを視野に入れて、国会は審議を開始した。国会両院で安定多数を占める自由民主党と公明党の与党連合は、圧倒的な国民の反対の声にもかかわらず、この法律を制定する構えだ。
アメリカが率いる“アジアへの回帰”と、軍事的な中国封じ込めに、日本軍と諜報機関を完全に統合する為には、新たな秘密法案は不可欠だ。長年、アメリカ政府は、情報管理の強化を迫っており、日本政府には、諜報情報を渡さなかったり、より厳格な秘密体制が既に実施されている防衛省とのみ諜報情報を共有したりしてきた。
朝日新聞デジタルで、10月25日に公開された法案の第1章には、“国際情勢の複雑化に伴い”“国及び国民の安全の確保に係る情報の重要性が増大”しているとある。
この法律は、アメリカ式の国家安全保障会議を設置するという、衆議院を通過し、参議院で審議中の構想に対する前提条件であることを、安倍首相は再三強調している。そのような機関は、防衛計画をまとめる為に、閣僚や軍幹部を集め、首相に“強力な軍隊”を作るという安倍首相の計画に沿った広範囲な権限を与えることになろう。
安倍首相は、あらゆる政府部局を同一の規定に従わせるには特定秘密保護法案が必要だと主張している。アメリカ人内部告発者エドワード・スノーデンによる、アメリカ国家安全保障局の大規模なスパイ工作に関する、政治的に危険な暴露のさなか、この法案は制定されようとしている。日本政府が、悪影響を及ぼす同様な漏洩を防ごうとを固く決意しているのは明らかだ。
提案されている法案は、実質的に、政府に都合の悪い可能性があるあらゆる情報を“国家秘密”だと主張して、無期限に、国民の監視の目に触れがないようにし、それを明らかにしようとする、いかなる試みも厳しく処罰することを可能にするものだ。
第2章、4条では、“国家秘密”は、最初、5年を超えない範囲内においてその有効期間を定めることができ、30年間まで延長可能だ。30年後も、内閣は公開の無期限禁止を維持することが可能だ。
日本弁護士連合会の武藤糾明(ただあき)弁護士は、ロイターにこう述べた。“基本的に、この法案は、国民に知らされるべき類の情報が、永久に秘密にされてしまう可能性をもたらします。”しかも“行政府は、秘密にすべき情報の範囲を随意に設定できるのです”
現在は、防衛省のみが国家防衛に関する情報を国家秘密に指定できる。新たな法案の下では、あらゆる省なり政府機関が、防衛、外交、特定有害活動の防止、テロリズムの防止の、四分野にあてはまる情報について、特定秘密として指定可能になる。
現行の制度下でさえ、最終的に公開される情報の量はごくわずかだ。ニューヨーク・タイムズによれば、2007年から2011年までの間に、防衛省は、機密指定期間が終わる時期に約34,000件の文書を破棄した。公開されたのは一件にすぎない。
現在、非軍事的情報を漏洩した人物は、最長1年投獄されるが、もし漏洩が日米同盟に関するものである場合には、防衛省職員は、5年あるいは10年の判決をうける可能性がある。新法の下では、あらゆる内部告発者が“国家秘密”を公開したかどで、10年の投獄という目にあいかねない。
マスコミの口止めを狙う策として、ジャーナリストは“国家秘密”の“不当”報道のかどで、5年間投獄されかねない。日本外国特派員クラブは声明で強い懸念を表明し、“法案を完全に拒否するか、あるいは、ジャーナリズムと日本の民主的な未来の両方にとって危険でなくなるよう、大幅に書き直す”よう国会を促した。
第5条で、特定秘密の取り扱いの業務を行う政府職員や契約業者は、彼等の家族や親戚も共に、徹底的な調査を受けることになる。適性評価は、薬物やアルコールの濫用や、精神疾患、経済的状況のみならず、政治思想も対象だ。
非常に広範な表現で規定される“テロリズム”、極めて厳しい法律を正当化するのに利用される。第5章、12条は、テロリズムは“政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し”と言及しているが、日本弁護士連合会の清水勉弁護士は、ジャパン・タイムズに“首相官邸前での反原発集会等の活動も、今後はテロ行為として分類されかねません”と語った。
特定秘密保護法案は、政府の緊縮政策や軍国主義に対する反対が増大する中、政府があらゆる政治的反対者を沈黙させる為の基盤を築くものだ。沖縄地域での今回の大規模軍事演習、政府はジャーナリスト達の取材を禁じ、マスコミに報道を最小限にするよう指示した。こうした対策にもかかわらず、日本の軍隊が、中国海軍に反撃する為の対艦ミサイル使用演習をする宮古島で抗議行動が湧き起こった。現地住民は“ミサイル配備やめろ!”や“戦争反対!”とシュプレヒコールをしながら、演習を妨害しようとした
