『タイム』: 我々は将来の99%だ。
2011年10月27日
Hollywood and Fine Reviews
偉大な映画というわけではなく、おそらく非常に良い映画ですらないだろう。しかし、アンドリュー・ニコルの“タイム”は、その本質、つまりウオール街占拠運動の基盤である、所得の不平等への反対論と同じ説を主張する政治映画として称賛されるべき作品だ。
ニコルが創り出した未来では、加齢プロセスは25歳で止まる。それ以後、人の余命は、わずか一年となる。時間が新しい通貨になっているのだ。労働者には分と時が支払われる。一日は大変に長い時間であり、一ヶ月など、とんでもない贅沢だ。そして、持ち時間が尽きると、人は文字通り時間切れとなり、ばたりと倒れて死ぬのだ。
理論上、一ヶ月単位、あるいは、分単位で、生き続けるに十分なだけ稼ぐことは可能だ。映画の始まりで、ゲットー“タイム・ゾーン”の労働者ウィル・サラス(ジャスティン・ティンバーレーク)が、母親(オリビア・ワイルド)の50歳の誕生日、あるいは、25回目の25歳を祝っている。ウィル自身は、25歳で、三度目の誕生日を迎えるのだ。
余命は、それぞれの人の腕の上に蛍光デジタル表示で表示される。人々はスキャナーの下に腕を差し入れて、言わば“元気を養ったり”、支払いをしたりする。映画で見るような、古代ローマの百人隊長達が友情の証としてする、お互い手のひらで腕を握る握手によって、持ち合わせの余命を与え合うことも可能だ。
もちろん、時間は、同じやり方で盗むことも可能だ。それで、意思の力でどちら側が相手の時間を奪うのかを決める、ストロング・アームと呼ばれる腕相撲の一種で勝負をする“ミニット・メン”という都会ギャングがいるわけだ。時間は分け合うこともある。
仕事を終えた後のある晩、ウィルがバーに立ち寄ると、腕に一世紀以上の余命時間表示がある、容姿端麗で身なりの良い男(マシュー・ボマー)が皆に酒をおごっていた。この男、このタイムゾーン、デイトンという名のゲットーには場違いだ。そこでウィルは、揉め事が起きる前に、彼をこの場から離れさせようとするが、手遅れだ。ミニット・メンが入ってきて、ミニット・マンの親分(アレックス・ペティファー)は、大金持ち氏に“ストロング・アーム”勝負をして、誰が彼の時間を自分のものにできるか見ようと強要する。
ところがウィルは余所者を救い、逃げ出すのだ。ヘンリー・ハミルトンという名前のその男は、救出されたことが嬉しくない。彼は100歳以上で、要するに、永遠に生きられるほどたっぷり時間を持っているのだ。更に重要なことに、彼は、ウィルに、世の中の仕組みはいかさまだと話してしまう。もし全員が永遠に生きれば、食料、土地、空気など、必要なものは足りなくなってしまう。そこで、裕福な人々は極めて裕福な人々を除いて、非常に長く生きるのに十分な時間を、誰も貯められないようにするために、時間を入手する機会を制限して、貧しい人々を寄せつけないようにし、絶えず物価をつりあげ、増税をしつ続けているのだ。
ウィルが目覚めると、ヘンリーが持ち時間を全部自分にくれてしまい、彼は死ぬと決めたことに気がつく。そこで、ウィルは、新たに得た富を持って、ニュー・グリニッチ(ニコルの映画では、センチュリー・シティーとマリブが使われている)へと向かい、そこで、トランプのギャンブル、時間の億万長者フィリップ・ワイス(ヴィンセント・カーシーザー)から、1000年以上の時間を勝ち取る。結局、彼はワイスの豪邸でのパーティーに行くことになり、そこで、ワイスの娘シルビア(アマンダ・セイフライド)を巧みに口車にのせ、法律が、時間監視局員レイモンド・レオン(キリアン・マーフィ)の姿となって、ヘンリー・ハミルトンの消えた持ち時間について尋問しようとして現われると、彼女を誘拐する。
