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2012年8月29日 (水)

大虐殺の科学

truthdig

2012年8月6日

Chris Hedges

1945年の今日、アメリカ合州国は、最近打ち負かしたばかりのナチス機構や、同盟を結んでいたソ連政権と同様、道徳的に破綻していることを行動で示した。広島の上で、そして三日後には長崎の上で、アメリカは人類史上で最も効率的な大量虐殺兵器である原子爆弾を爆発させた。爆発は何万人もの男性、女性と子供を殺害した。戦略的にも、軍事的にも、弁解の余地のない大量殲滅行為だった。日本は今にも降伏しようとしていた。広島と長崎には軍事的重要性はなかった。誰も試みようとしなかった戦争犯罪だった。三世紀にわたる物理学の頂点を示した爆発が、我々にとって最も強力な死の代理人としての技術者と科学者の支配的な立場を知らしめた。

“第二次世界大戦で、アウシュヴィッツと広島は、技術を通した進歩が、人間の破壊衝動を、はるかに正確で、信じがたいほど、ずっと壊滅的な形に発展させたことを示したのだ”ブルーノ・ベッテルハイムは言った。“ガス室を備えた強制収容所、最初の原子爆弾は … 我々全員が遅かれ早かれ直面せざるを得ず、いかに不愉快であろうと、我々の大半は、それに対する恐怖に、やっとのことで圧倒されないようにしている自らの死ではなく、何百万人もの不必要で早すぎる、打ちのめされるような死という厳しい現実に我々を直面させた。… 進歩は生命を維持しそこなったのみならず、それまで可能であったより一層効率的に何百万人もの命を奪ったのだ。我々が認めようと認めまいとに関わらず、第二次世界大戦以後、アウシュヴィッツと広島は、人間と技術が共にもたらした、途方もない荒廃の遺跡だ。”

主としてソ連にメッセージを送る為に点火された原子爆弾は、道徳的には科学は中立的であることを気づかせてくれる。科学と技術は人類の野望に仕えている。そして科学分野のごくわずかの人々しか、大企業やら政府から課された限定された課題の先のことを思い描こうとはしない。彼らは、往々にして結果に対する疑問を抱かずに、集団的隷属化と大規模な皆殺しという結果をもたらすであろう、安全保障と監視の体制や、環境破壊の体制を、セメントで固定するために、その暗黒技術を用いるのだ。我々が環境崩壊の方向に向きを変えつつある中、搾取や死から利益を得る組織に対して忠誠な、こうした多くの専門家、科学者や技術者に我々は立ち向かわなければなるまい。

アメリカ合州国の科学者と技術者達は、過去50年間に5.5兆ドルの経費をかけて、70,000発の核兵器を製造した。(ソ連は同様な能力の核兵器備蓄を持っている。)コロンビア大学教授セイモア・メルマンによれば、1963年までに、アメリカ合州国は、ソ連の主要140都市を78回以上も過剰殺りくすることが可能になっていた。それなのに我々は核弾頭を作り続けたのだ。そして、ニューメキシコ州、ロスアラモスの政府の研究所で、日本に対して使用された二発の爆弾製造を監督していたJ. ロバート・オッペンハイマー等のように、膨大な核兵器の蓄積の合理性について公に疑問を呈した人々は、共産主義者か共産主義シンパであるという疑惑で、往々にして熱狂的に迫害された。途方もない犯罪的な計画的大虐殺を要求したのは戦争計画だった。ひたすら何億人もの人々を殺すという目標の為に、我々は益々多くの爆弾を製造した。そして、爆弾を製造した人々は、ごくわずかの例外を除き、自分達の自滅的な創造物に、決して思いを馳せることはなかった。

“倫理を常に人間生活の不可欠な部分と見なしながらも、用意周到なゲーム理論的な表現を除き、ほぼ全員を殺害する可能性について語ることができなかった文明を、我々は一体どのように理解すべきだろう?”オッペンハイマーは第二次世界大戦後にそう問うた。

