« TPPの期待と潜在能力を完全に実現するには-シンガポールでのコーエン氏講演 | トップページ | 米国防長官のアフガニスタン訪問大失敗 »

2013年3月23日 (土)

TPPの狙いは日本に非関税施策を解除させること-議会調査局文書「日本のTPP参加可能性と、その意味あい」(8)はじめに-貿易促進権限法

はじめに

アメリカ合州国は、地域自由貿易協定(FTA)-環太平洋連携協定(TPP)を構築すべく、8ヶ国と交渉中である。交渉で、アメリカ合州国と他のTPPパートナー諸国は、“貿易と投資を自由化し、新たな、また伝統的な貿易問題と21世紀の課題に対処する包括的な次世代の地域協定”の構築を目指している。TPPパートナーは、協定がより広範なアジア太平洋地域FTA、時にアジア太平洋自由貿易地域(FTAAP)と呼ばれるものの構築に向けた構成要素ともなるように構想している。

議会はアメリカのTPP参加問題に対して、直接的な監督の役割を持っている。もしTPPがアメリカ合州国に適用されるのであれば、議会は法律制定を承認する必要がある。既に、議員の中には、日本がTPPに参加することを認めるべきか否か、またどのような条件で認めるかについて、議論に参加している人々もいる。プロセスが進行するにつれ、より多くの議員がそうする可能性がある。

オバマ政権は、あたかも貿易促進権限が施行中であるかのように、TPP交渉を進めてきた。政権は、これまでの貿易促進権限(TPA)、あるいはファースト・トラック権限の不可欠な一部である、議会との協議要求と通知期限を順守している。この慣行を維持するためには、オバマ政権は、議会両院に、TPPに関する日本との公式交渉(事前協議と対照のものとして)を開始する90日前に通知をする必要があろう。メキシコとカナダとに関しては、それぞれ2012年7月9日と7月10日に、政権は通知をした。

2011年末、長引き、遅れた内部での検討後、日本政府はTPP交渉に参加する可能性を検討することを決定した。野田佳彦首相は、2011年11月11日の記者会見で、“[日本は][2011年11月12-13日]ハワイ・ホノルルでのAPEC経済指導者会議”の機会に、TPP交渉参加に向けて、関係諸国と協議に入ると発表した。以来、日本は9ヶ国のTPPパートナーの各国と協議してきた。執筆時点で、日本はうち六カ国との協議を終えており、いずれも日本の参加を支持している。アメリカ合州国、オーストラリアと、ニュージーランドとの協議は継続中である。以下に述べる通り、TPP貿易交渉に参加するか否かの問題は、日本国内で非常に多くの注目と論議を招いた。参加への反対は、農業ロビー等の既得権益集団の中で特に強く、与党も最大野党も分裂している。

TPPは、オバマ政権の主要アメリカ貿易政策イニシアティブであり、地域の規則と規範形成において、より積極的な役割を演じることで、アメリカ外交政策の優先度を、アジア太平洋地域にに向け、“バランスを取り戻す”という取り組みの大黒柱だ。アジア第二で、世界第三位の規模の経済で、グローバル・サプライ・チェーンの重要なリンクとして、地域貿易取り決めとしてのTPPの威信と実行可能性にとって、日本の参加は極めて重要である。日本をとりこめば、実施された場合、TPPが対象とする、アメリカの貿易と外国投資の額を増大しよう。

日本にとって、TPP参加は、外国製品と投資家にとって、日本市場に対する未曾有のアクセスを与えることによって、日本の経済を変容させる可能性がある。また、長らく経済成長を阻害してきた構造的経済問題と取り組むよう、東京に強いる可能性がある。数十年の経済停滞と中国の成長によって色あせたイメージである、東アジアにおける経済大国としての立場にあり続ける日本の象徴ともなるだろう。

