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2013年4月19日 (金)

知識人の裏切り

2013年3月31日
TruthDig.com

Chris Hedges

イラク戦争開始10周年を迎えるにあたって、パワー・エリートによる歴史の書き換えは、痛々しい程、明白だった。戦争に反対していなかったのに、反対したと主張する者もいる。“ブッシュに役立った阿呆ども”の中には、得られた情報を信用して行動したに過ぎないと主張する連中がいる。彼等は言う。もし今知っていることを、当時知っていたら、違う行動をしただろう。これはもちろん嘘だ。戦争推進者連中、特にヒラリー・クリントン、チャック・シュマー、アル・フランケンやジョン・ケリー、ビル・ケラーを含む“リベラルなタカ派”は、マイケル・イグナティエフ、ニコラス・クリストフ、ディヴィッド・レムニク、ファリード・ザカリア、マイケル・ウォルツァー、ポール・バーマン、トーマス・フリードマン、ジョージ・パッカー、アン-マリー・スローター、カナン・マキヤや故クリストファー・ヒッチンスらを含む学者、作家やジャーナリストと一緒に、彼等がいつもしてきたことをしたのだ。自己防衛行為をしたのだ。戦争に反対すれば、もはや出世は望めない。そして彼等はそれが分かっているのだ。

しかしながら、こうした戦争擁護者達は、戦争応援団員として活動しただけではない。多くの場合、イラク侵略への呼びかけに疑問を呈するあらゆる人々を、彼等はあざ笑い、信用を傷つけようとした。クリストフは、ニューヨーク・タイムズで、マイケル・ムーア監督を陰謀論者として攻撃し、反戦の主張は、彼が“政治的汚水溜め”と呼んでいるものを二極化させるに過ぎないと書いた。 ヒッチンスは、イラク攻撃に反対する連中は“サダム・フセインが悪者だとは全く考えていないのだ”と語っていた。典型的な反戦活動家は“あきれるような元ヒッピーか、がなり立てるネオ・スターリン主義者だ”と彼は言った。こうしたおべっか使い連中の、気持ちのこもらない十年後の謝罪は、戦争に向けて彼等が演じた最も邪悪で基本的な役割、つまり国民的論議を妨げたことには決まって触れずに誤魔化している。堂々と戦争反対論を主張した我々は、右翼“愛国者”と、リベラルな戦争擁護者による猛攻撃にあって、のけものにされた。私の場合、アラビア語を話せても関係なかった。特派員として、イラクでの数カ月を含め、7年、中東で過ごした経験があることも関係なかった。戦争を実体験で知っていることも関係なかった。私や他の戦争反対論者達が行なった批判が、どれ程しっかり事実と経験に基づいていても、自らの“愛国心”と国家安全保障上の“現実主義”を臆病にも証明したがっているリベラル・エリートによって、軽蔑の対象にされたのだ。リベラル・クラスは、あらゆる戦争批判者に対して、狂気じみた理不尽な憎悪をあおった。私達の多くは、殺害するという脅しを受け、仕事を失った。私の場合はニューヨーク・タイムズの仕事を。こうしたリベラル派の戦争挑発者は、10年後も、自らの道徳的破綻を全く分かっておらず、嫌になるほど信心深そうなままでいる。連中の手は、何十万人もの無辜の人々の血で濡れている。

パワー・エリート、特にリベラル・エリートは、権力や、出世、財団の助成金、褒賞、終身地位保証された教授職、コラム執筆、新著の契約、テレビ出演、たっぷりの講演料や、社会的地位の為なら、いつでも進んで誠実さと真実を犠牲にする用意があるのだ。彼等は何を言うべきかを知っている。彼等はどのイデオロギーに仕えるべきかをしっている。連中は、どのような嘘を語るべきかを知っている。最大の嘘は、安全無難とは言えない問題では、彼等は道徳的な立場をとることだ。連中はこのゲームを長いことやってきたのだ。彼等は、生き抜く上で必要になり次第、いつでもまた我々を裏切るだろう。