量子力学の発展に貢献した偉大なドイツ生まれのイギリス人物理学者、数学者のマックス・ボルンは、回想録で、オッペンハイマーや原子爆弾を作った他の物理学者達に同意できないことを明らかにしている。“これほど賢く有能な教え子を持てたのはやりがいのあることだが”ボルンは書いている。“彼らが、それほどの賢さよりも、もっと知恵を発揮してくれたら良かった。”オッペンハイマーは恩師に返事を書いた。“長年にわたって、私が行ったことの多くにあなたが同意されていないのを感じておりました。私も同じ気持ちなので、これもいつも至極自然のように思われました。”だがもちろん、その時には、もはや遅すぎたのだ。

二十世紀の工業殺人を可能にしたのは科学、工業と技術だ。これらの力が生来の人間の残酷さを拡大したのだ。科学、工業と技術は、背徳に仕えている。そして、全国中の研究所に、何百万人もの人間を絶滅させる能力を持った武器体系の仕事をし続けている無数の科学者達がいる。これが“理性的な”事業だろうか? これが道徳的だろうか? それが人類を進歩させるだろうか? それは生命を守るのだろうか?

我々の多くにとって、科学が宗教に置き換わっている。科学の神のような力に、我々は素朴な信頼を抱く。科学的知識は、道徳的には中立とは言え、累積するものなので、人間の歴史と人間の進歩も累積するものだという幻想を生んでしまう。我々にとっての科学は、近代以前の先祖達にとってのトーテム像や呪文なのだ。呪術思考なのだ。科学は人間の傲慢さと、神のような力の強化感を増大させる。科学の恐ろしい力を信じることは、我々の絶滅を意味しよう。

科学、理性と合理性による人類の進歩という17世紀の啓蒙神話は、第一次世界大戦の大量殺りくによって、永遠に抹殺されるべきだった。ヨーロッパ人は一つの世代の集団自殺を目撃したのだ。大戦前、フョードル・ドストエフスキー、レフ・トルストイ、トーマス・ハーディー、ジョセフ・コンラッドやフリードリッヒ・ニーチェらの作品に具現化されていた人間性の暗いビジョンは、ジークムント・フロイト、ジェームズ・ジョイス、マルセル・プルースト、フランツ・カフカ、D.H.ローレンス、トーマス・マンやサミュエル・ベケット、無調で不協和音のイーゴリ・ストラヴィンスキーの様な作曲家や、オットー・ディクス、ジョージ・グロス、アンリ・マティスやパブロ・ピカソ等の画家の作品に、現代的表現が見られる。これらの芸術家や作家達は、人類の進歩などお笑いぐさであることを理解していた。しかし、ファシストと共産主義者が売り歩いた「進歩と栄光」という新しいユートピア的な構想を熱心に奉じた人々の方がはるかに多かった。こうした信念体系は現実を無視していた。彼らは盲目的に死を崇拝した。彼らは達成不能なユートピアを、暴力をもってして追求した。そして科学と技術によって力を与えられて、彼らは何百万人も殺害したのだ。

人間の動機は不合理なことが多く、フロイトが指摘した通り、死と自己犠牲に向かう強力な憧れが含まれている。科学と技術は、戦争、暴力と死に対する太古からの熱情を強化、増幅した。知識は人類を野蛮な風習から解放したわけではない。我々自身のそれを含む、あらゆる人間社会を苦しめている、暗く、まとまりのない切望を、文明の化粧板が覆い隠しているに過ぎない。フロイトはこうした衝動の破壊的な力を恐れていた。彼は“文化への不満”の中で、もし我々がこうした本能を制御したり、抑制したりできなければ、人類は、ストア派哲学者達が予言した通り、巨大な大火の中で自らを滅ぼすことになろうと警告した。人類の未来は、こうした本能を特定し、制御することにかかっている。そういうものが無いふりをするのは自己欺瞞に陥ることだ。

