帝国の為の“人権”戦士
Glen Ford
2012年2月17日
"BAR"
ジョージ・ブッシュの“愚劣な”戦争を、バラク・オバマが、狡賢くアップグレードした“人道的”介入という錦の御旗の下、2003年3月のイラク侵略以来最大の帝国主義的攻撃は全開状態にある。“人道的”対シリア軍事攻撃に対する、リビア式の国連安全保障理事会によるイチジクの葉を手に入れ損ねたので、アメリカ合州国は、苦もなく“国連体制の外で”NATO/ペルシャ湾王族/聖戦戦士連合を拡張するための世界規模のキャンペーンに切り換えた。次ぎの目的地は、2月24日、ワシントンの同盟諸国が“シリアの友人”として、ナイフを研ぐために集まるチュニジアだ。これは、シリア主権に対する海賊的攻撃用の臨時同盟の精緻化を意味する軍閥言い換え用語である“友人”会員と、友人連中の“命令”を具体化すべく、アメリカ国務省が、動員したものだ。
アムネスティー・インターナショナルとヒューマンライツ・ウォッチは、お仲間の山師連中とビールを飲み干している。過去と現在の帝国の腹に本拠を置くこれら“人権”戦士達の胸は、帝国の事業の正当性に対する“左翼の”貢献、超大国のリビア侵略へのプロパガンダ・サービスに対して受けた勲章で輝いている。ロンドンに本拠を置くアムネスティー・インターナショナルは、ワシントン、パリ、ロンドンとリヤドとドーハの帝国豚舎から聞こえてくる戦争ヒステリーに同調して、“人類に対する犯罪”だとシリアを罵り、ロシアと中国を安全保障理事会で拒否権を行使したことを、シリア国民を“裏切った”として非難するための世界的な“行動の日”を催した。ニューヨークに本拠を置くヒューマンライツ・ウォッチは、モスクワと北京の行為を、“扇動”だとして非難した。 まるで、現在シリアで活動している何百人もの歴戦のリビア人サラフィ主義戦士を含め、聖戦戦士連中に武器を供与し、資金を提供して、中東とアフリカに火を放ったのが、帝国とその同盟諸国ではないかのように。
オバマによる“知的”(“愚劣な”の対比としての)帝国が後見する下、フランス等の植民地支配虐殺者連中が、今“恥ずべき虐殺が行われている地帯に、NGOが入れるようにするため”シリア内に“人道回廊”を設けることを提案している。現在シリアを包囲しているまさにその“友人達”から、武器を与えられ、資金援助を受けている民兵連中によって、サハラ以南のアフリカ諸国の人々や、黒人のリビア人が虐殺されていたさなかには、リビアにそのような回廊を設けることを、NATOはにべもなく拒否していた。
トルコは、シリアとの国境沿い、シリア領土内に、シリア軍脱走兵武器を供与し、訓練し、駆け込み寺とするための人道的“緩衝地帯”を作るという構想を、当面は拒否したと主張している。実際には、国境に集中しているシリア軍兵士と機甲部隊が、そのような“緩衝地帯”の設置を阻止したのだ。NATOによって“保護される”べき“解放地域”、あるいは、アメリカが支援する勢力の凝集を設置することの大胆な婉曲表現だ。
六カ月間休みなく、リビアを爆撃し、一人の遺体さえ、数えることを拒否しながら、何万人もの死傷者を生み出したNATOは、介入に対する“人道”の旗を打ち立てるため、ほんのわずかのシリアの土地を何とか見つようと躍起になっている。彼等はリビア作戦の再演を正当化するため、(カダフィー体制打倒の拠点となった)ベンガジを、露骨に探し求めているのだ。それがロシアと中国が拒否権行使に至った、あからさまな事実なのだ。
“解放された”領土で、民間人を“保護する”という口実で、超大国が支援する攻撃の確率が高まっていることに直面しているシリアとしては、一都市の一住宅地、一区画たりとも! ? あるいは、いかなる地方や飛び地たりとも、武装反逆者や外国人聖戦戦士に譲る余裕などない。その道は、直接、主権の喪失とシリアの解体へと続くのだから。シリアのことを、西欧の評論家達は、既にシリアは“破綻国家”になりかねない“寄せ集め”国家と呼び始めている。確かに、フランスとイギリスは、第一次世界大戦後に、この地域の様々な国境線を引き、他国民の領土を切り分けたエキスパートだ。イスラエルが喜ぶだろうという言い方は控えめに過ぎよう。
