なぜアメリカ人は民主主義を獲得できないのだろう?
Paul Craig Roberts
2012年3月3日
シリアでは、アメリカ侵略前のイラク同様、政府は非宗教的だ。スンナ派とシーア派の分裂があるアラブ諸国では、非宗教的な政府が重要だ。非宗教的な政府が、分裂した国民がお互いに殺し合うのを防ぐのだ。
第二次世界大戦後にアメリカが設定したニュルンベルク基準のもとでは戦争犯罪にあたるアメリカ侵略が、サダム・フセインの非宗教的な政府を打倒すると、イラクのスンナ派とシーア派同士が戦うようになった。イラク人同士の内戦がアメリカ侵略を助けたのだ。それでも、十分な人数のスンナ派がイラクを占領するアメリカ人と戦うのに時間を割いているため、武力行使において、アメリカがいかに乱暴で、無差別であろうと、アメリカは決してバグダッドを占領することなどできない。ましてイラクをや。
アメリカ侵略の結果は、イラクにおける民主主義と女性の権利ではなく、まして始めから、武器査察官が完璧に明らかにしていた通り、存在していなかった大量破壊兵器の破壊でもない。結果は、スンナ派からシーア派への政治権力の移行だ。イスラムのシーア派版とは、イラン版ということだ。かくして、ワシントンの侵略は、非宗教的な政府から、イランと同盟するシーア派へとイラクにおける権力を移行させた。
現在ワシントンは、この愚行をシリアでも繰り返そうとしている。アメリカ国務長官、ヒラリー・クリントンによれば、ワシントンは、アサド政権を打倒するためなら、アルカイダと手を組むことさえ辞さない。今やワシントン自身がアルカイダと繋がっているということで、ワシントンの政府は、反テロ法規のもとで逮捕されるのだろうか?
アサドに対するワシントンの敵意は偽善だ。2月26日、シリア政府は、将来の大統領に任期を設定し、バース党が享受した政治的独占を無くすシリア新憲法の国民投票を実施した。
シリアの投票率は57.4%で、2008年オバマ当選時の投票率に匹敵する。(シリアで武装した西欧が支援する反乱があったにもかかわらず) 1972年から2004年までの九回の米大統領選挙より高い投票率だった。新シリア憲法は89.4%の得票で承認された。
だが、ワシントンは民主的な国民投票を非難し、シリアに民主主義をもたらすため、シリア政府は打倒されるべきだと主張している。
この地域におけるワシントンの同盟者達、サウジアラビアやカタールのような、国民から選出されたわけではない石油君主国は、自国内では決して認めようとはしていない民主主義を、シリアにもたらすために、反政府イスラム教徒に進んで兵器を提供するという声明を発表している。
ワシントンにとって“民主主義”は大量破壊兵器だ。ワシントンがある国に“民主主義”をもたらすというのは、リビアやイラクの様にその国を破壊することを意味する。民主主義を意味してはいない。リビアは大混乱し、実効的政府のない人権の悪夢状態だ。
ワシントンはヌリ・アル-マリキをイラク大統領に据えた。彼は選挙で敗北したのに権力の座に居すわっている。マリキは副大統領はテロリストだと宣言し、逮捕を命じ、スンナ派の政治家を逮捕するのに国家警察を使っている。シリアのアサドはイラクのマリキよりは民主的だ。
十年間、ワシントンは、そのむきだしの侵略戦争を“中東に民主主義と人権をもたらす”ものといつわり続けてきた。ワシントンは中東に民主主義をもたらしながら、アメリカでは民主主義を破壊している。ワシントンは中世の拷問地下牢や自己負罪を蘇らせた。ワシントンは適正手続きや人身保護令状を消滅させた。アメリカ国民が、裁判や、証拠の提示無しに、無期限に投獄されることを認める法律を、オバマの要請で、議会は圧倒的多数で可決した。令状無しの捜索やスパイ行為は、21世紀の変わり目には違法で違憲だったが、今や日常茶飯事だ。
万一、いかなる証拠を提示することなく、その人物が、アメリカ政府にとって脅威であると、行政府が判断すれば、いかなるアメリカ人でも、どこにいようと殺害する権利があると、オバマは主張している。そんな成文法はないのだが。アメリカ政府唯一の部門と益々化しつつある行政府の主観的意見を基に、アメリカ人の誰が、何処にいようと、殺害しうるのだ。他の“同格”二部門(訳者注:司法・立法)は“対テロ戦争”のもとでしぼんでしまった。
ワシントンは、一体なぜ、中東(サウジアラビア、バーレーン、カタールと首長国を除き)、アフリカ、イラン、アフガニスタン、ロシアや中国に民主主義をもたらそうと固く決意しながら、アメリカ国内では憲法で規定されている権利に強く反対するのだろう?
