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2013年7月 8日 (月)

『国家の殺し方 オーストラリアがアメリカと結んだ破滅的な貿易協定』書評

とうとうオーストラリア-アメリカ関係の本質について重要なことを物語る本が出現!
リンダ・ウェイス、エリザベス・サーボン、ジョン・マシューズ、『国家の殺し方 オーストラリアがアメリカと結んだ破滅的な貿易協定』(2004年、シドニー、Allen & Unwin刊、)、190ページ; 24.95ドル。

とうとうオーストラリア-アメリカ関係の本質について重要なことを物語る本が出現!この重要な研究の三人の著者が主張している通りオーストラリアとアメリカ合州国の間の自由貿易協定(FTA)は、オーストラリア史上、恐らく最も不均衡で有害な二国間協定だ。

FTA交渉は、プロパガンダと欺瞞の研究だ。協定の正式作業は二年以上前に始まり、2004年2月に“成功裏に完了した”。興味深いことに、協定の実際の文章は - 全部で1,000ページある - ずっと後まで国民が目にすることが可能にはならなかった。にもかかわらず、オーストラリア政府は、FTAを、アメリカの貿易障壁を取り除き、オーストラリアの輸出業者にとって、何十億ドルもの市場を開く、オーストラリアにとっての大成功だといって売り込むのを止めようとはしない。

とうとう実際に契約の細目を読む機会を与えられて、三人の極めて優れた学者(シドニー大学の政治学教授リンダ・ウェイス、ニュー・サウス・ウェールズ大学で、政治学を教えるエリザベス・サーボン、マクウォーリー大学大学経営学大学院の戦略的経営学教授のジョン・マシューズ)が、長い目で見れば、FTAは、オーストラリア国民にとって、オーストラリアを“一種、太平洋のプエルトリコ”におとしめる恐れがあるという緊急警告として、本書を著したのだ。

本書は、FTAで影響を受ける四つの主要な分野 - 検疫規則、医薬品(特にオーストラリアの、高く評価されている医薬品給付制度PBS)、政府購買と、知的所有権をあげて、これら分野のいずれにおいても、オーストラリアのきわめて重大な利益が、いかにして危うくなるのかを実証している。総体的結論は、オーストラリアの機関や主権を食いつぶすことで、FTAは“独立国家としてのオーストラリアに対する死刑宣告”となる。

FTAが発効した際(現時点では、2005年1月1日の予定)にオーストラリアが被る可能性のあるあらゆる損失の詳細説明をするのはこのスペースでは不可能だ。ご自身で、本書を購入の上、お読み願いたい。ここでは、FTAの下でさえ、オーストラリアの輸出業者は、アメリカとの本当の“自由貿易”にとって、重大な障壁に依然として直面していると言うにとどめておく。オーストラリアにとって潜在的な優位性があるあらゆる分野は、FTAでは触れられていない。砂糖は最も注目を集めたが、それに加えて、自動車、繊維、履物、オーストラリアの超一流の高速フェリー等だ。アメリカの“価格セーフガード”が最終的に廃止されれば、オーストラリアも多少はごく僅かな恩恵を受ける可能性はある。それもウールでは今から10年先、鉄鋼では11年、牛肉、乳製品、園芸と綿では、わずか18年先の話だ。長年、オーストラリアはアメリカ合州国との膨大な貿易赤字で苦しんできた(2003年で、120億米ドル以上)。 FTAでは、それは変わらない!

更に、オーストラリアは、検疫規則を貿易に対する障壁として利用していると、ずっと主張してきたアメリカのアグリビジネスは、オーストラリア検疫基準を、FTAを通して浸食することが可能となり、かくして我が国の“清潔な、グリーン農産物生産者という独自の地位”は弱体化する。

オーストラリアの医薬品給付制度(PBS)は長年、アメリカの打倒対象のリストにあげられている。そうはならないというオーストラリア政府の約束にもかかわらず、FTAで、アメリカを本拠とする強力な医薬品ロビーが、社会的に有用で、経済的な形で、医薬品を提供するオーストラリアの制度を、弱体化させ、恐らくは破壊することさえ可能にする諮問委員会が設置される。

FTAはまた、オーストラリアの450億ドルの政府調達市場に対する更なるアメリカ侵略の道を開くものでもある。“調達”には、日々の業務で必要な商品やサービスの政府調達と、大規模インフラ・プロジェクトとが含まれている。巨大なアメリカ企業が、小規模なオーストラリアの応札者と競合する場合に、調達契約の“開かれた競争”が歪曲されるばかりでなく、アメリカは強烈な“米国品優先購入”文化を維持しており、これが更に“公平な競争の場”どころではないものに歪めてしまう。

FTAの知的所有権にかかわる条項は複雑で不気味だ。要するに、オーストラリアは自らを犠牲にして、アメリカの特許、著作権や、広範ないわゆる“知的所有権法”(IPR) をオーストラリアで補強することを強いられることになるのだ。アメリカが、知的所有権法を改訂する度に、オーストラリア議会は同じことをするよう圧力をかけられることになる。あれやこれやの形で、我々は“我が国の将来の規制に対する支配力を失い、我が国の主権の大きな部分を失うことになる”。

オーストラリア-アメリカ関係は、長いこと基本的な神話に基づいて解釈されて来た -オーストラリアは、どこかアメリカ合州国との“特別な関係”を享受していると。実際は、オーストラリアのアメリカとの関係には、恐らくは、次から次のオーストラリア政権が、特別な関係という意識にはまってきたことを除いて、何ら“特別”なものなど無いのだ。国際貿易と投資という熾烈な世界では、アメリカの交渉担当者達は、オーストラリアの素朴さに当惑することが多い。オーストラリアのいわゆる“特別な関係”は、アメリカの実業界には、何の意味もない。

