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2011年8月26日 (金)

中東再分割のモデルとしてのリビア

wsws.org

Bill Van Auken

2011年8月24日

月曜にフィナンシャル・タイムズのウェブ・サイトに公開された、“カダフィ没落、アラブの春をよみがえらせる”と題するフィリップ・ゼリコウのコラムは、リビアにおける、建前上の“人道的”介入で、ワシントンや他の主要帝国主義大国が狙っている遠大な狙いをかいま見せてくれる。

ゼリコウは、ジョージ・W・ブッシュ政権では、コンドリーザ・ライスの下、元国務省顧問で、ジョージ・H.W. ブッシュの下では、ソ連ブロック崩壊の時期に、国家安全保障会議の元顧問だった。彼はアメリカの既成勢力内部で、信頼されている、経験豊かな工作員だ。その信頼と経験から、彼は、9/11委員会事務局長に指名された。その職位にあった彼は、2001年9月11日のテロ攻撃におけるアメリカ政府の役割のもみ消しを仕組んだことに一番責任がある人物だ。

アメリカ新世紀プロジェクト(PNAC)に近く、先制戦争というブッシュ・ドクトリンを書いた一人であるゼリコウは、中東を巡り、覇権を強いようとするアメリカ帝国主義の動きの理論と実践、両面で、深い経験を持っている。

ゼリコウは、コラムを“リベラル干渉政策”の一例だといって、リビア戦争反対を主張する共和党右派の人々の誤りを暴くことから書き始めている。こうした懸念を、“詭弁、特にリビア政府に煽られた”単なる誤解だと、彼は片づけている。リビア独特の“歴史と地勢が、この機会を捕らえ、反体制派が、独特の痴呆政権を追い出すを手助けするという、アメリカ、イギリス、フランスや他の様々な国々の抜け目ない計算を、しっかり正当化したため”戦争が始まったのだと彼は書いている。

言い換えれば、主要な帝国主義国家は、リビアの出来事の中に、“この機に乗じて”石油の豊富な北アフリカの国に対する支配を固める目的で、体制変革をさせるため、軍事攻勢を実行するのが可能となる一連の状況を見いだしたのだ。

こうした状況の一部は、チュニジアやエジプトでの反乱によって準備され、彼らの行動は、リビア国民の中では、カダフィ政権に対する抗議デモに対する冷酷な弾圧という形で、反響した。また一部は、人口が650万人未満で、アフリカ大陸最大の油層上にあり、南欧に面する長い地中海沿岸を有する国という、リビアの特性によっても決定された。

エジプトとチュニジアで独裁政権を維持するため、ムバラクとベン・アリを権力の座においておこうと、とことんまで戦った帝国主義者達は、現地に、革新的な指導部が不在であるのにつけこんで、彼等も現地の支配エリート層も、チュニジアとエジプト支配を再構築しようとする一方、いわゆる“アラブの春”を、リビアを掌握する隠れみのとして利用する好機と見たのだ。

これで、建前上“人権”と“リビアの民間人保護”のためにという、ゼリコウが正しくも、単なる言葉のあやにすぎないと片づけた口実でしかけられ戦争を引き起こしたのだ。

この元国務省・国家安全保障会議幹部が明らかにしている通り、リビアで、このプロセスが終わるわけではないのだ。彼は言う。リビア戦争は“勢いという感覚を更新するだろう”彼は更に続ける。“シリアにおける戦いは、次第にエスカレートしつつあり、更に前面へと浮かび上がるだろう。”

言い換えれば、実際、危機的状況にあるのは、それだけでも重要なことではあるが、単なる一ヶ国の乗っ取りではなく、地域全体の再編成だ。

ゼリコウに言わせると、一体誰が民主化志向とされている“アラブの春の前衛だろう?”

