米企業ニューモント所有金鉱への抗議、死者5名でペルーは非常事態宣言
2012年7月6日、金曜日
デモクラシー・ナウ!
アメリカ企業ニューモント・マイニング社が所有している、既に南米最大の金鉱の拡張に抗議する為、何千人もの人々が集まっているカハルマカの山岳地帯で、最近、ペルー政府は非常事態を宣言した。抗議行動参加者に対し、実弾を使用して、警察は今週だけで五人を殺害した。ペルーのテレビで全国放映された劇的なビデオの中で、集会の自由を制限する緊急措置にもかかわらず、抗議行動参加者を激励した、元ローマカトリックの司祭マルコ・アラナを警官は激しく殴打している。最近カハルマカに行っていた、ジャーナリストのビル・ワインバーグと話をする。"会社、ヤナコチャが鉱山の拡張を提案する度に、現地住民は団結し、道路を封鎖し、業務を停止しました" とワインバーグは語っている。[下記は急ぎの書き起こし]
ビル・ワインバーグ:プログレッシブ誌向け記事の為に、最近カハルマカに行っていたフリーランス・ジャーロリスト。World War 4 Report(第四次大戦報告)の編集者でもある。
フアン・ゴンザレス: こちらはデモクラシー・ナウ!、democracynow.org、War and Peace Reportです。フアン・ゴンザレスです。クララ・ガタリッジさんがなかなかつかまらないので、政府がカハルマカ山岳地域で非常事態を宣言したペルーの話題に行きたいと思います。ここ数日、数千人が集まり、アメリカ企業ニューモント・マイニング社が所有する金鉱に反対しています。この鉱山は既に南米最大です。警察は抗議行動参加者に実弾を使用し、今週だけで5人を殺害しました。
水曜日、ペルーのテレビの劇的な全国向け放映ビデオの中で、集会の自由を制限する緊急措置にもかかわらず、抗議行動参加者を激励した元ローマカトリック司祭を、警官が酷く殴打していた。ビデオは、県庁都市の中央広場のベンチに座っていた抗議行動リーダー、マルコ・アラナの方に、機動隊員が歩いて行く様子を映しています。機動隊員はアラナを包囲し、警棒で彼を殴り、逮捕しました。アラナは後にこのようにツイートしています。引用しますと"警察で連中はまた私を殴りました。顔や腹を殴り、罵りました。" アラナは記者会見でペルー大統領、オジャンタ・ウマラがこの暴力の背後にいると非難しています。
マルコ・アラナ: [翻訳] カハルマカ住民の正当な主張を、銃弾や、拷問や殴打で押しつぶすつもりであれば、政府は間違っている。ウマラ大統領、内務大臣、国防大臣と首相にはっきりと言う必要がある。福音書にある通り、体を殺すものを恐れるな、魂を殺すものを恐れよ。
フアン・ゴンザレス: 2011年にウマラ大統領が出馬した際、ペルー、アンデス山脈の中、県都カハルマカ市のおよそ30キロ北、ヤナコチャ金鉱の50億ドルの拡張を止めると彼は約束したのです。わずか数キロ離れた場所の新鉱山は、地域の水源である湿地帯、湖や小川という自然のままの風景の中へ広がることになるのです。ウマラ大統領は、ペルーで最も貧困な地域の一つにおける鉱山の拡張をあからさまに支持しています。彼は最近こう発言しています。引用します。"建設すべきダムと道路がある。これまでペルーに大いに貢献してくれたのに、カハルマカにとって公平ではない。"
さて、エスカレートし続けているこの状況の詳細について、ニューヨークのビル・ワインバーグさん、プログレッシブ誌向け記事の為に、最近カハルマカにいっておられたフリーランス・ジャーナリストにご参加頂きます。彼はWorld War 4 Report(第四次大戦報告)の編集者でもあります。
デモクラシー・ナウ!にようこそ。
ビル・ワインバーグ: 歓迎有り難う、フアンさん。
フアン・ゴンザレス: 戻られたばかりですね。この抗議運動がここ数週間、現地でどのように展開しているのかお話ください。
ビル・ワインバーグ: ええ、彼らは5月31日にゼネストを始めました。これは実際この地域で何年も続いている一連の抗議行動の中での最新の出来事にすぎません。会社、ヤナコチャが、鉱山の拡張を提案する度に、現地住民は団結し、道路を封鎖し、業務を停止しました。昨年会社が、鉱山側は潰す予定の山中の湖が5つある、コンガと呼ばれるこの地域に進出することを提案してからひどく激化しはじめました。会社は、湖を巨大な採鉱場と鉱山廃棄物のごみ捨て場にしようとしています。地域の水源は既に消失し始めています。主に採掘作業の為に。流域の山々を破壊し、巨大採鉱場に変えてしまっているようです。それで住民達は"もうたくさんだ"と言って、この運動を始めたのです。政府と交渉しようとして、やりとりのようなものもありました。けれども最終的には決裂し、5月31日に彼らの言うところの無期限ゼネストを始めました。
フアン・ゴンザレス: 現在、南米の、特にペルーとボリビアの鉱山労働者は、これまで常に最も活動的で先鋭的な労働組合でした。地域社会と鉱夫、鉱山労働者との関係はどうなのでしょう?
