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2013年5月16日 (木)

日米関係: 議会にとっての論点 議会調査局報告 慰安婦問題だけではない!翻訳その2

日本の原発政策

日本では原子力の将来に関して、日本で営業している企業、米日原子力協力、世界的な原子力安全性や非拡散措置にとっても大きな影響がある、国民的論議が続いている。思い返せば、2006年、一部は、外国エネルギー供給への依存を減らす方法として、また一部は、温室効果ガス排出を削減する為、“新・国家エネルギー戦略”が、日本の原子力発電能力を大幅に増大させるという目標を設定していた。2011年まで、原子力は日本の発電能力の約30%を生み出していた。

原子力増大政策は、2011年3月11日、自然災害と、福島第一原子力発電所のメルトダウンの結果、突然の逆風に見舞われた。原子力発電の安全性に対する大衆の信頼は崩壊し、声高な反原発政治運動が出現した。この運動は、1945年の原爆攻撃犠牲者という遺産に基づく、現代日本社会における反原発感情という底流を引きだした。2011年3月以降、日本の54基の原子炉が年次安全検査の為に次々に停止されると、日本政府は、中部日本の原発の原子炉二基を除き、再稼働しなかった。

脱原発は、日本にとって多くの短期的・長期的影響をもたらした。家庭用と事業用の電気料金の上昇、特に関西地域での夏期の停電リスク増大、企業、政府機関や一般市民による広範なエネルギー節約の取り組み、主要電力会社倒産の可能性、化石燃料輸入の増加(次の項を参照)。日本エネルギー経済研究所は、原発停止は、2012年に、420,000の雇用と、250億ドルの企業売り上げ喪失をもたらしたと推計している。8

著名な知識人や政治家達が、日本における原子力の終焉を主張する中、民主党は長期的エネルギー政策を策定しようと試みた。2012年9月14日、次官級のエネルギー・環境会議は、2030年までに日本の全ての原発を無くす野心的計画を発表した。日本の実業界の指導者達が計画を厳しく批判し、日本産業の空洞化を警告した。一週間後、野田内閣は、脱原発の期限を、2040年に先送りし、現在の核燃料サイクルの継続、建設中の原発の完成と、2040年を越える原子炉寿命延長の可能性を認めた、より柔軟な“革新的エネルギー・環境戦略”を発表した。アメリカの観測筋は、原発の安全と核不拡散措置推進のグローバル・パートナーとしての日本を失う事に対する懸念を表している。

国民の根強い反原発感情にも関わらず、自民党は、比較的、原子力推進の政策を進めてきた。2012年12月選挙の自民党綱領は、新たな安全規制が実施され次第の原子炉再稼働を主張しており、国家政策の策定前に、日本のエネルギー状況を徹底的に検討することを約束していた。2013年1月30日、国会でのコメントで、安倍は民主党の原発ゼロ政策は“根拠がない”と述べた。9 とはいえ、支持者が46%であるのに対して、国民の48%は、安倍内閣の原子炉再稼働の取り組みに反対している。2013年春、破損した福島第一原発の、安全装置の一時的故障で、原発の安全性に対する恐怖が再浮上した。安倍内閣は困難な課題に直面している。つまり、いかにして、日本は、エネルギー安全保障、再生可能なエネルギー源の推進、電力会社の存続能力、経済全体の健全性、安全性に対する国民の懸念のバランスをとることができるのだろう?

日本への液化天然ガス(LNG)輸出              省略
イラン経済制裁への日本の参加                省略
国際親権問題                                        省略
第二次世界大戦時代のアメリカ人戦争捕虜 省略

同盟問題 27

1951年に締結され、1960年に改訂された安全保障条約の下、日本とアメリカ合州国は軍事同盟国である。この条約の下、日本の安全を保障するというアメリカの誓約と引き換えに日本は、日本領土でのアメリカ合州国軍事基地の権利を認めている。国防幹部達は、条約50周年が、東京とワシントンに、二国間防衛協力強化を強いることになるよう望んでいたが、民主党政権による波瀾のスタートが、同盟の将来に関する懸念を生み出した。2011年3月の災害に対する、アメリカと日本の軍隊による協調活動は、二国間同盟の強さと価値についての強力な主張となり、日本の回復を支援するというアメリカ最高首脳部の誓約で、一連の公的な不和の後の、同盟が漂流しているという懸念を軽減した可能性がある。一方、危機対応は、沖縄の悩ましい基地移転問題という基本的難題を変えるには、ほとんど役に立たなかった。政府が、現地の不満を和らげる為、数千人の海兵隊員が沖縄から去るのを可能にするよう計画を改訂はしたものの、解決の難しい軍施設の存在や、沖縄における海兵隊駐留の政治的持続可能性についての基本的な疑問は残っている。