“アラブの春の方針を決定する動因の大半は、現在、サウジアラビア、アラブ首長国連邦やカタール等のペルシャ湾岸諸国から来ている”と彼は書いている。“今や彼らの盛時だ。サウジアラビア政府は、今、シリアを孤立化させているアラブ外交で、決定的な役割を演じている。アラブ首長国連邦は、サウジアラビアと共に資金を提供し、おかげで、エジプトの暫定統治者は、国際金融機関が提案する条件付きの融資パッケージを見合わせることができている。カタール政府はリビア革命において極めて重要な役割を果たしている。”

“アラブの春”が“彼らの盛時?”アラブ大衆の民主主義と解放の擁護者とされているこの連中、反体制派の人々が、拷問、裁判無しの投獄や、断頭という目にすらあっている絶対君主制国家の一群なのだ。労働人口の圧倒的多数が、ありとあらゆる権利を否定され、抑圧された移民労働者であり、女性たちが、基本的な権利を否定されている社会を、彼等は支配している。

リビアとシリアにおける“民主主義”のこの救援者達は、もちろん、ハリーファ王朝の独裁的支配に反対して、民主的な権利を要求するバーレーンでの全国的な抗議デモに対して、軍事的弾圧を組織したまさに同じ独裁的政権だ。ワシントンの暗黙の支持を得て、バーレーンで続いている弾圧の下、多数の人々が殺害され、何百人もが逮捕され、何千人もが職場を解雇された。

こうした醜悪な政権に対して、“盛時”だなどと宣言するのは、全アラブ世界の民衆にとって、弾圧の悪夢と社会的退歩を提案するようなものだ。

ゼリコウは、オイルダラーでのぼせあがったペルシャ湾の世襲君主達への賛辞に奇妙なコメントを続けている。“私の気分はもっと楽になるだろう”彼は書いている。“もしフランス、イギリス、アメリカの三ヶ国が、戦略を調整するために、ほぼ毎日のように幹部レベルで定期的な作業部会での話し合いを持てていたら。おそらく彼等はそうしているだろう”

ゼリコウは、一体誰をからかうつもりだろう? 政策が単に幹部レベルで“調整されている”だけでなく、カタールの特殊部隊傭兵はアメリカ、イギリスとフランスの諜報工作員、特殊部隊、軍事“請負業者”と協力して動いており、リビア現地で、いわゆる反体制派の攻勢を組織し、指揮をしている。もしこれらの政権が、今“アラブの春”の前衛としてもてはやされているとすれば、それは彼等がアメリカの中東政策に対して最も卑屈だからだ。

このアメリカ外交政策/諜報インサイダーは、リビアや、より広くアラブ世界の今後をどう見ているのだろう? 古い支配エリートを代表する新たな抑圧的な政権が生まれるのだろうか--エジプトやチュニジアで起きているように? “イスラム教過激派が…支配権を握るのだろうか?”それとも“西欧におなじみの方向の、より開かれた社会”が出現するのだろうか?

ゼリコウは“これらのあらかじめ考えられている範疇には、うまくあてはまらない”“新しい、独特な”代替策が現れる可能性があると示唆している。

“リビアの新指導部が、当初直面するであろうジレンマを想像されたい”彼は書いている。“リビアの経済は、圧倒的に石油コンビナートに依存しており、国家はそれを支配したがるものだ。彼らの政治は、独裁政権の終焉で生じた真空を埋める、いくつかの競合する集団の間での権力と資源の配分に向かうだろう。指導者達は、戦闘や混乱にうんざりするだろう。全員を単一の型に押し込み、その費用を石油とガスの歳入でまかなう新たな独裁制を、再び課するのではなく、自然な成り行きは、様々なコミュニティーに更なる自治を認め、国家収入の分け合うよう取引することだ。これは並外れたことではない。リビア、イラクやシリアのような国々の多民族社会は、連邦制や、おそらくは同盟という方策さえ実験することになるだろう。世界の中のこの地域で崩壊しつつあるのは、‘全体的国家’モデルそのもの、老朽化した非植民地化の成れの果てだ。この中央集権制、国家統制主義モデルは、あらゆる身びいきのための手段だったが、新しい何かに取って代わられる。”

ここで、“新しい何か”というのは、何か偉く古いもの、あるいは少なくとも19世紀と二十世紀初頭に現れた何かのような、うさんくさい響きがある。ここで提案されているのは、民主的な自治の開花どころか、イギリスとフランスが、第一次世界大戦直後に、連中の植民地統治制度を押しつけて以来の、帝国主義者による最大の中東分割だ。

ゼリコウが“老朽化した非植民地化の成れの果て”と表現した“中央集権制、国家統制主義モデル”を処分してしまった以上、あからさまな再植民地化のために、この地域が進む道は明らかだ。というより、もっと正確に言えば、この地域の大半の道が。ゼリコウが、イスラエルにおける“中央集権制、国家統制主義モデル”を終わらせることを提案しているなどとは誰も思うまい。