ビル・ワインバーグ: 不幸なことに、極端に分裂しています。鉱山の大半の労働者は、実際、全員というわけではありませんが、彼らの多くの人々は地域社会出身です。不幸なことに、多くの人々が鉱山で働いている村では計画を支持することが多く、農業的な生き方を維持することに関心を持っている村はプロジェクトに反対するという状況になっています。つまり残念ながら、鉱山は実際地域社会を分裂させています。
フアン・ゴンザレス: 全国に放映された、この司祭殴打のビデオのビデオ放映後の影響はいかがでしょうか?
ビル・ワインバーグ: ええ、歴史の長い憤怒の一つに過ぎません。マルコ・アラナは運動の主要指導者の一人です。彼にはティエラ・イ・リベルタード、つまり「大地と自由」という政治団体があり、彼は逮捕されるまさに前日、コンガ計画がカハルマカに押しつけられる唯一の方法は大虐殺だという声明を発表しています。
しかし彼だけではありません。つまり実際、わずか数日前、カハルマカ県知事のような役職にあるグレゴリオ・サントスに、国当局から、引用しますと、政府"転覆" を企てたかどで、捜査が開始されました。これは彼が集会で行った演説にからんでいます。オジャンタ・ウマラ大統領に触れ、"公約を破る大統領はどうなるだろう?" と言葉のあやで彼は群衆に質問したのです。すると群衆は答えました"連中は追い出される" この出来事に対応して、国当局、司法当局が彼の取り調べを開始したのです。そして実際、彼やマルコ・アラナや他の数人の抗議運動指導者は、私が当時現地にいた、3月以来既に捜査の対象になっています。実際、既に継続していた抗議行動とのからみで、道路封鎖やその類のことに関して捜査が開始されたのです。それで、カハルマカの地域政府自身が鉱山拡張反対運動を完全に支持しています。
フアン・ゴンザレス: 大統領のこの変節についてはいかがでしょう? 過去十年間に選ばれた一連の中南米大統領の一人でしたね?
ビル・ワインバーグ: その通りです。
フアン・ゴンザレス: 民族主義者として、外国の搾取に反対する人物として。それなのに、今や彼は転向し、アメリカ企業がペルー最大の鉱山を拡張するのを支持しています。
ビル・ワインバーグ: はい。国民はこれでひどく裏切られたと感じています。昨年、閣僚粛清が行われました。11月のことだったと思います。これが転機と見なされていますが、あらゆる類の左派、彼の閣僚にいた人民主義派連中が首にされ、より保守的で、財界よりの連中が取って変わりました。首にされた一人は環境大臣で、リカルド・ギセケという名の人物ですが、閣僚粛清のわずか数日前に、彼はこう言ったのです。"まあ、コンガ計画の環境影響表明書は見なおすべきですな"。この文書はワシントンと自由貿易協定を締結し、極端に財界優先と広く見なされており、鉱業と石油産業に対し、ペルーの広大な地域を開放した政権、アラン・ガルシア前政権の下で承認されたものであり、皮肉なことに、このアラン・ガルシアに対抗して、オジャンタ・ウマラは、より民族主義的、人民主義的基盤から出馬していたのです。
フアン・ゴンザレス: ニューモント、この出来事全ての中心である企業、同社の現地と世界中の子会社について少しお話ください。
ビル・ワインバーグ: はい、同社は ペルーのパートナーと共に、ヤナコチャ鉱山の51パーセントの出資者で、5パーセントは世界銀行が持っています。同社は世界中に子会社を持っています。また実際最近同社は、ペルーでこの計画を進めることができないのであれば、いつでもアメリカ合州国のネバダやインドネシアや世界中の他の国々で他の機会を検討する用意があると言っています。ですから子会社は、自分達には、言わば世界中の色々な国々に、いくらでも別の使える球があるという、一種の脅しの道具の様なものです。
フアン・ゴンザレス: この会社の実績は、環境なり、労働関係なりで、鉱業会社としては並外れているのでしょうか、あるいは採掘産業として、ごく普通のことなのですか?