政治的、経済的混乱の期間に、社会的、政治的支配が崩壊すると、これらの衝動が君臨してしまう。人間の最初の性向は、フロイトが正しく認識している通り、お互いを兄弟や姉妹として愛するのではなく、“[同じ仲間である人類]に対する [我々の] 攻撃性を満足させ、相手の仕事能力を報酬なしに搾取し、相手の同意無しに性的虐待し、相手の持ち物を奪い、相手に屈辱を与え、苦痛を与え、拷問し殺害する。”ボスニア戦争、暴れ回るセルビア人民兵、強姦収容所、拷問センター、強制収容所、破壊された村、集団処刑、フロイトの知恵の無数の例の一つだ。せいぜいが、フロイトが知っていたように、我々は、我々の内的緊張や葛藤を受け入れ、規制し、管理することを身につけることができるだけなのだ。文明社会の構造は、常にこの内的緊張をはらんでおり、彼はこう書いている。なぜなら“… 人間の自然な攻撃本能、各人の全員に対する敵意と全員の各人に対する敵意は、この文明のプログラムに抵抗するからだ。”文明の重荷には、それだけの価値がある。代替策は、フロイトも知っていた通り、自滅だ。

理性的な世界、生態系を保護し、強欲なエリートが富を貯め込むのを許すのではなく、富を分配するよう務める経済を築くような世界が、科学者と技術者によって我々に引き渡されることは決してない。彼らのほとんど全員が敵のために働いているのだ。生と死を支配する為、運命と神に逆らおうとして、プロメテウスになろうとすることについて、メアリー・シェリーは警告した。彼女の描いたヴィクター・フランケンシュタインは、彼が墓地から得た死体の断片から作り上げた2.4mの被造物が恐ろしい命を得た際、アメリカ人科学者達が、自分の爆弾が日本の学童を焼いて灰にしたことを悟った際のオッペンハイマーと全く同じような反応をした。科学者ヴィクター・フランケンシュタインは、彼の被造物の“どんよりした黄色い目”が開くのを見た際“息もつけない恐怖と嫌悪感”で胸が一杯になった。”最初の原子爆弾がニューメキシコの砂漠で爆発した後、オッペンハイマーは言った。 “私はヒンズー経の聖典バガヴァット・ギータの一行を思い出した。王子はその責務を果たすべきであることを王子にわからせようと試みている。そして王子の心を打とうとして、ビシュヌはその千手の姿になって言う。「今、われは死となり、世界の破壊者とはなれり。」どんな形であれ、我々全員がそう考えたろうと私は思う。”評論家のハロルド・ブルームは、オッペンハイマーにも適用できそうな表現で、ヴィクター・フランケンシュタインのことを“道徳上の大バカ者”と呼んでいる。

宇宙を支配し、神のように振る舞おう、生と死の決定者になろうとするあらゆる試みが道徳上の大バカ者によって行われてきた。連中は、自らが創り出したものが自身も我々も破壊してしまうまで、恐ろしい科学技術手段を、容赦なく推進し、活用し、略奪し、改善し続けるだろう。連中は原子爆弾を製造している。連中はタールサンドから石油を抽出している。連中は石炭採掘の為に、アパラチア山脈を荒れ地に変えている。連中はグローバリズムと金融の悪に仕えている。連中は化石燃料産業を運営している。連中は大気を放出炭酸ガスで満たし、海洋を滅ぼし、北極・南極の氷冠を溶解させ、旱魃と洪水、熱波、異常な暴風やハリケーンを解き放っている。

「今、われは死となり、世界の破壊者とはなれり。」

クリス・ヘッジズのコラム記事は、Truthdigに毎週月曜日に掲載される。彼は中米、中東、アフリカやバルカン半島で、ほぼ20年間、海外特派員として過ごした。彼は50以上の国から報道しており、クリスチャン・サイエンス・モニター、ナショナル・パブリック・ラジオ、ダラス・モーニング・ニューズや、ニューヨーク・タイムズで働いたが、ニューヨーク・タイムズでは15年間、海外特派員だった。