ニコルの筋書きは、とりたてて独創的というわけではなく、アクションの大半は、よくある類のものだ。とはいえ、言外の表現、自分たちの人生が無頓着な超大金持ち連中に操られていることに対する貧困層の人々の高まる怒りは、実に効果的だ。“タイム”のゲットー住民と、ブッシュ政権の不注意な監視の下で、経済を破滅させたのに、オバマ政権を欺き、干渉しないようにさせ、何の教訓も学ばずにいることに対し、大企業に責任を取らせようという、中産階級や他の人々の運動の高まりである、ウオール街占拠運動を結びつけて、全容を明らかにするのも困難なことではない。
驚くべきことは、これがヒットTV番組(“マッド・メン”で有名なカーシーザー)で著名な俳優と、更に、イギリスとアイルランドの映画の華やかなスターの一人(マーフィ)とともに、今話題の若手スター・カップル、ティンバーレークとセイフライドが主演するメジャー娯楽映画作品であることだ。こうした人気俳優が、多額予算を投じる大手スタジオの映画にこぞって出演し、スリラーの魅力やティンバーレークが出演しているということだけで引き寄せられかねないティーンエイジャー向けに、宣伝されているのだ。
究極的な皮肉は、この映画が、彼が所有する企業、フォックス・ニューズ・ネットワークが、ウオール街占拠運動について、事実を歪曲して伝えたり、軽視したり、あるいは、中傷をあびたりすることに奮闘努力している、ルパート・マードックが所有する企業、20世紀フォックスによって公開されていることだ。
もし、ウオール街占拠運動の人々が戦略的に考えるのであれば、彼等は“タイム”を上映しているアメリカ中のあらゆる複合映画館に、案内所を設置するか、少なくとも、抗議デモをしていただろう。彼等は、若い(そして大半は、無知な)十代の観客達に、“タイム”が、どれほど詳細に、現在の我々の経済状況を描写しているかという、傾聴すべき一言を伝えていただろう。
マスコミを使った適切なキャンペーンさえあれば、“タイム”は、“アンクル・トムの小屋”が奴隷制廃止運動に対して与えたような影響を、ウオール街占拠に与えることができたろう。大企業の要求(そして、共和党のティー・パーティーにいる大企業の代弁者)に、政府が、揺るがずに服従していることを巡って、高まりつつある大衆の不満の導火線に、火をつけられたろう。
恐らくフォックスは、アンドリュー・ニコルが、スリラーポップコーンの売上増大に寄与する商業ベースのSFを作ってくれたと考えたのだろう。しかし、運が良ければ、ニコルは、占拠運動を奮い立たせることができる一斉射撃を“タイム”で開始できていたろう。
記事原文のurl:hollywoodandfine.com/reviews/?p=4375
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ブログを丁寧にお読み下さっている方から、『トゥルーマン・ショー』を作ったのと同じ人物(アンドリュー・ニコル)の作品であるこの映画をご教示いただいた。
ご本人はご覧になっていないそうだが、先月から上映しているので、上映が終わらないうちにと、あわてて見に行ってきた。(何故か夕方と夜の上映が多い。)
若い観客の方々が多かった。映画終了後、聞こえた両隣の若い男女の声「おもしろかったね」「すごかったね。考えさせられるね。」に嬉しくなった。
『ボニーとクライド』を、そして、ねずみ小僧を連想した。何より、ウォール街占拠運動を思いながら見ていた。筋を明かしては興ざめ。これ以上はかかない。納得できる説を展開している、この記事翻訳でお茶を濁す。
『電通 洗脳広告代理店』苫米地英人著を購入したが、彼の最新作は『宗教の秘密』。内容紹介にはこうある。
