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2012年5月 6日 (日)

愛し合ってから戦争だ!

Linh Dinh

2012年4月27日

帝国が死にかけていて、わめきたて、幻覚に陥っている今日この頃、最も有名な詩人で反戦の親玉が、たとえ愛想が良いにせよ冷笑的で、多くの人々にとっては依然戦争の親玉である人物から、大統領自由勲章を受けるのだ。ディランは一体どう考えているのだろう? 彼とオバマは初顔合わせというわけではない。2010年2月9日、ディランはホワイト・ハウスで"時代は変る"を演じた。私の記憶が正しければ、ディランはいささか不機嫌そうに見え、あの夜は不機嫌な為、読者なり誰なりを裁判無しで監禁したり射殺したりすることを命令できる我が大統領の周りに他の出演者達全員が集まり、我々は終わりなき戦争をしている最中なので、質素にほほ笑むという、良い気分にさせる最後の集いをすっぽかした。覚えておいでだろうか? ディランのかつての愛人「ジェーン女王」も同じ夜会で歌い、そっと口ずさむ前に、バエズはオバマをじっと見つめ、優しい声で言った。“大統領閣下、あなたは大変人気がおありです。”わがあべこべの国においては、白髪交じりの平和運動家が、今や戦犯にセレナーデを歌うのだ。

あの晩、あるいは今も、何の皮肉も感じなかった方々は、読者の素敵な心が、フォックス・ニューズや、トランス脂肪、コーンシロップ、あるいは、例えば平和と戦争のような二つの対立する概念を同時に奉じるCNNで一杯に詰まっている為で、この二者は全く不釣り合いで、そもそも対立していたことにご留意願いたい。それとも、おいボブよ、「国外での激烈な戦争」(訳注:彼の歌『時代が変わる』の一節)が、ミサイルを発射し、ゆっくりジャミングするこの男によってひき起こされていることが分からないのか? 飽き飽きする「仮面を通して見えないか」?(訳注:彼の歌『時代が変わる』の一節)皆すべて冗談だ。実際、オバマがジョナス・ブラザーズに、自分の娘たちに近づくようなことをすれば、プレデター無人機で攻撃されるぞと警告した際に、世界が笑っていたとは思えない。

洞察力のある人々にとって、悪趣味な皮肉は既にたっぷりあったにせよ、実際に血まみれの手を見せびらかす機会すらなかった、大統領の座についてから一年もたたないオバマに平和賞が授与された後も、まるでこの賞に依然かなりの正当性があるかのように、この褒賞でディランがノーベル賞に多少近づくかどうかと、ウオール・ストリート・ジャーナルは熟考している。偉大な故ジョー・ベイジェントは、当時“ノーベル委員会は、2009年度平和賞を、その年、最も多くの爆弾を投下し、地球上で最も貧しい人々を殺害した、まさにその本人に授与したと発言していた。”あるいは、前年スウェーデン人はシリアル・ジョーカー、陰鬱なポール・クルーグマンに経済学賞を授与しており、このスカンジナビア人連中は、いんちきなアメリカ人と同じなのかも知れない。(平和賞はノルウェー議会によって選ばれる。) こうした最近のトリックは長い間違いリストの最上位にくる。それでも連中がくれるのはかなりの現金で、約200万ドルなのだから、あらゆる公式褒賞を拒否する主義のジャン・ポール・サルトルと、和平協定調印後も北ベトナムが戦争を継続していたという理由によるレ・ドク・トの二人が受賞を断ったのはむしろ並外れたことだった。少なくとも、ノーベル平和賞はアドルフ・ヒトラーには決して与えられなかった、アメリカで最も著名な詩人の一人、ガートルード・スタインは、ヒトラーは受賞すべきだと考えたが。1934年5月6日、ニューヨーク・タイムズは、スタインのこういう発言を掲載した。"彼はドイツから、異義を唱え、戦うあらゆる連中を排除したのだから、ヒトラーは平和賞を受賞すべきだと思う。ユダヤ人や民主主義分子や左翼分子を排斥することで、彼は活性化をもたらすあらゆるものを排斥したのだ。つまり平和だ。"