普天間基地移転論議 28

沖縄における海兵隊基地移転を巡る有名な論議は、長年同盟を悩ませてきた。包括的解決がはっきりしないまま、両国政府は、安全保障関係の中心から、問題を取り除くような形で、計画を調整した。普天間海兵隊飛行場を、人口が密集した宜野湾市にある現在の位置から、沖縄のより混雑度が低い地域、キャンプ・シュワブへ移転するというアメリカと日本政府間の2006年合意は、日本におけるアメリカ軍再編成計画の最重点項目として構想された。29 この同意の下で、名護市の辺野古地域の海岸にあるキャンプ・シュワブへの新たな海兵隊施設建設承認と引き換えに、アメリカ合州国は、8,000人の海兵隊員とその家族を、沖縄からグアムに再配置することになっていた。当初から問題含みだった基地移転は、2009年に鳩山由紀夫が首相となって以来、東京とワシントンの間の主な争点へと発展した。選挙運動中、鳩山は、移設に反対すると沖縄県民に約束していた。鳩山と、民主党の後継者全員が、最終的には移転計画を承認したが、現地の反対と、日本政府による扱いのまずさによって、計画は実行不可能になったように思われる。

2012年4月、アメリカ軍配置転換に対する障害を取り除くため、アメリカ合州国と日本は、沖縄からの海兵隊移転と、辺野古の新基地の進展を“切り離す”よう協定を変更した。沖縄住民に対する負荷を軽減する為、約9,000人の海兵隊員とその家族は、日本外の場所に移転されることになる。グアム、ハワイ、ローテーション先として、オーストラリア、そして恐らく各地である。同盟当局者は、この動きは、アジアにおけるアメリカ軍の態勢を“この地域において、地理的に分散し、運用上抗堪性があり、政治的に持続可能”なものにするという目標に沿うものだと説明している。30 アメリカ基地日本返還公式スケジュール表は、2020年代中頃まで、かなりの面積の土地は現地当局に返還されないことを示している。

この発表後、カール・レヴィン、ジョン・マケインと、ジム・ウェッブ上院議員は、共に、配置転換計画は、“非現実的、実行不能で、負担不能”だと批判し、31 レオン・パネッタ国防長官への書状に、“いかなる新基地提案も、議会の支持を得られるまでは、最終的なものとは見なせない”と書いた。32 グアム建設の膨れ上がる費用とアジア太平洋地域における、将来のアメリカ軍の態勢の不確実さへの懸念から、議会は、2012年と2013年の会計年度の国防権限法、P.L. 112-81 と P.L. 112-239で、関連する軍の建設資金支出に対する政権の要求を凍結するに至った。決議は、承認された資金も、軍の建設の為に日本政府が拠出する資金も、一定の理由と評価が得られるまでは、沖縄からグアムへの海兵隊部隊の配置転換計画を実施するための使用を禁じている。2013年4月、アメリカ合州国上院軍事委員会 (SASC)が、日本での駐留を含め、海外におけるアメリカの軍事駐留に関連するアメリカの経費を検討する報告書を発表した。33 この報告書は、普天間基地移転は“見込みのない”ままであり、国防省の現在の計画よりも、はるかに高い経費と、より長い時間がかかると見ている。

日本側にも大きな障害が残されている。沖縄県民の反対の声は、更に強固になり、新基地建設プロセスに関与した主要政治家全員が計画への反対を表明している。2012年夏のMV-22オスプレイ・ティルト・ローター航空機の普天間基地配備は、近隣住民の安全に対する懸念を高め、米軍兵士が犯した2012年末の一連の犯罪が、現地の怨念に更に油を注いだ。人口の密集した都市部で外国軍部隊駐留によってもたらされる、沖縄県民が何十年も抱いてきた怒りは、弱まる可能性はないように思われる。沖縄と日本政府との現在の論議は、関係の基本的緊張を反映している。国中がアメリカによる安全保障の恩恵を享受する一方、沖縄県民は過度の負担を負っている。長らく延期されてきた普天間改修に着手するという2012年4月のアメリカと日本政府の発表は、基地が無期限に残されるという疑惑を掻き立て、2013年のSASC報告は、日本の貢献は疑問視されると懸念を表明している。34