レスリー・ゲルブは、イラク侵略後に、フォーリン・アフェアーズ誌で、それを詳しく説明している。

“私が最初戦争を支持したのは、外交政策コミュニティー内部の不幸な傾向の象徴だった。つまり、政治的、専門的的な信ぴょう性を維持する為、戦争を支持するという傾向と誘因の”と彼は書いている。“我々‘専門家’はマスコミを‘完成させ’ながら、自ら改めるべきことは多々ある。我々は独立した考え方に対するコミットメントを倍加し、往々誤っている常識を吹き飛ばす様な意見や事実を、排斥するのでなく、受け入れなければならない。民主主義は、まさにそれを求めている。”

批判を恐れる、パワー・エリートの臆病さは、特にパレスチナ人の窮状に関して顕著だ。実際、リベラル階級は、イスラエルの戦争犯罪を非難する誠実さと一貫性と勇気を持ったノーム・チョムスキーやノーマン・フィンケルスタイン等の人々を隅に追いやり、信用を落とすのに利用されている。そしてリベラル階級は、議論を潰すという汚い役割に対して報酬を得ている。

“正しいと知りながらも、そういう立場はとらないと決めた、困難で道義に基づく立場に背を向け、忌避するように仕向ける、知識人の心の習慣以上に非難されるべきものはない、と私は思う”と故エドワード・サイードは書いている。“人は余りに政治的だとは見られたくないのだ。物議を醸すと見られるのを恐れているのだ。バランスがとれていて、客観的で、中道だという評判を維持したいと願っているのだ。内心、再度質問されたい、相談されたい、役員や高名な委員会の委員になりたい、信頼できる主流派の一人であり続けたい、いつか名誉学位や大きな賞を得たい、大使にさえなれるかも知れない、と願っているのだ。”

“知識人にとって、こうした心の習慣は、ずば抜けた腐敗だ”サイードは続けて言う。“もし、本性を変えたり、無力化したり、最終的には、情熱的な知識人の生命を殺せたりするものが何かあるとすれば、それは、そのような習慣の国際化だ。あらゆる現代的問題の中で最も大変なものの一つパレスチナで、そうしたものに私は個人的に出くわした。現代史における最大の不法行為の一つについて声を上げることへの恐怖が、真実を知っていて、真実に仕えるべき立場にある多くの人々を妨げ、理性を奪い、沈黙させる。パレスチナ人の権利や自決を率直に支持する人々が受ける嫌がらせや中傷にもかかわらず、恐れず、思いやりのある知識人によって、真実は語られ、表現されて当然なのだ。”

ジュリアン・バンダは、1927年の著書“知識人の裏切り”フランス語原題“La Trahison des Clercs”で、人は実際目的や、物質的利益を求めない時にのみ、良心や誤りを正す役割を演じることができると主張している。自らの忠誠心を、権力や物質的利益といった実利的目的に譲った連中は、知的、道徳的に、自らを骨抜きにしているのだ。バンダは書いている。知識人というものは、かつては、人気のある思想を超越していると考えられていた。彼等は“全く公平無私な精神活動に対する執着の模範となり、こうした形の存在の至上の価値に対する信念を生み出した。”彼等は“人間のエゴイズムの対立に対する道徳家として”見なされてきた。彼等は“人類とか正義の名の下に、こうした情熱とは正反対の超越的、抽象的原理を採用するよう説いた。”こうした知識人が、世俗的権力者が“歴史全体を、憎悪と殺戮の喊声で満たす”のを阻止することに成功してきたとは言い難い。だが彼等は、少なくとも“世俗人が、そうした運動を礼賛し、その成就に努めることが偉大であると信ずるのは阻止した。”とバンダは認めている。要するに“人類は、2000年間、悪事をなしてきたが、善を敬ってきたと言えよう。この矛盾は人間の名誉であり、これが文明の入り込み得る隙間となったのだ。”バンダは主張している。しかし知識人が“政治的情熱の”利を図り始めると“民衆の現実主義の抑制役であった者が、今やその刺激役となったのだ。”これが、マイケル・ムーアが、イラク戦争に対し、ジョージ・W・ブッシュやディック・チェイニー以上に、ニューヨーク・タイムズやリベラルな体制派を非難したのが、なぜ正しかったかという理由だ。

