次の大統領選: 取るに足らない争点に基づく、いちかばちかの結果
2012年8月11日
Paul Craig Roberts
“世界唯一の超大国”の次期傀儡大統領選挙まで、あと約二カ月半だが、選挙の争点は一体何だろう? 言及に値するようなものは皆無だ。
公開は、慣習となっていて、期待されている行動だという事実にもかかわらず、ロムニーは所得税申告書を公開しようとしていない。非公開は、後になって公開し、膨大な税金を払ったことを示して、ロムニーも税金を支払っていない超大金持ちだという主張して、選挙の争点にしようとしている民主党の争点を破綻させて、はめようとする戦略なのか、あるいは、ロムニーの所得税申告書は、金持ち減税を主張する候補者として、吟味に耐えられないのかも知れない。
ロムニーの争点は何だろう? この候補者は、まず最初にするのは、マサチューセッツ州知事として、ロムニー自身が最初に制定した制度であるオバマケアを取り消すことだと語っている。これでロムニーは、オバマではなく、民間の保険会社が書いたオバマケアが、公費で提供するはずの、5000万の新規民間保険契約に感謝する保険業界からの政治献金を失うことになる。他の欧米諸国のような、単一支払者健康保険制度を導入しても保険業界の利益にはならない。
ロムニーの他の争点は、共和党の大企業CEO達が、アメリカ経済を他国に外注することで起きたアメリカ国内の失業を、オバマのせいにすることだ。自分達の給与体系を良くする為に、共和党のCEO達が、アメリカ最善の何百万もの雇用をインドや中国や他の国々に移したのだ。これらオフショア工場におけるより安価な労働力は収益の増大を意味し、株主の為に株価を上昇させ、経営陣の業績手当てを引き上げるが、アメリカの雇用、GDP成長や税制基盤を破綻させ、国際収支の赤字額を跳ねあげる。
アメリカの主要な経済問題、アメリカ経済を外国に外注して移転していることは、大統領選挙の争点ではない。従ってアメリカ経済の主要問題は取り組まれず、放置される。
(http://www.guardian.co.uk/business/2012/aug/10/illinois-workers-bain-outsourcing)
選挙運動にもマスコミにも、本当の争点は全く見あたらない。ブッシュ/オバマによる、アメリカ憲法と、恣意的な政府権力からの国民の法的保護の破壊については全く触れられていない。ワシントンが選んだ敵と何らかの形でつながっていると行政府が疑う人物の誰にとっても、適正手続きは、もはや存在していない。アメリカ国民は嫌疑だけでいかなる証拠も裁判所に提示されること無しに一生地下牢に閉じ込められかねず、嫌疑だけで、世界中のどこででも、誰であれその時点でたまたま一緒に居合わせた人々と共に、処刑されかねないのだ。
5月に連邦地方裁判所キャサリン・フォレスト判事が、アメリカ国民の無期限拘留は違憲であると判決を下し、この警察国家の国防権限法(NDAA)の条文を利用して、オバマ政権に対し、差し止め命令を出した。オバマ政権は、連邦判事に向かって中指を突き出して侮辱した。8月6-10日の週、司法省のファシスト弁護士連中は、フォレスト判事に、オバマ政権が差止命令に従うかどうか発言することを拒否した。オバマ政権の立場は“我々は法を超越しているので、連邦裁判所には答えない”というものだ。ロムニーなら、これを叩くだろうと考える向きもあろうが、彼自身権力を欲しがっているので、彼はそうしないのだ。(http://rt.com/usa/news/ndaa-injunction-tangerine-detention-376/print/)
オバマ警察国家は物色して回り、共和党のファシスト判事連中によって支配されている米連邦控訴裁判所を見つけ出し、フォレスト判事の判決を覆すだろう。リベラルな民主党から我々を救う為に、共和党の連邦裁判所判事連中がなすべきことと言えば、全ての権力が責任を負わない行政府にある完全な警察国家に、我々を完全に引き渡すことだ。これはまさに共和党のフェデラリスト・ ソサエティーが長年望んでいたものであり、彼らは今にもそれを手にしようとしている。
わずか十年の間にアメリカ合州国が警察国家へと堕したことは選挙争点となるべきだ。一体誰がそのような可能性がある等と想像していただろう。ところが、いかさまの“対テロ戦争”という名のもとに、法の支配を破壊していることには全く言及がない。
ブッシュ政権は“アメリカの自由と民主主義ゆえに、連中(イスラム教徒)は我々を憎悪するのだ”というプロパガンダを生み出したが、存在していないものを理由に、一体どうやってイスラム教徒が我々アメリカ人を憎悪できよう? 行政府に権限付けをされた、恣意的で、責任を負わない権力は、自由と民主主義とは決して相いれない。ところが、オバマもロムニーもこれを争点にしようとはしない。もちろんマスコミも。
