欧州連合のノーベル平和賞
wsws.org
2012年10月15日
ノーベル平和賞の欧州連合への授与は、ひたすら政治的配慮が動機だ。EUを擁護するという建前のもとで、労働者に対して、1930年代以来最も残虐な攻撃を遂行している連中全員に支援を与えることを狙ったものだ。
ノルウェー議会ノーベル委員会の5人のメンバーは“平和と和解、民主主義と人権の為のEUの取り組みの成功”を挙げて、選択を正当化した。委員会は、70年の間にドイツとフランスの間で戦われた三度の戦争と“第二次世界大戦での悲惨な苦難”を思い起こし、“今日、フランスとドイツとの間の戦争など考えられない”と宣言した。
この一連の論証は、現実をあべこべにしている。欧州連合の基礎を作った20年前のマーストリヒト条約以来、EUあるいはその主導的大国は、第一次イラク戦争、ユーゴスラビア爆撃、アフガニスタン戦争、第二次イラク戦争、そしてより最近では対リビア戦争と、対シリアと対イラン戦争の準備を含むあらゆる主要な帝国主義戦争と犯罪に関与してきた。
ヨーロッパ内部での“考えられない”戦争について言えば、EUがしつこく押しつけている緊縮政策は、1914年から1945年の間、大陸を二つの世界大戦の戦場と、史上犯された最悪の犯罪の現場へと転化させた、あらゆる社会的、国家的緊張を再燃させている。
“民主主義と人権”を推進するどころか、EUは、大陸中で、社会的不平等、国家的緊張、独裁主義的な形の支配をしかける主なけん引役だ。経済・政治的生活のあらゆる側面を巡る金融資本の独裁の具現化であり、圧倒的多数の有権者の意思に反して、社会福祉削減を押しつけ、イタリアとギリシャで起きたように、選挙で選出された政権が、もはや大衆の抗議運動に会い、EUの絶対的命令を押しつけられなくなるや、それに代え、テクノクラートを権力の座につけている。EUの無慈悲な難民や移民の迫害で極右組織が強化された。
ノーベル平和賞のEUへの授与は、ブリュッセルからの絶対的命令に抗して、社会的、民主的権利を守ろうとしている何百万人ものヨーロッパの労働者に対する侮辱だ。ノーベル委員会の決定と結び付けられた威嚇は明らかだ。“もしお前たちがEUによって作成された政策に反対し、EUの将来を危うくすれば、ヨーロッパは再び戦争と独裁に陥るぞ。”
正反対こそ真実なのだ。金融市場における権力が打ち破られ、社会的不平等が克服された場合にのみ、ヨーロッパは団結することが可能であり、国民が共に平和に繁栄して暮せるのだ。それには反欧州連合の労働者階級の統一と動員と、欧州連合をヨーロッパ社会主義連邦によって置き換えることが必要だ。
無数のヨーロッパ人労働者や青年達にとって、欧州連合は失業、福祉削減と官僚主義の傲慢さと同義語になっている。彼らはノーベル平和賞授与に反感と無視で対応している。
マスコミとあらゆる公式政党の反応は極めて熱烈だ。これほど異様な決定が、このような全員一致の偽善者的称賛で迎えられることは極めて稀なことだ。
EUの二大著名人、ヘルマン・フォン・ロンパウとホセ・マヌエル・バロッソは、受賞を“戦争と分裂を克服し、平和と繁栄に基づき、協力し、大陸を生み出すという独自の取り組みに対する最高の認証だ”と表現した。EU緊縮政策推進役のドイツ首相アンゲラ・メルケルは、究極的には何より共通の価値観と平和の為の共同体としてのヨーロッパという考え方に対する評価なのだから、ユーロは“単なる通貨以上のものであることが承認されたのだ”と賞を評価した。
ドイツ議会のグリーンー指導者レナーテ・キュナストとユルゲン・トリッティンは“ヨーロッパ大陸史上、最も成功した平和プロジェクトがノーベル平和賞を授与された”とコメントした。欧州議会の欧州統一左派代表者、ガブリエレ・ツィンマは授賞にこう喜びを現した“EUの積極的な価値を記念するものだ。”
ノーベル平和賞が、明らかに政治的な狙いで授与されたのは今回が初めてではない。実際、111年間の授与史の中で、そうでなかった場合を見つける方が困難だ。ダイナマイトを発明し、爆弾、地雷や銃の破壊力を何層倍にし、その過程で財をなした人物アルフレッド・ノーベルの寄付を受けた賞は常に偽善を特徴としてきた。
受賞者には、ヘンリー・キッシンジャー(1973)、メナヘム・ベギン(1978)と、フレデリック・ウィレム・デクラーク(1993)等の反動的政治家や、セオドア・ルーズベルト(1906)、ウッドロー・ウィルソン(1919)、ジミー・カーター(2002)と、バラク・オバマ(2009)という四人のアメリカ大統領がいる。