日本のTPP参加は、米日関係にとって重要な意味合いを持つだろう。参加問題で、既に、例えば、両国関係において、いらだちの源であり続けた、自動車、農産物や、保険の日本市場参入等、積年の問題が、新たに注目を集めている。これらの問題は、恐らく、日本が本格的なTPP加盟国として承認される前に、何らかの形で対処される必要があろう。その過程で、新たな問題が生じるであろうことも確実である。更に、参加しないという日本の決定、あるいは、アメリカ合州国による日本の参加を認めないという決定は、米日関係の深さに対する、そしてTPPそのものの威信への疑念を招きかねない。

これまで、こまぎれに翻訳していきた文書 米議会図書館議会調査局2012年8月24日付け文書 「日本のTPPへの参加可能性と、その意味あい」
Japan's Possible Entry Into the Trans-Pacific Partnership and Its Implications
の「はじめに」部分の翻訳

ここからpdfファイルをダウンロード可能。

文中の「貿易促進権限(TPA)」については、 第44回 TPPを慎重に考える会 勉強会で、TPPは日本国憲法違反という趣旨の講演をされた、岩月弁護士のブログ「街の弁護士日記 SINCE1992at名古屋」の下記記事を是非、参照頂きたい。

自民党、反TPPをうたっていた連中、条件闘争に転換、という。やはり売国奴集団。条件闘争で、この植民地協定の性格が変えられるわけがない。

自民、公明、みんな、維新に大勝利させ、この国を、放射能汚染植民地、鉄砲玉供給軍事基地にするつもりの方が、この国では大多数なのだろうか?一億総売国奴のはずはあるまい。

世界を不幸にしたグローバリズムの正体』のスティグリッツ、「金で買われて、アホノミックス称賛にやってきたか、ブルータスお前もか」と思ったが、タイでの講演では、TPPのひどさをはっきり指摘している。下記はその記事の翻訳。

欧米の失敗を避けよ: スティグリッツ

The Nation

2013年3月17日

タイ王国は独自成長モデルが必要で、TPPからは身を引くべきだとノーベル賞受賞者が助言

タイを含む新興市場国、他のASEAN諸国や中国は、自らを“欧米市場から切り離す”べきだと、ノーベル賞を受賞した経済学者ジョセフ・スティグリッツが、昨日バンコックでの講演で語った。

成長するためには、新興市場国は、輸出への依存を減らし、国内消費を拡大し、独自の持続可能な経済成長モデルを見いだす必要があると、アメリカ人経済学者は語った。

世界と地域の経済が直面している最も深刻な問題は、ユーロ圏が存続できるか否か、欧州連合が、不況を引き起こした緊縮政策をやめて、成長政策に切り換えるか否か、アメリカが、現在の行き詰まり状態を乗り越えることが出来るか否かだ、とスティグリッツは言う。スティグリッツは、近い将来のアメリカの成長は、せいぜい3パーセント程度と予想しており、アメリカは高い失業水準を引き下げる必要があると付け加えた。しかし、この十年内、完全雇用は見通しが立たないと彼は語った。

“私が正常と呼ぶようなものに戻れるまでには長い時間がかります”と彼は語った。

新興市場国、特に中国が、自国経済を欧米の経済と切り離すことができて、持続可能な形で発展することを彼は期待している。

ノーベル賞を受賞した経済学者ジョセフ・スティグリッツは、ナショナル・マルチメディア・グループ会長スティチャイ・ユンと壇上インタビューをした。

スティグリッツは、壇上インタビューで、ナショナル・マルチメディア・グループ会長スティチャイ・ユンと語り合ったが、その前にトゥラキット・バンディット大学の国際セミナーの一環として世界経済見通しについて講演していた。

ノーベル賞受賞者は、不景気や不況を招くことが証明されていると言って、緊縮政策に反対している。先進国の失敗を繰り返すのを避ける為、新興市場国は、教育、テクノロジー、環境と、公的医療に投資し、持続可能な経済成長モデルを見いだすべきだと彼は語った。