対テロ戦争など存在しない。あるのはワシントンの傀儡国家でない国々に対する戦争だ。責任を問われないワシントンは、現在何千人ものイスラム教徒を様々な国々で大量殺りくし、シリアでの次のホロコーストを準備している。スンナ派とシーア派の分裂と、イスラム教主義者と世俗的なイスラム教徒との分裂に便乗して、ワシントンとイスラエルの傀儡でない政府を打倒するため、ワシントンはシリアで反乱を組織している。
スンナ派とシーア派アラブ人達が平和に暮している非宗教的な国家を打倒する為に、シリアにどっと押し寄せている外国人の中には、ワシントンが11年間も相手にして戦い、6兆ドルも浪費したイスラム教過激派がいる。過激派なのはワシントン側だ。連中は、イスラム教政府ではない、非宗教的シリア政府を打倒したがっている。
これがワシントンの政策に合うので、今や困窮したアメリカ人から搾り取った税金が、アメリカ人が戦ってきたイスラム教主義者に流れ込んでいる。
8月8日、外交問題評議会で演説して、オバマの国家安全保障補佐官ジョン・ブレナンは、シリア政府打倒の為に資金援助を受け、兵器を提供されている、ワシントンが組織した外部勢力に、アメリカ人納税者からの資金を流用していることを擁護した。オバマ政権は、資金的、軍事的支援がアルカイダと提携している反政府勢力に行かないよう用心しているとジョン・ブレナンは澄ました顔で述べた。アルカイダの仲間になっているオバマ政権は、自らの国防権限法NDAAに違反しており、逮捕と無期限拘留を免れない為、ブレナンはこう主張をせざるを得なかったのだ。
シリア政府を打倒すると固く決意したワシントンが、打倒に参加している最も効果的な部隊に武器供与を拒否するなどと信じる人がいるだろうか? “反政府勢力”に対する軍事援助が代替可能であることを知らないほど素朴な人などいるだろうか?
イラクとアフガニスタンで、数千人のアルカイダと戦ってこう着状態となり、超大国の評判が傷つけられる目にあったワシントンは、アルカイダを敵としてではなく、同盟者として雇えば良いことに気がついた。
テスト・ケースはリビアで、そこでアメリカ-アルカイダ同盟は協力してリビア政府を打倒した。ワシントンにとって有利なのは、リビアは互いに争う各派に苦しんでおり、もはやワシントンがすることを邪魔できる国ではないことだ。
リビアはシリアのロードマップだ。
シリアは、第一次対イラク戦争時、ワシントン側につけば、ワシントンをなだめることが出来るだろうと考えた際、ワシントンに、アラブ人はお互いに協力し合うことが出来ないのだから、打倒するにはいいカモだと確信させて、間違いを犯したのだ。
シリアが崩壊すれば、ワシントンは更に次の国を倒すことになろう。しかし、これは大統領候補討論会の話題にはならない。いずれの候補者も、ワシントンが、シリアでの傀儡国家樹立に勝利すべきことに合意している。アムネスティー・インターナショナルさえも買収されて、その影響力でシリア政府の悪魔化に協力している。アメリカだけが有徳で、必要欠くべからざるもので、高潔で、慈悲深く、人類に対する光明なのだ。当然ながら、ワシントンが選んだあらゆる敵は、堕落しており、悪で、罪深く、もちろん“世の光である”ワシントンは決して行わない行為である、反体制派を弾圧し、対立する人々を拷問する国々なのだ。
イギリスのハロルド・マクミラン首相とアメリカのドワイト・アイゼンハワー大統領がシリアで“暴動”を醸成して、シリア指導部を暗殺しようとした1957年の陰謀計画とは違って(http://globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=32254参照)、反政府派連中が、アサド政権を支持する民間人を殺害し、処刑しながら、そうやっている様に、オバマ政権は、介入を人道的表現で覆い隠している。欧米売女マスコミは、破壊行為や殺人を“人道的介入”と表現し、洗脳された欧米国民は道徳的な卓越性で静まりかえっている。
シリアが打倒された後は、地域で最後の独立国家はイランだ。イランも、ワシントンの禁輸措置や、戦争行為そのものによってではなく、“緑の革命”へのワシントンによる資金援助によって弱体化された。現在、イラン国内には第5列がいる。
中国の次に古い国家イランは、現在40あるいはそれ以上のアメリカ軍基地に包囲されており、自らのペルシャ湾内で、4つのアメリカ艦隊と直面している。
金と権力だけにしか関心がなく、シリアとイランの政府を打倒するためワシントンに協力している、名目だけのイスラム教徒は多数いる。
もしイランが倒れれば、ロシアと中国の両国がアメリカのミサイルと軍事基地によって包囲された状態で、我々が知っている状態の世界は最終段階に突入する。緩衝国を全て犠牲にしたロシアと中国は、戦闘無しに、降伏し、傀儡政権によって支配されることに甘んじるだろうか、それとも彼らは抵抗するだろうか?
