二都物語
wsws.org
2013年4月23日
4月15日のボストン爆破は依然アメリカ・マスコミの中心だ。ボストン毎年恒例のマラソンのゴール付近における二度の爆破で三人が亡くなり、170人以上が負傷し、重傷者は多い。
しかし、より恐ろしく破壊的な爆発、4月17日のテキサス州の田舎町ウエストのウエスト・ファーティライザー社工場爆発は、ニュースから消滅しているも同然だ。この出来事、どう見ても起こるべくして起きた労働災害で、14人が死亡し、中には重傷者もいる200人の負傷者がでた。この爆発は、事実上、工場に隣接した住宅地の5ブロックを破壊し、50軒以上の家を押しつぶし、アパートを倒壊し、中学校と介護施設をひどく損壊させた。
ボストン大都市圏におしつけられた事実上の非常事態、前例のない、軍・警察によるアメリカの都市封鎖の口実は、住民保護の為には必要だったことになっている。全て、たった一人の19歳の若者を探し出すためだと言うのに、何千人もの兵士や警官の動員や、装甲車やブラックホーク・ヘリコプターの配備に疑念を持つのでなく、ひたすら恐怖を駆り立てたり、令状無しの違法な一軒一軒の捜索を応援したりすることを含め、警察国家支配の行為を称賛すべく、マスコミはできる限りのことを行い、今もそれを続けている。
ボストン・マラソン爆破事件は犯罪行為であり、加害者は起訴され、法の裁きを受けるべきだ。だが政治・マスコミ支配層内では、テキサス州ウエストで猛威を振るった爆発に対して責任がある連中に、法の裁きを受けさせようと言う気は皆無のようだ。この悲劇は既に、毎年約400万人の労働者が仕事中に負傷していて、2011年に、4,600人以上が仕事に関連した負傷で亡くなった国における、単なるもう一件の労働災害として扱われている。
火曜日、ホワイト・ハウスは、木曜日にオバマ大統領が、近くのテキサス州ウェーコのベイラー大学で行なわれる肥料工場爆発犠牲者追悼式典で演説すると発表した。大統領は既に、水曜夜、ダラスで資金集めのイベントを行ない、木曜日、ダラスでのジョージ・W・ブッシュ図書館落成式に出席する予定だったので、タイミング的に好都合だった。
安全・衛生規則を無視した企業や、規則を施行する資源も意志も欠如している政府機関のおかげでおきた労働者の死や重傷に対するマスコミと政治家の冷淡さが、ボストン住民の安全に対する連中の懸念なるものの欺瞞を浮き彫りにしている。
オバマは、ベイラーに現れテキサス州ウエストの工場爆発の犠牲者にそら涙を流すまさに同じ日に、連邦の安全・衛生機関を骨抜きにし、“任意自己コンプライアンス”政策、つまり、従業員の生命や四肢のコストなどどうあれ、どうぞ規制を無視してくださいと所有者に言うのも同然のものを導入したホワイト・ハウス前任者を讃えるのだ。
オバマ自身も、企業の利益を増大すべく、労働安全衛生の実施を阻害する、十年にわたる超党派政策を継続している。彼の新予算は、労働安全衛生局が行なっていたコンプライアンス支援プログラムの削減を要求している。更に深刻な影響を与えるのが、3月にオバマが署名して法律となった歳出強制削減の結果で、衛生局予算は8パーセント削減される。
労働安全衛生局や、化学品安全性危険性調査委員会等の他の連邦機関は救いようがない程、人手不足だ。労働安全衛生局と州の機関に、1億3000万人のアメリカ人労働者に対する安全施策施行に責任を負う査察官はわずか2,200人しかいない。1977年、労働安全衛生局には、百万人の労働者に対して、37人の査察官がいた。現在は22人しかおらず、40パーセント以上の削減だ。その結果、労働安全衛生局は、労働現場の定期検査をあきらめざるをえなくなった。
時限爆弾になりかねない、ウエスト・ファーティライザー工場などの施設は、年中安全規則に違反しているのに、査察されなかったり、時たま出頭命令を出されて、 形だけの罰金を課されたりするだけだ。無秩序に広がる肥料倉庫や小売り店は、1995年、オクラホマ・シティーで、連邦ビルを爆破するのに、ティモシー・マクヴェインが使った材料、爆発性の硝酸アンモニウムを244トンも保有している。つまり国土安全保障省による監督が必要とされる量の1,350倍だ。工場は約50トンの揮発性無水アンモニアも保管している。
過去十年、工場は安全違反や許可無し操業で、罰金を課されてきた。工場には自動停止装置は無く、防火壁も無く、危機管理計画もなかった。一番最近、労働安全衛生局が工場を査察したのは1985年で、その際衛生局は“重大な違反”を発見し、所有者に30ドルの罰金を課していた。
業界団体ファーティライザー・インスティテュートによれば、全米にはこのような肥料小売りセンターが約6,000ある。