卓越したマルクス主義経済学者で“成長の政治経済学”の著者ポール・バランは書いている。“真実を語りたいという欲求は、知識人たる唯一の条件だ。もう一つは、それがどのような方向に至ろうとも、合理的探求を進んで続け…心地良く、実入りのいい大勢順応に抵抗する勇気だ。”

正統とされる信念体系に断固として疑問を投げ掛ける人々、支配的な政治思想に疑問を投げ掛ける人々、権力というカルトに仕える為に自分の誠実さを犠牲にすることを拒否する人々は、社会の片隅に追いやられる。彼等は、何年も後になってから、自分達こそこうした道義をめぐる争いをしたのだと主張するような連中によって非難されたのだ。真実を維持し、知識人の質問を生かしておくのは、のけ者と反逆者達だけだ。彼等だけが国家犯罪を告発している。彼等だけが、迫害の犠牲者の声を伝えている。彼等だけが、答えるのが難しい質問を問うている。最も重要なのは、彼等が、権力者を、リベラル派の擁護者共々、連中の実態が何かを暴露していることだ。

2013 TruthDig.com

クリス・ヘッジズは、Truthdig.comに定期コラムを書いている。ヘッジズは、ハーバード大学神学部卒業で、ほぼ20年間、ニューヨーク・タイムズの海外特派員をつとめた。彼は以下の作品を含む多数の本を書いている。War Is A Force That Gives Us Meaning「戦争の甘い誘惑」、What Every Person Should Know About War「本当の戦争 すべての人が戦争について知っておくべき437の事柄」、および、American Fascists: The Christian Right and the War on America。 彼の最新著書は「Empire of Illusion: The End of Literacy and the Triumph of Spectacle」。

記事原文のurl:www.truthdig.com/report/item/the_treason_of_the_intellectuals_20130331/

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この文章、Paul Craig Robertsも彼のブログに転載した。

筆者、膨大な文献を引用することが多い。メタボ・オヤジは、到底ついてゆけない。ポール・バランならついてゆきたいが。

ジュリアン・バンダの『知識人の裏切り』、英語も十分にややこしい。フランス語原文を読む力は皆無だ。未來社刊の翻訳書を読んでも良くわからない。というわけで、ジュリアン・バンダの引用部分は絶版?の翻訳書(147ページ)による。

小選挙区制度推進、原発推進、壊憲推進、TPP推進をうたう連中しか、基本的には白痴製造電気箱には登場しない。そういう連中のことを、これまで知識人と思ったことはなく、「提灯持ち」「御用学者」と思っている。

最近、某著名経済評論家の講演を拝聴した際、「一体どこから、鋭い洞察をする情報を得ているのですか」という質問が聴衆からあった。

「テレビを見ないでください。」「自分がテレビに出るときも、テレビでは大事な一次情報は紹介させてもらえない。二次情報でなく、一次情報に注目してください。」と答えられた。

テレビを見ないでください。」というコメントが講演会最大の収穫だったなどとは言わないが、嬉しくなった。

ベストセラー本を書いておられるが、「その本を書くために、参考書は一冊も購入していない。全てネットで得た。」というのには驚いた。

ただし、ネット上で、ご本人について書かれた毀誉褒貶、絶対に読まないそうだ。「特に絶賛する意見は読みません。」「取り巻きはつくりたくなるものです、それでは自分が馬鹿になりますから」とおっしゃった。

与党議員勉強会などにも呼ばれる人気評論家氏、自説と真っ向から反対する政策については、決して妥協しない様子だった。そのうち、痴漢事件にあうのではと心配になった。

Japanレポート3.11』という昨年末刊行された興味深い本がある。日本に客員教授でこられた方のドイツ語原書の翻訳。こうした硬派なインタビューをされる著者、「裏切らない知識人」のお一人だろう。著者の知人の方?が書かれた紹介文章がある。