アメリカ人が18世紀にイギリス王ジョージ3世に対する革命を成功させて獲得した権利は、21世紀にブッシュ/オバマによって全て奪い去られた。これはニュースの話題になるはずだと思われる向きもあろうが、そうではない。
真理省が、それについて何か言ってくれるなどと期待してはならない。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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記事原文のurl:www.paulcraigroberts.org/2012/03/02/why-cant-americans-have-democracy/
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真理省、御承知の通り、オーウェルの小説『1984年』に由来する。インチキ・プロパガンダを業務をする省。著者、マスコミのことを言っているのだろう。平和省は、もちろん国防省。
宗主国にして、この状態。まして、属国において、まともな状態であるわけがない。子は親の鏡。お笑いタレントが洗脳されているという愚劣な報道で、原発犯罪が放置されていることから、国民丸ごと洗脳する体制マスコミ。地震、津波、原発事故の被害者の方々がご苦労されていることを報じるのはもちろん仕事だろう。そうした災害を悪化させた、あるいは、原発をいまだに推進している責任を追求するのが、本来のジャーナリズムという仕事だろう。もちろん、
真理省が、それについて何か言ってくれるなどと期待してはならない。
カレル・ヴァン・ウォルフレン氏の新著『日本を追い込む5つの罠』に、簡潔でわかりやすいTPP解説があった。インチキ素人ブログ中の引用を読むだけでなく、是非とも、本をご購入の上、ご自分で内容を判断頂きたい。第四章に書かれた、沖縄米軍の実態も的確で、日本人の常識となるべき情報。
第一章 TPPの背後に潜む「権力」の素顔
ここであらためて強調しておきたいのは、TPPとは市場に関する協定などではない、ということだ。これは権力に関するとり決めなのである。さらにはきりと言うならば、TPPとは、おもにアメリカの巨大企業の権力についてのとり決めなのである。
TPPという構想の元は、
1995年、経済協力開発機構(OECD)の多国間投資協定(MAI=Multilateral Agreement on Investment)。
このMAIの目的は歴然としていた。経済協定という体裁をとってはいるが、その実、これを構想した人々が考えていたのは、以前、このような協定を通じて商人たちが獲得したと同じ自由を、投資家たちにも与えることであった。そうなれば先進国の有力企業と開発途上国をも含む世界中の政府との関係は変化するだろう。
中略
MAIが頓挫したあと、WTOのドーハ・ラウンドに形を変えて浮上したが、これまた暗礁に乗り上げた。
そしていま、これはTPPとして復活したのである。
第四章 「国家」なき対米従属に苦しむ沖縄、169ページで、氏は、日本を保護国と呼んでいる。
2012/3/11、有楽町イトシア前広場『TPPを考える国民会議』演説会で、皆様、ウォルフレン氏と同趣旨の発言をされている。
- ジェーン・ケルシー教授は「TPPAは、Taking Peoples Power Away(人々の権限を奪い去る)と言われている」と紹介された。(あちらでは、TPPではなく、TPPAという略語で呼ばれている。)更に、ニュージーランドもひどいことになるが、日本の場合は、もっとひどいと。なぜなら加盟国は、全てが決まった後に日本をいれろと言っている。つまり、日本の意見など、全く反映されないのですよ。政府が民主主義を守らないのであれば、政府を変えましょう、と。マオリの格言?で話を締められた。「絶対に戦い続ける!」というような趣旨だったが、全く未知な言語の原文、全く記憶できなかった。
- ラッセル・ノーマン議員は「ニュージーランドの議員でありながら、何らTPPについての情報は知らされずにいる。TTPは、単なる貿易問題ではない。」
- 韓国権永吉議員は米韓FTAの惨状を語り、米韓FTAとTPP断固反対を訴え、1%による、99%の搾取に反対するウォールストリート占拠運動にも触れられた。FTA参加で、韓国は良くなると与党は嘘宣伝をし続けた、と。
- 首藤議員「26項目の中、貿易は2項目しかない」と。「理不尽な条約に反対して、世界の人々が集まっている。こういう、人々の連帯をこそ、我々は目指していた。」と。
- ロリ・ワラック氏は、アメリカ国民も、秘密裏に進められたNAFTA(北米自由協定)で膨大な失業者を出し、賃金低下がおきるという深刻な影響を受けており、TPPには反対だ、と言われた。
- ピーター・メバードック氏は、医薬品、医療が脅かされると警告。「父親が外交官だったので、世界中で暮らした。いつも父親の仕事を誇りに思っていた。しかし、いまこのTPP推進をしているアメリカ人外交官を恥ずかしく思う。」
TPP、加盟国の99%の人々を犠牲にして、ウォール・ストリート支配者達、アメリカ大企業の1%と属国におけるその子分の利益を極大化する仕組みだろう。
民主党元代表の被告、禁錮3年を求刑され、論告で「共謀の成立は明らか。刑事責任回避のために不合理な否認を繰り返した。規範意識が著しく鈍っていると言わざるを得ない」とされたそうだ。
すると、福島原発事故、そして、TPP加盟策謀で、民主党幹部全員が、虚偽報告・処理事件で、起訴され、被告となり、
終身刑を求刑され、論告で「共謀の成立は明らか。刑事責任回避のために不合理な否認を繰り返した。規範意識が著しく鈍っていると言わざるを得ない」とされるのだろうか。
TPP加盟が決まれば、売国奴諸氏は、罪を受けるどころか、地位を高め、更に美味しい生活を楽しむことになり、99%の一人、小生の人生、益々暗くなるだろう。
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