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2013年8月 8日 (木)

ニュー・エコノミー”は無雇用経済

Paul Craig Roberts
2013年8月5日

読者の皆様

このサイトへのトラフィックと、アメリカ合州国中の大都市や、小さな村や、世界中の寄贈者の皆様方の寛大な寄付をうれしく思っている。インドネシア、ロシア、台湾、香港、ヨーロッパの大半の国々、カナダ、オーストラリア、およびニュージーランドから寄附を頂いている。世界中の人々が深刻さを理解していて、マスコミ、官僚や、大企業が提供するものより良い情報を探し求めていることに、私はワクワクしている。

世界中の人々が、コラムをそれぞれの言語に翻訳し、ウェブに公開するする私の許可を求めてこられるのは励みになる。コラムはアゼルバイジャン語にさえなっている。

とは言え、寄贈者の方々より読者の人数の方が多い。

世界の人々は馬鹿ではない。核武装した“超大国”が彼等に対して覇権を行使するということが何を意味するのかを理解している。ワシントンの無法なネオコン住人連中より誇りに思える、真っ当な理性を持った人々がいること、アメリカ政府の野望は、人命の破壊をもたらす結果となる可能性が高いということ、を人々は理解している。

イランのビデオをご覧になったり、訪問されたことはおありだろうか? この古代文明には古代遺跡や並ならぬ博物館があるのみならず、美しい現代都市、道路、自然美もあり、国民はアメリカ合州国より高学歴だ。

アメリカ政府が、イランを爆撃して、石器時代にしたがっているのは、単に、核(つまりは核兵器)拡散防止条約調印者国であるイランが、条約の下、原子力発電をする権利を行使しようとしているからに他ならない。アメリカ政府の立場は、イランは条約に基づく権利を否定されるべきで、さもなくば破壊されるべきだというものだ。他のあらゆる記名調印者国には、原子力発電の権利があるが、イランには無いのだ。

アメリカ政府は、明らかに、国内を支配する無法さと矛盾のない、全く無法な立場をとっている。

独立国家を爆撃して、石器時代にするというのは、ワシントンの犯罪人どもお気に入りの脅しだ。マスコミはそのような威嚇をする連中の責任を問うことをしない。本サイトは責任を問うている。

アメリカ人は“彼等の”政府、つまりウオール街、軍安保複合体、イスラエル・ロビー、モンサントや農業関連産業や、採鉱、エネルギーや林業等の所有物であるワシントン政府は、アメリカ人はだまされやすいと思っているのみならず、読者の皆様方は完全に馬鹿だと考えていることを理解する必要がある。

おそらく国民の一部は気がついていても、マスコミはそうではないのだが、NSAによる違憲、違法な、普遍的スパイ行為が、国民の間で問題化するやいなや、議会、傀儡連中、オバマ政権は「恐怖ボタン」を押し、シリアでは、そのアサド政権攻撃を、アメリカ政府が支援し、アフガニスタンではアメリカ軍から契約を受注する恩恵に預かっている組織、アルカイダが、中東と北アフリカ中にある19のアメリカ大使館を標的にするという“脅威”が発見されたことを明らかにした。

何やら魔法のような手法によって、週末そしてどうやら今週も、大使館を閉鎖することで、アルカイダによる破壊から大使館を防ぐのだ。NSAの違法で違憲なスパイ行為の価値を証明する為、アメリカ政府が大使館で爆弾を爆発させなかったことに私は驚いている。

政府の主張の愚かしさを一瞬お考え願いたい。アメリカ政府は、十年以上もアルカイダと戦っており、オサマ・ビン・ラディンを含む最高首脳を殺害したと主張している。ところが、アルカイダは、かつてないほど強力になり、実際、シリアでは、アメリカ政府の支援を得て、対アサドの戦いを進めるのみならず、アフガニスタンではアメリカと戦い、イラクで破壊を継続し、中東と北アフリカのあらゆるところで、アメリカ大使館を攻撃する能力があるほど強力だ。

もしアメリカ政府の説明が正しければ、アメリカ政府が戦争に破れたことは明白だ。NSAスパイはむだなのだ。アルカイダが、それほどの脅威になってしまったので、十年間の戦争と普遍的監視にもかかわらず、アメリカ人はどこにいても安全ではないのだ。

