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2013年10月 3日 (木)

TPP:国家主権と公共の利益に対する企業支配

2013年8月16日

チャールズ・サンチャゴ国会議員

 マレーシアは、2週間後、「わたしの主権国家マレーシア」「わたしの母国」というテーマと共に独立56周年を迎える。

 豪華絢燗なお祝いの準備が進んでいる。しかし華やかな式典が終わったとき、それらのテーマは無に帰する。マレーシアが環太平洋戦略的経済連携協定あるいはTPPを調印するからである。

 TPPにおいて物議をかもしているのは、投資の章に挙げられているISD条項のメカニズムである。ISD条項のメカニズムは、国家主権および政府の政策立案の余地に重大な悪影響を及ぼす。ISD条項は、政府や政府機関を企業に従わせることを可能とするものである。

世界銀行の投資紛争解決国際センター(ISCD)、およびパリに本拠を置く国際商工会議所(ICC)など、国際的仲裁・裁定機関において、企業が政府を訴えることを可能とするものである。

これら裁定機関の決定は最終的なものであり、政府を法的に拘束する。また、それらの裁定は世界中どこでも有効であり、どこにあっても、政府の所有物を我が物にすることができる。

 最近、企業は政府との紛争解決にはISD条項を使うという戦略を選んでいる。
 2011年以来、450件の投資家国家訴訟が報告されているが、それらの大半は、企業が開発途上国を訴えているものである。
 ISDシステムは変貌してしまった。公正かつ中立的な紛争処理システムであったものが、何か別の物に突然変異してしまった。

 多国籍企業研究所(TNI)の調査によれば、仲裁者達は、公共の利益より投資家の権利を守る傾向があり、現在ISD制度は「数百万ドル規模の独善的産業になっていて、相互につながり、複数の財政的権益を持っている一握りの法律事務所や弁護士達に独占されており、法律家達による公正かつ独立した裁定を妨げているのではないかという重大な懸念を引き起こしていることが明らかになっている。

 投資協定および裁定に関する最近の他の調査では、透明性に関する基本的水準、司法の独立性および手続きの公正さが、悪化してきていることを示している。企業利益を拡大するため、IDSメカニズムは投資家の義務ではなく、権利のみを保護している。

 このメカニズムが、主権国家を超える企業支配を強固にしている。そして、もっとも重要なことは、投資協定に調印し、裁定制度を受け入れることにより、政府はその独自の法的枠組みの外側に存在する司法権において訴えられることを、自らの意志で受け入れることになるのだ。

 例えば、米国に本拠を置く巨大なタバコ企業であるフィリップ・モリス社は、タバコの箱に印刷する健康への警告を巡って、ウルグアイとオーストラリアの政府を訴えている。

 スウェーデンのエネルギー多国籍企業であるヴァッテンホール社は、福島の事故後、原子力発電を段階的に廃止するとしたドイツ政府の決定に対し、37億ドルの訴訟を起こしている。
 また、米国企業であるローン・パイン社は、ケベックにおいて物議をかもしているシェールガスの採掘(水圧破砕法)の一時停止に対して、カナダ政府に2.5億ドルの補償を求めて訴えている。

 フィリピン政府は、ドイツの空港管理会社であるフラポート社が起こした訴訟に対抗するために5,800万ドルを支出している。この金額は、12,500人の教師の1年分のサラリー、あるいは結核、ジフテリア、破傷風およびポリオなどに対する児童用ワクチン380万人分に相当する。

 そこで重大な疑問だ。主権国家は、一体どのような危機に瀕しているのだろう?

 利益損失に対して数百万あるいは数十億ドルの支払いを余儀なくされることになりかねない。政府の権限や、政策立案の余地、国会において成立した法律の尊厳や、国内法廷の司法権等弱体化させられてしまうのだ。

 オーストラリア政府に対するフィリップ・モリス社の訴訟が、私の主張を簡潔に証明している。
 2011年、オーストラリア政府は、タバコに関連する健康問題を削減する試みの一つとして、タバコ包装に対する新たな規制を導入した。
 巨大タバコ企業であるフィリップ・モリス社は、同政府の決定は投資に悪影響を及ぼし、利益を損なわせたとして、オーストラリア国内において訴訟を起こすという対応をした。

 2012年、オーストラリア連邦最高裁判所は、規制は正当なものであり、公衆衛生に関わる規制なのでタバコ企業は補償を受けられないという判決を下した。
 するとフィリップ・モリス社は、オーストラリア─香港・二国間投資協定におけるISDメカニズムによって、数十億ドルの補償を求めて投資紛争解決国際センターに提訴した。

 もしTPP協定に調印すれば、同様なことがマレーシアでも起こりうる。
 国際貿易・産業省は、IDS条項に関する懸念を否定した。外国からの投資を惹きつけるにはIDS条項は必要であるし、TPPに調印しなくとも、様々な貿易協定によって、既にIDS条項の適用対象となっていると主張する。
 政府は、企業ロビー活動の餌食になってはならないのだ。

 投資および直接外国投資は、安定した政府、整ったインフラ、教育を受けた労働者層、および透明性、より良い管理、および汚職ゼロを保証するシステムにおいて機能する。

 マレーシアは、国内外の企業に対する公正かつ公平な取り扱いを保証できるよう投資に関する法律を改正すべきであり、IDS条項の支配に屈服すべきではない。

 過去数年間、ボリビア、エクアドルおよびベネズエラなどの諸国は、投資協定を破棄し、投資紛争解決国際センターの枠組みから離脱した。アルゼンチンは、補償金の支払いを拒否した。南アフリカは、有効期間が間もなく切れる投資協定を更新しないとしている。そして最後にオーストラリアは、以降は貿易協定にはISD条項を組み込まないことを公表している。

 マレーシアは、主権国家としてのわれわれの独立性を祝い続けることができるよう、それらの例に続くべきである。

記事原文のurl:charlessantiago.org/2013/08/16/tpp-corporate-rule-over-sovereignty-and-public-interest/
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10月1日、「TPPを考える国際会議」の報告者のお一人、民主行動党のチャールズ・サンチャゴ議員web記事。

この重要な話題を議論した10月1日の「TPPを考える国際会議」についての報道、電気白痴製造箱でも印刷媒体でも見当たらないように思える。

IWJ【Ch6】では、しっかり放映されている。

TPPを考える国際会議 (同時通訳による日本語音声)
マレーシア議員報告 人民正義党 ヌルル・イッザー・アンワル議員

マレーシア議員報告 民主行動党 チャールズ・サンチャゴ議員

岩上安身責任編集 – IWJ Independent Web Journal

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