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2011年7月10日 (日)

ロシア・トゥディ: 新種のメディア?

William Bowles

2011年7月2日

williambowles.info

ロシア・トゥディは、世界のメディア体制に今後新登場するものの先駆け?

グローバルなデジタル・メディアは諸刃の剣だ。「雄のガチョウのソースは雌のガチョウのソースでもある。」ということわざ通り、ルールはフェアでなくてはならない。例えば、リアル・ニューズ・ネットワーク、デモクラシー・ナウ!やgrtvの出現は、わずかな予算でも、どれだけのことができるかを実証している。とはいえ、グローバル・メディアの世界に参入するには‘収束’やら‘市民ジャーナリズム’等と喧伝されはしても、やはり大量の資金が必要だ。

様々な出来事に対するアメリカの国営/民間マスコミの見解とは正反対の別の見方だとはいえ、西欧の視聴者に本物を提供することが、ロシア人に任されているのは皮肉だ。しかし、それも当然のなりゆきで、要は、これは、例え理由は違おうと、西欧において、たまたま、ある種の革新的な見方と一致する、ロシアという国家の見解なのだ。

6月29日、政府の年金/人員削減提案に反対し、組合員がストライキに参加した、公的・民間サービス労働組合(PCS)のマーク・サーウォトカ委員長の詳細インタビューを、イギリスのTVでなく、ロシア・トゥデイで、私は見た。

様々な出来事について、革新的視点で報道するTV放送番組をみられことは、めったにない。‘無料’で‘客観的’だという、あらゆるプロパガンダにもかかわらず、お決まりの西欧マスコミで育った人間が、そのような話題を、ほぼ毎日見るには若干の慣れが必要だ。下記の(やや古い)数字によれば、それも私だけのことではない。

2008年1月、YouTube上でのRTビデオ視聴数総計は、300万を超えており、YouTubeの最も視聴者が多いパートナー評価で、CBS、BBCワールド、アル・ジャジーラ英語版、フランス 24、Press TVに続き、RTは第6位だった。Wikipedia

ロシア・トゥデイ

ロシア・トゥデイ(RT)は、ロシア国営のデジタルTVニュース・チャンネル(スペイン語チャンネルもある)。ロシア・ドゥーマ(国会) から、年間約6000万ドルもの大金を得て、西欧社会の、ごく特定の部門を対象としているが、左翼の人々にとって、RTは、いささか統合失調的に見える(単に左翼の人だけが感じるわけではないかも知れない)。

ノーム・チョムスキー、ウイリアム・ブルム、F. ウイリアム・イングドール、ミシェル・チョスドフスキー等の著名な左翼の面々にインタビューできる一方、非主流派のイギリス独立党のような右翼連中が、移民問題や、EU崩壊歓迎について、わめきちらしたりもしている。あるいは、‘国際テロ’やら、無理からぬことだが、ロシアのヘロインの大半がそこから入っている麻薬国家アフガニスタンに焦点を当てて、ロシアの最近の強迫観念である‘麻薬戦争’を戦ってもいる。

先に私が触れた‘統合失調’は、左翼の人々だけが感じるのかも知れないが、RTの番組は、ロシア国家の外交政策上の懸案、特に安全保障の投影だと見れば、うなずけよう。

弱点は、もちろん、ロシア自身についての報道なのだが、‘微妙な’問題については、ロシアの他のどの国内放送と比べても、より率直であるように思える。概して資本主義寄りの経済・政治姿勢をとってはいるが、例えば、BBCで聞けないようなパネル・ディスカッションでは、RTは社会主義寄りの視点を取っている。

ロシア国内問題の報道では、ソ連時代について、スターリンの犯罪と並んで、業績についても、かえり見るという興味深い傾向が増しているようだ。これはソ連時代の遺産に対する、より深く、複雑な分析が始まっていることを意味する前向きな動きだと思う。結局、ソビエト社会主義共和国連邦の75年間を、あたかも、そんなものは存在せず、前向きの貢献は皆無だったとして片づけてしまうわけにもゆくまい。

もちろん、RTは、主にロシア独特のものごとのPRチャンネル(何十年もの冷戦プロパガンダのおかげで、ロシアとロシア国民について、我々はほとんど何も知らないので、そうしたもののいくつかは実際、面白い)および、ロシア外交政策の投影として機能している。