これはアメリカ政府が完璧に愚かなことを示している。ありもしない脅威を誇大宣伝することで、アメリカ政府は自らの無力さを証明しているのだ。

アメリカ政府やマスコミ、別名プロパガンダ省が、我々に語ることに真実は皆無だ。最新の雇用数値に関する私の下記レポートでお分かりのように゛公式統計すらも嘘なのだ。

“ニュー・エコノミー”は無雇用経済

Paul Craig Roberts

小生のコラムの中で、もっとも好評なものの一つは、アメリカ国民がその中で暮している、マトリックス生活から脱出することに関する記事だ。そこは、実際には、経験的現実の代りに、虚構と抽象的な理論が使われている、偽情報と虚報の世界だ。

公式政府統計は架空だ。政府は、インフレと失業の定義の仕方を変えることで、インフレと失業を消失させ、国内総生産の定義の仕方を変えて、経済を成長させている。定義原理が、統計の結果を決定しているのだ。

例えば、7月31日に発表された公式GDP改訂に関するレポートで、ジョン・ウイリアムズ(shadowstats.com)“強い政治的バイアスがあることの多い学術的理論が、長年、GDPモデルを変更するのに用いられており、一連の数値に加えられた変更が、必ず短期の経済成長を上昇させる効果“ポリアンナ上昇”を生じる結果となっている”と書いている。言い換えれば、経済が経済成長を生み出そうと、生み出すまいと、定義の変更が経済成長を生み出すのだ。

より高価な品物を、より安価な品物で置き換え、価格上昇を、品質向上と定義することで、インフレは消し去られる。そこで、より高い価格はインフレとは見なされなくなる。

仕事を見つけられない求職意欲喪失労働者を、もはや労働人口ではない人々と定義することで、失業は消滅する。彼等は失業者のなかから単純に消滅してしまうのだ。これは、いにしえの漫画“小さな孤児アニー”のパンジャブの魔法の毛布を思い出させる。パンジャブは、問題のある人々を彼の毛布で処理した。というより、おそらく絨毯だったろうが、それで包むと、人々は消え去るのだ。

政府データのばからしさにもかかわらず、市場が良くなったのか、悪くなったのか、それとも変わらないのかを決めるため、ウオール街は毎回の発表をハラハラしながら待っている。言い換えれば、金融市場そのものが架空の数値を参考にしているのだ。要するに、資本主義は舵なし状態だ。信頼に値する指標がないのだ。国民を意識朦朧状態に保つマトリックスを維持するために、あらゆるものが操作されている。

確かに月例就業者数は、誤解されており、不相応な影響力を持っている。もし経済が下降しているのであれば、人口の増加に対して、変わらずにいる為に必要な約130,000の新規就業よりずっと大きな就業者数は、回復の光と見なされる。しかしジョン・ウイリアムズが説明しているように、変動して不安定な季節調整や、“birth-death”モデルによる52,000件の就業の平均月例追加等によって、数字が余りに歪曲されている為、数値がどうなのかは誰も本当のことが分からないのだ。ジョン・ウイリアムズのように政府のデータ手順に非常に精通した統計学者のみが、公式統計を解明できる。

私は素朴な手法を用いている。報告されている就業が、一体どの業種のものとされているかを見ている。21世紀に“世界最大の経済”によって生み出された雇用は、低賃金で、海外移転不能な、国内サービス業の第三世界的雇用だ。製造業やソフトウエア・エンジニアリングの様な海外移転可能な専門サービス雇用は、低賃金、低給料の場所に海外移転されてしまった。人件費の削減は、大企業幹部、ウオール街や株主を豊かにした。

長年、毎月私はこれを主張しているが、全員、架空の現実という架空の世界に閉じ籠もり続けている、経済学者、政策立案者、投資家、金融市場等には全く効果がない。

同じ検討をまたやってみよう。7月の民間部門就業で報告されている、161,000件のうち、157,000件、つまり97.5パーセントは海外移転不可能な国内サービス業だ。海外移転不可能なサービスとは、ウエイトレス、バーテンダー、病院の雑役係、小売り店員、倉庫係等の、海外には移転できないサービスを提供する仕事だ。だから数値がどれほど大きかろうと、それでアメリカの膨大な貿易赤字を削減することはできない。こうした雇用の大半は、健康保険や年金手当て無しのパート仕事だ。こうした仕事の人々は、かつかつの生活を送りがちだ。こうした仕事は消費者経済を駆動するのに十分な収入をもたらさない。

報告されている、157,000件の就業中、63,000件、つまり40パーセントは商業、運輸や、電気・ガス・水道だと報じられている。63,000件の就業中、60,500件、つまり96パーセントは卸売と小売りだ。

次のカテゴリーに進む前に、回復していない経済で、製造業や建設業の新規就業は無く、就労率が低下していて、ショッピング・センターの駐車場は満車とはほど遠く、売上見込みがそれほど悪い店舗が、7月に、それほど多数の人を雇用するだろうなど、信じられるかどうか、自問願いたい?

