SOPAが航空母艦だったとすれば、ACTAとTPPは原子力潜水艦
Martin Carstens: Staff reporter
2012年2月2日
SOPAは当面棚上げされており、法案は死んだという人もあるが、 警戒を続ける必要があろう。とはいえ、政府が貿易協定と称して、インターネットでの言論の自由とプライバシーを脅かす新法律を秘密裏に生み出す場合は、それも困難だ。
模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)を巡っては多くの議論がある。これは次ぎなるSOPAだと称する人々もいれば、それほど陰湿ではないと見るむきもある。反ACTA騒動の大半は、実際には、条約の初期草稿の解釈による波及効果だが、確かに懸念すべき重要な問題もある。
ACTAとは何か?
ACTAというのは、知的財産権侵害に対処するための国際的な計画だ。より具体的には、模倣品、ジェネリック医薬品や、我々ネチズンにとっては最も重要なのだが、インターネット上の著作権侵害等、に対処する、調印国の国内法による微調整を受ける、ガイドラインとなる。
アメリカにより貿易協定として意図されたこの条約は、昨年10月、オーストラリア、カナダ、日本、モロッコ、ニュージーランド、シンガポール、韓国とアメリカ合州国で調印された。今年1月、欧州連合とその22の加盟国も署名したので、調印国の総数は31にのぼる。残った加盟国(キプロス、エストニア、ドイツ、オランダとスロバキア)それぞれの国内での手続き完了次第、調印するものと期待されている。これは今年3月31日以前に行われる予定だ。6月には、最終的に、ACTAの運命を決定する、欧州議会での最終討論がある。
インターネットに影響するACTAの問題に焦点を当てたい。
ACTAの重要な問題点1 - ビッグ・ブラザー
27.3項は、加盟国に“業界内で、効果的に、商標権と著作権や、関連する権利侵害に対処することを推進する 正当な競争を維持しながら、言論の自由、公正なプロセスや、プライバシー等の基本原則を維持しつつ、参加国の法律と調和させる”様に要求している。
ISPに、ユーザーのあらゆる行動を監視することを強制するという主張にもかかわらず、27.3項が、オンライン・ポリシー上、実際に意味しているように見えるのは、著作権を侵害しているユーザーがいるISPに対するセーフハーバーを作る可能性だ。フランスのHADOPI法案、あるいは、アメリカのデジタルミレニアム著作権法(DMCA)における、セーフハーバー条項を想定頂きたい。
アルス・テクニカのティモシー・リーが指摘しているように、加盟国が対応が可能な、無難な、ネット以外での手法も用意されている。こうしたものの中には、著作権の励行に関する会議の開催、著作権や、著作権を尊重することを奨励する文書の各社への送付、または商標権侵害容疑に対する匿名電話回線の開設、等がある。
たとえそうであっても、現在まだそうした法律がない調印国、特に国民が物事に対して一切発言権がない場合に、この規定に対する抗議の可能性があることは容易にわかる。そこで、二番目の重要な問題が現われる。機密性だ。
ACTAの重要な問題点2 - 機密性
ACTAは、過去三年間、極秘裏に交渉されてきた。条約が洩れるまで、これについて誰も、何も知らなかった。航空母艦のように、誰でもそれがやってくるのが見えるSOPAとは違って、ACTAは、非民主的な手法で選ばれた代表達によって、公開された立法過程の外部で交渉された原子力潜水艦だ。一体どうしてそのようなことになったのだろう? ACTAは“行政協定”だということにされており、それにより、交渉担当者が通常の議会批准プロセスを省略することを可能になっている。実際、ACTAは、新たな管理機関を生み出し、世界貿易機関、世界知的所有権機関、あるいは国連等の既存の組織を無視するものだ。
条約が、自国で法律となるのか否かについて、国民には一切発言権はない。我々に見えない場所で、生み出され、調印されたのだ。ポーランド国民が政府がACTAに参加したのに気づいて、250,000人の市民が請願に署名し、何千人もが抗議行進した。
ある欧州議会議員は、検証プロセス丸ごと“見え透いたまねごと”だと結論して、条約を精査する報告者という役職を辞任してしまった。
ここに、透明性は存在していない。民主主義ではない。
もし、ACTAが国際法の拘束力を持った一部となれば、この秘密の立法手法が、未来の条約の前例となりかねない。
ACTAが存在する世界においては、“我々の側でなければ、我々の敵だ”という原理は、条約を採用しない諸国にも影響を与えかねない。調印を拒否する国々は、その国の知的財産保護対策が劣っているかのように見なされるという危険を冒す可能性がある。
太平洋横断戦略的経済連携協定(TPP)(日本政府・マスコミでは、「環太平洋」)
ACTA同様、TPPも、アメリカによって秘密裏に生み出され、ほぼ5年間、発展しつつある。およそ10カ月前に、デジタル鍵、ISPの法的責任と、ISP切断に係わる、アメリカのデジタルミレニアム著作権法(DMCA)の規則を、調印した国々が採用することを認める条約草案が漏洩された。
またもや、条約に調印した国の国民の目には、この法律が到来するのが見えないのだ。ACTA同様、パブリック・コメントを得るために交渉者達が公開する頃には、ほとんど重要な変更は不可能だ。
結論
こうした新たに浮上する脅威を警戒し、透明性と民主主義の基本原則を主張しよう。我々全員に影響を与えるこれらの法律は、決して秘密交渉されるべきではない。秘密交渉された場合、疑念を生み出し、たとえ法律がそういうことを狙っていなくとも、憶測に油を注ぐことになる。あるEUのACTA交渉担当者が、在スウェーデン・アメリカ大使館職員に語った通り、“機密性の問題が、スウェーデンにおける交渉環境に対し、悪影響を及ぼした… 交渉にまつわる機密性が、制定過程全体の正当性が疑問視される結果を招いたのだ。”
記事原文のurl:memeburn.com/2012/02/if-sopa-was-an-aircraft-carrier-acta-and-tpp-are-nuclear-submarines/
----------
不都合なブログ、ウエブは切断するという対策を盛り込んだ条約が、いとも簡単に、知らないうちに成立している。人ごと、杞憂とは思えない。
おりしも、人気ブログ「ネットゲリラ」(http://shadow-city.blogzine.jp/net/)が、3月12日昼すぎから、アクセス不能という。
阿修羅という掲示板?も、数日前、全くアクセス不能状態だった。偽のトップ画面がでて、クリックすると、アメリカのわけのわからないサイトだった。閲覧者のドメインほか、皆、その、おかしなサイトに収集されただろう。
アメリカの外交、ジャパンハンドラー諸氏の行動、属国内で、従属一辺倒の政治家、高級官僚、御用学者、マスコミ等々の皆様の姿勢を問題だと批判する掲示板のアドレスが、comであることが、そもそも素人には非常に不思議に思える。
ともあれ『ミクロネシアの小さな島・ヤップより』の、これは偶然とは思えない…
という記事、お説の通り。
マスコミは痛くもかゆくもないので全く触れない。内心喜んでいるのかも?
