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2011年9月 3日 (土)

日本の新首相、緊縮政策を約束

wsws.org

Peter Symonds

2011年8月30日

昨日、野田佳彦財務相が、与党民主党のトップの座を勝ち取り、今日国会で正式に次期首相になる予定だ。2009年9月、民主党が政権について以来、三人目だ。

3月11日の地震と津波の後に起きた原発事故に対する、政権による対処の失敗と、復旧作業に対する国民の反感が広まる中、金曜に辞任した菅直人に、野田が取って代わる。菅は、6月早々、主要派閥が、野党が提出した不信任案決議を支持すると脅した際、民主党議員の反乱を避けるため、辞任するつもりだと約束した。

緊縮政策の唱道者として知られる野田は、即座に“円高とデフレ、災害復旧と再建、[そして] 原発事故という、紛れもない国家的危機に対処すべく”党の結束を呼びかけた。ところが彼は、基本的な経済と外交政策問題の点で、ひどく分裂した党を引き継ぐのだ。

野田は、党の実力者小沢一郎が支持する候補、海江田万里経産相を、二回目投票で、215票対177票で破った。一回目の投票では、5人の候補者の誰も、過半数を獲得できなかった。海江田は143票対102票で野田に先行し、元外務大臣前原誠司は74票で、三位だった。

評論家連中は、第2回投票を、親・反小沢の各派閥の対決として、宣伝したが、sharp差異は、日本の支配階級が直面する広範なジレンマを反映している。グローバル金融危機が深化する中、日本の経済的衰退を、どうやって食い止めるか、二国間で、競争意識が激化しつつある中、日本の最大の経済パートナーである中国と、長年にわたる戦略的同盟国アメリカとの間で、どうバランスをとるか。

小沢は、日本と中国の間の関係の親密化を支持し、経済を不況から脱出させるという、民主党の2009年選挙のマニフェストの実施を含め、景気刺激策を唱導していることで知られている。2009年に圧勝し、民主党を政権につけ、半世紀にわたる自由民主党による、事実上の連続支配を終わらせた、鳩山由紀夫から、彼は多少の支持を得ている。

ところが鳩山の首相職は一年も続かなかった。社会的支出を拡大するという民主党の約束は、悪化しつつある国家債務危機に対処するために、緊縮政策をとるようにという増大しつつある、世界的な要求と、衝突することになった。日本は、国内総生産の約210パーセントという公債をもつ、世界で最も借金を負った先進国なのだ。

外交政策では、鳩山の中国とのより緊密な関係という呼びかけが、ワシントンでの反対を招いた。沖縄に米海兵隊空軍基地を維持するという、自民党政権との間で合意した協定の再交渉を拒否し、オバマ政権は、効果的に鳩山を断念させた。鳩山は、民主党の選挙時の主要な約束を破り、沖縄に基地を維持することに合意した後、沖縄での大衆抗議のさ中に辞任した。

2010年6月に首相となった菅は、緊縮経済と、不評な消費税の増税を巡る論議を訴えた。消費税への反対は、昨年の選挙で、民主党が参議院の支配権を失う上で、重要な因子となった。菅は、アメリカとの戦略的同盟も、あらためて強調し、昨年9月、東シナ海の係争水域における中国トロール漁船船長逮捕を巡り、中国との外交的対決を引き起こした。

54歳の野田は、民主党が2009年に政権を握った際に財務次官となり、昨年、菅により、財務相に任命された。彼は、緊縮政策をあからさまに支持していることで良く知られている。ジャパン・タイムズによると、地方紙で“財務省の公式候補”とあだ名をつけられたという。先週、彼はマスコミに、こう語った。“日本国内にも、海外にも、日本の財政規律は浸食されていないという日本のメッセージを送りたい”

日曜の候補者討論会で、野田は、壊滅的な地震と津波後の再建用の膨大な支出をまかなうために、暫定的な増税、および支出削減と資産売却を、公然と主張した唯一の人物だった。“もし財源が、それでも不足なら、国民に負担をしてもらうよう依頼することが必要になる可能性がある”と彼は述べた。小沢の候補、海江田は増税に熱心に反対した。

日本の財界人達は野田の勝利を素早く歓迎した。日本経済団体連合、いわゆる経団連の米倉弘昌会長は、“税、財政と社会保障政策に精通した安定した指導者であり、日本の政治が困難な時期に直面する中、[彼が選ばれたことで]元気づけられる。”と彼を称賛した。債券市場の反応は前向きで、10年物国債の利回りは、0.025パーセント下がった。

ウオール・ストリート・ジャーナルのコメントは、野田の市場志向資格について、より批判的だ。“彼の‘タカ派性’も、新たな、ケインズ流の豪勢な散財が、地震で荒廃させられた地域を再建するのに最善の方法なのかどうかを問うまでには至っていない。郵政民営化を元の軌道に戻したり、経済の大きな部分を規制緩和したり、移民政策改革等々の他の成長志向改革に関しては、「そんなことはどうでもいい」。

先週、国債格付け機関ムーディーズは、日本の格付けを、Aa2からAa3に引き下げ、次期政権に厳しい警告を送った。

昨日の世論調査では、多少とも人気を持っていたはずの唯一の候補者?元外務大臣前原?は一回目投票で破れた。先週末の読売新聞世論調査では、前原が48パーセントの支持率を獲得し、海江田は12パーセントで、野田は9パーセントと後れをとっている。ところが、民主党内部で、最大の票を支配している小沢が、前原が中国に対してタカ派的な為、前原に反対した。外務大臣として、昨年、漁船船長の逮捕を巡る中国との対立において、前原は決定的な役割を演じた。

