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2013年10月 2日 (水)

「TPPを考える国際会議」に向けたローリー・ワラック氏の日本国会議員へのメッセージ

 皆様、こんにちは。ローリー・ワラックと申します。パブリック・シティズンのグローバル・トレード・ウォッチのディレクターをしております。本日のTPPに関する会合の場で、発言の機会を与えて頂き、大変感謝しております。日本やTPP交渉参加国で、皆様が、このような討論会を開催されることは、大変重要であると同時に、わくわくすることでもあります。この大変重要な協定に対して、やっと、より大きな注目が向けられるようになりました。
 TPPは、文字通り、私たちの将来を書き換えます。TPPの影響はとても広範で、そのルールは恒久的なものです。TPPの29の章の内、貿易に関するものはたったの5章です。残りの章は、伝統的に貿易とは関係のなかった分野、すなわち食料安全政策の未来、医薬品の入手のし易さ、外国企業を規制する権利、金融規制と安定、田園地帯における土地利用の未来に関係しているものと考えられます。イノベーション、著作権政策、特許政策、移民政策、これら全ての課題がTPP(交渉)のテーブルに乗せられます。しかも、この協定が完成して、交渉国が署名した場合、全ての加盟国が同意しない限り、一つの用語も変更することができないものとなるでしょう。しかし、全ての加盟国は、協定の用語のいう「自国の全ての国内法、規則、及び手続き」を、29の章のルールに適合させることが求められます。それらのルールは、悲しいことに、公的な役割を果たす600人の企業の貿易アドバイザーによって、密室で書かれ、我々のような市民も、報道機関も、閉め出されてきましたが、ついに、アメリカ合衆国では、連邦議会がTPPの草案文面を見ることが許されました。議会のメンバーが、特定の章を検証することができるようになって、議会の中で警戒心が大いに強まりました。議員が恐れていた全てのことが、「貿易協定」の名の下で行われつつありました。実際に、次に掲げるようなことが(TPP草案の)章に中に御座います。

    • 例えば、日本の医療制度で使用されている医薬品処方集の土台を損ない、医薬品価格を引き上げる、オバマケア(医療制度改革)以後、益々アメリカの医療保障制度でも使われるようになるはずの大手製薬会社向けのルール。
    • 著作権に関するルールであるかように偽装した、イノベーションやインターネット上の自由を損なうような不合理なルールの拡大。
    • 食品内容表示や食料安全(規制)に対する制限で、安全でない魚や、農薬に汚染された食品など、国内基準に合致しない食肉を輸入することまで要求されるでしょう。
  • 金融規制の制限:私たちの国々は、次の世界経済崩壊を避けるために必要なルールの適用を禁じられることでしょう。

こうしたルールは全て、ほぼ完成していますが、主としてアメリカ合衆国の企業が最も極端な条項を強力に求めているのに対し、TPP交渉国が抵抗してきた大変重要な課題が残されています。そこで、10月4日のTPP貿易閣僚会合と10月8日のTPP首脳会合がともに開催されるAPECサミット(の話題)へと向かうわけですが、ここで最新情報を共有したいと思います。
 第一に、ワシントンでは、一体何故、日本は、課せられている諸条件のもとで、TPP参加に合意するのだろうかと多くの人々が議論しています。特に、日本の加入の条件として、合衆国と日本の間で、二国間の特別な条件が必要だという考え方について、ワシントンで多くの人々が議論しています。ワシントンの英字紙ではかなり大きく取り上げられましたが、ほんの数週間前、マイケル・フロマン通商代表は、訪日した際の記者会見の場で、TPPではなく、特別な二国間の交渉の中で、日本が行ったこと、日本が譲歩した内容によって、日本がTPP交渉継続を認められるか否かが決まるだろうと述べました。ある国が、表向き、今や交渉当事国である他の国について言うセリフとして、大変興味深い事のように思えます。
 関連して、ここワシントンの連邦議会の関係者達々や報道機関は、交渉のテーブルに着かないうちに大部分の起草がなされてしまったTPPに加入するというような考えに、日本が、何故同意したかについて議論しています。29章のうち半分は完成し、完成していない章についても、条文の文言の大半は完成しています。大変重要な課題が、解決されずに残されており、そのような重要な課題があるので、依然としてTPPは実現しないことになるかも知れません。しかし、多くの文書が、日本抜きにまとまりました。従いまして、日本が世界第三位の経済大国であることを考えると、日本が初めて参加する交渉ラウンドが、ブルネイ・ラウンドという最後の交渉ラウンドであるという場合、この大規模な貿易協定(WTO以来、最大の貿易協定)に、日本がどうして合意できるのだろううと、こちらの人々は疑念を抱いています。「もはやこれまで。」と彼らは言うのです。「これ以上の交渉ラウンドはもうないよ!」日本が、進んで、他の国々が起草した文言に同意し、一つの用語も変更しないということに同意したということに、ここにご参集の皆様は強い関心を持たれるでしょう。日本は、このような屈辱的なプロセスにどのように同意するつもりなのでしょうか。単なる小国の交渉ではないのです。日本なのです!これは、当地アメリカの人々が依然、大いに混乱していることです。