“成長、環境、生活水準の質と、恩恵をいかに共有するかに焦点を当てるべきです”と彼は語った。

アメリカのイノベーションは、ある程度、アメリカの現在の経済不安の原因になっている。イノベーションは人件費を削減する為に生み出されたが、今では失業率が厄介なものになっていると彼は語った。

アメリカ、ヨーロッパ諸国と日本も、構造と教育の改革が必要だが、経済問題に直面している現在、実施は困難だと、スティグリッツは語っている。

“地域的に、また世界的に見て、経済成長の新たなモデルを生み出すことが、中国にとって極めて重要だろう。なぜなら、もし中国が、[無制限な]消費と物質的なものに基づくアメリカ合州国の経済成長を模倣すれば、地球は存続できないのだから”と彼は語っている。

ユーロ圏の問題を論じで、ASEANが向かっている可能性もある方向の共通通貨という考えに、彼は反対意見を表明した。

“共通通貨[という道]に進むのは悪い考えです。アジアの協力について語るべきです”と彼は語った。“共通通貨は、適応、順応する能力を奪ってしまう”と彼は言う。

“共通市場というのは良い考えです。市場の問題は比較的小さいものですが、それでも規模の経済の恩恵を受けられます。”

スティグリッツは、 政治家に対する大企業によるロビー活動が経済問題解決の邪魔になっているとも語った。

アメリカが他の国々と締結しようとしている環太平洋経済連携(TPP)は危険だとも彼は警告した。

“交渉は秘密裏ですが、協力は、はっきり見えるものです”と彼は言う。

例えば、医薬品会社は、秘密交渉で政治家達にロビー活動をしている大企業の一部だと彼は語っている。

“[医薬品会社の]目的は儲けることです。それを実現する彼等の方法は、たとえアメリカ政府が基礎研究費用を払っていようとも、消費者に、より高い価格を払わせようとするものです”と彼は言う。

“これはジェネリック薬品産業の発展にとって、非常にまずいことです。この分野で、タイは進んだ国の一つです。タイがそれを放棄するのは間違いでしょう。もしTPPに参加すれば、放棄せざるをえなくなります”と彼は語る。

昨年のタイ訪問時、オバマ・アメリカ大統領は、TPPに参加するようタイを説得しようとしていた。

記事原文のurl:www.nationmultimedia.com/business/Avoid-mistakes-of-the-West-Stiglitz-30202103.html

« TPPの期待と潜在能力を完全に実現するには-シンガポールでのコーエン氏講演 | トップページ | 米国防長官のアフガニスタン訪問大失敗 »

TPP・TTIP・TiSA・FTA・ACTA」カテゴリの記事

コメント

最後から5番目のパラグラフ

"While negotiations are behind closed doors, cooperation is on the table," he said.

前後の文脈から判断して cooperation は corporation の誤植かと思われます。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

» ジョゼフ・スティグリッツは、来日時のインタビューで「TPPは日米国民のためにならぬ可能性」を指摘 [晴耕雨読]
内田聖子氏のツイートより。 安倍首相のTPP参加表明やTPPについての私の発言を新聞やUSTで見た方から激しい抗議電話があったとスタッフに聞いた。 畜産をやっている方という。 「TPPで飼料も、さまざまな物品も、食べ物も、何もかも安くなるのはいいことじゃないか!お前は畜産業の大変さを知っているのか」「だからTPP参加の邪魔するな!」と怒号を飛ばしたと。 深く考え込む。 人気blogランキング 生活や生業の過酷さは確かに現実(私も大変)。 しかしTPPで安いモノやサービスを消費でき助かっ... [続きを読む]

« TPPの期待と潜在能力を完全に実現するには-シンガポールでのコーエン氏講演 | トップページ | 米国防長官のアフガニスタン訪問大失敗 »

お勧め

  • IWJ
    岩上安身責任編集 – IWJ Independent Web Journal

カテゴリー

ブックマーク

最近のトラックバック

無料ブログはココログ