記事原文のurl:www.truthdig.com/report/item/the_science_of_genocide_20120806/

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簡単に訳せず、掲載すべき当日には到底無理だった。

原文、「2293人が「いいね」と言っています。」とある。

バガヴァッド・ギータの一節が気になった。

1965年のテレビ番組中でオッペンハイマーが引用したというヒンズー経典バガヴァッド・ギータの一節。

Now I am become Death、the destroyer of worlds.と英語Wikipediaにある。

11章32節「我は死神なり、世界の破壊者なり」と日本語Wikipediaにある。

しかしネットで原文翻訳を見ると、英語は上記引用文と違っている。

I am terrible time the destroyer of all beings in all worlds, engaged to destroy all beings in this world

サンスクリット音声みならず、日本語音声まである。

岩波文庫版(上村勝彦)バガヴァッド・ギータ、講談社学術文庫(鎧淳)バガヴァッド・ギータは、いずれもWikipediaと違い、ネットの英訳と対応していて、この文とは違う。

『バガヴァッド・ギータの世界』上村勝彦著、ちくま学芸文庫189ページに、カーラは時間という意味だが、同時に、運命、死の神を意味するとあるのに納得。

と余談を延々書いたが、結局『私の闇の奥』の藤永茂先生による名著『ロバート・オッペンハイマー 愚者としての科学者』朝日選書198ページにある訳を、そのまま流用させていただくことにする。必読書『ロバート・オッペンハイマー 愚者としての科学者』入手困難なのは困ったことだ。

ぐだぐだ原文や翻訳について書いたのは『翻訳の品格』という本を読んだせい。『国家の品格』と似た書名に引かれて拝読。とはいえ上級ロシア語知識皆無なのでチンプンカンプン。それでも、素人なりに、著者が本当に翻訳の質の向上を願っておられることは十分わかる。

『翻訳の品格』新訳にだまされるな 藤井一行著

  • ロシア文学/思想の翻訳に初のメス!
  • 定価:2000円(本体)
  • 発行日:2012年5月15日第一版
  • 発行:著者自家出版会刊
  • 発売:日ロ電脳センター

16ページに、こうある。

私のロシア語修行歴は大学で6年、大学院で8年の計14年におよんだ。これだけ長期にわたるロシア語修行歴は、同じ外語大学出身の先輩・後輩と比べてかなり稀なものだと思う。

振り返れば、小生の英語学習歴、中学3年、高校3年、大学前期大教室2年、計8年。これだけ短期の英語学習歴、皆様と同じものだと思う。インチキなわけだ。

著者の先生、修行歴の充実度もさることながら、多数の辞書をくまなく入手、調べられ、また、正しい原典を求める点でも徹底的。

月とスッポン。

本といえば、この記事の主題を扱った本が最近刊行された。

『原爆の子』をうけついで 本の泉社刊 本体800円+税

165ページの一部を転載させていただこう。

全くわかった。わかったよ。

ぼくらの政府と軍がどんなに大きな罪を犯したかを。本当のことをいうと、

ぼくは君らが前に出した本『きけわだつみのこえ』エス訳で君らはアカだときめていたんだが。真実を伝えることがアカなら、リンカーンもホイットマンもアカということになる。

とりあえず、あの本をもう10部ばかり送ってくれ。友だちの間に宣伝するのだから。代金はなんとか支払うよ。

(エスペラント訳『原爆の子』を読んで アメリカ在住)

異神の怪に加わる議員の一人を見て驚いた。民主党で、2010年10月21日、TPPに反対する議員の勉強会「TPPを慎重に考える会」を発足させ、その幹事長に就任していた人物。その彼がTPPを推進するために立ち上げられたような属国政党異神と行動を共にするという。殿ご乱心というべきか、始めから殿は乱心だったのか。

大本営広報部、TPPの内容については完全報道管制をしながら、ウラジオストックの会議では参加発表はしないというドジョウ氏の日程方針だけ伝える。

TPPは原発と違って100%人災。完全に防ぎきれるはずの売国行為を進んで行う転向名門議員氏やら商業マスコミ「今、われは死となり、世界の破壊者とはなれり。」と自覚しているだろうか?

この属国で隆盛するのは「大虐殺の科学」と「降伏の科学」ばかり?

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