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2013年5月 8日 (水)

経済マスコミ-虚偽情報宣伝装置

Paul Craig Roberts

2013年5月5日

読者の皆様: もし“あなた方が希望だ”(すぐ下の記事)をお読みでなければ、読みいただいた上で、ご寄付をお願いしたい。先週金曜の雇用数について、読者からお問い合わせを頂いた為、四半期毎の寄付のお願いから新規記事更新までの間隔を短くせざるをえなくなった。なお、How The Economy Was Lostの第2刷があるのかとお尋ねの方々には、本はカウンターパンチのウェブサイトで、電子版が購入可能なことをお知らせした。The Failure of Laissez Faire Capitalismの印刷版が欲しいとおっしゃる読者の方々には、間もなく本が刊行される予定だ。政府の嘘が益々素早く、一層激しくなっている為、私は更に注意を払わざるをえなくなっている。お送りになったメールに返事がない場合、是非その点にご留意願いたい。

経済マスコミ: 虚偽情報宣伝装置

Paul Craig Roberts

ゴールデン・リターンズ・キャピタルのデーヴ・クランツラーは、5月3日に労働統計局が発表した4月の就業者統計は“作り話”だと発言している。http://truthingold.blogspot.com/2013/05/the-governments-non-farm-payroll-report.html

統計学者ジョン・ウイリアムズ(shadowstats.com)は労働者統計も失業率も“たわごと”だと言っている。

私はこの両方に同意する。しかし経済マスコミが事実を報じるなどと期待されぬよう。

労働統計局報告をざっと見れば、ご自分の結論をお出しになれよう。http://www.bls.gov/news.release/empsit.t17.htm

労働統計局報告は、民間部門が4月に185,000件のサービス業雇用を生み出したと言う。たとえこの報告が本当だとしても、人口が増加する中、現在の失業率を維持するだけでも、毎月約127,000件の新規雇用が必要なので、失業率にはほとんど影響をおよぼさない。http://www.economicpopulist.org/content/how-many-jobs-are-needed-keep-population-growth

だが労働統計局報告は本当なのだろうか?

雇用が具体化したとされている分野を検討することで、この疑問の答えが出せる。小売業では、29,300件で、総合スーパーがその数値の約半数を占める。専門的サービス、ビジネス・サービスでは、73,000件で、人材派遣サービスがこの数値の42パーセントを占める。医療および社会福祉では、26,100件で、外来医療サービスが、その数値の52パーセントを、宿泊および飲食サービスの45,100件では、ウエイトレスとバーテンダーが雇用の84パーセントを占め、取り立て人については、8,600件の雇用が生み出された。

もう結構。連邦政府は8,000の雇用を失い、郵便業務は4,900の雇用を失い、州政府は1,000件の雇用を失い、地方自治体は2,000の雇用を失った。

製造業では新規雇用はゼロだった。

借金で首が回らず、お金に困っている消費者を考えれば、 取り立て人の雇用数は正しい可能性が高い。しかし実際の小売り売り上げが減っている時に、一体なぜ小売業で、29,000件もの新規雇用があるのだろう? IBMのような大手コンサルタント会社が契約社員の勤務時間を削減している時に、一体なぜ新規の専門的サービス雇用があるのだろう?消費者の可処分所得がこれほど少ない時に、一体なぜ一カ月に38,000人のウエイトレスとバーテンダーが雇用されるのだろう?

労働統計局は、4月に建設業で、6,000の雇用が失われたことも報じているのに留意されたい。ところが経済マスコミは“住宅市場回復”報道に溢れている。

必死で雇用を求めている地域社会が、その地域の表流水や地下水の破壊を無視するよう、水圧破砕業界が、こうした何千もの水圧破砕分野での雇用を宣伝するのだ。労働統計局の報告は、通常の石油・ガス採取を含む、石油・ガス採取部門の雇用は、2月が最大だったことを示している。4月に、わずか900件の雇用が生み出されたが、破壊された帯水層や表流水からすれば、わずかな見返りだ。水圧破砕を行なっている地域に暮らす人々は、シャワーを浴びる時には、水の中のメタンで窒息するのを避けるため窓を開けるよう、また、もし水が本当に燃えても驚かないよう警告を受けている。水圧破砕は、その膨大な外部費用ゆえに、経済的損失を生じているのは確実だ。

アメリカでは、あらゆるものが金儲け用の宣伝だ。連中はどんな嘘でも売りこむのだ。そして、もちろん、国民のほとんどが、あらゆる嘘に騙されることが期待できる。

人口増に応じ、同じ率を維持するのに必要な値の69パーセントに過ぎない、わずか88,000件の新規雇用という労働統計局の3月の労働者統計は、オバマ政権による景気回復宣伝やら、“回復”に対する株式市場の信頼を傷つけたというのが私の考えだ。洗脳されたアメリカ人でさえ、“雇用なき景気回復”が矛盾した表現だということは学習済みだ。そこで労働統計局を監督している政治任用官に、以後、不面目名事態を避けるようにという指示が出された。しかしながら、かつてのソ連の報道機関同様、専門スタッフが、それを台無しにするような形で、要求された報告を出したのだ。製造業の雇用が9,000件減ったと報じられており、小売店が廃業しつつあるのに、一体なぜ、小売業や専門的サービスや、ビジネス・サービスで、100,000の新規雇用が必要なのだろう?