金融業務は、報じられている新規就業のうち、15,000件。連邦準備金制度理事会が、こうした就業の80パーセントを占め、残りは集金人だ。

専門と法人向けサービス業は、新規就業の36,000件を占める。これら就業の約半数は、一時的な派遣労働と、ビル・住宅サービスだ。

医療と社会的支援は、8,300件の就業を占め、そのうち外来医療サービスが80パーセントを占めている。

ウエイトレスとバーテンダーの就業は38,400件にのぼっている。以前から私は良い就職の見込みも、収入の増加も無い人々が、益々頻繁に飲食にでかける異常さに注目しているが、ウエイトレスとバーテンダーが毎月の新規雇用の大きな比率を占めることが多い。

労働者統計に付記した委員意見で、エリカ・グロシェンは、現在雇用されている人々のうち、8,200,000人、つまり6パーセントは“不本意なパートタイム労働者”、常勤の仕事が見つからない就職であることを認めている。

2013年7月の136,038,000件という就業者水準は、5年と7カ月前の2008年1月の雇用水準よりも、2,018,000件少ない。人口増加に合わせて、雇用水準を維持するのに、毎月130,000の新規就業が必要なのであれば、アメリカ経済は、10,728,000件も雇用が不足している。こうした雇用の不足は、減少する就労率や、もはや失業者としては計上されない大量の求職意欲喪失労働者に現われている。

売女経済マスコミがいくらそうだと報じようと、明らかに景気回復など存在していない。アメリカ経済は不況に益々深くはまりこんで行く可能性が高い。経済的崩壊の様々な指標は、嘘を維持する為、マトリックスを紡ぐ作業に忙しい経済学者や経済マスコミによって無視されている。

“大きすぎて潰せない銀行”の元幹部や、その子分連中が、財務省、金融規制機関や、連邦準備金制度理事会を運営している為、アメリカの経済政策は、愚かな規制緩和で生み出された余りに巨大な銀行の救済に注力してきた。アメリカの経済政策の目的は、規制緩和によって生み出された賭博カジノのほとんど不明な新金融商品の賭けで失敗した大手銀行を救済することだ。

フィル・グラム元上院議員やビル・クリントン大統領の様な金融規制緩和の立案者連中は、その貢献に対して、個人的な資産の報奨を得た。ビルとフィルを支援し、幇助し、金融の安定性の廃止を、自由放任資本主義の新たな始まりだと偽って伝えた自由市場の手先どもは、いまだに、危機は、議会が銀行に対し、支払い不能な貧しい黒人に、抵当権付き住宅ローンを行うよう要求した結果であったふりをしている。

アメリカにおける現実の欠如は極端だ。まさか現代世界でこのようなことがあろうとは私は考えてもいなかった。本質的に政府内・外の誰一人として何も分かっていないのだ。

既得権保有勢力の権力と、経験的現実とかけ離れたイデオロギー思考の組み合わせが、アメリカ経済と、アメリカ人の経済見通しを破壊しつつある。アメリカ経済の雇用構造は、益々、第三世界の国の様相を呈しつつある。金持ち以外の人々にとって、経済的安定は消滅してしまったのだ。多くの、増大しつつある割合の国民が、貧困、あるいは、ほとんど貧困の不安感を味わうなか、5000万ドルのヨットを買う順番待ちリストは増えている。所得分配は富裕層の方に大きくゆがめられるあまり、莫大な富を持った人々が、中古フェラーリの価格を、1950年代から1960年代、12,000,000ドルから、35,000,000ドルへと競り上げた。中古フェラーリが中程度の所得の人も購入することができる車だった頃を覚えている。私のある友人は、最近3500万ドルで売れたフェラーリを、1960年代に、9,000ドルで買って、売った。