RTは、これを否定するが、ロシア議会が年間6000万ドルも費やしながら、放送内容にロシアという国家の権益を反映させないと考えるのは馬鹿げたことだろう。NATOの拡張を大いに強調したり、‘大祖国戦争’の記憶を思い起こしたりするのは、それが理由だ。

帝国によって、破産させられ、分割された後の旧ソ連が、最も必要としていないものは、次の戦争だ。結局、ロシアは何であるにせよ、帝国主義国家ではない。

これこそ、RTが、番組に非常に多数の反戦活動家、作家やジャーナリストを起用し、RTの番組に、あきらかな統合失調ぶりが見られる理由だ。

ソ連が、第二次世界大戦の矢面に立ち、2700万人の国民を失ったことからすれば、RTが反戦姿勢をとるのも当然だ。冷戦が、まだ健在で、ワシントンDCやロンドンで生き延びている以上、仇敵とロシアの関係は、RTで提示されているのと同じ一連の対立関係にある。NATOが帝国戦略中で演じている中心的な役割を考えれば、これはまさにその通りだろう。

ソビエト社会主義共和国連邦が破綻し、それとともにワルシャワ条約が破綻した当時は、NATOも、それに続くだろうと誰もが考えていた。ところが、ソ連の内部崩壊から生じた混乱の中で皆が同意したはずのNATO廃止は、どさくさ紛れに都合良く立ち消えになった。

そして、冷戦終了後、平和な世界どころか、対NATOの拮抗勢力がないまま、事態は悪化の一途をたどり、その過程で、NATOは、その発端から(ワルシャワ条約は、NATOへの対抗勢力として作り出された)帝国主義勢力の道具であったし、そうであり続けているという、驚くにはあたらない事実が明らかになった。

しかし、世界二大超大国の一つだったロシアが、経済的にも軍事的にも、明白に不利な中、争いに再度加わる、この立場は、NATOの違法なリビア侵略を巡る優柔不断さで証明されている。どちらの側を支援すべきか?もちろん、勝者側だ。原則的な立場を維持していれば、国連安全保障理事会投票で、拒否権を行使していたはずだ。彼らがそれで何を得ようと狙っていたのかは想像するしかないのだが、ロシアは、そうはせずに、日和見主義にしか見えない態度をとった(ある情報源は、棄権と引き換えに、ロシアに有利な計らいが約束されていたと示唆している。もし、そうであれば、重大な誤算だ。)

“もはやNATOは、“旧ソ連邦諸国”における覇権維持に汲々として、西ヨーロッパに対する脅威ではなくなった、今や従順となったロシアを脅かしてはおらず、東方への拡大はしていない。”‘ロシア、エジプト、リビアには、ある種、明るい希望がある’エリック・ウォルバーグ

そうかもしれない。 しかしロシアが、米-NATO基地のあらゆる面を言い立てていることからすると、決してかつての冷戦時代から変わったようには見えない。だから、私にとっては、一体なぜ中国とロシアが棄権したのかは、ちょっとしたミステリーのままだ。しかし、両国は、少なくとも国連安全保障理事会経由では、シリアに同じ運命が降りかからないよう意図して、教訓を学んだに違いない。

Presstv

RTほど簡単には見られないので、Presstvについては、状況を良く把握できているわけではないことを告白するが、アル・ジャジーラ/RT等と同様の出自で、西欧の視聴者を対象にしているが、出来事に対する視点が、イランという国家のものであるように思える。私はそれでかまわないと思う。視聴者の方々が判断されれば良いのだ。[2]

結論

西欧のマスコミによって、空前の規模でグローバル階級戦争が仕掛けられ、商品化されているのは明白だ。マスコミは、今や、帝国の恐ろしい兵器庫中の不可欠な武器だ。世界的規模で、マスコミは、‘ニュース’の特質のみならず、そもそも何を‘ニュース’とみなすべきかを規定している。あらゆる異なる見解は、西欧による仮定や作り事という津波に呑み込まれてしまう。

ところが、このエッセイを書き終えようとしている今、昨日(11/7/1)表面化した、カダフィ大佐が以下のように発言したと主張する‘ニュース’記事に思いを巡らしている。