日本はどうなっていくのだろうか? あるオーストリア・ジャーナリストの問いかけ

Japanレポート3.11』目次の一部をご紹介しよう。

  • 憂いに満ちた人々の声 霞が関 31 脱原発テントに結集するベテラン達
  • 原子力村の犯罪 小出裕章さんとの対話 45 「原子力工学者小出裕章氏の真摯な発言」
  • ガイガー線量計との生活 南相馬 61 桜井市長にもインタビューしている。
  • 「非現実的」ではない「夢想家」 73 作家・村上春樹さんとの非常に現実的な会話 ただし、村上春樹氏の意向により、日本語の訳文は掲載できません。とある
  • 私達は元気でやっています!放浪する双葉町の人々 115「長い放浪の旅を続ける「エネルギーの町・双葉の人々」」あの井戸川氏の肉声をとらえている。
  • 「名取の歌う精神科医」震災のトラウマセラピー 131は、桑山紀彦医師の話。

電気箱と馬鹿にしているが時に見る。「星に昇った少年」の紹介を見た。
東日本大震災で被災した小学生の心のケアの一環として、子どもたちによる演劇「星に昇った少年」、2013年4月6日に名取市文化会館で開催されたもの。
これも桑山紀彦医師の活動の一環だった。

ドイツ人ジャーナリストによる本、目次以外に、不思議な表現がある。まえがき5ページ。

私は多くの人に出会った。何かしたいのだが、何をしたらよいか分からない人々にも。例えば、ベストセラー作家の村上春樹氏は、彼にとって稀有なインタビューに応じて下さったが、その中で、明快な立場を表明しつつ、日本の政治の現状にはなすすべを知らないと首を振る。*

文末に、*印があり、6ページの「まえがき」の末尾には

* 残念ながら、村上氏の希望で邦訳書である本書には、このインタビューは収録できなかった。

とある。ドイツ人には読まれてもかまわないが、日本人に読まれてまずい?明快な立場とは、一体どのような内容だったのだろう?彼の本、ほとんど読んだことがないが、これだけは興味津々。

トイツ巨大オンライン書店をみると、北斎の「「神奈川 沖浪裏」を表紙に使った原書が販売されていて、星四つと五つ。ドイツ語がわかれば、インタビュー部分を読むのだが。ネットでみると下記の言葉が引用されている。

Japan ist an einem Scheideweg angelangt. 日本は岐路に到達した。

一時品切れ、とあちこちの書店にビラがあった新刊本、拝読する予定皆無。

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コメント

エドワード・サイードが世を去って10年になります。『知識人とは何か』で表象された知識人の在り方を彼自身生涯掛けて貫いたと私は思っています。サイードやチョムスキーのような世界的に著名な知識人であっても投稿した言説が大手の新聞や雑誌の記事になることは少なかった、と言われています。権力の擁護者として体制化されたマスメディアに彼らの言説はさぞ不都合だったことでしょう。

代弁されざる弱き立場に置かれた人々の主張を切なる願いを取り上げて世に問うこと、マスメディアの都合で封殺された報道記事を視聴者の元へ届ける事、これらは知識人の役割だと私は思います。日本のマスメディアが報道しない海外記事を精力的に紹介して下さるブログ主様に私はいつも敬意を持っています。

佐賀・鍋島藩に伝わるアングラ書「葉隠」には次のような一節があります.
又学問者は,才智・弁口にて本体の臆病・欲心などを仕隠すもの也。人の見誤る所也。
(葉隠,聞書第一)
Furthermore, scholars and their like are men who with wit and speech hide their own true cowardice and greed. People often misjudge this.
(対訳 葉隠,p.72-73,講談社インターナショナル,2005年)

お疲れ様です!クリス・ヘッジズの秀逸なカラムをいつも日本訳により、読者に届けてくれてありがとうございます。ところで、クリス・ヘッジズの講演のひとつ「World as it is/世の有様」字幕化が今日終わったので、お知らせします。お時間がある時に、ご覧下さい。
http://www.youtube.com/playlist?list=PLXLD9I6RS_x5VHksWugExKtrqbKcmRS_A
彼の講演は全て字幕化したいぐらいですが、限られた時間のなか、今日の私たちの状況と講演内容の共通点が最も多く、示唆と文脈に富み、包括的な視点が得られるこの講演を選びました。
引き続き今後ともご活躍下さい。

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