かつてアメリカで四番目の大都市で、世界の製造拠点だったデトロイトが破産した。かつてはアメリカの栄える生産基地だった都市の人口は減少している。クリーブランドは、住宅に板を打ち付けた。セント・ルイスの20パーセントの住宅は空き家だ。国民の窮状が悪化し、失望が増す中、福祉は共和党や、一部の民主党員からさえ攻撃されている。

アメリカ政府は、選挙運動を資金援助してくれる半ダースの強力で、豊かな既得権集団にしか応えていない。アメリカ国民にとって、代表者は皆無だ。アメリカ国民は、1パーセントだけの為の“民主的資本主義”体制外におかれている。

ジェフリー・セントクレアが明らかにした通り、アメリカにはもはや左翼は存在しない。アメリカは、“進歩派”を含め人々が、白人は裕福で、黒人は貧しく困窮しているという人種的対立で、現実を考えるよう洗脳されている右翼社会だ。

これはマトリックスの、偽の現実だ。白人の方が人口的に黒人より多数を占めているのだから、貧乏な白人の人数の方が貧乏な黒人より多い。しかも貧乏な白人の比率は増加しつつある。雇用を海外移転し、金持ちを救済するという形で機能している、今日のアメリカ経済は、アメリカで、かつて繁栄していた中流階級のわずかな残りも含め、全員を貧しくする。これは人種問題ではない。階級問題なのだ。ごく僅かの人々が権力を持ち、他の全員を倒れるまで酷使するのだ。アメリカ政府は連中の手代だ。

国旗を振り、軍隊を支持し、政府とマスコミの嘘を信じられるのは結構だが、読者が有力なコネがある1パーセントではない限り、お子さま方の未来に期待してはならない。皆様は“みんなの”政府によって売り渡されてしまったのだ。オバマは美しい演説をするが、だまされるのは愚か者だけだ。

Paul Craig Robertsは、元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリプス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えていた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでい る。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the Westが購入可能。

記事原文のurl:www.paulcraigroberts.org/2013/08/05/the-new-economy-is-the-no-jobs-economy-paul-craig-roberts/

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夜盗が分裂するという、プロレス中継まがいの偽情報を再三みせられてうんざり。即座に音声を消し、番組表に切り換える煩雑さ。

与党応援団の一派、自党か維新の人気低下対策で、目玉イベントを画策した程度にしか思えない。売国政策TPP推進を言い立てる野党に存在意義があるだろうか?ブタの喧嘩。

TPP反対、原発反対、集団的自衛権承認反対を主張する党を野党というだろう。大本営広報部、野党の定義を勝手に変更し、与党応援団各派を「野党」ということにするマトリックス日本版。

“ポリアンナ上昇”と訳した部分、原文はPollyanna creep、ジョン・ウイリアムズ氏の造語らしい。どうやら古い小説の超楽天的主人公に由来する言葉のようだ。

「ウイキペディア」のポリアンナ症候群には、こうある。

心的疾患のひとつ。ポリアンナイズム(Pollyannaism)とも。現実逃避の一種で、楽天主義の負の側面を表すもの。
「直面した問題の中に含まれる(微細な)良い部分だけを見て自己満足し、問題の解決にいたらないこと」

寛大な寄附をされた方々の国名に、日本がない。
第一次湾岸戦争時、豪腕政治家氏の活躍により、膨大な戦費を宗主国に貢いだのに、クウェート政府がニューヨークタイムズに出した感謝広告に国名が無かったのは、くやしいとも思わなかったが、徹底的になめられている植民地であることを再確認させられた。

毎回、国名だけ取り替えれば、そのまま属国にもあてはまりそうに思う。不条理な政策を言い立て実施する人々、エリートだろうか?経済的・軍事的に破綻した宗主国に属国傀儡の優秀師弟が留学し学んだ破綻した政策を、帰国して属国で実施すれば、宗主国と同じ運命が待っている。

アホノミックスは無雇用経済

日本人がその中で暮している、マトリックス生活から脱出することに関する記事、さほど好評ではない? そこは、実際には、経験的現実の代りに、虚構と抽象的な理論が使われている、偽情報と虚報の世界だ。属国は独立国で、違法な集団先制侵略攻撃は、集団自衛だ。