ホムスの大半と、他の反乱中心地の確保にシリア軍が成功したことが明らかとなったので、武装反体制派はテロ戦術を強化した。この作戦は、アラブ連盟自身のシリア派遣監視団によって、多大な危機感をこめて言及されてしまい、サウジアラビアとカタールが、監視団報告書を抑えこむに至った。その代わりに、湾岸諸国が、反体制派に対して“あらゆる類の政治的・物質的支援を提供するよう”つまり、武器と、疑うべくもなく、より多数のサラフィ主義戦士を、アラブ連盟にあからさまに強要している。事実上、騒動が全くなかった、シリアの主要商業・工業都市アレッポが、先週、破壊的な自動車爆弾で二度攻撃された。隣国イラクにあるアルカイダ支部による典型的な仕業だ。
いずれもアメリカ/NATO/サウジ/カタールの繭にこもった、様々な“シリアの友人達”は、今やあからさまに、シリア国内での全面的内戦を語っている。これはつまり、政権側が勝利しつつあるように見える、長引く闘争に対する、好ましい代案として、彼等が、資金援助し、指揮している武力闘争を強化するのだ。ここには一つのただし書きがある。イギリス外務大臣ウィリアム・ヘイグが表現したように“いかなる形の西欧地上軍はいない”。それはリビア方式であり、バラク・オバマの口から出ても不思議はない。
アメリカ合州国とNATOに傘下で動員された軍隊に対して、シリアは国家存在の為に戦っている。過去11カ月の間に亡くなった約6,000人の人々のうち、およそ三分の一はシリア兵士と警官であることは、これが国家に対する武装攻撃であるという統計上の現実の証拠だ。外国による大規模な関与、あるいはヒラリー・クリントン国務長官が再三述べている通り(彼女はブルガリアで記者団に“アサドは退陣すべきだ”と語っている)アメリカ政策の狙いが、体制転覆であることに疑いの余地はない。
アムネスティー・インターナショナルとヒューマンライツ・ウォッチは、ワシントンが支援する交戦状態で、帝国の側につくことを選んだのだ。本部を置く国々の左翼達(として通っている)と親交があるとされている組織である彼等は、現在の帝国による攻勢にとって、掛け替えのない協力者だ。彼等には、植民地主義国や新植民地主義国の(またもや、そういうものとして通用している)諸々の反戦集団間に非常に多くの支持者がいる。独立闘争で百万人のアルジェリア人が亡くなる中、フランス“左翼”は全く何もせず、50年経っても、旧植民地の人々にとって力になる味方になってはいないことが明らかになった。ヨーロッパの帝国主義列強の中では、帝国の臣民にとっての本格的な解放をもたらしたのは、1974年の若手将校によるクーデター、ポルトガルのいわゆるカーネーション革命のみだ。アフリカにあるポルトガル植民地からの軍撤退だ。
1975年のサイゴン陥落まで、アメリカ合州国がベトナムを爆撃し続けていた(そして新型兵器をベトナム国民で実験していた)のに、70年代初期、徴兵の脅威がなくなるやいなや、アメリカの反戦運動は大衆的性格を喪失した。2008年に、アメリカの多くの左翼が願っていたのは、共和党を引きずり降ろすことだけで、アメリカ以外の世界などどうなってもかまわなかったように思える。民主党のバラク・オバマは、“左翼”からの何の不満の声もないまま、帝国の戦争機構を再度トップギアに戻してしまったのだ。
NATOのリビア爆撃と征服に対しては、アメリカ合州国とヨーロッパの自称左翼の間には、私が思い付ける最も丁寧な言葉で言えば、大きなアンビバレンスがあった。現在、“現代世界で最大の暴力提供者達が”新たな戦争への道を切り開くなか、シリアとイランに対する、帝国による実存的脅威にを目の前にして、またもや左翼は、人権に対して煮えきらない態度を取っている。
