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2013年5月14日 (火)

人権ハイジャック

Chris Hedges

2013年4月7日

"Truthdig"

元国務省幹部で、長らく政府官僚を勤めたスザンヌ・ノッセルを、PENアメリカ・センター理事長に任命したのは、アメリカの人権団体を、先制攻撃戦争の布教者と、帝国の擁護者へと変える作戦の一環だ。ノッセルが任命されたので、私はPENから脱退し、5月のPENワールド・ボイス・フェスティバルでの講演を辞退することにした。しかしノッセルは、先制攻撃戦争と帝国を、作り事の美徳で覆い隠し、拷問、令状無しの盗聴や監視、適正手続きの否定や、超法規的暗殺を含むアメリカ自身の増大しゆく人権侵害から効果的に関心をそらすべく、国家によって敵として烙印を押された人々、特にイスラム教徒を悪魔化する為に蔓延している、人権団体の乗っ取りの症候に過ぎない。

ヒラリー・クリントンの国務省で、国際機関担当国務副次官補を勤めたノッセルは、ペンタゴンの子分とさして変わらず、サマンサ・パワー、マイケル・イグナティエフやスーザン・ライス等の、無邪気にも、アメリカ軍を、より良い世界を生み出す手段だと思い込んでいるニュー・ウェーブ“人道的介入主義者”の一人だ。彼等は戦争の現実や帝国の本当の内情をほとんど知らない。彼等はアメリカの力の生来の美質やら究極的な恩恵に幼稚な信仰を抱いている。連中の夢想的な目標の名において、イラクやアフガニスタンに押しつけられた、何十万人もの無辜の人々の死、すさまじい苦悩、暴力的テロが、連中の道徳勘定では、ほとんど数に入らない。おかげで連中は、忘れやすく、危険なのだ。“無邪気さは、ある種の狂気だ”グレアム・グリーンは小説“おとなしいアメリカ人”で書いている。建設をするために破壊する連中は“… 善意と … 無知で、堅固に武装している。”

良い戦争などというものは存在しない。正しい戦争などというものは存在しない。エラスムスが書いている通り、戦争以上に“邪悪で、悲惨で、広範に破壊的で、執拗で、忌まわしいものは存在しない”。“人間が至るところで行なっているように、10万匹のけだものがぶつかりあい、お互い虐殺しあう話を聞いたことがある人がいるだろうか?”とエラスムスは問うている。しかし彼は知っていた。戦争はパワー・エリートには大いに役立つのだ。戦争は、権力者達が、国家安全保障の名において恐怖の文化を助長し、国民からやすやすと権利を剥ぎとるのを可能にしてきた。宣戦布告は“国家のあらゆる問題は、ごく少数の権力者の欲求のなすがままになる”ことを保証する、とエラスムスは書いている。

1990年代のボスニアはその一つだが、行なわれている大虐殺を止めさせる為に、武力を使用すべき場合が存在する。これはホロコーストの教訓だ。大虐殺を止める能力を持っているのに止めない場合、人は非難に値する。この理由から、カンボジアやルワンダでの大虐殺について、我々は非難に値する。しかし“人道的介入主義者”は、先制戦争と帝国の拡張の主張を正当化する為、大虐殺に干渉するという、この道徳的要請を歪曲している。サダム・フセインはクルド人やシーア派教徒の大虐殺作戦を遂行したが、汚れた事実は、そうした作戦が行なわれていた間、アメリカはバグダッドを支援したり、見て見ぬふりをしていたのだ。ワシントンが戦争を望み、何万人ものクルド人やシーア派教徒の亡骸が共同墓地で朽ちた後になって、我々は突如人権という崇高な言葉で話し始めたのだ。

こうした“人道的介入主義者”は、最初アメリカ先住民に対し、やがてフィリピンに輸出され、そして後にベトナム等の国々へと解き放たれたアメリカ自身の大虐殺行為を故意に無視する。広島と長崎への原爆攻撃を踏まえてすら、我々自身の悪を行なう能力を、連中は認めようとはしない。グアテマラや東チモールで、我々が支援した大虐殺や、先制戦争という犯罪については、彼等は本や論文中で語らない。彼等はイラク人やアフガニスタン人に対して我々が与えた恐怖や苦難を最小化し、恩恵を誇張したり、でっちあげたりした。我々の名で行なわれた延々と続く残虐行為が、自らの価値観を他者に押しつける権利を持った善の為の力というアメリカ合州国の理想を挫折させる。連中によるアメリカの力の神格化を、醜い真実が粉砕する。