もし活動をもたらすあらゆるものを追放することで、平和になるのであれば、現在のアメリカは理想郷になっているはずだが、今も継続中のプロセスとして、多くの工場がより安価な労働力を求めて海外に脱出しつつあり、アメリカの製造基盤が崩壊しているので、プロパガンダにもかかわらず、クルーグマンやオバマのような嘘つきの親玉連中がどのようことを言おうと、遥かにひどい爆発が待ち受けているとはいえ、最近のティー・パーティーや占拠運動の勃発からも明らかなように、アメリカ人はこれまで以上に落ち着きを失っている。海外の戦線では幾つか同時並行する戦争をしているので、アメリカはいつも通り多忙だ。

ディランは、こんな主戦論者から自由勲章を受賞するのを拒否し、儀礼を破り、残忍なホストを、“おい 戦争の親玉たち / すべての大砲をつくるあんたがた / 死の飛行機をつくるあんたがた / 大きな爆弾をつくるあんたがた / 壁の後ろに隠れるあんたがた / デスクの後ろに隠れるあんたがた / あんたがたに言っておきたい / あんたがたの正体はまる見えだよ”(訳注:彼の歌、『戦争の親玉』の歌詞)と歌う奇襲で我々全員をびっくりさせてくれるかも知れない。だがもちろん彼はそれほどとっぴなことはするまい。この賞を受け取ることで、最近のミュージックビデオでまさにケイティ・ ペリーが我が兵士達と銃にしてくれたように、ディランはオバマを更にもう一枚のクールな布で飾りたて、彼を実際より更に見栄えを良くするのだ。

浮気なボーイフレンドと別れて、ペリーは衝動的に海兵隊に入隊する。ゲームセンターで、元の裏切り男と水鉄砲をかけあう代わりに、ペリーは今はM-16を発射している。不倫なくそったれの気味悪い眼差しの下で浴槽にゆっくり浸かる代わりに、ペリーは今、訓練中の同僚軍人と水中で格闘している。不誠実な嫌なやつに頼るのではなく、ペリーは今や証明済の同志達に囲まれている。青い旗、新しい空の下でうっとりと歌うペリーでビデオは終わる。本当のアメリカ海兵隊兵舎で撮影されたこのビデオには、戦車やヘリコプターと、80人の海兵隊員がエキストラとして登場し、我々は既におなじみで、ディランがオバマの手を握り、目を見て、微笑む時に、我々が再び目にするであろう、我がエンタテインメント産業と軍需産業との本格的共同制作だ。

記事原文のurl:linhdinhphotos.blogspot.jp/2012/04/make-love-then-war.html

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Linh Dinhはサイゴン生まれのベトナム系アメリカ人作家。『血液と石鹸』という本が翻訳・刊行されている。

日本のweb・ブログ、受賞を報じる記事はみかけるが、こういう真っ当な発言をみかけないのがなんとも不思議。

ディランの歌、『風に吹かれて』しか知らない。ベトナム戦争が終わった時に『風に吹かれて』も用済みになったのかも知れないと幻想を抱いた。残念ながら『風に吹かれて』がますます真実になる時代となり、『風に吹かれて』を作った本人が戦争の親玉のポチになるとは想像もしなかった。

『Blowin the wind』高石ともや

 

 

 

 

『時代は変わる』中川五郎

 

 

 

 

ぴったりの画像付き『戦争の親玉』下記で聞ける。きちんと表示されるのに、多少時間がかかる可能性がある。最初に短いスペイン語宣伝あり。

http://www.zappinternet.com/video/gimRxoGyoK/Bob-Dylans-MASTERS-of-WAR

『戦争の親玉』の替え歌で『原発の親玉』(日本語)という歌もある。日本の原発が全て停止しているという稀有な今の時期に非常にお勧め。幾つかバージョンがあるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

予言的?な、今は歌えそうにない?歌もある。

『ゲンシバクダンの歌』小室等と六文銭 @中津川ジャンボリー

 

 

 

 

ケイティ・ ペリーのミュージック・ビデオ、日本では現在見ることができないようだ。

よく似た題名の本を書いたノーマン・ソロモンのデモクラシー・ナウ!インタビュー『愛し合って、戦争になった: 好戦国家アメリカとの遭遇』を以前に訳した。

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