国旗を振り、軍隊を支持し、政府とマスコミの嘘を信じられるのは結構だが、読者が有力なコネがある1パーセントではない限り、お子さま方の未来に期待してはならない。皆様は“みんなの”政府によって売り渡されてしまったのだ。首相は美しい言辞を弄するが、だまされるのは愚か者だけだ。

副総理の「ナチスにならって、こっそり発言」、着々実施されつつある。大騒ぎして改憲することなしに、裏口の解釈で、侵略戦争のお先棒を担がせて頂く算段。もちろん、大本営広報部は、報じない。というわけで、本日配信頂いた、孫崎享氏の記事『集団自衛権は日本防衛の為ではない。米軍が自衛隊を傭兵的に使うシステム』を以下、全文流用。

安倍首相は集団的自衛権の容認を促進しようとしている。

 安倍首相の私的諮問機関「安保法制懇」は集団的自衛権の行使容認を提言する方針を決めた。

 合わせて内閣法制局長官に、かつて「安保法制懇」の事務方を務めた小松駐仏大使を任命することを決めた。

 これまで、いろいろな所に集団的自衛権の問題点を寄稿してきたが、次に、私が文芸春秋社の『日本の論点』で寄稿したものを下記に添付する。

―「日本独自の戦略を持たない限り、集団的自衛権行使を認めることは、米国の戦争に追随させられるだけである」―

日米安全保障関係の最大の問題点は極めて重要な案件について、しばしば目的、内容を国民に正確に伝えることなくとり進めてきたことにある。

集団的自衛権もまた、この範疇に入る。

小泉元首相は2004年6月27日のNHK党首討論番組で、「日本を守るために一緒に戦っている米軍が攻撃された時に、集団的自衛権を行使できないのはおかしい。憲法を改正して、日本が攻撃された場合には米国と一緒に行動できるような形にすべきだ」と述べた。

集団的自衛権の是非を考える時、日本人の多くこの小泉元首相の論理を判断の基準にする。しかし小泉元首相が述べた「日本を守るために一緒に戦っている米軍が攻撃された時に、集団的自衛権を行使できないのはおかしい」という表現は間違っている。現在日米間には日米安保条約がある。この条約の第五条は「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する」と規定され、「日本を守るために一緒に戦っている米軍が攻撃された時には日本は行動をとること」は条約上の義務になっている。

では条約上明白なことを何故今必要と述べているのか。それは目指すものが別に存在し、それを一般国民うけする台詞で容認させようと試みているからである。2007年4月発足した柳井元駐米大使を座長とする有識者会議は集団的自衛権行使に関する四の個別事例研究を進めた。これが集団的自衛権の目指すものと言ってよい。       

(1)同盟国を攻撃する弾道ミサイルをMDシステムで撃破する

(2)公海上で海上自衛隊の艦船と並走する艦船が攻撃された場合、自衛艦が反撃する

(3)陸上自衛隊がイラクで行った復興支援活動のようなケースで、自衛隊と一緒に活動している他国軍が攻撃された際に駆けつけて反撃する             

(4)国連平和維持活動(PKO)で、海外で活動する自衛隊員が任務遂行への妨害を排除するため武器を使用する。

 この有識者会議は小泉元首相のいう「日本を守るために一緒に戦っている米軍が攻撃された時には日本は行動をとること」とは別の提言をしている。当然である。現行安保条約に含まれていることを必要だと提言するはずがない。

集団的自衛権は日米軍事協力の在り方の変更を目指している。一つは範囲である。安保条約では、「日本国の施政の下にある領域」とされている。今一つは場合である。安保条約では「一方に対する武力攻撃」という場合に限定している。これに対して、有識者会議は「ミサイル防衛のケース」、「公海上併走している時」、「イラクのような場合」としている。

提言の一つミサイル防衛は一見もっともらしい。「北朝鮮が米国に向けミサイルを発射し日本の上空を飛んでいるのに黙って見過ごしていいか?」北朝鮮が米国にミサイル攻撃する際、最短距離をとる。地球儀で見ればわかるが、ミサイルは日本上空でなく、ロシア上空を越えて米国に到達する。いつ打ち落とすのか。米国上空ではない。ロシア上空ではない。だとすれば、ミサイル発射前に攻撃することしかない。北朝鮮内にあるミサイルを攻撃すれば、当然北朝鮮は200-300実戦配備されているノドンを日本に発射する。日本にこのリスクをとる国益はない。