三年前オバマに賞を授与したのはとりわけ異様だった。彼は大統領の座について僅か9カ月で、戦争を商売にする前任者の政策を途切れなく継続していたのだ。当時のコメントは、オバマがジョージ・W・ブッシュ路線から離別する為の“象徴的な応援”と“激励”だと言うことだった。実際には委員会はオバマに白紙委任状を差し出したのだ。これは世界で最も強力な軍事機構の全軍最高司令官が、何でも好きなことをすることに対して、リベラルなヨーロッパ世論の支持を得るという合図だった。
これは既に確認済だ。オバマは前任者の政策を継続してきた。グアンタナモはそのまま運用されている。大統領はアメリカ帝国主義に反対する人々の暗殺に無人機を利用している。彼は事実上、ブッシュ政権の戦争政策を批判した人々全員の支持を得て、アフガニスタン戦争を激化させ、対リビア戦争を始め、シリアでの軍事介入と対イラン戦争を準備している。
EUへのノーベル平和賞授与と、それに対するマスコミと、かつての中産階級リベラルや左翼層の熱狂的な反応は、ヨーロッパにおける社会的、政治的分極化の激しさ実証している。経済危機が深まり、失業、貧困や社会的不平等が増大しつつある今、こうした層は、まさに益々多くの労働者が、こうした組織と対峙するようになる中で、EUや他の反動の稜堡を支持しつつある。この矛盾は必然的に大規模な階級闘争という形で激発しよう。
Peter Schwarz
記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2012/oct2012/pers-o15.shtml
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EUへの平和賞授与は、アフガニスタン、リビア等で侵略戦争を推進するNATO支持と同じことだと批判しているのはこうした党派的立場にかぎらない。タリク・アリ氏もデモクラシー・ナウのイタビューでジョークですと、激烈に批判している。
子供の頃、ノーベル賞飴というのがあった。ノーベル平和賞なるもの飴ほどの役にもたたない、とんでもないお手盛り冗談で賞と見なす方が精神衛生にはよさそうだ。
馬鹿げたiPS移植でっち上げや、パソコン乗っ取りやらをマスコミは取報じる。それより沖縄オスプレイ反対運動や、WTO/IMF反対集会や、反原発集会を実況放送してくれたら有り難いが、不都合な真実を伝えてくれと希望するほうが無理だろう。
孫崎享氏、10/15、外国人特派員クラブで講演されたという。『戦後史の正体』の中で、田中角栄追求が始まった場所として書いておられる場所だ。
「大丈夫ですか。不審な動きはないですか」と外国人記者から幾度となく聞かれたという。アメリカ人記者もいたろうが「謀略史観では?」という類の質問はなかったようだ。
指定廃棄物処分場として、勝手に候補地を選び、顰蹙をかっている支配層。指定廃棄物処分で途方にくれるくらいだから、使用済み核燃料処分場など何十年たっても決まるまい。それまでに原発、使用済み核燃料であふれ出すだろう。使用済み核燃料も瓦礫のように全国に振りまくのだろうか?必ず出る猛毒な放射性ゴミの廃棄先も考えずに推進する連中、常識的に考えて、「何十万年にもわたる無差別大量虐殺犯」も同様に思えてくる。
政府の原発推進政策に真っ向から反対した「佐藤前福島県知事、有罪確定」。これこそ「謀略では」と素人は思いたくなる。
佐藤栄佐久氏が追い落とされた後に知事となり、国の方針通りプル・サーマルを推進し現状を招いた佐藤雄平知事にはリコール運動もおきず、安泰という不思議な国。
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EUはまだ試行錯誤の連続、記事のような恣意的な組織には程遠いところが逆説的だが受賞の理由ではないですか。とにかく情報が少なく断片的なので、こういった記事も貴重ですね。
投稿: ましま | 2012年10月20日 (土) 06時37分
おはようございます。
いつも、適切なトラックバックいただきありがとうございます。
本当に助かっています。
頂いた、グアム協定、の件もう一度再勉強します。
2008年の米国大統領選のことで
ひとつだけ覚えていることは
あるテレビで女性のコメントが頭から離れません
「オバマさんに勝ってほしい」と絶叫していたこと。
当時の日本のマスコミ報道の質を改めて
今かみ締めています。
マスコミが創ったオバマ正義論調と維新改革者報道。
騙されないように常に点検をと。
投稿: ゆきぼー | 2012年10月19日 (金) 09時04分