宗教が支配の道具として人々を洗脳するメカニズムを説明し、伝統宗教の代表であるキリスト教と、現代人の心を支配する「お金教」の実態に迫る。また、教祖を作って宗教を興す方法も紹介する。
また、『人はなぜ憎しみを抱くのか』アルノ・グリューン著 集英社新書36ページにはこうある。
指導者と見せかけ
見せかけが上手な人たちこそ、「指導的立場」に立つ「才能」に恵まれているらしく、どこでも求められています。たとえば、新興宗教の教祖を篤く信頼する人が少なくありませんが、あれはなぜなのでしょう? どうしても指導者が必要なのでしょうか。自分はどう考え、どう感じ、どう行動すればいいか指示してほしいのでしょうか? こうした指導者は、信奉者を意のままに動かして、暴力をふるわせ、人を殺させ、集団自殺をさせる力さえもちます。右翼過激派(ネオナチ)にあっても同じです。黙々と指導者の指示に従って、平気で人を殺します。
毎日のように、そのような事件が報じられています。本来の自分を捨てて、盲目的に指導者に従う人がこんなに大勢いるのは、どうしてなのでしょう? よく言われることですが、そういう人たちは、新興宗教や過激派に入ると、ようやく自分が受け入れてもらったと安心するようです。そして、自分たちが「より良い」選ばれた人間であって、他の人間を苦しめ辱める権利があると感じるのですね。
宗教とは(政治も)そういうものだろうが、法王、アメリカ訪問をされる際は是非
「新自由主義は時代遅れ」と言って、新体制への移行を促して頂きたい。
「TPP、原発推進、増税」という政・官大暴走、原発と属国政策推進の元祖、自民党・宗教政党が政権を奪還しようが、実質的に全く同じ異神の怪が影響力をまそうが、暴走は激化するだけだろう。絶滅危惧種政党が三分の一を越え、民主党の中のまともな人々と、連立与党を組む位に増えない限り止められまい。その可能性、わずかでも、あるだろうか?強力な大衆行動なしに、体制はかわらないだろうが、大衆行動だけでも、かわるまい。
韓国では、売国FTAを推進した与党、党名を変えざるを得ないほど追い込まれている。これからの選挙で更に弱体化するだろう。ドイツでは素晴らしい放送が、日本支配層のとんでもない嘘を暴いてくださっている。
こぞって異神の怪を持ち上げる、国営放送を含めたマスコミ、ほとんど死に体。小泉郵政破壊選挙の時と全く同じパターン。2000人もの受講者が集まったという。この国では選挙もマスコミも期待できそうもない。末法末世。
どじょう氏、TPPを、ビートルズに例えているという。全く理解不能。ひょっとして、大麻の影響では?と疑ってしまうではないか。TPPの効用を論理的に説明することが不可能であればこその、目くらましだろう。
先日逝去した大思想家氏の発言も、メタボ・オヤジには全く猫に小判だった。
郵政破壊、イラク出兵の属国政策を推進した人物はプレスリー・ファンだった。個人レベルなら、プレスリー・ファンでも、ビートルズ・ファンでもかまわない。全国民、そして未来のすべての国民の生活を左右する政策を、西洋音楽スター集団あつかいするのは正気だろうか?
小林よしのり著『反TPP論』、本論はよしとして、「不平等条約案を推進していた大隈重信が、玄洋社の一員、来島恒喜に、爆弾襲撃を受け、右脚を切断した」エピソードによる不気味な終わり方だ。いくら相手が無茶な売国政策を推進しているといっても、爆弾襲撃など解決になるはずがないだろう。
『タイム』、原題In Time、なるべく多数の方にご覧頂きたい映画だ。
映画『タイム』は、『映画「ゼイリブ」と小泉政権以降の日本』を拝読するまで知らなかった映画『ゼイリブ』と通底している。そして『トゥルーマン・ショー』とも。
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