反帝国主義者でない反戦運動家などというものは存在しない。そして、けだものの腹中にいる反帝国主義者の唯一の仕事は、けだものの武装を解除することなのだ。そうでなければ、彼女/彼は人類にとって無益だ。
よく言われる表現がある。人は、解決しようとする側でなければ、問題の一部だ。アムネスティー・インターナショナルと、ヒューマンライツ・ウォッチは問題の一部なのだ。
BAR編集主幹Glen Fordとは、Glen.Ford@BlackAgendaReport.comで連絡できる。
記事原文のurl:www.informationclearinghouse.info/article30563.htm
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シリア、素人には『藪の中』状態そのもの。
人道組織の活用ということで、岩田昌征著『二十世紀崩壊とユーゴスラビア戦争』を再度引用させていただく。
141頁ページ
ドウシャン・ヴィリチ/ボシコ・トドロヴィッチ著『ユーゴスラビア解体1990-1992』の102から104頁にアメリカによる、驚くべきと言うよりあって当然の工作情報を読んで...
以下は岩田昌征氏による、『ユーゴスラビア解体1990-1992』該当部分の訳。
141ページ
「アメリカ大統領国家安全保障問題補佐官ズビグニェフ・ブジェジンスキは、大会直前に世界情勢に関するアメリカの戦略家達の若干の諸見解を一定数のアメリカ人大会参加者達にレクチュアした。
そのレクチャーの一部が
142-143ページ
(5)ユーゴスラヴィアの様々な異論派グループをソ連やチェコスロヴァキアの場合と同じやり方でシステマティックに支援すべきであり、彼等の存在と活動を世界に広く知らせるべきである。必ずしも、彼等が反共産主義的である必要はなく、むしろ「プラクシス派」(チトー体制を左から批判していたユーゴスラヴィアのマルクス主義哲学者グループ─岩田)のような「人間主義者」の方が良い。この支援活動でアムネスティ・インターナショナルのような国際組織を活用すべきである。
ブジェジンスキ氏新著Strategic Visionを読みたいもの。素晴らしいご託宣が山盛りだろう。
異神の怪人、9条改憲を言い出した。がれき処理が進まないのは、9条のせいだと。
こういう人物をもてはやす国になってしまったのも、きっと9条のせいだろう。
東京都知事も9条を悪しざまにいう。マスコミ、9条をけなす主張は喜んで宣伝するが、安保破棄を主張する意見や、安保・日米同盟を冷静に検討する記事、決して載せない。大阪、東京、そして、名古屋の首長の中国関連発言...。大都市首長のレベルは、投票する有権者のレベルを反映しているだろう。
甲の薬は乙の毒。
電力会社、原発メーカー、関係省庁幹部、御用学者、ゼネコン、地元工事会社、原発推進政治家・首長、司法等、正に悪魔の使いとしか思えない。
本澤二郎氏もアーニー・ガンダーセン氏に関する記事の結論で言っておられる。
2012年02月26日 本澤二郎の「日本の風景」(996)<米人原子力専門家の福島衝撃証言>
そうした企業の労組も、原発・TPP推進派マスコミも正に悪魔の使い。
ETV特集「花を奉る 石牟礼道子」で触れられた水俣病救済案?なる代物、ちらりと見るだけで、将来実施されるであろう、福島事故被害者救済案も、想像がつこうというもの。偉い属国に生まれてしまったものだ。
ちきゅう座 戦争屋に貢献するヒューマン・ライツ・ウォッチ〈中山康子訳〉07/04/02
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