ボストンでの出来事と、テキサス州ウエストでの出来事に対する、国とマスコミの態度の大きな違いには、経済的・政治的両方の理由がある。経済的に、国は私有財産と、産業支配の保護に専念しており、労働条件を決定し、利益を最大化するという所有者の“権利”を侵害するあらゆる施策に反対している。
ボストンで、支配階級は、政治的に、国民大衆を混乱させ、労働者階級の生活水準に対する攻撃から注意を逸らし、軍国主義と“対テロ戦争”を装って遂行する戦争政策を正当化するため、恐怖や懸念の種をまくという計画を実行している。
次の金融危機と、大規模な社会闘争を引き起こしかねない、増大しつつある社会不満と、グローバル金融市場の不安定な状態の恐怖に、支配階級は取り付かれている。連中は、独裁的な支配を計画しており、そのような事態に対する準備として、先週ボストンで実験をしたのだ。
Barry Grey
記事原文のurl:www.wsws.org/en/articles/2013/04/23/pers-a23.html
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『二都物語』 といえば、フランス革命を背景とした、有名なチャールズ・ディケンズの小説がある。この原作『二都物語』を基に、色々な『二都物語』が語られる。
この記事とまさに同じ人物、『二都物語:テヘランとテグシガルパ』を書いている。
『現代の二都物語』は、アナリー・サクセニアンによるハイテク企業勃興と大企業敗退の背後にある企業精神を分析した名著。
東海岸の歴史を誇る大企業と西海岸新興ハイテク企業文化の比較、文字通り目からうろこ感覚で刊行直後に読んだ。日本企業、日本文化、東海岸の歴史だけが自慢の硬直した大企業そのものだと思ったものだ。西海岸新興ハイテク企業に完敗するだろうと。
国家的に宗主国に完敗したこの国、宗主国金融資本、大企業が直接支配できる属国に転換しようとしている。西武秩父鉄道を廃止させようとしているサーベラスの会長、元副大統領。「われわれはハゲタカではない。」とおっしゃっていた。言論は自由だ。
交通事故で人を死傷させると罪に問われるが、放射能を全国に振りまき、はたまたネズミで冷却に再三支障を来し、放射能汚染水がだだ漏れでも、誰も責任を問われない。実に美しい国だ。
世界的?企業が、賃金を世界均一にするという。貧乏人だが、あの会社の衣類もう買わない。
労働者を更に首にしやすくする制度もまもなく実現する。
「首になった人が、より成長する業界に移動する」などという妄想、宗主国で起きただろうか?政治家もマスコミも産業も、属国のそれは、宗主国のそれを模倣する。
- 宗主国で起きているひどいことは、属国でも起きる。
- 宗主国で起きない良いことは、属国でも起きない。
次の金融危機を引き起こしかねないグローバル金融市場の不安定な状態の恐怖に、支配階級は取り付かれている。それでも、大規模な社会闘争が起こる可能性皆無の属国支配者連中は、独裁的な支配を推進しても、大規模な社会闘争に対する準備は全く不要なので、先週のボストンのような実験は不要だ。
北朝鮮のミサイル発射予定の報道にあわせて、効果皆無の対空ミサイル配備の様子をテレビでながすだけでよい。
消費税増税、売国TPP推進をしようが、原発再稼働をすすめようが、庶民を宗主国侵略戦争の鉄砲玉にする集団的自衛権推進、憲法9条破壊推進をしようが、北朝鮮と中国と韓国の脅威をあおるだけですむこの国。支配者にとっては、天国のような属国。
自民、みんな、維新、民主、公明が絶対多数派となり、「秘密保全法」を導入し、憲法96条を変えることで、国民の自由な動きなど、簡単に締めつけられる。間もなく美しい治安維持法国家再来。
ジャパン・ハンドラー本山、CSISでの副総理講演、質疑応答ビデオを瞥見。CSISでの総理演説もこうだっただろう。規制緩和を嬉しそうに語っていた。先日浅草観音境内で見たサルの太郎?の名演技を連想した。副総理は、れっきとした大資本家だから、規制緩和は宗主国・属国支配層の為でもあり、彼自身の為でもあるのだから矛盾はない。しわ寄せが庶民にくるだけ。彼等に票を投じるのは庶民、という不思議。
『正しい情報を探すブログ』麻生副首相がトンデモ発言!!麻生氏「水道は全て民営化します」 日本国民の公共財産を売り渡す連中
CSISでの副総理講演、4月28日に主権回復を祝う内容からは程遠いと素人は思う。主権喪失を嘆く式典であれば、もちろん小生も参列したい。
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