マフィア国家: アメリカは世界政治のドン・コルレオーネ
Adrian Salbuchi
2013年3月5日
カラカスのアメリカ大使館前に靴をつり下げるベネズエラ大統領ウゴ・チャベスの支持者達 (AFP Photo/Juan Baretto)
RT
南米、特にベネズエラは、過去数年間、アメリカ政府や民間企業による組織的キャンペーンの標的だった。しかし、注目をしてきた我々は、それが決して新しいことではないのを知っている。
最近、WikiLeaksは、ストラトフォー等のアメリカの世界的調査会社や、その海外分家のCANVAS等が、過去十年間(アメリカ政府機関に支援され、ほう助されて) ベネズエラの民主的選挙で選ばれたウゴ・チャベス大統領を打倒しようとして失敗した企てで奮闘していたことを示す新たな文書を公開した。
‘裏庭’への介入
アメリカの特権的大企業は、アメリカの利益に自動的に同調しない政府、あるいは、よりうまく言えば、アメリカの民間・公的権力構造の中に深く埋め込まれた、国家を越えるグローバル・パワー・エリートの利益に、すぐに同調しない政府の打倒、“ならず者国家での体制転覆”として知られている行為を、CIA、国務省とペンタゴンと、常に密接に協力して推進してきた。
伝統的に、アメリカの地政学的、経済的裏庭である、メキシコから、ティエラ・デル・フエゴに至るまでの中南米全体で、特にこれは、あてはまる。
例えば今年の9月11日は、CIAが支援し、資金提供し、仕組んだ、民主的に選出されたチリ大統領サルバドール・アジェンデ打倒、暗殺40周年だ。
アジェンデは、アウグスト・ピノチェト将軍が率いる親米、親英軍事政権によって置き換えられた。当時、ITTの様な私企業は、CIA工作員と協力し、現地マスコミを利用し、ストライキ、社会不安をあおり、心理戦をしかけた。当時の相手はチリだった。現在はベネズエラだ。
チリ大統領でマルクス主義指導者のサルバドール・アジェンデと共にポーズをとるアウグスト・ピノチェト将軍(左) 1973年8月23日 サンチャゴ(AFP Photo)
実際、1970年代と1980年代には、チリのみならず、アルゼンチン、ボリビア、ウルグアイ、パラグアイや、地域の他の国々での様々な軍事クーデターや体制転覆の財政・外交支援‘コンドル・プラン’を、キッシンジャーが計画し、実施した。
独裁的・犯罪的政権へのそうした米英による支援は、中南米の将軍が、アルゼンチンのレオポルド・ガルティエリ将軍のようにやりすぎて、アルゼンチンの1982年のフォークランド諸島侵略のように、実に愚劣なことをしでかすまでは止まらない。
フォークランド諸島を巡るアルゼンチンの1982年の戦争で亡くなったアルゼンチン兵士の墓を飾る親族(AFP Photo/Angeline Montoya)
それ以外の、アメリカが支援したこうしたクーデターの全てで、パナマにあった「アメリカ陸軍米州学校」(2001年ジョージア州フォート・ベニングに移転し、西半球安全保障協力研究所と改名)で訓練された、各国軍の有力者を起用し、各国内で以下の通りにしている限り、好きなようにさせておくのだ。
(a)連中がそうした国々をアメリカの地政学的命令に同調せること。冷戦中の命令は、断固たる反共だ
(b)シカゴ・ボーイズ式の財政上の従属状態と意図的に作り出された公的債務受け入れ
(c)その国の国民を恒久的な恐怖状態に置き‘規律正しく、行儀良く’させておく
とはいえ、旧ソ連の崩壊以来、こうした戦術は劇的に変わった。今では、アメリカによる中南米諸国支配は、‘民主主義’の推進が主軸だ。まあ、実際には、ヒラリー・クリントンが、2011年春‘アラブの春のエジプト’を訪問した際、実に雄弁に語ったように“我々が期待している類の民主主義”だ。
2011年3月16日、長年の同盟者ホスニ・ムバラクを打倒した18日間の抗議行動の震源地タハリール広場を予告なしで訪問し、エジプト人と握手するヒラリー・クリントン米国務長官(AFP Photo/Paul J. Richards)
そうした金で支配された民主主義は、もちろん決して民主主義ではなく、金のバラマキで、お気に入りの候補者を、その国の権力の座に送り込むマスコミ道化体制だ。
アメリカが、メキシコ、コロンビアやチリで好きなようにやれて、その候補者が現地の選挙で勝てているうちは、いつも通りの仕事ですんでいた。
しかし、現地の国民の間で政治的覚醒が高まると、自国の利益を優先する大統領を選出するようになる。エクアドル(素晴らしい大統領ラファエル・コレアを再選したばかり)、ボリビア(エボ・モラレス)そして、とりわけ、ベネズエラのウゴ・チャベス。すると‘体制転覆’の超巨大な力が本格的に稼働する。
官民イニシアチブ
アメリカでは、ホワイト・ハウスと、議会が、国と特権的大企業を支配しているのか、それとも逆なのか全くわからない。特権的大企業が、ホワイト・ハウス、議会と国を支配している。
