左翼と右翼が戦っている間に勝利する権力
Paul Craig Roberts
2013年2月14日
私は、アメリカの左翼と右翼との体験から、左翼は、民間権力を抑圧の源、政府をその拮抗力、是正力と見なし、右翼は、政府が抑圧の源で、自由で規制されない民間部門を拮抗力、是正力と見なしているという結論に至る。いずれも、抑圧しようとする権力を制限することに配慮してはいるが、抑圧的な権力の源とその対策の点で立場は逆だ。
政府権力が問題だという右翼は正しく、私的権力が問題だという左翼は正しい。だから政府内にあろうと、民間部門にあろうと、権力は弱めたり、制限したり、最小化したりできない。
進歩的なオバマ政権は、減税と規制撤廃のブッシュ/チェニー政権とどう違っているだろう? いずれもが、行政府権力の最大化と、国民の市民的自由の、つまり国民の権力の最小化に共謀している。進歩派オバマは、果たして、右翼ブッシュの、人身保護法と法の適正手続き破壊を、改めただろうか? そうではない。オバマは更に国民の権力を最小化した。ブッシュは、理由の証明無しで我々を終身刑にできた。オバマは理由の証明無しで、我々を処刑できる。彼等は我々をテロから守るという名目でこれを進めたが、彼等のテロから守りはしない。
専制政治の経験も知識もないアメリカ人は、歯止めのない国家権力を味わうのはテロリスト連中だけだと思い込んでいる。それが自分達、或いは彼等の子供達、あるいは友人達に降りかかるまで、彼等はそう思い込んでいる。
右翼と左翼が抱いている人間の本性の見方は、人間の本性が、民間部門、政府部門(“公共部門”)どちらにあるかに依存している。右翼にとって(リバタリアンの場合も)、民間部門の人間の本性は、善で、公共の為になる。政府部門では、人間の本性は悪で、抑圧的だ。左翼にとっては、それは逆だ。同じ人々が、片方の部門から別の部門へと移動する際の、彼らの性格と道徳の変容には驚かされる。活動をする場所によって、善人が悪人になり、悪人が善人になるのだ。
私の教授の一人で、ノーベル賞を授賞したジェームズ・M・ブキャナンは、権力が民間部門にあろうと、政府にあろうと、人は身勝手なものだと指摘していた。問題は、政府と私的権力を、できる限り最大限、いかに制約するかなのだ。
建国の父達の解決策は、政府の権力を最小化し、競い合う私益集団の党派に、小数独裁権力集団の登場を阻止させようとするものだった。競い合う私益集団が失敗した場合でも、政府を掌握した小数独裁権力集団はさほどの権力を行使できまいというのだ。
建国の父達の設計は、内戦と経済危機の間を除き、冷戦が政府権力を強化し、クリントンとブッシュ大統領の規制撤廃が、私益権力を強化するまで、それなり機能していた。テロリストから国民を保護すという名目の下で、行政府に、新たな独裁的権力が集中し、 規制撤廃で“大きすぎて潰せない”強力な大企業が生み出されて、それが一体化したのだ。
今存在しているのは、軍/安保複合体、ウォール・ストリートや金融部門、イスラエル・ロビー、アグリビジネス、医薬品や、エネルギー、鉱業や材木事業から構成される民間の小数独裁権力集団の世話になっている連中が、選出され、役職につく政府であり、連中には、悪徳資本家や政府による搾取に対する、国民の抗議行動を潰す権力があるのだ。
軍/安保複合体とイスラエル・ロビーしか恩恵を受けない戦争をする為に、莫大な金額の国債が膨れ上がり、納税者の負担になっている。納税者に、金融部門の無謀な賭博のかけ金の尻拭いをさせる為、更に莫大な金額が積み上げられる。腐敗した金融部門の貸借対照表を守るべく、納税者は預金利子を無視される。合法的な抗議行動参加者は、警察によって残忍な扱いを受け、国土安全保障省によって、テロリストと密接な関係にあるとして定義される“国内の過激派”扱いされる。
現代、アメリカ人は、政府、民間いずれの権力からも安全ではなく、両方に苦しんでいる。
何ができるだろう? 国内でできることはほとんどあるまい。右翼は左翼を非難し、左翼は右翼を非難する。両者はイデオロギー闘争で膠着状態にあり、その間に、民間部門でも、政府部門でも、権力は増大するが、それは、両方のイデオロギーが想定しているような慈愛に満ちたものではない。その代りに、双頭の権力の怪物が興隆する。
アメリカ国民の上に打ち立てられた権力が打ち砕かれるべきだとすれば、それは外部から起きるだろう。ワシントンが進めている、連邦準備銀行による、赤字解消の為の通貨増発継続は、ドルの交換価値を破壊し、金利上昇、債券や株や不動産市場を崩壊させ、歴史的高水準の失業と、ホームレスの多い状態で、アメリカ人が貯金を使い尽くし、重い借金を負っている中、経済を深刻な不況へと落ち込ませかねない。ドルの交換価値の低下による輸入品価格の上昇で、国民の大部分にとって、生き延びることが大問題にる。