ビル・ワインバーグ: ええ、これが、本来並外れていると言えるのかどうかわかりませんが、確かにペルーのカハルマカ山岳にある問題の鉱山、ヤナコチャの実績は、良く言っても、極めて問題があります。お話した通り、多数の水源が枯渇しました。数年前、水銀が大量に漏れ、現地の水源を汚染しました。また地域の多くの山は巨大な採鉱場に変えられてしまいました。それで地域社会は水が無くなってしまう目にあい始めています。
フアン・ゴンザレス: ビル・ワインバーグさん、ご出演くださったことにお礼を申しあげたいと思います。プログレッシブ誌向けの記事の為に最近カハルマカにゆかれたフリーランス・ジャーナリストです。こちらはデモクラシー・ナウ!、democracynow.org. フアン・ゴンザレスでした。
記事原文のurl:www.democracynow.org/2012/7/6/peru_declares_state_of_emergency_as
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こうした深刻な事態、大本営翼賛マスコミは報道しない。ペルー版谷中村、足尾鉱毒公害、マルコ・アラナはペルー版田中正造?
ロシアの反政府・反プーチンデモは、テレビも新聞も詳しく報道してくれる。自国の反政府・反NOだデモになると関心が急に雲散消滅する不思議。
2012/7/6撮影
ヤナコチャとは、すごい名前だ。品性下品なメタボ・オヤジ、ついつい、オランダのリゾート地スケベニンゲン、バリ島のキンタマーニ高原、南太平洋のエロマンガ島を思い出した。
ペルーは御承知の通り、話題のTPP加盟交渉に参加している国の一つ。
なぜペルーか、と不思議に思っていたが、これで氷解。
操業先の国が制定した法律が、企業利益に反する場合、企業は、秘密民間法廷に訴えでて、相手国の邪魔な法律を潰したり、補償をもぎとったりできるという素晴らしいISD条項、こういう場合を予想して作られているのだ。
法的に、外国の鉱山企業の利益が、自国住民の福祉に優先する。非常にわかりやすいTPPの恩恵だ。
ポール・クレーグ・ロバーツ氏が、『太平洋横断戦略的協定(TPP): 大企業の説明責任逃避策』でおっしゃる通り。
今日は人の身、あしたは我が身。
日本も間もなくTPPに加盟するのだから、こういう事態も日常茶飯事?
日本には、宗主国の大企業が運営している大鉱山はないかも知れないが、大金脈は地上にある。健康保健・医療。これをすっかり蚕食できれば、宗主国保険会社は永遠に笑いがとまらない。素人の妄想と思われる方は、日本医師会のTPPについての声明をご覧頂きたい。
もうひとつのTPP加盟交渉参加国、チリの鉱山については、以前に、大事故の記事を翻訳した。『資本主義とチリ鉱山労働者』
同じ時期、伊東光晴京大学名誉教授の素晴らしい反TPP論が新聞に掲載されたので、記事から論説にリンクをつけておいた。今リンクを辿ると、その記事、新聞社のウェブから見事に削除されている。あわてて、残しておられた方の内容をそのまま拝借して、貼り付けておいた。これとて、違法コピーということで、削除を命令されたり、ブログ閉鎖を命じられるのも間近だろう。
ネットを頼ってはいけない。自分のコンピュータに保存しないといけない。
メタボの与太話などどうでもよいが、せめて鈴木宣弘教授の『TPP参加に向けての国民無視の暴走を止める』はお読み頂きたい。
将来の99%の日本人に、未来永劫
- 強烈な放射能を放出し続ける原発
- 放射能に汚染された環境
- 放射能に汚染された食品(米、野菜、果物、肉、魚)
- 放射能に汚染された水
- 放射能に汚染された空気
- 現代版錬金術、エネルギー増殖せず、危険なだけのもんじゅ
- 現代版錬金術、エネルギー再生せず、膨大な放射能源再処理施設
- TPPで、宗主国、属国大企業に永遠に売られる自然
- TPPで、破壊しつくされた医療制度
だけ残してゆく我々の罪深さを思うと、暑い夏の夜、眠れなくなる。サイカドウ・ハンタイという、シングルイッシューの叫びだけではすまない。
そこで一句。
TPP・原発・増税やなこっちゃ!
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人が作ったレールの上に乗るのもいいが、そのレールの先がどうなっているか
考える想像力があれば随分変わるのではないか。
1.地獄行きのレール。
2.行き止まりのレール。
3.1本ラインで途中分岐できないレール。
今は、とりあえず、それで対処できるかも知れない、今は。
レールの行く先を個人のレベルではなく、地域や国家や地球レベルで考える能力が
欲しい。誰かの成功が人や環境や国家を滅ぼすとか勘弁していただきたい。
身勝手なことをやるには、力が着き過ぎたのが人類。
自分の力をコントロールできない人は、仕切る立場からご退場願いたい。
投稿: キョウ | 2012年7月14日 (土) 16時47分