リビアのような国で、“国家統制主義モデル”を解体すれば、おそらくは、石油資源の国家支配という厄介な問題からも解放され、エクソン-モービル、BP、シェブロンや他のエネルギー・コングロマリットは、油田の直接所有を主張し、生産や値付けを支配し、中国、ロシアやインドのライバルを締め出す道が開けるだろう。

ゼリコウはこう結論している。“外部の人々も、情報、アイデアや報酬を提供することで、こうしたことを支援することはできる。だが外部の人々は、決定者にはなれない。”もちろん、NATOの部外者達がリビアの“反体制派”を“援助している”に過ぎないのと同様に。

ゼリコウは、ソ連や東欧のスターリン主義官僚機構が崩壊した時代に、アメリカ支配体制中で著名になった。1990-1991年のペルシャ湾岸戦争時代、彼は上級安全保障問題顧問をつとめていた。ソビエト社会主義共和国連邦が解散することで可能になった戦争である、2003年のイラク侵略に至る政策の唱道者となった。今、彼はその政策の大規模なエスカレーションを提案しているのだ。

リビアについての彼のコラムは、リビアでの戦争は人道主義や人権とは全く無関係であり、かって植民地だった国の暴力的征服であることを確認するのに役立つ。警告でもあるのだ。リビアは、中東全体を整理し直すという帝国主義の動きの手始めに過ぎない。主要帝国主義大国同士間での相いれない権益を考えれば、このプロセスは、予見できる将来において、遥かに残忍な紛争をひき起こす恐れがある。

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2011/aug2011/zeli-a24.shtml

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マスコミは、エジプト、チュニジア、リビアのうわべは報道するが、バーレンのことは全く報じない。

石油産業を国営とし、旧宗主国の介入を許さない制度が、戦争の主要因だろう。

テレビだけ見ていれば、カダフィ、とんでもない極悪人になるのだろう。

テレビ・新聞でなく、藤永茂氏のブログ『私の闇の奥』で、カダフィの、リビアの別の顔が描かれている。例えば、リビア挽歌(1)

昔、女剣劇のおば様と、野球監督夫人との論争が、延々報道されたことがあった。

振り返ってみると、属国化推進の法案が着々通過していた頃だった。

アメリカで、冷酷なプルトニウム人体実験に関する調査委員会が、調査結果を発表した日の、夕方に有名なアメリカンフットボール選手、O・J・シンプソン事件の判決が出た。

その結果、歴史的に重要なプルトニウム人体実験の調査報告の話題は、完全に吹き飛んだ。この話題、O・J・シンプソン-プルトニウムファイル、そしてチェルノブイリ極秘で触れた。

おわらい世界のトップ・タレント引退で、マスコミは忙しい。

彼が登場するなり、チャンネルを変えるか、テレビを消していたので関心皆無。

今回、マスコミは一体何を隠そうとしているのだろう。

国防省日本支部長のような人物が代表選挙で一番人気という不思議(誰に人気があるのだろう?)

原発、TPP、増税、基地問題、すべてご主人様の方を見る候補者ばかり。

サングラス姿の副大統領が飛行機から降り立つ姿、敗戦後、マッカーサーが飛行機からおりる写真を連想した。あの光景のメッセージ「今も属国だぞ。トモダチなぞ建前。」

売電。発電・配電分離を連想した。この方々こそ、つきあってはいけない世界最大の国家暴力団。今回のリビア、いわばNATOに外注したわけだろう。

ねじれ国会というが、ねじれは国会にではなく、民主党・自民党・公明党と国民の間にこそあるだろう。脱原発を願う多数の国民と、原発推進を願う少数の政治家との間に。

ただし、公明党、もんじゅ、核燃料リサイクルを放棄する方向という記事に驚いた。もっともな判断。

新聞社説は滅多に読まないが、数日前、貧困な政治の問題、小選挙区制から生じるのではあるまいか。再考すべきではないかと、散々自分たちが小選挙区制を煽ったことは棚にあげてはいるものの、まともなことが書かれていて大いに驚いた。

そういえば、講読している新聞、夕刊に素晴らしいジャーナリスト列伝が連載されている。読むのが楽しみ。

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