“NATOが作戦を停止しない限り、リビアはヨーロッパの“家、事務所、家族”を標的にする。”‘リビア:ムアンマル・カダフィ、ヨーロッパを脅す。‘BBC 2011年7月1日

これは、奇妙で、少なからず出来過ぎに思えたので、少し調べ、大本のロイター記事に行き当たった。

“トリポリ、7月1日(ロイター) 金曜日、ムアンマル・カダフィは、トリポリのグリーン広場に集まった数千人の支持者達に、電話で演説を行い、このまま続けると誓い、NATOが率いる多国籍軍に、航空戦を止めないと“悲劇的な結末”に直面すると警告した。

“悲劇的な結末に直面する前に、撤退するよう忠告する”NATOの支援を受け、カダフィ打倒を目指している反乱者に対し、兵士達は戦っているのだが、緑の旗やリビア指導者のポスターを振る支持者達の群衆に、カダフィはそう語った。”‘反抗的なカダフィ、NATOに“悲劇的な結末を警告“、ロイター、2011年7月1日

次に、この話は、インフォメーション・クリアリング・ハウスに、‘カダフィは、ヨーロッパ攻撃で脅してはいない‘という記事として掲載された。これまで何度も見てきた通り、全て、どのように翻訳されるかにかかっている。

“カダフィは、サルコジ、キャメロンやオバマに、テレビをつけて、群衆を見ろと挑戦していた。連中は、決して勝てない戦争を始めてしまったのだから、自分たちが妄想していることに気づくだろうと彼は語った。もしリビヤの家々を標的にし続ければ、ヨーロッパは、そう遠くないのだから、我々も同じことができるとも語った。だが彼は、そういうことはやめようと語った。”(同上)

予想通り、‘狂犬カダフィ排除’の論理的根拠を正当化する、歪曲された物語が、今や世界を取り巻いている。国営/商業マスコミによる、現実に対する締めつけが、いかに機能するかという申し分のない例だ。RTでさえもが、プロパガンダにだまされ、BBC記事に書かれている主張を、文字通り繰り返している。誤って伝えられていることが指摘される(万一あるとして)頃には、もう手遅れだ。存在しなかったサダムの大量破壊兵器WMDの再演だ。

1. 例えばこれを参照:‘ロシア・トゥディ、アメリカ・メディアを心配し始めた‘(英語)、Disinfo.com

2. ‘司会者のニック・フェラリ、選挙後の‘偏向’を巡り、イランPress TVを退職‘(英語)、2009年7月1日、Times Online. 記事冒頭は以下の通りだ。

“Press TVはイラン政権に資金援助されており、北西ロンドン、ハンガー・レーンにある目立たない事務所から、この24時間放送のニュース局は、イギリス中の家庭に向けて、テヘラン支持プロパガンダを放送していると、敵対する人々は主張している。”

もちろん、PresstvについてのTimesの見解は、帝国が世界中の何十ものラジオやテレビや、ビデオ・プロパガンダ・チャンネルに資金を供給している事実は考慮しない。これは、つい最近まで、イギリス外務省によって資金援助され、継続中の、大量の、反テヘラン政府宣伝攻勢を画策してきたBBCワールド・サービスについても、ぴったりあてはまる。

付録: 字幕入りのカダフィ演説ビデオは下記。

2011年7月2日 Mathaba

メッセージは、国を守り、リビア国民の生命線である石油を守るため、人々は何百万人も、平和裡に行進すべきであり、この紛争で、リビアは優位にあり、NATOの崩壊と撤退は間近だというものだ。

Green Square (Tripoli, Libya) - 1st July 2011 from Libya News on Vimeo.

69年9月革命の指導者、同胞指導者ムアンマル・アル-カダフィは、2011年7月1日、国民に演説し、百万人以上の国民が、トリポリ市中心部に溢れ出て、果敢な抵抗と支持を示し、緑の旗をまとい、協力して、NATO侵略や、他の外国団体が、リビア国民の問題に介入することを拒んでいる。

記事原文のurl:williambowles.info/2011/07/02/russia-today-a-new-kind-of-media-by-william-bowles/

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元二大超大国の一方の広報機関、ならず者国家の公式見解と違う見解を広報できる。

属国の広報機関、ならず者国家の公式見解と同じ見解を広報できる。

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