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2012年3月 2日 (金)

ポーランド政府、労働者階級への新たな攻撃を計画中

wsws.org

Christoph Dreier

2012年3月1日

欧州委員会によれば、ポーランド経済は2012年、欧州連合のどの加盟国より高い成長率2.5パーセントで成長する。失業と不完全就業が増大する中、ドナルド・トゥスクの市民プラットフォーム(PO=プラットフォルマ・オビヴァテルスカ)政権は、労働者に対する新たな攻撃を準備している。

これらの攻撃は、年金制度の差し迫った見直計画に重点を置いている。定年は、男性65歳、女性60歳から、全員67歳へと延長される予定だ。現行法の下では、仕事によっては、仕事がきついという理由で、早期退職が認められている。新法は、そうしたあらゆる法規を廃止し、一部の労働者の定年年齢を10年以上延長する。

この大規模な攻撃を説明する口実はポーランド国民の老齢化だ。しかし年金制度への資金流入が滞っている主因は、10パーセント以上もの失業率という理由による、若年労働者の西ヨーロッパへの大量脱出だ。

年金大幅削減の社会的影響は壊滅的だ。既に、55歳以上の人々の大多数が常勤職につくことができなくなっている。この層の人口のわずか36パーセントしか常勤職についていない。

この法律を導入するにあたって、ポーランド政府は欧州連合(EU)が構築したガイドラインに従っている。2011年2月、ユーロ圏諸国が合意した“競争力強化に向けた協定”は全ヨーロッパで67歳定年導入を要求している。トゥスクは2015年までにこの要求に応える予定だ。

今年早々、政府の医療“改革”が発効した。これで公共医療サービスと医療労働者の条件とが大規模に悪化することになろう。この法律は、地方自治体に不採算の病院を民営化するよう強いている。スタッフは、もはや公共の雇用法規によって守られず、雇用主は、賃金を引き下げ、労働時間を増やすが認められる。

更に、政府が多くの薬品に対する助成を削減したり、廃止したりしたため、多くのポーランド人は、もはや薬品も買えなくなっている。

これらの攻撃は、ポーランド経済が穏やかなペースで成長している状態の下で行われている。2000年以来、ポーランドの輸出は倍増した。昨年だけでも、2010年と比較して輸出は10.5パーセント増えた。輸出される商品の大半(1400億にのぼる)は未完成品で、西欧や、特にドイツ産業向けの主に部品や補給品ではあるが、成長水準は著しい。

ポーランド人労働者は、この経済の上向きを享受し損ねた。そうではなく、失業は上昇しており、益々多くの労働者が、一時的な仕事や不安定な仕事に頼るようになっている。1月、公式失業率(全ての求職者を含んではいない)は、0.7パーセント増え、13.3パーセントとなった。EC統計局によれば、国民の14.2パーセントが貧困線以下で暮している。これらの数値は、近年仕事を求めてポーランドを出国した約2百万人の労働者は統計に含まれていないという事実からして、一層並外れてたものだ。

ポーランドにおける貧困の残忍な実態は、寒さの為に亡くなる人々の月間統計に現われている。今年2月、警察は72件の凍死を報じているが、単純な対策で防げたはずの死亡だ。暖房装置の不良による一酸化炭素中毒で、更に23人が亡くなった。

同時に、金融エリートの富は急速に増大している。EC統計局によれば、ポーランドの社会的不公平はEU平均をはるかに越えている。クレディ・スイスのグローバル・ウェルス・レポートでは、2011年、ポーランドには48,000人の大富豪があげられている。Dデロイト・LLPの調査は、2020年までに、この数値は倍以上になると予想している。

ポーランドの状況は、ヨーロッパ中の労働者の社会的権利に対して行われている攻撃が、単純に経済状況によって影響されているものでないことを明らかにしている。経済成長をしている国にもかかわらず労働者は攻撃されているのだ。攻撃は、あらゆる国々の労働者の社会的権利を一掃するためのヨーロッパと国際資本による作戦の一環なのだ。

ポーランドの例は、こうした社会的権利を解体する上でEUの諸組織が果たした中心的な役割をも明らかにしている。かつて1990年代、EUは、EU加盟の条件として、ポーランドに様々な“構造改革”を実施するよう要求したが、そうした施策は広範囲にわたる窮乏をもたらした。

今やユーロ圏加盟で、全く同じプロセスが起きている。年金改革は、競争力強化に向けた協定と繋がっているが、他の削減や民営化は、財政赤字は国内総生産の3パーセントを越えてはならないという、ユーロ圏の安定基準に適合するために必要だとして正当化されている。ギリシャ、そのような“ショック療法”は景気低迷と労働者階級の大量窮乏化を招くだけだという良い見本だ。

ギリシャや他のヨーロッパ諸国同様、ポーランド国内でも抵抗は高まっている。およそ140万人のポーランド人が政府年金改革反対の請願に署名した。世論調査では、与党の市民プラットフォーム党の支持率は、一ヶ月の間に約9ポイントも低下し、わずか28パーセントだ。回答者の約77パーセントが政府に不満だ。

ポーランドでは、国中で何百万人もの若者が文化にアクセスするのを断ち切るであろう国際的な条約、模倣品・海賊版拡散防止条約 (ACTA)批准反対の大規模デモも起きている。

ようやく最近になって、PKP鉄道とTK テレコムの労働者が、もし政府が国有鉄道の民営化計画を進めれば、UEFA欧州選手権2012期間中にストライキをすると脅している。