ノッセルは、1月に辞任するまで、アムネスティー・インターナショナルUSAを率いていた、論議を呼んだ一年の間、この組織による、アフガニスタンでのNATOの戦争を支持するキャンペーンを監督していたのだ。彼女は、この組織がバス停に“アフガニスタン女性と少女に人権を-NATOは進歩を続けよ”という広告を掲示していた時期、アムネスティー・インターナショナルUSAを運営していたのだ。ノッセル任期中に、国務省幹部や政治家達と共に、マデレーヌ・オルブライトが、アムネスティー・インターナショナル女性フォーラムで講演するよう招かれた。ノッセルは、イラクでの方針を継続するよう民主党員に要請し、イラクで失敗すれば、“ベトナム後や、モガディシオ後の後遺症のようなもの”を解き放ちかねず、嘆かわしいことに“アメリカ大衆が武力の使用を強く留保する時代の到来を告げることになろう”と警告した。彼女は国務省幹部として、パレスチナ人に対する戦争犯罪で、イスラエルを告発したゴールドストーン報告書の信用を傷つけるべく働いた。国連人権理事会に出席する代表として、彼女は“我々のリストのトップは、イスラエルの擁護と、人権理事会でのイスラエルの権利の公正な扱い”だと語っていた。パレスチナ人については一言もない。彼女は、シリアやリビア等の国々における武装介入の拡大を提唱した。彼女は、イランが核濃縮計画を中止しないのであれば、対イラン軍事攻撃をすべきだと主張していた。ワシントン・クオータリーの“民主党員の戦いの賛歌”という題の論文で彼女は書いている。“民主党員は、敵対する連中と全く同様、現実的と見なされなければならない。民主党を‘平和の党’として再生させるのは、政治的行き詰まりだ。”“戦争や、戦争状態に近い環境において、大衆は、そうでない場合であれば受け入れられないような、より大胆で、執拗で、より強硬で、毅然として攻撃的な指導者を求めるものだ”と彼女は続けている。2004年のフォーリン・アフェアーズの論文“スマート・パワー:リベラルな国際主義を取り戻す”の中で彼女は書いている。“我々は自らを、より弱くではなく、より強くするようなやり方で、我々の武力を用いる必要がある”。驚くほどの見解ではないが、人権活動家には忌み嫌われるはずのものだ。彼女はさらにこう発言している。“アメリカの目標を代表して、他の人々をも参加させることで、アメリカの利益は推進される”。もちろん、それが彼女がすぐさまアムネスティー・インターナショナルでしたことだ。彼女の“スマート・パワー”理論は、国家の狙いを推進する為、一層むき出しな生の軍事力という強制力と共に、様々な手段や戦術、例えば国際連合や人権団体を活用し、世界中で、その意志を及ぼすよう、アメリカに要求している。これは新しくも、独自の考え方でもないが、ジョージ・W・ブッシュのばかさ加減に対して掲げられた場合、思慮深く見えたのだろうと思う。ブラッドリー・マニングを含むアメリカ人の反体制派の窮状は、ノッセルには関心がなく、どうやら、今やPENにとっても関心事ではない。

一年前、彼女がアムネスティー・インターナショナルUSAの事務局長になった際、ノッセルの過去とタカ派イデオロギーを、コリーン・ロウリーとアン・ライトが、初めて明らかにしてくれた。政府内外の“人道的介入主義者”は、人権を守る仕事と、アメリカ帝国主義権力の推進との違いを全く認識していないと、ロウリーとライトは、正しく書いている。ノッセルは“上司の大統領や国務長官が、ブッシュ政権で、パキスタンやアフガニスタンでの無人機攻撃の様な戦争犯罪を遂行した連中や、拷問者や拷問者達、彼等を支持した連中を告訴からかばう中、政権幹部の一員であったことと、現在の自分の役割との間に何の矛盾も感じていない”と二人は書いている (この件について詳細は、ロウリーの記事“戦争を‘スマート・パワー’として売り込む”を参照のこと)

これがアメリカ合州国における人権運動家の履歴書だろうか? 人権団体というものは、国家の計略による犠牲者を守るのではなく、国家の計略を推進することを期待されているのだろうか?“人道的介入主義者”の理想は、人権と両立するのだろうか? 作家や芸術家は、あらゆる反体制派の人々の窮状や、表現の自由や、国家権力の不行跡に、もはや関心はないのだろうか? 我々はエリートの傀儡に過ぎないのだろうか? 我々は、あらゆる形の権力から、永久に、自発的に疎遠でいるはずだったのではなかろうか? 人権という視点からして、権力は問題ではないのだろうか?

人権ビジネスというのは、特定の人々にとっての人権であり、他の人々にとっての人権ではない。ヒューマン・ライツ・ウォッチも、アムネスティー・インターナショナルも、人権の為の医師団も、ピース・アライアンスも、シチズンズ・フォー・グローバル・ソリューションズも、人権を推進する為、アメリカ軍事力を展開しうる、という偽りの教義を受け入れていることで、皆罪を犯している。まるで、先制攻撃戦争が最も粗野な人権侵害の一つではないかのように、こうした組織のどれ一つとして、イラクやアフガニスタン侵略に反対して立ち上がっていない。

多くの人々にとって、“人道的介入”という教義は、“正しい”犠牲者に対して涙を流すことを意味している。そういう教義の支持者は、ダルフールの犠牲者については、議員に働きかけるが、イラクやアフガニスタンやパキスタンやイエメンやガザの犠牲者は無視する。彼等はタリバンの残忍さは非難するが、海外流刑地や、アメリカ無人機が横行する交戦地帯で、アメリカが行なっている残虐行為は無視する。彼等は、インドやタイの売春宿における少女達の奴隷状態は非難するが、アメリカの農場労働者達の奴隷状態や刑務所については非難しない。彼等はアラブ世界で迫害されている反体制活動家に対しては正義を求めるのに、ブラッドリー・マニングについては一言も発言しない。