アメリカは、一夜にして、超大国から、後悔の念を浮かべ、救済プログラムを請い願う第三世界に変容しかねない。
誰がそれを与えてくれよう? ロシア人は、アメリカ軍基地によって包囲されており、ロシア国家を不安定化する取り組みで反政府集団向けに流入するアメリカ資金によって、国内の平静は乱されている。中国政府は、お決まりの様に:偽善的ワシントンによって、人権侵害を非難され、新たに建設した軍事基地や、ワシントンの弾圧に長らく苦しんできた犠牲者南米や、紛争で疲弊し、ワシントンによって傀儡国家に仕立て上げられ、ワシントン覇権戦争の傭兵として利用されるヨーロッパの兵士や海軍艦船の新規配備で、ワシントンは中国を包囲している。
恐らくは、買収された傀儡たるイギリス、カナダ、オーストラリアと日本を除き、ワシントンを支援する国などないだろう。
次の崩壊で、ワシントンの権力と、悪徳資本家の権力は消滅するだろう。アメリカ人は苦しむだろうが、彼等は、自由な人々を搾取される奴隷に変えてしまった、彼等の上に確立された権力から解放されるだろう。
これは多分楽観的な結論だが、目覚めている比較的少数のアメリカ人にとっては多少の希望が必要だ。これが私ができる最善のことだ。大半のアメリカ人は気付かない状態のままで、これはつまり暗い未来を意味する。アメリカ国民の無関心がその没落の元なのだ。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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記事原文のurl:www.paulcraigroberts.org/2013/02/14/while-left-and-right-fight-power-wins-paul-craig-roberts/
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とんでもない施政方針演説をする方、それをそのまま報じる大本営広報部。
大本営広報部、決して「王様は裸だ」とは叫ばない。
自民党・政府、原発、安全だと真っ赤な嘘で推進し、事故が起きても、全く責任をとっていない。国民にしわ寄せし、棄民するだけ。安保も地位協定も。
TPPも良いことだと真っ赤な嘘で推進し、国民が塗炭の苦しみを未来永劫味わっても、もちろん責任は全くとらない。のらりくらり押しつけてしまうのが仕事。
傀儡首相の施政方針演説。正しい解釈編。
「皆さん。今こそ、世界一の属国を目指していこうではありませんか!」だ。
強靱な属国づくりが急務で「世界一安全・安心な属国をつくる」ありえないホラ話。
「エセ原子力規制委員会の下で、新たなエセ安全文化を創り上げ、安全が確認されたことにする原発は再稼働し、同じ大事故の危険を冒す」と明言。
「常識では、力の行使による現状変更は何も正当化しないが、力の行使による現状変更をするため、宗主国の命令一下、いつでも、どこでも鉄砲玉の国防軍を派兵する」と、英国のサッチャー元首相が1982年のフォークランド紛争を回顧した言葉を引用した。
ご託をならべていないで、いつの日か、宗主国をけん制してほしいもの。
サッチャー元首相についての映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』に関する下記記事を翻訳した。『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』: 何を考えて制作したのだろう?
サッチャー役を熱演したメリル・ストリープ、プルニウム汚染問題で事故死?した『カレン・シルクウッド』も演じている。見るべきは『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』でなく『カレン・シルクウッド』ただし、DVDはほとんど入手困難。
「武器輸出大幅に緩和。ステルス戦闘機F-35の部品輸出を容認」という夕刊記事。
菅義偉官房長官は「テロとの戦いもある。国際社会の平和と安定のために取り組まなければいけないということで表現を変えた」と述べるにとどめた、という。
「テロとの戦いという名の理不尽なテロ戦争がある。その廃絶こそ、国際社会の平和と安定のために取り組まなければいけないことだ」ろう。
日本で作られた部品を組み込んだイスラエルの戦闘機がアラブやイランの無辜の人々を殺戮する可能性は高い。
9/11が
- もし宗主国政府の言う通り「宗主国の暴虐に怒ったアラブの人が起こした」のであれば、彼等が日本で同じことをした場合、「テロ」といって一方的に非難できるだろうか?
