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2012年12月18日 (火)

エジプトの新たな専制君主

クリス・ヘッジズのコラム

2012年12月16日投稿

Chris Hedges

14年間の亡命生活後、1979年2月1日にイランに帰国すると、アヤトラ・ルーホッラー・ホメイニは、シャー打倒に貢献したイラン共産党を含めた非宗教的反政府勢力の破壊を開始した。ホメイニのイスラム教政府宣言は、国民投票で支持を得、彼は憲法を書き換え、反体制派新聞社を閉鎖し、国民民主戦線やムスリム人民共和党を含む反体制集団を禁止した。シャーの下で悪名高い残虐なイラン刑務所の中で長年過ごした反体制派の人々は、新政権によって再び収監された。新政権に勤務することにした、かつての看守達に迎えられて、房に戻った人々もいた。

それが現在エジプトで進行していることだ。これは大半の革命の筋書きだ。大衆や国外の多くの人々からの支持を獲得する上で不可欠な穏健派は独裁権力強化の妨げとなった。リベラルな民主主義者、知識人、中産階級、非宗教主義者やコプト派キリスト教徒を含めた宗教的少数派は、ムハンマド・ムルシ大統領や、ムスリム同胞団の事実上の政治部門である自由と公正党によって、常に“便利な間抜け連中”と見なされてきた。こうした勢力は、ホスニ・ムバラクの独裁政治を打倒する広範な運動を構築するのに不可欠だった。彼らは欧米ジャーナリストが、反政府勢力を欧米自らのイメージにあわせて描き出すのを許していた。だが今や連中は、一党支配の妨げとなり、現在粉砕されている。

新憲法投票二日間の初日は土曜日だった。日曜の報道によれば、文書は承認されつつある。次ぎの土曜の第二回目の投票は同胞団の支持基盤となっている多くの地方が含まれており、必要なエジプト5100万人の有権者の50パーセント以上によって憲法は批准されて終わるものと予想されている。反政府勢力は、第一回投票は賄賂、脅迫、一貫性のない投票時間や有権者に投票のやり方を教えた選挙担当者達を含め不正投票によって損なわれていると非難している。13,000箇所の投票所のうちのかなり多くに、独立した監視員がいない。多くの裁判官達が、草案起草過程を巡る抗議として、投票を監督するのを拒否した。

国民投票はムスリム同胞団の手中にある本当の権力の中心を覆い隠している。同党はこの権力を弱めるつもりも、あきらめるつもりも毛頭ない。例えば、最高憲法裁判所が、同党メンバーが多数押し込まれている新憲法の草案を書いていた委員会を解散させようとする様子が見えた際、同胞団は裁判官達を裁判所庁舎から締め出した。非宗教主義者、コプト派キリスト教徒、リベラル派やジャーナリスト達を含む委員会メンバーの30人以上が、抗議して辞めた。残ったイスラム教徒達は、裁判官達を無視して、11月29日に徹夜会議を行い、公式に63ページの文書を承認した。

憲法草案は、民主的権利、市民的自由、女性の義務やマスコミの役割に関する気味の悪いほど曖昧な表現に満ちている。これはイスラム教の宗教当局に、立法過程や日々の個人的生活の多くの側面を管理する権限を与えてしまうことになる。憲法が成立するだろうと予想されている理由の一つは、不正投票の他に、多数のリベラル派や、非宗教主義者やコプト教徒達が、うんざりして選挙参加に背を向けているという理由もある。

同胞団は、皮肉なことに、ムバラクを打倒した2011年2月の18日間の抗議行動を率いた前衛の中には入っていなかった。十年間厳しく弾圧され続けた後で、タハリール広場を埋める抗議行動参加者を支持することに消極的だった。当初、彼らは大統領選挙で競うつもりも、本格的に国会議員候補者を立てるつもりもないと語っていた。だが敵対する非宗教主義者達の間で競合する三人の大統領選候補者を立て、言い争いをする混乱状態を見て取るやいなや、その機に乗じたのだ。

“エジプト人家庭の生粋の特質を維持することに国は極めて熱心である”やら“戦時、大衆動員時”を除き、国は出版・報道の自由を保障するといった憲法案の数節は、ムスリム同胞団が、女性の権利を厳しく抑圧し、マスコミによる批判を情け容赦なく沈黙させるのに十分なほど曖昧だ。11月22日のムルシの絶大な大統領宣言は、先週の街頭抗議行動後に彼が撤回するまで、事実上彼は法を超越する状態に置いていた。とはいえ布告撤回は党が独裁権力を獲得することを妨げるものでもない。