外交政策については、前原ほど知られてはいないが、野田はアメリカのバラク・オバマ大統領の、中国に対する攻撃的な姿勢を支持する可能性が高い。最近、文藝春秋に掲載されたエッセイ中で、ワシントンの北京批判に同調し、こう書いている。“軍事能力に裏付けられて、南シナ海や他の場所で最近展開されている、中国の高圧的な外交姿勢は、中国が、地域内の秩序を崩壊させるのではないかという懸念をかき立てている”実際、アメリカは、海に関し、中国と対抗する主張を持つ、フィリピンやベトナムのような国々を支援して、南シナ海での緊張をかき立ててきた。

自衛隊員の息子である野田は、国際紛争を解決する手段としての、武力行使の権利を放棄する、いわゆる戦争放棄条項を削除する、日本憲法の改訂を支持している。アメリカが率いたアフガニスタンとイラク侵略を日本が支持する中、過去十年間、この九条は益々空文化しつつある。とはいえ、支配層は、依然それを、日本軍の拡張と、日本帝国主義の権益を追求するための日本軍海外派兵にとっての憲法上の障害だとしてみなしている。

野田は、今月始め、靖国神社に祀られているA級戦犯は、実際には戦犯ではなかったという2005年の発言を挑発的に繰り返した。この発言は、最初、議論の的となっている戦没者記念施設を、小泉純一郎首相が公式参拝し、中国と韓国からの批判を引き起こした行為を支持し、東京と北京との関係が著しく悪化させた。両国は、アジアで日本が行った、戦時の残虐行為を否定する日本の政治家の発言を利用して国内で、国粋主義感情を煽り立てた。

野田の最近の発言にも、韓国と中国は注目した。国営の新華社通信は警告した。“日本の新政権は、深刻な問題を抱えた中日関係や、極度の不信は、決していずれ側の利益にも、地域や世界全体の利益は言うまでもないという、議論の余地のない事実を認めることから始める必要がある。”

野田の首相としての任期は、菅や鳩山の任期同様、短いものとなる可能性がある。彼は、緊縮政策を加速するよう大企業から圧力を加えられ、分裂して、不人気な政権の指揮をとり、有権者達を更に疎外することになろう。先週末の読売新聞の世論調査では、自民党の23パーセントとは対照的に、民主党は、わずか21パーセントの支持だった。回答者の最大部分である、46パーセントは、どの党も支持しないと主張しており、特に若者の間での、既存政治体制全体に対する、深刻な疎外感を示している。

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2011/aug2011/japa-a30.shtml

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「文藝春秋」引用部分、雑誌そのものには当たっておらず、引用ならぬ、勝手な翻訳。読む気力がおこらない準政府広報誌の原文、ご教示頂ければ有り難い。

新聞・テレビの大手商業マスコミの政治記事、真面目に読む気になれないが、下記のブログは熱心に拝読している。

リベラル21  松下政経塾内閣の誕生 ―新自由主義体制の再構築へ― 半澤健市

そして、

2011年09月02日 本澤二郎の「日本の風景」(865)<パナソニック内閣の課題>

本澤二郎氏の本、何冊か拝読している。例えば、『小選挙区制は腐敗を生む』や、この記事の話題に直結する『改憲陰謀』。1997年11月刊行。

Kaikeninbou

「はじめに」の一部を転載させていただこう。(4-5ページ)

復活した日本兵器産業は、戦前同様、財閥系企業によって担われている。米国やロシアの産軍複合体制は有名だが、わが国にも同様の危険な機構がすでに誕生しているとみていい。政治・軍事大国論は、相当根っ子が深いのだ。
 従って、隣国の学者たちが「日本軍国主義の復活」の懸念を表明するのは、あながち的はずれとはいえない。政財官内における右翼・民族派の台頭は、いわば改憲派の牙城といっていいだろう。
 憲法第九条の改悪運動は、戦後を生きのびた戦争責任者らによって、執拗に繰り広げられてきた。
その代表格は日米開戦時の商工大臣(東條英機内閣)だった岸信介である。彼には右翼の児玉夫誉士夫がぴったりつき従っていたが、この児玉と交流が深かった政治家が中曾根康弘元首相である。
 中曾根も岸同様、改憲を生涯の目標と定めている戦前派だ。旧内務省官僚、旧日本海軍将校の経歴が、第九条改悪に執念をたぎらせるのだろう。
 こうした岸、中曾根の国家主義に共鳴している若手政治家の代表格が、新進党の小沢一郎党首だ。
改憲派の指導者がこれら戦前派、民族派、国家主義信奉者であるというまぎれもない事実に、アジア諸国民は不安と不信を募らせるのだ。
 彼ら改憲派は愚かな社会党や連合の指導者を巧みに操って、改憲に都合のよい小選挙区制を強行した。当時、大半のマスコミが推進ラッパを吹いたことは特筆に値する。
 戦争犯罪者である岸政権誕生にノーといえなかった日本マスコミは、またもや脳死状態に陥ったのか。
 小選挙区制導入は勿論、保・保連合論も改憲への道程なのだが、これさえもメディアは詳しく解説しないし、批判も加えていない。むしろ宣伝に一役買ってさえいる。
 そして遂に、九七年五月に五十歳を迎えた平和憲法に挑戦するかのように改憲議連が旗揚げし、改憲へ向けた常設機関を国会に設けるのだとわめき始めた。正にいま、世界に誇る日本の、平和憲法が、右翼・民族派の政治家、官僚、財界人、ジャーナリズムによって踏みにじられようとしている。
これに警鐘をならすのが本書出版の動機である。

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