PENインターナショナル初のアメリカ人理事長だった劇作家で熾烈な反戦評論家アーサー・ミラーは、マッカーシズムに対して、ひるむことなく立ち上がり、ブラックリストに載せられた。彼はベトナム戦争を糾弾した。彼はイラク侵略を非難した。ミラーの抵抗と品格を具現化していたPENは本物の大切な事を支持していた。アメリカがイラクを爆撃して、降伏させ、侵略した際、戦争を一種の“大量殺人”と呼んだミラーは憤然と述べた。“自らこれほど多くの国際条約に背を向け、破りながら、アメリカ政府がジュネーブ条約を引っ張りだすなどお笑いだ。”

ノッセルの様な政府の提灯持ちを、人権活動家として持ち上げ、ミラーの様な意見を隅に追いやるのは、我々の時代の病の一部だ。もしPENが故アーサー・ミラーの強烈な道徳心を取り戻し、人権とは、脆弱で、迫害され、不当に侮蔑されている人々全員を擁護することであるのを思い出すなら、私は喜んで再加入しよう。

権力のあらゆる制度が問題だ。そして、権力によって沈黙させられ、押しつぶされる人々に代わって、あらゆる権力中枢に、公然と反抗することが、芸術家、作家や知識人の役割だ。これはつまり、聖書の表現で言えば、よそものを受け入れるということだ。それは、政府に対する協力者でなく、常に反対者であり続けることを意味する。それは永遠ののけものであり続けることを意味する。本当に人権の為に戦っている人々はこれを知っている。

“仮面に、ファシズムや、民主主義、あるいはプロレタリアート独裁など、どのようなレッテルを貼ろうとも、我々の主要な敵は、支配組織だ。官僚、警察、軍隊 … ”シモーヌ・ヴェイユは書いている。“状況のいかんを問わず、最悪の裏切りは、常に、この支配組織に我々を従属させることであり、それに奉仕し、我々自身、あるいは他の人々のあらゆる人間的価値観を蹂躙することだ。”

Truthdigに毎週月曜、コラム記事を寄稿しているChris Hedgesは、中米、中東、アフリカやバルカン諸国で、ほぼ二十年間海外特派員として過ごした。彼は50ヶ国以上から報道しており、クリスチャン・サイエンス・モニター、ナショナル・パブリック・ラジオ、ダラス・モーニング・ニューズ、ニューヨーク・タイムズで働いた。ニューヨーク・タイムズでは、15年間海外特派員をつとめた。

Copyright 2013 Truthdig

記事原文のurl:www.truthdig.com/report/item/the_hijacking_of_human_rights_20130407/

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都知事、一度の暴言でオリンピック招致の可能性を消滅させる大偉業をなしとげた。

続いて、大阪市長、沖縄米軍基地訪問時とインタビュー発言で、異様な人格を証明した。

大阪市長の発言、首相の発言や、それに対する宗主国からの批判を受けたもの。

国のトップ、二大都市のトップの異常さ、有権者の判断力と無関係なのだろうか?

「レンタカー代で女が買えたのに」と発言して辞任した太平洋軍司令官もいた。

異神の怪代表発言に、「ばかげている」米国防総省・報道担当者 しかし、そもそも外国で、現地住民が強く反対する中、侵略基地を維持し、兵士がばかげた犯罪をおかすことが、ばかげているだろう。

新聞には、ヘッジズのコラムが触れている人権団体の方の批判も載っていた。「発言は心的外傷後ストレス障害(PTSD)を抱えて生きている元慰安婦の方への拷問だ」

その記事の横に「9条ビラ配布・店舗前で反戦歌 という行動、陸自の調査目安を証言」 という見出しがある。このブログ、オンライン9条ビラにあたるのだろうか?

「ジャーナリスト同盟」通信 013年05月14日には、こういう記事がある。

本澤二郎の「日本の風景」(1298)<安倍・原発トルコ外交の正体>

この属国、憂慮すべきは、政権ハイジャック?

宗主国走狗エセ人権運動ではない、自前の活動家もジャーナリズムも存在している。

2013/05/07 ヘイトスピーチで院内集会「『表現の自由』の国際基準、”他人の人権を侵害することは許されない”」 ~差別主義者・排外主義者によるデモに抗議する 第2回国会集会

2013/04/13 【岡山】福島原発事故の本当の被害の大きさは 原子力発電が生み出す「死の灰」 ~人権と文化のつどい 小出裕章氏 講演「原子力発電の現実 ~福島の事故から~」

「汚染や健康影響への過少評価はやめ、被曝回避に関する人権を求める」専門家らが現状の放射能対策を糾弾 〜2013/03/11 「市民と科学者による内部被曝問題研究会」インタビュー

岩上安身責任編集 – IWJ Independent Web Journal

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