- もし多数の人々が主張しているように、宗主国自身によるヤラセであれば、日本でも、同じヤラセを起こす理由になるだろう。いずれにせよ、果てしない悪循環。
アルジェリアのテロ、まったく理不尽な行為だが、公式報道?通り、特に「日本人」が狙われたのであれば、日本にとって一種の9/11。腰巾着で、派兵や、資金提供、基地提供、武器輸出を推進していなければ、他に、攻撃される理由少なかったろう。
著者の文を読むと、鉄砲玉化も壊憲も、皆宗主国への追随と思える。ジャパン・ハンドラー様ご指示の振り付け通り。
日本では、右翼と右翼の茶番問答を見せながら、権力が勝利し続ける構図。
絶滅危惧種政党を除いて、TPP、壊憲に反対する政党はない。
野党は連合して戦わないと勝てないという言説があるようだが、TPP・壊憲に反対する野党は絶滅危惧種だ。大本営広報部が宣伝する名前だけの「野党」は実質与党別動隊。
岩月弁護士の記事、ISD条項の罠8 朝日の解説に寄せて1にあるが、朝日のISD解説記事、国連機関に訴えることが可能なような記述になっている。利益を強欲に追求する企業による無茶な対政府訴訟、決して公的機関で公平に裁定されないから問題なのだ。
こうした誤説明、間違いというより意図的虚報としか思えない。
とんでもない虚報を大々的に報じ、周知徹底した後で、虚報とバレると、数行の小さな訂正記事を載せる。虚報は皆が読み、信じてしまうが、訂正記事は誰も読まず、虚報を刷り込まれたままになる。宗主国・属国の大本営広報部いつもの手口。
衆議院選挙で、自民、公明、民主、維新、みんな等、今回TPPに賛成したことで、売国奴であることをはっきり宣言した連中に投票し、この状態をもたらした皆様、反省して、参議院選挙では、絶滅危惧種に投票する可能性あるのだろうか?JA、自民党首相を信じるだけで良いのだろうか?
現代、日本人は、宗主国、属国いずれの権力からも安全ではなく、両方に苦しんでいる。
何ができるだろう?
国内でできることはほとんどあるまい。売国奴は独立派を無視している。絶滅危惧種は滅亡の瀬戸際にあり、その間に、民間部門でも、政府部門でも、権力は増大するが、それは、売国奴が宣伝しているような慈愛に満ちたものではない。その代りに、双頭の権力の怪物が興隆する。日本国民の上に打ち立てられた権力が打ち砕かれるべきだとすれば、それは外部から起きるだろう。東京が進めている、日銀による貨幣発行増は、円の交換価値を破壊し、経済を深刻な不況へと落ち込ませかねない。円の交換価値の低下による輸入品価格の上昇で、国民の大部分にとって、生き延びることが大問題にる。
次の崩壊で、ワシントンと東京の権力と悪徳資本家の権力は消滅するだろう。日本人は苦しむだろうが、彼等は、自由な人々を搾取される奴隷に変えてしまった、彼等の上に確立された権力から解放されるだろう。
これは多分楽観的な結論だが、目覚めている比較的少数の日本人にとっても多少の希望が必要だ。
「希望が必要」と言えば、昔訳したハワード・ジン演説末尾を紹介してくださるブログがあるのに気がついた。そのハワード・ジン演説、このブログで最初に掲載した記事。
我々がすること全てが大切です。
私たちがする、あらゆるささやかなこと、私たちが張るあらゆるピケライン、我々が書くあらゆる手紙、我々が参加するあらゆる市民的不服従の行動、誰か兵士採用担当者に私たちが話しかけること、誰か両親に私たちが話しかけること、誰か兵士に私たちが話しかけること、あらゆる若者に私たちが話しかけること、教室の中で我々がするあらゆること、教室の外ですること、違う世界になるように我々がすること全てが大切なのです。
たとえその時点では無駄なように思えても。
そういう方法によって変化がおきるからです。
何百万人もの人がささやかなことをすると変化が起きるのです。
歴史のある時点で、こうしたことが一つにまとまり、そして何か良いこと、何か重要なことが起きるのです。
ハワード・ジン「歴史の効用とテロリズムに対する戦争」を語る 長文だが乞うご一読。
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ブログ主様、精力的に興味深い記事をご紹介いただき、いつも感謝しています。
アメリカは無辜の国民を国家テロの容疑者として自由に逮捕、処刑出来る体制が整いつつあり、『本人の意思に関係なく国家犯罪の首謀者あるいは被害者になることが出来る』、自由の国になりました。歳出の自動削減が不可避となった今、アメリカの国家権力はなにを考えているでしょうか。いつものように日本に集ろうとするのではないでしょうか。
もし、それを日本が拒否すれば、アメリカ主導の大規模テロを日本国内で発生させ、無辜な日本国民を拘束するかも知れません。第二の311でしょうか。そうなると安倍政権も短命かも知れません。
投稿: 海坊主 | 2013年3月 2日 (土) 09時58分