「政府は必ず嘘をつく-アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること」堤未果著を拝読した。素晴らしい本だ。当然ながら、あちこちのブログで絶賛。高価な本ではないので、是非購入されるようお勧めしたい。
個人的に不思議なことに(皆様にとっては、もちろん不思議でもなんでもない)まさに、その言葉が語られている彼の講演『ハワード・ジン「歴史の効用とテロリズムに対する戦争」を語る』翻訳記事へのアクセス、増えていないようだ。
実はココログの当ブログ、3/12以降カウンター停止で、アクセスはわからない。
「ひとつだけ覚えておくように。政府は嘘をつくものです。」ハワード・ジンの講演の中に出てくるが、実は、ジャーナリスト、I・F・ストーンの言葉。
"Just remember two words: governments lie"
文字通り訳せば「単語を二つだけ覚えてください。政府というものは嘘をつく」ということだろうか?日本語では、単語二つではないので、「ひとつだけ」とした。
故加藤周一氏も、「夕陽妄語」でこの言葉を二度引用しているという。(連載も、単行本も読んでいるのに、恥ずかしながら、まるで記憶にない。)
I.F.ストーン「すべての政府は嘘をつく」
以前、当ブログ、二度、突然閉鎖されたことがある。理由のメールが送られてきたが、何が問題なのか全く意味がわからなかった。突然、閉鎖が解かれ、アクセスが可能になった。
ゴミのような当ブログでも、二度あることは、三度あるだろう。
こうした法律や、日本の情勢を考えれば、三度目は、閉鎖されたままになるかも知れない。万一ご興味ある記事がおありならば、突然の閉鎖に備えて、お手許に保存されるようお勧めしたい。
« なぜアメリカ人は民主主義を獲得できないのだろう? | トップページ | エジプト軍事政権、NGO工作員に対する渡航禁止令を解除 »
「アメリカ」カテゴリの記事
- アメイジング・グレース(素晴らしき神の恩寵)!バイデンの許しの奇跡(2024.12.10)
- アメリカ製ミサイルをウクライナがロシアに発射するのをバイデンが許可した理由(2024.12.08)
- ビビにとって、テヘランへの道はダマスカス経由(2024.12.07)
「インターネット」カテゴリの記事
- 欧米帝国主義は常に嘘の溜まり場だったが、今やメディア・トイレは詰まっている(2024.11.30)
- アメリカとイスラエルの戦争挑発に対する批判を積極的に検閲するメタ(2024.10.10)
- 余計者パベル・ドゥーロフ(2024.10.04)
- まだ分かっていないドゥーロフ(2024.09.17)
- Telegramのパベル・デュロフを人質に取ったフランス(2024.09.02)
「TPP・TTIP・TiSA・FTA・ACTA」カテゴリの記事
- アジア回帰:何がイギリスをつき動かしているのか?(2021.03.11)
- 最近の「クァッド」フォーラムとミュンヘン安全保障会議(2021.03.05)
- 「欧米」メディアが語るのを好まない新たな巨大貿易協定(2020.11.22)
- アメリカ、中国を狙って、ウイグル・テロ組織をリストから削除(2020.11.16)
- 中央アジアのラテン文字化はアメリカ地政学の手段(2019.12.24)
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: SOPAが航空母艦だったとすれば、ACTAとTPPは原子力潜水艦:
» これは偶然とは思えない… [ミクロネシアの小さな島・ヤップより]
今回の写真は道端に咲くピンクの花シリーズ…といっても、記事はまったく関係ないことですが…
3.11の直前に『2チャンネル』関係者に家宅捜索が入ったり『阿修羅』もおかしなことになったなと感じていたら、その後でもあちこちで変なことが起きていて、しかもそれがあまり話題になっていないのもすごく気になる…。
しかも…NHKやテレビ朝日が、なんと3.11式典での天皇のスピーチから、勝手に原発と放射能に関する部分をカットしたんですって!?飯山一郎さんの記事からどうぞ:
〇陛下のお顔に秘められた御覚悟... [続きを読む]
» 政府(権力)は常に嘘をつく」皆さんはよく知っていると思いますが [ゆきひろ社会科日記]
「 [続きを読む]
« なぜアメリカ人は民主主義を獲得できないのだろう? | トップページ | エジプト軍事政権、NGO工作員に対する渡航禁止令を解除 »
コメント