大衆抵抗運動は、政府と緊密に協力している労働組合によって、押しとどめられている。彼等が労働者の戦いを組織的に妨害しているのだ。最近、ポーランド中央統計局は、2011年にポーランドでは、19,000人以下の労働者しか参加しておらず、わずか53件のストライキしか起きていなかったことを明らかにした。

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2012/mar2012/pola-m01.shtml

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TPP加盟後の日本、ポーランドがうらやましく見えるような植民地になるだろう。

「アラブの春」なるものの行方、鳴り物入り大宣伝されたワレサ(ヴァウェンサ)『連帯』の結果として今あるポーランドの現状を見れば、想像できるだろう。

(2012/3/5追記:ポーランド鉄道大事故、下山、松川、三鷹事件を思い出すではないか?)

野田・谷垣密約連帯も、維新を騙る異神・カルト宗教連帯も、永久属国に通じる道でしかないこと誰にでも想像できるのではと思う。

安保条約、国鉄民営化、原発推進、小選挙区制、郵政改革、政権交替。

マスコミが大宣伝するもの、ほとんど必ず食わせもの。庶民にとって有り難いことを宣伝してくれたことがあっただろうか?1%のために、99%をたぶらかすのが仕事。

連中は今、原発再稼働と、TPP推進宣伝に忙しい。

原発については、民間事故調なるお手盛り組織がホラを吹いている。政府、関係官庁の対応が子供のサッカーだというが、東電自身を調査対象にしない報告書そのものが子供日記。

宗主国世界戦略大御所ブレジンスキー氏の新刊Strategic Vision、175ページに下記記述がある。TPP、やはり宗主国様のご意向、属国政治家にとっては規定路線なのだ。原文は英語。東大話法のバリエーション?自分たちがしかけているとは言わない。

アメリカが推すTPPへの加盟を強く促す優れた日本人諸氏が現われた。(中国の専門家達は、東アジア共同体に対する陰謀だと非難している。)

アフガニスタンで、反ソ連ゲリラ(ムジャヒディン)援助を推進したのはこの御仁。日本をアフリカに出兵させろというこの方のご指示のもと、日本からのソマリアへ向け出兵が行われたのは周知の通り。

ブレジンスキー氏の『セカンド・チャンス』邦題『ブッシュが壊したアメリカ』2007年9月徳間書店刊の帯には日本をNATOに組み込み、中国の独走をゆるすな!とある。日本のソマリア向け派兵、ブレジンスキー氏の弟子を自認する民主党長島昭久議員が率先して言い出したものだ。具体的内容は下記に書いた。

大西洋共同体(NATO)に日本を組み込む ブレジンスキ

また、ヌーベル・オブゼルバトゥールで、79年7月カーター大統領がムジャヒディン秘密援助命令に署名したのは、彼の意図によるものであることを、ブレジンスキー氏が得々と語っておられる様子は下記記事中で翻訳した。

アフガニスタンにおける女性の権利

宗主国は、ソ連を崩壊させた様に、中国を崩壊させようと狙っているのではと素人は思う。この属国は、もちろんその作戦で放射能汚染済み不沈空母役。

正体不明な組織や高級官僚氏らがTPP興国論を出版し始めた。出版社名を見れば読まずとも内容は想像可能。ユニークなヘアスタイルの伯母様が帯に載っている本もある。そういう本を買う金はない貧乏人の小生だが小林よしのり著『ゴーマニズム宣言SPECIAL反TPP論』は購入した。ベストセラーになることを願っている。

ニュージーランドのケルシー教授による興味深いTPP論文を翻訳された方がいる。必読文献。東アジア共同体に対する陰謀ではないという戦略大御所の主張より、対中国作戦のかなめだというケルシー教授文章の方が説得力がある。

米国の反中国戦略の要としてのTPP その1

米国の反中国戦略の要としてのTPP その2

米国の反中国戦略の要としてのTPP その3

まとめたPDFもあるようだ。

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コメント

>同時に、金融エリートの富は急速に増大している。EC統計局によれば、ポーランドの社会的不公平はEU平均をはるかに越えている。

業界や個人の利益を求めて動けば当然こうした形になります。金融のプロに素人が太刀打ちできる訳がありません。金融業界に限ったことではなく、原発業界でも、官僚の世界でも同じこと。

大体民主主義といっても全てが全てに精通できるほど人間の頭は良くありません。だから専門家レベルで健全性が図られないと専門家の意見として出てくるときに既に詐欺になっているのだから判断しようがありません。一部の外野の研究者が正しいことを言っていても「所詮外野だろ。」という感じになりませんか。だから研究者が本当に正しいことを言っているかどうかを調べるにもその業界に足を突っ込まないと本当のところは分かりません。その業界に足を突っ込んで巻かれたら外野の研究者が例え正しくても、その利益共同体に属してしまえば逆に外野の研究者を攻撃しさえする。

業界だけの利益を考えていては普通に腐敗します。身勝手なエゴしか追求しないサイコパスが有利になる社会体系を変化させないと何度でもこの現象は起こります。
キーになるのは「自虐性」ではないかと思います。
自虐性は、社会システムを保つのに非常に重要な要素だと最近考えています。
「非生産的自虐性」と「全体を見据えるが故に自分を抑える自虐性」とは全く別物であり、後者が指導者層や富裕層に全く足りてないように思います。

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