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2013年3月13日 (水)

「つながろうフクシマ!さようなら原発講演会」吉岡斉氏講演「なぜ脱原発なのか」

1. なぜ脱原発なのか

(1)絶対に起こってはならない超過酷事故が、実際に起こった。
超過酷事故は巨大で修復不可能の損害をもたらす。まさに人道上発生させてはならない損害である。
原子核エネルギーのコントロールに失敗し、超過酷事故を起こすリスクを、無視できるほど小さくできるならば、原子力発電を続けるという選択肢もありうる。だが、福島事故はその反証となった。

(2)原子力発電は発電手段として供給安定性、経済性、環境保全性のいずれにおいても重大な困難をかかえている。それは総合的にみて劣ったエネルギーである。ましてや過酷事故リスクをおかしてまで守り育てる価値はない。
(3)原発のエネルギー全体に占めるシェアは低い。また自然減や省エネルギーにより、エネルギー需要を大幅に減らせる。それゆえ化石燃料や再生可能エネルギーなどにより大幅に代替できる。

2. 脱原発の2つの路線

脱原発政策には、2つの路線(選択肢)がある。
(1)ハードランディグ路線: 原発の新増設はもとより、既設炉の再稼働も認めない。(2013年8月にゼロとなる)
(2) ソフトランディグ路線: 新増設は認めない。一定の基数の既設原発の再稼働を認めるが、一定の移行期間の中で計画的に廃止を進め、最終的に全廃に持って行く。ドイツと同様の方式 (ドイツでは2022年に原発ゼロとする。)なお、ソフトの度合いは、幅広いスペクトルをなす。
日本では、2つの路線を合わせると、脱原発支持者が、国民世論の多数派を占める。一千万署名市民の会は、どちらの路線も排除しない。
両者は必ずしも排他的でない。たとえば、ドイツ方式を支持し、再稼働を認めつつ、非常に厳しい条件を要求する者は実質的に、即時・無条件再稼働反対論者に近い。大同の方が小異よりも重要である。

3. 2つの路線の利害得失

ハードランディグ路線のメリットは、過酷事故リスクがほとんどなくなること、(ソフトランディグ路線では、過酷事故リスクが残る。)
しかし、ハードランディグ路線には3つのデメリットある。
(1)電力需給逼迫が避けられない。電力消費の多い夏・冬において、電力供給システムに異変が生じた場合、大規模停電や供給制限(電力制限令、計画停電などの)リスクが発生する。
(2)火力発電と原子力発電の燃料費の差額が莫大となる。とくに石油火力をフル稼働させると、天文学的な追加費用が発生する(札束発電)。それを電力会社だけでなく、消費者(企業、家庭など)も、支払わねばならない。それがマクロ経済にも悪影響を及ぼす。
(3)立地地域の経済・財政・雇用に、ショックが及ぶ。また電力会社の経営破綻リスクにも、配慮する必要がある。(資産から負債へ)。
ソフトランディグ路線では、この3つの副作用を緩和できる。

4. 秩序ある撤退か、なし崩しの衰退か

脱原発政策(ソフトランディグの様式を問わず)を進めるための法律(脱原子力基本法)を制定することが、秩序ある撤退の大黒柱である。それに基づいて脱原子力基本計画を策定し、それにそって原子炉廃止を進める。
日 本では政府が「国策民営」で原子力を推進してきた。したがって脱原発についても、「国策民営」で進めるのが、最も無理のない方式である。とはいえ、バック エンド以外については、政府が新増設を禁止し、かつ廃止条件を明確化した上で、細部は電力会社の事故決定・事故責任に委ねる方式もありうる。その場合、電 力会社の自由裁量の余地は大きくなる。
秩序ある撤退をためらっていても、原子力発電の衰退は止められない。つまり一部の炉しか再稼働できない。 せっかく再稼働した炉も、事故・事件・災害に極めて脆弱となる。多くの炉は再稼働できず、無期限スタンバイを強いられ、やがて朽ち果てていく。なし崩しの 衰退は、秩序ある撤退と比べ、公共の観点からも、電力会社の観点からも、副作用が大きい。