 第二に、閣僚達がAPECで会った際には、「基本的合意」がなされ、国家首脳達が記者会見をする予定であることを我々は知っています。「成功を宣言」する記者会見という発想は、ある心理状態を作り出すためのものです。つまり、TPPは不可避だ、TPPは完了した、という心理をです。これは正確ではありません。人々はこのことを知っておくことが大変重要です。たとえ、この協定の大部分が起草済みであるとしても、悪い合意が数多くなされてきています。依然合意に至っていない大変議論の多い課題も沢山あります。従って、現実には、TPPは完成間近というわけではありません。
 環境、医療特許、国有企業という、文書も少なく、論争の的となっている3つ章があります。他にも、大変重要な課題が未解決となっている章があります。これが、第三のポイントに繋がります。すなわち、日本の交渉担当者がTPP(交渉)の中で行っているように見えることは、日本の国会、自民党の決議が求めていることと、大きな隔たりがあるように見えることです。国会、自民党によるTPPに日本が参加するための五つの条件は、交渉担当者が述べていることと異なります。私たちは、ワシントンで先週開かれた首席交渉官会合の報告書によって知りました。例えば、自民党の立場は、「投資家対国家紛争解決条項はいらない。我々は、日本が当事国であるTPPの中に、投資家対国家紛争解決条項をいれるべきではない」というものです。最近の選挙で成立したオーストラリアの新たな保守主義政府でさえ、「オーストラリアは、投資家対国家紛争解決条項に縛られることを許してはならない」と繰り返し述べています。しかし、日本のTPP交渉担当者は、アメリカ合衆国とともに、投資家対国家紛争解決条項を存続させて、全加盟国をカバーすべきだと要求する動きを主導しています。ワシントンの日本国大使館には、各種イベントで、投資家対国家紛争解決条項を推進するため、アメリカ合衆国と日本がいかに取り組んでいるかを自慢する人さえいるのです。更に、日本が五つの農産物聖域を勝ち取るという考え方については、会合で、首席交渉官達は、正しくないと述べています。アメリカ合衆国、オーストラリア、シンガポール、ニュージーランドは、絶対的な例外はないことを大変明確にしております。従いまして、日本が何とかして米や牛肉、豚肉などに対して例外を得られるとの考えは、絶えず注視しなければならない事柄です。
 最後に、医療制度に関する文言と、医薬品に対するアクセス、あるいは日本郵政に対するガン保険のような保険の民営化に関する文言、そして、国会の公式な立場にも拘わらず、日本が大幅な譲許を行った場合には、そうした文言も重要な問題です。こうしたこと全てについて、ここワシントンでも、盛んに議論されています。
 勢いが増しているTPP反対についても議論されています。私が皆さまと共有したかったことです。連邦議会では、今や民主党も共和党も、オバマ大統領に対し、ファースト・トラックと呼ばれる通商権限を与えることに、ますます「ノー」と言い始めています。アメリカの政治システムでは、連邦議会が貿易に対する憲法上の権限を有しており、今回、TPPの中身がどのようなものか、つまり、多くの人々の将来にとって大変危険なものであるということを知ってからは、連邦議会の民主党議員も共和党議員も皆こう言っています。「TPPのような協定に対し、ファースト・トラック権限を与えることはしない。我々には、完全な権限が必要だ。何故なら、この協定で扱われている事柄はが、とうてい受け入れられそうなものと思えないからだ。我々は、これを許容することはできない」と言い始めています。この事実は大変重要です。何故なら、APECの場でも、アメリカ合衆国幹部達は、他国を説得しようと試みるでしょうから。すなわち、「これは公式なことです。これは完了している。ファースト・トラックは実現しつつある。我々は交渉中だ。TPP以外に望みはない。」というように。もし全当事国の人々が、TPPの意味することを実際に知った場合には、太陽の光が、TPPを枯れさせてしまう可能性が非常に高いのです。アメリカでは、人々は「TPPは死んだ魚のようだ。太陽に長く曝されるされれば曝されるほど、臭いがひどくなる。」と言い始めています。TPPの中身がどのようなものなのかを明らかにすることは大変重要なことです。また、もしTPPが私たちの為にならないのなら、私たちは、人々にきちんと知らせ、そのような協定を絶対に締結しないことが重要です。
 二つ目の大変重要な課題は、この協定が不可避だなどということは全くないことをはっきりさせることです。正に、心理ゲームなのです。ワシントンでは、ある言いまわしを使っています。日本ではとても良く使われるものですが、「歌舞伎のようだ」と言い合っているのです。APECでは、国家首脳は形だけ議論をしている演技をし、お互いに褒めあい、この偉大な協定について話すでしょう。しかし、議員達も、一般の人々も、世界中のTPP交渉国の活動家も、次第に本当の姿を知りつつあります。
 さて、皆さまにワシントンで起こったとても面白い話をして、話を締め括りたいと思います。30人の活動家達が、通商代表の事務所にやって来ました。事務所はホワイトハウスから通りを渡ったとても高いビルにあるのですが、活動家はビルの足場をよじ登って、6階分の高さの巨大な垂れ幕を吊るしました。ある垂れ幕には、「TPPはいらない。環境、雇用、健康が最優先だ。」とありました。「TPPはいらない。ヒトが最優先だ。」とも書きました。巨大な垂れ幕は、ワシントンの交通を阻害しました。信じられないような抗議活動でした。この出来事は、他の国々で起こっていることのほんの付け足しに過ぎません。私たちは皆、TPPが私たちの生活にどのような影響を及ぼすのかを知っており、確実に政府に説明責任を課しており、医薬品価格のつり上げ、安全でない食品、雇用の国外流出、金融サービスの規制緩和を推し進める企業について知っているからです。今述べたことが、TPPの本当の姿です。今、皆さまが開催なさっているこのような会議が開かれ、皆さまには会議の開催をお慶び申し上げたいのですが、この会場で、またマレーシア、カナダ、そしてメキシコの会場で起こっていることを全て一緒にすれば、必ず危険で非人間的なTPPを阻止することができます。
 ここに改めて、本日の会議のご盛会をお祈りします。お招き頂き、どうも有難う御座います。近い将来、また皆さまとお目にかかれば幸いです。
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10月1日、「TPPを考える国際会議」に向けたパブリック・シティズンのグローバル・トレード・ウォッチのディレクター、ローリー・ワラックさんのビデオ・メッセージ翻訳。