「陸上自衛隊がイラクで行った復興支援活動のようなケースで、自衛隊と一緒に活動している他国軍が攻撃された際に駆けつけて反撃する」は何を意味するのか。日本が純粋に復興支援を行っていても、米国は敵と交戦を行っている。純粋に復興支援を行う日本と,交戦をしている国とでは敵の対応が異なる。米国と一緒に交戦することで,以降日本は交戦部隊と位置づけられていく。

集団的自衛権では有識者会議は(3)(4)で復興支援活動やPKOに言及している。自衛隊が復興支援などで海外に展開することについては米国軍部に次の狙いがある。

「新ガイドライン(97年日米間で合意)に盛り込まれた国連のPKO、人道支援、災害援助活動はいずれもグローバルな日米協力を視野に入れたものである。このような頻繁に起こり、緊張度の低い作戦行動を共同で行うことは、同盟の性質を転換させるために不可欠な実際上の手続き、作戦面での政治プロセスを制度化する可能性を持つからである。」(元国防省日本部長ポール・ジアラ著「新しい日米同盟の処方箋」、1999年)

米国は自衛隊に復興支援等で日米協力をさせ、それを次第に軍事協力にすることを意図している。

それが有識者会議の(3)、(4)の狙いである。

 集団的自衛権の問題は独立した動きではない。

世界を舞台に自衛隊を米国戦略のために利用したいとする米国の動きと連動している

サミュエルズMIT教授は著書『日本防衛の大戦略』で「日本は安全保障の範囲を拡大すべきであるというアメリカの要求がこれほど大幅で執拗になったのは、これまでにないこと。在日米軍基地と日米同盟を世界的な安全保障戦略の道具として利用するのは米国の明確な意思』と記述している。

二〇〇五年日本の外務大臣、防衛庁長官と米国の国務長官、国防長官の間で締結された「日米同盟 未来のための変革と再編」はサミュエルズ教授の指摘を具現化したものである。ここでは日米軍事協力の範囲を日米安保条約の「極東」から「世界」にし、方法を「国連の目的と両立しない他のいかなる方法も慎む」から「国際的安全保障環境の改善」に変更した。集団的自衛権をめぐる動きは、まさに「日米同盟 未来のための変革と再編」を日本の法制面などで整える動きと言える。従って、集団的自衛権の是非には今日の米国戦略の評価を行うことが不可欠である。

今日の米国戦略は世界の平和と安定に貢献しているか、否か、それが今問われる。

(1)現在米国戦略はテロとの戦いを柱としている。しかし、テロ行為は通常政治的目的のため行われている。外交的手段で解決を図る道がある。

この解決を充分に追求することなく専ら軍事手段で解決を図るのは間違っている。

(2)「ウェストファリア条約」の理念(主権を認め、武力を抑制)は国連憲章に活かされ、日米安保条約も含め、紛争に対応する従来の基本的理念である。しかし「日米同盟 未来のための変革と再編」のめざす「国際的安全保障環境の改善」は将来の脅威を除去することを目指し、むしろ国際社会で不安定を拡大する行動である。

 実は「集団的自衛権を強化すべきか否か」の問題の根幹は日米協力の在り方について「個別政策に問題があっても日米関係全体のために受け入れるべき」とする考え方と、「個別政策への協力は各々の是非を判断し行動すべし」とする考え方のいずれを選択するかの問題である。

かつては、「米国追従は日本の国益」とする論が有力であった。しかし、今情勢は変わった。中国経済が米国を追い抜くことが現実味を増した。本年発表された内閣府の『世界経済の潮流』は2030年中国GDPは米国の1.3倍という予測を出している。今や米国内で「アジアにおける最も重要なパートナーは誰か」との問に日本でなく中国とする考えが優勢になってきた。特に有識者の中で顕著である。日本が米国に忠誠を誓えば米国は日本を大切にしてくれる時代は過ぎた。米国は自己の国益で動く。日本もまた自らが戦略を持ち、個別の政策が真に国益に合致するかを真剣に判断せざるをえない時代に入っている。この中「集団的自衛権」という米国従属政策の強化する動きは1960年の安保改定で日本の国益を守るため、最低限必要とした枠組み(軍事協力を極東、及び攻撃される時に限定)すら撤廃しようとしている。

「集団的自衛権」は日本の安全保障面で危険性を増大させる。日本の国益に反する動きだ

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