ジョン・ウイリアムズが失業率報告のごまかしを説明している。報じられている7.5パーセントという率は、景気回復によって生み出された新規雇用の産物ではない。仕事が見つけられず、仕事探しをあきらめ、労働人口として数えられなくなった就業意欲喪失者の結果なのだ。就業意欲喪失者が失業者として数えられた場合の本当の失業率は23パーセントだ。労働力参加率の崩壊に、この真実を見ることができる。労働力参加率の崩壊は、私が若いころの、働き手が一人の世帯が普通だった時代の繁栄に戻った結果ではない。仕事を見つけることができずに、もはや労働力として数えられなくなった何百万人ものアメリカ人がいる結果だ。

政府はイラクの大量破壊兵器について嘘をついたのと同様に、今シリアの大量破壊兵器についての嘘を繰り返している、政府は雇用と失業率について嘘をついている。政府が嘘をつかない話題はあるのだろうか?

2009年6月以来、景気回復が継続しているとお考えの方ならどなたでも、下記の図を見ることで、その妄想を治癒できる。

http://www.shadowstats.com/imgs/2013/839/image008.gif?vcode=a30565410417421b

注: 4月の労働時間の削減は、500,000件の雇用の喪失に等しい量だ。こちらを参照。http://www.marketwatch.com/story/dark-side-to-jobs-report-big-drop-in-hours-worked-2013-05-03

Paul Craig  Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the WestHOW AMERICA WAS LOSTThe Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/

記事原文のurl:www.paulcraigroberts.org/2013/05/05/the-financial-press-a-disinformation-machine-paul-craig-roberts/
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「東証、一時1万4100円台 4年11カ月ぶり 米株高で上昇」という新聞見出し。この記事の題名、そのまま、ぴったりあてはまりそうだ。アホノミックス、はやし立てて、うかれさせ、自民、みんな、維新に大量得票させるためのめくらまし。多数派を確保さえすれば何でもできる。原発再稼働、TPP、増税、宗主国押しつけ新憲法等々、地獄行きメニューは無限にあろう。一方「北朝鮮、ミサイル撤収」。今にも発射しそうとあおったのは誰だ。散々脅しておいて、ネズミ一匹。

日本では、あらゆるものが金儲け用の宣伝だ。連中はどんな嘘でも売りこむのだ。そして、もちろん、国民のほとんどが、あらゆる嘘に騙されることが期待できる。

株価上昇、支配階級にはめでたい。同じ筆者の「7%の回復」にある通り、庶民の貯金を支配階級に移転するだけの仕組み。庶民にとって、洗脳以外は無意味な見出し。

連休前、同じ新聞に映画『セデック・バレ』を紹介する記事があった。巧みな記事に興味をそそられた。欧米映画のような題名を見ていると内容は想像がつかないが「賽徳克・巴莱」のカタカナ読みで、台湾の「霧社事件」を題材にした台湾の映画。日本・韓国のスタッフも加わった大作。

BS世界のドキュメンタリー『オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史12』同様、必見の作品。二部にわたる長い映画なので、体調の良いときにどうぞ。

1930年台湾での史実を基にした映画。理不尽な扱いに怒って蜂起した先住民部族。日本軍は別部族をけしかけて、闘わせる。村を焼き払い、集中砲撃、飛行機から機銃掃射・爆弾投下。びらん性毒ガス弾さえ投下。彼らの風習ゆえに、殺戮シーンは強烈。森の場面だけ見ていると『アバター』を連想するが、子供の頃に見た「騎兵隊とアメリカ・インディアン映画」も思い出した。そして反政府派がサリン?を使用したといわれるシリアを。

警察官として勤務する先住民ダッキスに、頭目モーナ・ルダオが尋ねる。「死んだら靖国に行くのか、先祖のもとに行くのか?」花岡(ダッキスの日本名)は答えない。

せりふが史実かどうか知らないが、この属国国民にとって極めて身近な主題。宗主国の侵略戦争で、アーリントンに行くのか、先祖のもとに行くのか。

今日の大本営広報部、先日のシーファー元駐日アメリカ大使発言のうち、靖国参拝を擁護した部分には触れず、「慰安婦問題・河野談話見直し批判の部分」に対する官房長官見発表の様子を映していた。両国首脳部間で、「靖国に」決まっているのだろう。

ともあれ、属国では、この文章、タイトル部分だけ多少変える必要がありそうだ。

経済マスコミ-虚偽情報宣伝装置

政府が嘘をつかない話題はあるのだろうか?

という、ポール・クレイグ・ロバーツ氏の言葉、ハワード・ジン「歴史の効用とテロリズムに対する戦争」を語るを思い出させる。講演の長い翻訳だが、お時間がある時に、是非お読みいただきたい。

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