欧米風の似非政治的公正さとロシア人孤児
John Robles
2012年7月20日
写真: RIA Novosti
国際的な養子縁組、人間の中でも幼く、最も無防備な個人の福祉は、政治的公正のふりをする為の屁理屈やら、偽りの企てを、決して許せない分野の一つだ。ロシア人孤児や養子が、アメリカ人養父母によって、虐待を受けたり、死亡したりさえする事件は、これまで何度となく繰り返されてきた。
ロシア-欧米関係のあらゆる側面で、反ロシア・ヒステリーや似非政治的公正さが頭をもたげるのを再三再四みてきた。これは、多くの人は慣れっこになっているが、益々多くの欧米人が気づき始めている話題だ。
最近、ロシア連邦の児童人権問題オンブズマン、パーヴェル・アスタホフとロシアの人権特命大使コンスタンチン・ドルゴフが、人里離れたモンタナ北西部にある、養子になった子供達用の“農場”を訪問しようとした。訪問の目的は、農場にいるとされていて、RIA-Novostiによれば、アスタホフ訪問直前に移動させられた10人のロシア人養子の健全な生活状態を確認することだった。
世界中でロシアの子供達の権利のため熱心に戦ってきたアスタホフは、公式ウェブサイトでこう述べている。"子供達がそこにいるという事実が衝撃的だ。これは一体何だろう。審理前拘留施設? 流刑地? 厄介な子供達のゴミ箱なのだろうか?"
"子供達は外部世界から完全に隔離されていますが、これは子供達の権利侵害の事由です。子供達が必要な支援と待遇を受けているのか否かが明確にされておらず、それで農場にいるロシアの子供達の状態を懸念するわけです"とアスタホフは語っている。
他の国からの子供達なら、こうした懸念には子供達が当然払われるべきレベルの尊敬が払われ、特に子供の安全と福祉をその中核として、こうした問題に必ずきちんとあらゆる配慮がなされていたろう。不幸にもそういうことは起きなかった。
ところが似非政治的公正機関、つまりアメリカのマスコミは、農場の所有者ジョイス・スターケルに対してでなく、アスタホフと、一緒に出張したロシア政府職員集団に対する猛攻を開始したのだ。
APは、子供達やアスタホフの懸念にはほとんど触れず、オンブズマンを“彼らの一人”と書き、スターケルによる、ここで繰り返すに値しない反ロシア発言に満ちた3ページ以上の長大な記事を報じた。(ABCNews)
6日後APは、スターケルの農場の違法性に関して、2010年以来、営業許可されておらず、閉鎖を命じられており、検査官の立ち入りが認められていないという、7つの文章を報じた。農場の他の問題として、農場の建物が建築基準法に合致することを証明できていないこと、災害対策も無く、従業員の身元確認も行っていないこと等があげられる。
話題の対象となっている子供達や、子供達の健全な生活状態については、またしても全く触れていない。アメリカ・マスコミにとっては、枝葉の問題ですらないのだ。あたかも、そうした問題など存在していないかのようだ。
スターケルは、ロシア人検査官のいわゆる農場への入場を拒否しただけでなく、委員会の弁護士メアリー・タッパーによれば、モンタナ州委員会にも、農場の子供達に関するいかなる情報の提出も拒否した。
主権、違法侵入や、プライバシー権に関するアメリカ・マスコミの言説は、どこから来た子供であれ、子供達の安全と福祉の話題に出る幕はないはずだ。ところがアメリカは、多くの場合、似非政治的公正さこそ第一で、子供達の権利と安全は二の次という国だ。
ピーター・ミューレン牧師は、メイル・オンラインという個人ブログで、欧米の養子縁組制度に対する政治的公正さの影響を巧みに表現している: “スキャンダルは、母親が子供を生むより、流産する方が好ましいという、我々の“児童保護施設”のメフィストフェレス的状況にあり、その結果、子供達に対して、全て政治的公正さに由来するこうしたうんざりする偽問題が生じるのだ。”
ロシアとアメリカの両方に十年以上暮らした経験がある人間として、アメリカを旅行するロシア人なら誰で、アメリカ合州国で起きていて、しかも、ろ過された国際的なアメリカ・マスコミからは誰も知ることのない、児童虐待や子供達に対する残虐行為の様々な事件を知って衝撃を受けるだろうと、私はやましいところなく言うことができる。
死、セックス、暴力、偽善や変態というアメリカ文化は、子供達が犠牲者となる恐ろしい事態に反映されている。他の国の孤児達に対しては存在する規制が、ロシア人孤児に関しては働かず、多くの養父母はどこか“恐ろしい”遠方の土地から子供達を何とか“救出した”のだから、自分達は子供に対して何のおとがめもなく好きなことができると思っているという実績があるのだ。
ロシアについては、子供達を尊重する度合いは、アメリカより遥かに高く、子供達に対する犯罪の程度や非人道的行為の事例は遥かに低く、アメリカと比べれば、存在していないも同然だと、教育者としての見識から正直に言える。
ロシアでは、ここ二十年、世間の注目を集めている子供達に対する犯罪は10件未満だ。またしても、子供の虐待、誘拐、子供殺しや小児性愛事件に関するアメリカ・マスコミのほぼ毎日のようにある猛攻を比較せずにはいられない。
ジョイス・スターケルは、ロシアの代表団に問題の施設を調査をさせず、Board of Private Alternative Adolescent Residential and Outdoor Programs(民間青少年施設内・戸外活動委員会?)にも、子供達に関する情報は一切提供していない。また彼女はアスタホフが到着する前に、子供達を施設から移動させた。彼女は一体何が見つかるのを恐れていたのだろう? 人里離れたディープ・スプリング児童農園で、一体何が起きているのだろう?
似非政治的公正を装うアメリカ支配階級にとって、こうしたことに疑問を投げかけるのは面倒なのかも知れないが、私にはそうした問題はなく、子供達の為に、そうした疑問は答えられるべきだろう。
本記事の意見は著者のものである。
記事原文のurl:english.ruvr.ru/2012_07_20/Pseudo-political-correctness-Western-style-and-Russian-orphans/
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ロシア調査団には取材クルーが同行していたようだ。
記事とほぼ同時に、ロシアでは対アメリカ養子縁組に関する法律が変わっている。
孤児・子供をテーマにした映画をいくつか連想した。
- 『人生案内』ソ連、ニコライ・エック監督、1931年
- 『僕の村は戦場だった』ソ連、アンドレイ・タルコフスキー監督、1962年
- 『アメリカの娘』ロシア、カレン・シャフナザーロフ監督、1995年
- 『この道は母へとつづく』ロシア、アンドレイ・クラフチューク監督、2005年
- 『オーケストラ』フランス、ラデュ・ミヘイレアニュ監督、2009年
- 『キッド』アメリカ、チャーリー・チャップリン監督、1921年
『僕の村は戦場だった』は『タルコフスキー生誕80周年記念映画祭』で上映される。
渋谷ユーロスペース
- 8/6(月)11:00
- 8/7(火)18:15
- 8/8(水)11:00
- 8/10(金)18:15
- 8/13(月)14:00
- 8/17(金)18:15
『アメリカの娘』は、8月24日18:30~20:08 浜離宮朝日ホールにて日本初公開。1000円
孤児ではないが、アメリカ人富豪と結婚した母親につれられて(連れ去りに当たるのだろうか?)アメリカに行った娘と、娘に会いにアメリカにでかけたミュージシャンの父親を主人公にした映画。
字幕なしでご覧になって書かれた感想文がある。
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