同胞団は殺傷力の高い武器利用も恐れていない。先週の大統領官邸外での何千人もの政府支持派と反政府抗議行動参加者との間の暴力的衝突では、死者10人と約700人の負傷者が出た。反政府抗議行動参加者の中には、同胞団が官邸近くに設置した臨時拘留拷問センターで殴打されたと主張する人々もいる。ムルシは何の反省の色も見せていない。全国向けテレビ放送で、反政府抗議行動参加者達は“金をもらっている殺し屋だ”と自白したと彼は宣言した。そして新政府、アレクサンドリアで今週末起きたものを含め、街頭での抗議行動を阻止するため、軍が一般市民を逮捕することを承認した。

ムスリム同胞団は、旧体制と置き換わるあらゆる革命政党同様、伝統的な権力構造で生きている。政府の各大臣や閣僚達が任命された。国会議員達も選出された。裁判官達も任命された。だが実際の権力は、大半の革命後の社会同様、並列する党組織が保持している。実際には二つの権力組織があるのだ。一つは公的で儀礼的なもの。もう一つは秘密で難攻不落だ。これが実現した以上、正式な権力の地位はもはや何も意味してはおらず、数人の大統領顧問を含めた、30パーセントの憲法制定会議メンバーの脱退が起きた。公式の役割をこなす公人達は単なる見せかけに過ぎない。

クレーン・ブリントンが書いているように、成功する革命家は“非常に高邁な理想と、他の人々にとって理想として機能している抑制や原則に対する完全な侮辱を、様々な程度で兼ね備えている。彼らはプラトンの快い構想の奇妙な変種だ。つまり彼らは哲人王ではなく、哲人殺人者なのだ。彼らには、穏健派の指導者達のごく少数しにかない現実的、実務的才覚があり、しかも彼らには、近い将来に新しいエルサレムを期待する信奉者達を惹きつけるのに十分な預言者の情熱がある。彼らは常識に束縛されない実務家であり、美と善に仕える権謀術数家だ。”

レオン・トロツキーは、1917年には明らかな少数派であったと彼が認めたボリシェビキの役割を記述した際、この考え方を説明している。

彼は書いている。“ボリシェビキは、民衆は、それまでの歴史が生み出したもの、革命を実現すべく召集されたものとして受け取った。ボリシェビキは、こうした民衆の先頭にたつことが自分達の任務だと考えた。ボリシェビキ以外のありとあらゆる連中’は反乱に反対だった。だがボリシェビキは、その民衆だった。”

要するに、革命派エリートは、彼らがそれに値すると見なす連中だけ自由にさせるのだ。そしてあらゆる革命は、たとえボリシェビキ革命のように非宗教的とされるものであっても、本質的には宗教的体験なのだ。彼らは壮麗なユートピア構想を掲げ、歴史の力、人種的純潔さ、天命を利用していると主張する。彼らは世界を善と悪に二分する。革命家として、彼らは日々の平凡な道徳規範から免除される。彼らは絶対的真理の権化なのだ。異なる意見を許容するのは、悪をほう助することになる。心得違いをした連中が命を無駄にすることは認められる。枢機卿ロベルト・ベラルミーノは、これを1600年にドミニコ会修道士で天文学者のジョルダーノ・ブルーノを神への冒とくのかどで火あぶりの刑に処するよう命じた際に主張していた。異教徒は長生きすればする程、益々多くの天罰を積み上げると彼は主張したのだ。

革命政府は、道徳と法の支配を逆転させる。彼らは、マクシミリアン・ド・ロベスピエールが書いているように、自分達は、自由の専制で専制政治に対抗するのだと信じていた。これが、なぜムルシが、彼が置き換わった独裁者に益々似てきたかという理由だ。

“あらゆる革命家は、実際の責任を引き受けた瞬間、一種の保守主義者となる”とG.M. トレヴェリアンは書いている。“ロベスピエールは無政府主義者をギロチンで処刑した。[イギリスの] 国王殺し最初の行政行為は水平派を沈黙させることだった。”

革命政府は、階級的憎悪や熱狂的な信者の独善につけ込むのが巧みだ。あらゆる革命と同様、中流階級はエジプト革命にとって極めて重要だった。だが大半が非宗教主義の中流階級と特に上流階級は、エジプト国民の大半を構成する貧困大衆から憎悪されている。非宗教的なムバラク政権に対する唯一効果的な抵抗方法は、正統派イスラム教の厳格な教義に引きこもることだった。正統派イスラム教信奉は、多くの貧しい人々にとって自分そのものとなり、希望の唯一の源となる。インバダのようなカイロの貧しいスラムでは、正統派イスラム教の服装規定や道徳観を押しつける必要は皆無だ。だが旧政権が経済的により寛容だった、ザマレクのようなカイロでも上流階級の居住区域では、たとえ上流階級の女性達がヒジャーブを被り、正統派イスラム教が経済エリートに食い込んだにせよ、正統派イスラム教は決して同様な威信にはなり得ない。