最近WikiLeaksが公開したベネズエラに関する文書には、ストラトフォーは“民間調査会社を演じているが、ボパールのダウ・ケミカル、ロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマン、レイシオン等の大企業や、国土安全保障省、アメリカ海兵隊や、アメリカ国防情報局等の政府機関に、極秘諜報サービスを提供する企業だ”と書いてある。
“eメールは” WikiLeaksは説明している。“ストラトフォーの情報提供者ネットワーク、支払い構造、支払いロンダリング手法や心理学的手法を示している。”
公開されたメールには、エネルギー部門の様々な問題、特に石油; 政治的変化と、ベネズエラ国内の右翼勢力の状況、各国国軍の状況などがあった。メールは、ベネズエラと、キューバ、中国、ロシアやイランとの関係のものもあり、経済・金融部門について、厳しい予想をしている。
セルビアに本拠を置き、アメリカに支援されるCenter for Applied Non-Violent Action and Strategies (CANVAS)は、実際は、セルビア、リビア、アフガニスタンやシリア等の国々が痛切に学んだ通りの社会的混乱や、内戦さえ仕組むのが専門の組織の、‘世界的諜報’フロント組織の一つなのだ。
CANVASからの漏洩メールは、下記のストラトフォー宛メッセージで見られるように、政府打倒の推奨戦略を説明している
“ベネ(原文のまま!)の場合のように、誰かが我々に支援を求めてきた場合、我々はいつも‘あなたがたは、それをどのようにするつもりか?’と質問する。つまり、最初にすのは、状況分析(お送りしたワード文書)の作成で、その次が“綱領”(これから作成予定)そして更に“作戦コンセプト”で、それはキャンペーン計画で… この場合、我々は三つのキャンペーンを行っている。野党統一、[2010年9月の議会選挙] 向けキャンペーン、それと並行して、‘投票に行こう’キャンペーン。”
実に単刀直入だ!
ストラトフォー・グローバル・インテリジェンスCEO、ジョージ・フリードマン(AFP Photo/Ronaldo Schemidt)
ストラトフォーの創設者、会長はジョージ・フリードマンで、彼はウォール・ストリート・ジャーナル、CNBCやCNNで良くインタビューされており、JPモルガン・チェース、シティーグループ、アーンスト・アンド・ヤング社の顧問だ。ストラトフォーの社長 & CEOは、長年ゴールドマン・サックス幹部だったShea Morenzだ。大企業や巨大銀行は、ベネズエラや、中南米やら他のどこかの国の国民の公益を推進しようと必ずしも夢中になるわけではない。
確かに、これらの外交問題評議会CFR、RANDコーポレーション、米国民主主義基金NEDや他の大企業等の民間調査会社や専門家やシンクタンクと、CIA、NSA、USAIDや国務省等のアメリカ政府の公的機関とを明確に区別する境界線は存在しない。
実際、中南米中で、明晰な政治評論家は常に‘ラ・エンバハダ’が一体何を企んでいるかに注目している。‘ラ・エンバハダ’とは‘大使館’を意するスペイン語だが、あらゆる大使館ではなく、もちろん、各国にあるアメリカ大使館のことだ。
一連のWikiLeaks文書が、アメリカに本拠を置く企業が、チャベスの主な対立候補で、昨年の大統領選挙で次点になったエンリケ・カプリレス・ラドンスキーのような対立候補を支援し、資金提供し、ウゴ・チャベスを打倒しようとしいることを暴露したことがわかっても、決して驚きではない。
ベネズエラのDemocratic Unity連合大統領候補カプリレス・ラドンスキー(AFP Photo/Juan Barreto)
カプリレス・ラドンスキーは、アメリカ、ヨーロッパとイスラエルの、ベネズエラと、この地域での狙いに良く同調しているおかげで、これらの国々の利益団体から強力な支援を得ている。極めて小規模なユダヤ人コミュニティーしかない国のユダヤ系、ラドンスキーは、チャベスがイラン、キューバ、ロシア、中国や(NATOに侵略され、破壊されるまで)リビアと築き上げた緊密なつながりから、ベネズエラを遠ざけると約束している。
チャベス大統領の健康不調ゆえに、チャベスが昨年末獲得した大統領の座を放棄せざるをえなくなり、彼のいないベネズエラでの新たな選挙となるのを願って、このアメリカ官民イニシアチブは、チャベス大統領の体調に関する(彼等にとっての)良い知らせをわくわくして待ちながら、またもやベネズエラ国内のあらゆる反政府勢力を強力に推進しつつある。
アメリカの官民イニシアチブが、再度全面的に「我々の手先をカラカス・ミラフロレス大統領官邸に送り込め」モードに入るので、ベネズエラにとって本当の悲劇となろう。