安倍首相は、特定秘密法案を、国民の反対の声に機先を制し、国会で急いで通過させようとしている。共同通信の世論調査によれば、10月末、回答者の50.6パーセントが法案に反対し、わずか35.9パーセントが支持していた。わずか12.9パーセントが、今回の会期中の法案成立を望んでおり、82.7パーセントは、より入念に審議されるべきだと言っている。
日本のマスコミは、10月25日の東京でのデモ等、法律に反対する大衆抗議を無視している。イギリスを本拠とするフィナンシャル・タイムズはこう報じた。“今週,法案に反対する抗議行進では、‘報道の自由を守れ’というシュプレヒコールと、日本の軍隊が、同盟国を防衛して、海外で戦闘することを可能にすべく、日本の平和憲法を再解釈しようとする、首相の計画に対する非難があった。”
何週間も態度表明を避けてきた後、野党の民主党は突然今週、圧倒的な国民の反対の声という理由を挙げ、一応、特定秘密保護法案に同意することは出来ないと宣言した。民主党が、来週火曜日に提出を予定している対案は、政府による国家秘密の指定に対して、国会による限定された監視を規定するものだ。
日本軍の拡張や、アメリカの“アジアへの回帰”へのコミットメントを巡る、民主党と自民党間の基本的相違は皆無だ。実際、菅直人と野田佳彦が率いた民主党政権は、アメリカと日本の同盟を強化し、オバマ政権の支援を受けて、東シナ海で紛争中の尖閣/釣魚台列嶼を巡り、中国との緊張を意図的に高めた。
そうすることにより、民主党は、国会で強引に通そうとしている実に反民主的な法律と提携して進行する、安倍政権による日本軍国主義の復活と“強力な軍隊”を作るという計画に道を開いたのだ。
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記事原文のurl:www.wsws.org/en/articles/2013/11/16/japa-n16.html
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思っていた通り、エセ野党、つまり与党別動隊、続々本音を明らかにしている。
賛成やら対案やらといっている連中、与党と同じ傀儡。「基本的に反対」しかなかろうに。
与党推薦の不思議な「学識経験者」だか「有識者」の皆様、法案賛成論をぶち上げられる。本当に学識経験・有識者なのだろうか?正気だろうか?
大本営広報全局、秘密法案の問題点、本格的報道を一切せず、推進宣伝のみ。
とんでもない政策のみ推進する人物の「積極的平和主義」、実質「積極的戦争主義」であるのは、大本営広報部の全員わかっているはずだが、虚偽表示を追求しない虚偽業界。食品の虚偽表示を言うご本人が虚偽報道をしていては、しめしがつくまいに。
秘密保護法案がなくても、この惨憺たる状態。まして法案が成立後は、見てはいけない、読んではいけない、スカスカのプロパガンダのみになる。テレビは消す。新聞・週刊誌は止める以外、選択肢はない(が、スーパーちらしは欲しい)。
まともな報道をしようとするジャーナリストが万一いても、刑務所行きになる。
真実を知るためには、一般人も罪を犯して刑務所に入り、そうしたジャーナリストから、刑務所内でささやいて頂くしかなくなるのだろうか?
罪を犯さないで娑婆にいる一般人、今より一層ひどい洗脳大本営広報しか見聞きできなくなる。しかも永遠に。北朝鮮や昔のソ連を笑えない。
大本営広報部、「TPPで宗主国による全関税撤廃要求」という予想されていた話題は小記事で放っておくが、職務である、宗主国称賛セレモニー報道は大々的だ。
大本営広報部で、新大使絶賛を語った方、有名俳優のお嬢様?
街角でマイクを向けられて、嬉しげにお話される皆様。
その後、たまたま見た民放で、街角でマイクを向けられ、元大統領を大絶賛するアゼルバイジャン国民の姿と奇妙に重なった。アゼルバイジャンでは石油資源で得た収益の一部を国民に戻しているのだろうと想像する。
延々宗主国に献上し続け、これから人命まで献上しようとしている属国民が、新代表を大歓迎しておられるのは不思議な光景と思うメタボ・オヤジ、へそ曲がりなのだろう?
この国全体がディズニー・ランドのような気がしてきた。独立国も民主主義も皆演技。
大本営広報部が全て無視している秘密保護法にまつわる講演、インタビュー等、IWJ Independent Web Journalのオープンコンテンツ記事一覧がこちらでみられる。
会員でない方は、必ずしも各ビデオの全編をみられるわけではない。
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