5. 省エネルギーと自然減による脱原発

日本の一次エネルギー消費は、戦後半世紀にわたり、右肩上がり(2度の石油危機の時代のみ、わずかに低下)。だが、1997年から2007年までは、ほぼ横ばい状態となった(約22~23EJ台の水準)

しかしリーマンショックにより、大幅にエネルギー消費が低下した。2007年から2009年の間に、約1割(9.1%)の減少を記録した。

2010年に6.4%盛り返した。2011年に東日本大震災の影響を受けて、5.1%下落し、ほぼ帳消しとなった。(2007年比7.8%減)

今後のトレンドとして、さらなる大幅減少は確実。人口の減少と高齢化、脱工業化の着実な進行、省エネルギー(節約含む)の進展など。

脱原発は困難ではない。省エネルギーと自然減だけで十分カバーできる。原発の一次エネルギー供給シェアは、事故前は10%前後、事故後は8%程度。それゆえ無理の少ない脱原発シナリオを描くことが可能。再生エネルギーがさほど伸びなくても問題はない。

6. ポスト脱原発の諸課題

原子力発電の「負の遺産」処理のためには、以下のような課題例がある。(解決できない課題例も少なくない。)
(1)福島第一の全ての原子炉の損傷箇所の密閉: 現在は冷却水を垂れ流す「寛解状態」にとどまる。
(2)原子炉施設の解体・処分:心臓部は不可能となる公算が高い。
(3)汚染地域の除染:不可能となる地域が多い。金の切れ目が除染の切れ目となるだろう。巨額の無意味なコストが負債として残る。
(4)被害者の健康管理と生活再建:数十年の歳月は必要。
(5)事故廃棄物の処分:発生地点で無期貯蔵(?)。
(6)使用済み燃料の処分:原則的に各サイトで無期貯蔵(?)。
(7)余剰プルトニウムの処分:処理国に引き取ってもらうか、国内で「密封処理」。又はブルサーマルにより消去(?)。
(8)廃炉(福島第一以外):数十年は必要。解体廃棄物の行方(?)。
(9)高レベル核廃棄物処分:百年単位の年月が必要。

後の二枚の書き写しは省略。

A1 原子力規制委員会
A2 小手先の改革にとどまるか

(本質的に顔ぶれが変わらない原子力規制委員会にも、改革にも期待はできないと、小生が思うので。)

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「つながろうフクシマ!さようなら原発講演会」での吉岡斉九大副学長講演で使用されたパワーポイントをテキストにしたもの。講演の書き起こしではないので、ご注意を。

「クールヘッド、ワームハートといわれた。たしか、ケインズのセリフ。

吉岡氏の講演「つながろうフクシマ!さようなら原発講演会」二時間半のうちの一部。

IWJ Independent Web Journalで拝聴した。時期が過ぎると、会員限定になる。

吉岡斉九大教授は政府事故調のメンバーだが、事故調の姿勢、報告書などについては、批判的。

最近いただいたコメントで紹介されている、3月10日放映のETV特集。「何が書かれなかったのか 〜政府原発事故調査〜 」という良い番組の中でも、正論をいっておられる。

下記三冊の著書は必読。

原発と日本の未来――原子力は温暖化対策の切り札か」については、「地球を賭けた博打」の末尾でごく簡単に触れた。コンパクトにまとめられ、わずか500円。事故直前に刊行されているが、今回の講演と趣旨が首尾一貫しているところが、彼の主張の正しさを証明しているだろう。安全神話をまきちらす御用学者の対極。

新版 原子力の社会史 その日本的展開は、旧版に、福島の事故を受けて、大幅に増補されたもの。客観的な史観に納得。

講演「脱原子力国家への道」のエッセンスのようにも思える。本では「日米原子力協定」という脱原発への重大な障害についても詳細に書かれている。

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