今後数ヶ月の定型化された選挙運動で、何らかの重要な争点を扱うなどと期待してはならない。アメリカ人は自分たちの運命に気づかず、また世界の他の国々もそう見える。
アメリカ次期大統領の選択は、ただ一つにかかっている。二人の候補者のどちらか、民間寡頭勢力支配者の資金援助を受けた方が最も効果的なプロパガンダをする。
読者が共和党に投票されようが、民主党に投票されようが、寡頭勢力が勝利する。
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Paul Craig Roberts
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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記事原文のurl:www.paulcraigroberts.org/2012/08/11/the-next-election-high-stake-outcomes-based-non-issues/
原文では、寄付のお願いが先頭にある。そのまま載せれば、ブログ見出し上、コラム記事でなく、寄付のお願いに見えてしまうので、逆の順とした。寄付が重要でないと思って変更したわけではない。
オリンピックがようやくおわると高校野球。それどころか領土を巡って、属国政治家が走狗として覇を競う、傀儡政治家国体一色。「ウヨ釣り島」騒動。
孫崎享氏の論説の後で、是非を論じるようなまともな番組はありえない。異常な属国の従米国策が番組内容を常に支配する。
たまたま瞬間見たのは、先日上陸を決行した連中(中国の活動家他)の現地(香港?)会合を撮影した画面を見せ、画面左下に、石破・長嶋という属国日本を代表する政治家の顔が交互に映っていた。おそらくその後、茶番討論もあったろう。しかし人生は短い。精神と血圧に良くない洗脳番組で、貴重な電気を浪費してはなるまい。
孫崎享氏のご本、『戦後史の正体』以外は800円もだせば買える。ゲテモノ番組を見る前か後に、『日本の国境問題』『不愉快な現実 中国の大国化 米国の戦略転換』あるいは『日本人のための戦略的思考入門 日米同盟を超えて』や『日米同盟の正体』を読んで、ゲテモノ洗脳を解毒していただきたいもの。まともな知識による解毒がなければ、結果は、決して北朝鮮を笑えないゾンビー集団の暴走。
8/15前後、戦争の悲惨さ、無謀な戦争を推進したこの国の政治家、軍部の無策・無為のひどさ、いやというほどテレビで見せてくれる。
悲しいのは、最高支配者が神から宗主国に変わっただけで、属国支配層の無策・無為のひどさ、完全属国になってからも、全く変わらないという真実。庶民いじめのひどさは立派に一貫している。
でっちあげの『原発安全神話』によって、福島・周辺県の肥沃で広大な面積の多くを非居住地域化し、領土を失った無責任政党、官庁、財界、司法、御用学界、御用組合、大本営広報部マスコミが、これまたでっちあげの『安保・日米同盟神話』を使って、尖閣、竹島領土紛争に、国民の注意をそらそうとしているだけの話。ただし属国政府だけでは、他国を巻き込む壮大な茶番シナリオは作れない。宗主国のジャパン・ハンドラー様が敗戦宣言日にあわせて発令してくださった大惨事命令書通りの陳腐な筋書き。
オリンピック終了前から、こうしたイベント番組予定、しっかり組まれていたろう。そうでなくて、あの民放の上陸活動家の会議場面撮影などありえない。壮大な国際的ヤラセ。
日本人にとって真の優先順序、震災後、福島原発災害後の復興策、救済策、原発停止策・廃炉策、そして、属国化を永久に制度化するTPP加盟策動を止めることだろう。
ロバーツ氏の結論、宗主国だけでなく、そのまま属国にあてはまる。
今後数ヶ月の定型化された選挙運動で、何らかの重要な争点を扱うなどと期待してはならない。日本人、宗主国国民同様、自分達の運命に気づかないように見える。
次期衆議院選の選択は、ただ一つにかかっている。与党・エセ野党や異神らの党派いずれか、民間寡頭勢力支配者の資金援助を受けた方が最も効果的なプロパガンダをする。
読者が自・公・民に投票されようが、異神らに投票されようが、寡頭勢力が勝利する。
絶滅危惧種が三分の一以上の議席を得て、それを阻止する可能性限り無くゼロに近い。
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