Review by Dennis Phillips
マクウォーリー大学
2004年11月

記事原文のurl:http://worksite.econ.usyd.edu.au/phillips.html
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反・自由貿易論』中野剛志(著)、序章と末尾で本書の内容に触れている。ご自身で、本書を購入の上、お読み願いたい。

同じアングロ・サクソンの、オーストラリアにたいするこの扱い。日本がどうなるか、想像できない政治家がいること自体が信じられない。理屈抜きの“特別関係教”狂信者。

山田正彦氏の2013年3月19日のブログに「TPPで日本に対し、米韓FTA以上のものを求める」とある。一部を引用させていただく。

米韓FTAはまさに不平等条約、韓国の裁判官144名が国家主権が損なわれるとして、大法院に提訴、それを大法院は受理しています。昨年、私が訪米した時に通商代表部のマランチェスに「TPPで日本に何を求めるのか」と聞いたときに「米韓FTA」の内容を読んでて欲しい。日本にはそれ以上のものを求める」とはっきり言われました。
 先日、慎重に考える会の勉強会でも韓国の宋弁護士の話ではコメの関税も例外ではなかったことが明らかになってきています。

この記事の「アメリカの交渉担当者達は、オーストラリアの素朴さに当惑することが多い。」という記述『アジア力の世紀 ─どう生き抜くのか』進藤榮一著 岩波新書1432「第3章 TPPから安全保障共同体へ」冒頭部分とそのまま繋がるように思える。今日は名古屋場所初日。

『アジア力の世紀 ─どう生き抜くのか』一部を引用させて頂こう。70ページ~72ページ

   1 アメリカン・グローバリズムの外交戦略

アメフトと相撲

 アメリカン・フットボール─アメフトと略称される米国の国技だ。対する日本の国技は、相撲である。この二つの国技の違いに、両国の外交文化の差が集約されている。私はその差を、最初の留学先、首都ワシントンで、クラスメートたちと初めて練習試合をした時に痛感した。「ボールは左に投げるふりをするから、お前は右に回り込め。
 そしてボールを取ってすぐ、敵の裏をかいて今度は左端のジョンに飛ばせ」。
 試合開始前、綿密な作戦会議を行う。ハーフタイムごとに戦略を練り直す。まさに戦略と謀略ゲームの極致である。
 しかも重くてぶ厚い防具をつけて戦う。そして超ミニの華麗なチアガールがフィールドに繰り出し戦意を高揚させる。まさに重武装とソフトパワーで戦うゲームでもある。
 対する日本の相撲は、まわし一本以外、何もつけない。土俵に塩をまき、不正をせずに技を競い合いますと観客の前で誓う。この文化の中で日本外交も展開する。正議論が好きな国民性がそのムードに拍車をかける。

 だから日本の外交は、外交ゲーム、とりわけ米国流外交ゲームにつきものの、謀略とリスクに気付かず、リスクも、真の脅威も見極めることをしない。正義はいつも我にありと考える。
 相手方の行動を善か悪かで判断し、同盟国の善意を信じ好意に期待する。逆に非同盟国は悪意に満ちていると疑わず、その崩壊を期待する。領土問題でも拉致問題でもそうだ。
中略

アメリカ外交ゲームの謀略

米国外交史には、この手の謀略外交の例は、機密解禁文書で立証できるものだけでもあまたある。米国外交正史が決して触れない、謀略の歴史である。
外交と謀略とはいつも紙一重だ。米西戦争開戦時のメイン号爆破や真珠湾攻撃、沖縄基地問題、ベトナム戦争時のトンキン湾爆破事件から、九〇年八月のイラクによるクウェート侵攻に米国が仕掛けた外交謀略に及ぶ。匿名の情報公開ウェブサイト、ウィキリークスは、普天間基地移設問題や鳩山首相引きずり降ろしに至るまで、謀略の数々を暴き出している。
 見極めるべきは、外交ゲームに潜む謀略だ。謀略に潜むリスクである。だからこそ、同盟国にせよ非同盟国にせよ、アメリカ外交と付き合う時に求められるのは、リスクに向き合う外交のリアリズムだ。
 そのリアリズムが、日本のTPP(環太平洋パートナーシップ)政策に決定的に欠落している。
その欠落が、領土問題で日本を迷走させ、アジア地域統合の動きを減速させている。
 いま私たちに求められているのは、農業であれ金融であれ、グローバリズムに潜むリスクを見抜くことだ。そのリスクに向き合って、「アジアカの世紀」を生き抜くことである。

『街の弁護士日記 SINCE1992at名古屋』の「原発、TPP、憲法こそ争点となるべき課題だ 今日の中日新聞から」を拝読する限り、中日新聞の報道は貴重だ。

重要な三争点で、各党の主張はどこに位置するか、わかりやすい図で示している。講読している新聞も似たような図が載ってはいるが、三争点を対比してはいない。しかも同じマスコミと思えない見出。

「集団的自衛権の行使」自「日米同盟の強化前面に」

大本営広報部はジョージ・オーウェル、ダブル・スピークの模範。つまり主旨はこうだ。

「宗主国侵略戦争の鉄砲玉化」「日本の永久植民地化推進を前面に」。

メディア・リテラシーとは、ダブル・スピーク判読方法会得をいう。

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