この革命も、あらゆる革命同様、党に反対する人々と戦うべく、貧しい信者達を街頭へと駆り出した。反対派は革命の敵、あるいは、より不気味には、イスラム教の敵という烙印を押されている。反政府抗議行動参加者は、ムルシの言葉によれば、外国大使館やイスラエルのカモだ。そして貧者、ルンペンプロレタリアートは、聖なる信仰を擁護し、栄光とパンという約束された未来の為に進んで突撃隊をつとめたがっている。現在抗議集会の対象にされている連中を彼らは既に憎んでいる。国家によって伝統的な形の抑制から解放さえされてしまえば、群衆は進んで凶暴になるだろう。

過去三週間の街頭での暴力行為は血と弾圧の時代の前兆だ。当初は国民投票への参加を拒否しようとしていた反対派は、追い詰められて、国民投票を打倒しようという取り組みを開始した。戦線は張られたのだ。ムルシと同胞団は、新たな装いをした、古い独裁制の相続人であることが露顕した。開かれた社会を求める戦いは、裏切られた人々によって、エジプト中の都市の街路で戦われるつつある。これは死闘となるだろう。審理中の憲法を支持するエジプト中に貼られた同胞団ポスターは、“正当性とシャリア[イスラム法]の支持”に賛成投票するよう国民に促している。正当性とイスラム法に反対する連中は、言うまでもなく異端者だ。

記事原文のurl:www.truthdig.com/report/page2/egypts_new_pharaoh_20121216/
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大本営広報部が喧伝するものほとんど怪しい。『アラブの春』今や『アラブの冬』。アラブと違って、神様は、まさに世俗そのものの権力と金権というこの国では、大本営広報部が喧伝して導入された小選挙区制度と、自分の首を絞める大胆な皆様により『日本の永久冬』実現。内田樹氏が『従者の復讐』で主張しておられる「抱きつき心中」の開幕だろうか。

良き物事、作り上げるのに膨大な労力と時間がかかる。一方誰でも、あっと言う間に破壊できる。日本史の時計、今回選挙で少なくとも80年逆回転したように思える。『組曲虐殺』を見たせいだ。井上ひさしの戯曲『組曲虐殺』再演中。パンフレットに演出の栗山民也氏の文が載っている。冒頭を引用させていただこう。

初演の幕を開けた2009年の秋に、三年後の、今のような日本の現状を予想できた人が果たしていただろうか。井上さんには近い未来が見えていたように思えてしかたがない。閉塞感に満ち、先行きの見えない時代に出口を求めて右傾化する世相。弱者を切り捨てることで保身を図るお偉方、劇中で小林多喜二が立ち向かった暗い時代、当時の社会にはびこる歪みは、初演時よりむしろ今の日本に重なって見えてくる。

『組曲虐殺』から警官の古橋のセリフを一部ご紹介しよう。18-19ページ。

挨拶がわりに、組合つぶしのコツをあかしておこうか。なに、簡単なことなのさ。戦旗の所持者とみたら問答無用でしょっぴく。それだけで組合はつぶれる。組合の中心にいる連中はみんな戦旗の愛読者だからね。中心を抜いてしまえば、組合はただの烏合の衆になる。この手で神戸港の沖人足組合から浜人足組合まで、港中の組合という組合を片っ端からつぶして回っていた。まさに戦旗さまさまですよ。

そして、瓦礫焼却反対運動の下地真樹氏の不当逮捕。現代の異端派弾圧。

反対運動つぶしのコツをあかしておこうか。なに、簡単なことなのさ。中心を抜いてしまえば、反対運動はただの烏合の衆になる。この手で国中の反対運動という反対運動を片っ端からつぶして回っていた。

もはや反対運動つぶしも不要だろう。宗主国支配層と属国傀儡、憲法破壊も侵略戦争への派兵も全てやりたい放題。全て小選挙区制度導入時から計画されていた通りのとんでもない狙いがこれから着々実行される。確実でない項目といえば、実施日程だけだろう

庶民ができる対策と言えば、遥か彼方の見知らぬ国の侵略戦争に派兵される愛人、夫、父親、兄弟、息子、孫の無事を祈る、水垢離やら千人針程度しかなくなるのだろうか。昔と違って、ネット上のバーチャル水垢離やら千人針だろうか。それも当局から厳しく監視され、非国民!と、ネットでつるし上げられることになるのだろうか。
愛人、夫、父親、兄弟、息子、孫達は戦死で靖国か、負傷・PTSDで帰国し、宗主国の多くの兵士の様な結末となるのだろうか。そういう人生、これから延々続く。それが「普通の国」、とりもどすべき「新しい属国」なのかも知れない。

耕助のブログに、No.1020 TPPは日本略奪ゴールという新記事。掠奪されに、わざわざ来年早々ご挨拶にお伺いする豚の耳ならぬ、腹痛の耳に念仏。

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