カラカスのシモン・ボリバール広場に集まったベネズエラ大統領ウゴ・チャベス支持者(AFP Photo/Juan Baretto)
悲劇は、単にベネズエラにとってのみならず、フアン・マヌエル・サントス大統領が、本部が、道路を隔てた第57ストリート、パーク・アヴェニューにある強力な外交問題評議会CFRの為に、ロックフェラーが資金を出し、ニューヨークに本拠を置き、中南米への侵攻を推進している‘アメリカズ・ソサエティー’のメンバーというアメリカが完全に君臨し続けているコロンビアのような国を含む地域全体のものだ。メキシコは最近、親アメリカ派の大金持ちエンリケ・ペニャ・ニエトを大統領に選出した。両国は通常どおり業務進行中の国だ。
‘民主的選挙にみせかける’
どのようにして不安定化工作をやりとげるかの助言として、CANVASは、ストラトフォーに、“我々は彼等に使う道具を与えるだけだ。”と言っていた。2010年の議会選挙に言及して、書いている。“今年、我々はベネズエラで活動を強化しつつある… ベネズエラでは9月に選挙があり、あそこの活動家や、彼等を援助しようとしている人々と緊密な関係にある(当面これは内密にし、公表しないで欲しい)。我々の準備の最初の段階が現在進行中だ。”
これが“アメリカが期待している類の民主主義”なのだ。あるいは、もし彼が‘ゴッド・ファザー’のドン・コルレオーネとして、国務省やCIAに座っていたら、工作員達に勧めていただろう。“民主的選挙に見せかけろ。”
結局、コルレオーネ最高の弟子達が実際に舞台を仕切っているのかも知れない。
AFP Photo/Geraldo Caso
Adrian Salbuchiはアルゼンチンの政治評論家、作家、講演者、ラジオ/TVコメンテーター
記事原文のurl:rt.com/op-edge/the-us-is-the-don-corleone-of-international-politics-730/
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CANVASなる謀略組織については、「ウオール街占拠運動と"アメリカの秋":これは"カラー革命だろうか"?第一部」をお読み頂きたい。「アラブの春」の実態がわかる。ところで国営大本営広報部記者、「アラブの春」報道の功績で、最近何か賞を受賞したという。「アラブの春」の裏を報道したのなら功績だが。
この国の与党・野党風与党分派政治家、カプリレスばかり。
チャベスのような人物が出現すれば、暗殺はされないかも知れないが、潰される。
ベネズエラでも、テレビは大富豪が経営し、皆大本営広報部のようなもの、というのをどこかで読んだような気がする。CANVASのような組織も、フル回転しただろう。
それでも、ベネズエラ国民はチャベスを選んだ。この国とは余りに違う。この国では
これが“アメリカが期待している類の民主主義”なのだ。あるいは、もし彼が‘ゴッド・ファザー’のドン・コルレオーネとして、国務省やCIAに座っていたら、ジャパンハンドラーに勧めていただろう。“民主的選挙に見せかけろ。”
結局、コルレオーネ最高の弟子達が実際に舞台を仕切っているのかも知れない。
傀儡政治家を起用し、以下の通りにしている限り好きなようにさせている。
(a)国をアメリカの命令に同調させること。断固たる反朝鮮・ロシア・中国・韓国
(b)シカゴ・ボーイズ式財政と、米国債の大量購入
(c)国民を恒久的な恐怖状態に置き、‘しつけ良く、規律正しく’させること
この国、CANVASのような組織は不要。大本営広報部が全て代行してくれる。マスコミそのものが巨大CANVAS。洗脳離脱のため、Independent Web Journalの下記インタビューをご覧頂きたい。
「日本政府はすでに、TPP参加に際して、無礼で不公正な条件に同意している」米国交渉官が明言 ~秘密のTPP交渉会合に潜入した内田聖子氏が明かすTPPの正体
歌と旗と愛国心を押しつける傀儡首相が、永久「売国」宣言をする不思議な日。
二週間程前だったか、知り合いの自民党議員(国会議員ではない)に、「TPPには絶対反対だ」というと、「藤井聡先生が内閣顧問ですから大丈夫です」といわれた。
喧嘩するのも馬鹿らしいので論争はやめた。言い分など信じていないが、やはり大丈夫ではないではないか。(藤井教授は「日本強靱化政策」の提唱者だが、TPP反対説を強力にとなえている。例えば『コンプライアンスが日本を潰す』~新自由主義との攻防~)
そこで一句
- 売国や、ああ売国や、売国や
- 『聖域がいいね』と君が言ったから三一五は売国記念日
ところで、小林多喜二の『一九二八・三・一五』
85年前の、共産党摘発と拷問を描いた作品。
確実に、同じような時代がやってくる。
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