最後の面白いエピソードは、昨日掲載した記事にあった抗議行動のこと。

ビデオは、2013年9月24日、パブリック・シティズンのグローバル・トレード・ウォッチ本部(ワシントンDC)にて撮影

彼女は、ケルシー教授同様、再三訪日し、TPPについて講演しておられる。アメリカの「デモクラシー・ナウ!」にも出演。下記も是非お読み願いたい。

TPPは貿易協定の衣を着た企業による世界支配の道具 Democracy Now!書き起こし

TPPについて関心をお持ちであれば、翻訳した他のTPP関連主要記事リストもご覧頂きたい。「農業対輸出産業」等という大本営広報部の報道とは全く違う実体の片鱗を感じていただけるかもしれない。

大本営広報は、消費税増税の有り難いお話を放映してくださるが、10月1日、「TPPを考える国際会議」についての報道、電気白痴製造箱でも印刷媒体でも見当たらないように思える。

IWJ【Ch6】では、しっかり放映された。

TPPを考える国際会議 (同時通訳による日本語音声)
マレーシア議員報告 人民正義党 ヌルル・イッザー・アンワル議員

マレーシア議員報告 民主行動党 チャールズ・サンチャゴ議員

岩上安身責任編集 – IWJ Independent Web Journal

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コメント

私も転載させて頂きました。

事後承諾ですみません。
もし、だめでしたら即刻削除します。
転載させていただきました。情報拡散の意味で。

松原 みさこ

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