軍再編と同盟変革の他要素の進捗状況

普天間飛行場移転は、日本におけるアメリカ軍の態勢と、二国間軍事活動の広範な見直しの中で、最大かつ、最も論議を呼ぶ部分だが、これだけが唯一の要素ではない。2002年、軍の態勢を見直し、両国間の国防に対する共通見解を策定する為、アメリカと日本の政府は、防衛政策見直し協議(DPRI)を立ち上げた。辺野古移転を除いて、計画は概してうまくいっている。訓練移転プログラムによって、現地住民に対する騒音公害を軽減する為、アメリカの航空機が、基地の人口過密な地域から離れて、訓練を行なうことが可能になる。アメリカ第5空母航空団は、厚木海軍空軍基地から、軍民両用の新飛行場が使用可能な岩国基地に移転されつつある。2010年、在日アメリカ陸軍は、キャンプ座間(東京の南西およそ40キロ)に、有事の場合、戦域作戦を指揮する二国間統合司令部として機能可能な前線作戦司令部を設置した。横田米空軍基地の自衛隊航空総隊司令部施設が最近完成した。2006年以来、横田の二国統合作戦センターは、データ共有と、日本とアメリカの対空・ミサイル防衛指揮部隊の調整を可能にしている。2011年6月、日本は、日本の武器輸出禁止の例外となる、共同開発ミサイル部品の第三者への引き渡しを可能にするという、念願の同意を発表した。

MV-22 オスプレイ航空機の日本配備

アメリカ海兵隊は、普天間基地に配属されている24機のCH-46E“シーナイト”ヘリコプターを、24機のMV-22“オスプレイ”ティルト・ローター航空機に置き換えつつある。2012年中頃の最初の12機のオスプレイ航空機の日本配備は、沖縄と本土の基地を擁する地域で、一般市民の抗議を引き起こした。航空機の安全実績を理由に、MV- 22の日本への配備に、日本の政治家や市民団体は強力に反対した。35 2012年始めの、モロッコとフロリダ州での訓練演習中のV-22ティルト・ローター航空機の墜落は、沖縄県民に、2004年8月の、普天間飛行場近くの大学敷地へのアメリカ軍ヘリコプター墜落を思い出させた。こうした懸念に対応して、日本の防衛省は、航空機の安全性について、独自の調査を行った。調査でMV-22配備への道は開けたが、人口密集地での事故リスクを減らすため、オスプレイ・パイロットが一連の運用ガイドラインを忠実に守るよう、日本は要求している。航空機の安全実績に対する市民の厳しい監視の目は、福島第一原発事故に起因する政府への不信のまん延と関係している可能性がある。これらの先進的航空機の沖縄導入は、現地海兵隊基地の、特に即応シナリオでの作戦能力を強化するとされている。

原文は、こちら。http://www.fas.org/sgp/crs/row/RL33436.pdf

下記項目については、

    • 要約
    • 目次
    • 最近の進展
    • 安倍晋三と自民党の政権復帰
    • TPPと安倍の経済政策

日米関係: 議会にとっての論点 議会調査局報告 慰安婦問題だけではない!翻訳その1を参照

下記項目の翻訳は、

    • 2011年3月地震と津波: 米日同盟の実績    17
    • 憲法上の制約    18
    • 経費負担問題    18
    • 拡大抑止    19
    • アデン湾における日本の対海賊ミッション    19
    • 日本のアメリカ牛肉輸入規制    23
    • 日本と環太平洋戦略的経済連携協定 (TPP)    24
    • 保険    26

日米関係: 議会にとっての論点 議会調査局報告 慰安婦問題だけではない!翻訳その3を参照。

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慰安婦問題、歴史見直し以外の、普天間基地移設問題の見通しの暗さにふれる部分を書いた新聞もある。

米議会調査局が県内移設を疑問視 沖縄タイムス 2013年5月13日 09時42分

この記事の項目と直接つながる話題で、目くらまし虚報の大本営広報でなく、下記のような記事をお読み頂きたい。

2013/3/11 福島と沖縄、「棄民」政策と市民の力-原発事故3年目に入って

大昔、1962年、池田勇人首相は、西欧歴訪時、フランスのドゴール大統領に、「トランジスタ・ラジオのセールスマン」と揶揄されたという。少なくもと、トランジスタ・ラジオ、不幸の種ではなかった。

原発の安全と核不拡散措置推進のグローバル・パートナーとしての日本を失う懸念をなくすよう、宗主国の原発・核兵器マフィアのにご指導に従って、トルコ、中近東、東欧で、原発の営業活動という犯罪行為、トランジスタ・ラジオ営業とは、雲泥の差。

三蔵法師は孫悟空の頭に禁箍(きんこ)というタガをはめて孫悟空の行動を支配した。
宗主国は傀儡支配者を、安保、地位協定、TPP等のタガで、原発再稼働、増設、原発・武器輸出を奨励する?

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